Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

なんか呪われた

2013/04/08 01:27:45
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昼下がりの魔法の森でキノコ集め。キノコをマジックアイテムの材料にする私の日課だ。まあキノコ以外にも色々拾うんだけどな。揺り篭から死体まで、色んな物がこっそり捨てられてるからちょっとした掘り出しものもあったりする。
で、今日はちょっと変わった死体を見つけた。身長40センチぐらいで赤色のエプロンドレス……アリスが最近槍とか持たせてる人形の色違いだな、これ。体が欠けたりはしてないが、相当汚れてる上に服もぼろぼろで酷い有様だ。まあそんな事より…右目に宝石が使われてるように見えるんだよな、これ。ルビーか何かか……?

……人形とにらめっこしてても仕方ないな。ここからならアリスの家も近いし、暇潰しにこいつの事を聞いてみるか。宝石だけ頂こうかとも思ったが目をくり抜くのは流石に、な。キノコ袋は背負って、片手で人形を抱えて、と……箒の片手運転ぐらいは慣れたものだし、さくっとアリスの家まで行くとするか。



「アリスー!居るかー?」
家の前から呼びかける。引きこもって人形作ってるあいつの事だから留守って事は無いだろ、なんて考えてる内に面倒そうにアリスが出てきた。ドアノブに手をかけてドアを開きっぱなしな辺り、見るからにすぐに戻りたそうだが。

「魔法書なら貸さないわよ?」
「第一声がそれは無いだろ」
「日頃の行い。で、何の用事……かはなんとなく分かったけど。その子、どうしたのよ?」

訝しげに私が抱えてる人形を見るアリス。私は人形遊びの趣味は無いからこんな物を持ってたら不思議なんだろうな。

「森で行き倒れてた変死体だぜ。どうせなら生みの親に返してやろうと思ってな」
「なんていうか、暇なのね」
「大魔法使いの私は大体忙し、お!?」

話の途中、抱えていた人形が突然私の体を蹴って腕の中から飛び出して、そのまま綺麗に地面に着地した。私とアリスが呆気に取られてる間にドアの隙間から家の中に駆け込んでいく人形。そこらの人間より機敏だ。

「追うぜ!」
「ちょっと、勝手に……ああ、もう!」

私もそれを追って家の中に駆け込む。相変わらずよく分からない飾りとか人形とかが沢山、っていうのは今はどうでもいいな。あの人形じゃドアは開けれないだろうから、ドアの閉まってない方に行けば……居た。どこから漁ったのか、裁縫針を片手に持ったままこっちを見てる。
とりあえずさっさと捕まえるか……と思ったら、ボロ人形が自分の二の腕に針を刺して――

「痛っ……!?」

なぜか私の腕にも痛み。でも大した痛みじゃない、気にせず一気に距離を詰めてボロ人形の両腕を掴んで持ち上げる。

「捕まえるのはいいけど、もう少し丁寧に扱ってあげなさいよね」
「呪いの藁人形の親戚を丁寧に扱う趣味は無いぜ」

後から付いて来て呆れ声を掛けてくるアリスに、こっちも呆れ声で返す。

「呪い?そんな子を作った覚えは無いんだけど……」
「人形を傷つけた部分と同じ部分が痛むとか、定番の呪い人形だろ。忘れるとか、歳なのか?」
「失礼な」
「それにしても自律型呪い人形か。知らない内に随分進化したもんだぜ」
「だから作ってないって言ってるでしょ。ちょっと落ち着きなさい」

そう言われてもな。糸も繋がってないアリスの人形のくせにいつぞやの毒人形みたいに自然に動いてるぜ、喋りはしないが。というか、こんな風に持ち上げても私は痛くないんだな。さっきのはどういう仕組みだ…?

「……ちょっと1人でその子を調べさせてもらっていい? 状況が解ったらちゃんと説明するから」
「ん、あ、ああ」

持ち方が気に入らないのか、暴れ続けてる人形をとりあえずアリスに渡し、部屋に入っていくのを見送る。目標が自律人形のアリスの事だ、冷静な風に装ってるけど気が気じゃないんだろうな、さっき逃げたのも家の中の人形で捕まえればいいのにやらなかったぐらいだ。
それにしてもうら若い身でこんなありきたりな呪いを受けるなんてな……暇潰しのつもりがとんだ災難だぜ、恨みを買う事なんてした覚えは無いんだが……ん?

いつの間にか足元に紅茶運び人形が立ってる。見た目は歩いて自爆する事でお馴染みのあれだが、ソーサー完備で紅茶を持ったままじっとこっちを見上げてくると印象が変わるな。

「ハーイ!」
「……貰っておくぜ」

アリスが私に紅茶なあ……普段なら私相手には絶対出てこないのにな。災難ではあるが、変に気にされても調子が狂うぜ。まあ無駄に柔らかいソファで紅茶を飲みながらアリスを待つとするか。



「待たせたわね」
「待ったぜ」

待つ事10分ぐらいか、ぐったりしたまま不機嫌そうにそっぽ向いてる人形を抱えてアリスが出てきた。

「説明。この子魔力の残り香で動いてる付喪神の成り損ないみたいなもの、宝石は魔力が篭もりやすいから。確かこの子は前に紅魔館の妖精にあげた子だし、きっとパチュリーの魔力にでも当てられたんでしょうね。どういう原理かは分からないけど、痛みが魔理沙に伝わるなら供養をしたら魔理沙も道連れの可能性、っていう可能性もありえること。魔力が切れれば止まるはずだけど、それがいつかは分からないし、どうして森に落ちてたのかも分からない。こんな所かしら」
「早口だし長いぜ。魔法使いならもっと簡単に纏めたらどうだ?」
「金髪の子かわいそう」
「おい。大体、お前もその人形も金髪だろ」
「それでもこう言うと魔理沙の事らしいわよ。それにしても魔力の残り香だけで動いてる人形に呪われるって、どれだけパチュリーに恨まれてるのよ」
「あんな薄暗い場所に住んでると逆恨みするようになるんだな。困ったもんだぜ」
「どの口が言うんだか」

ちょっと本を借りてるだけなのにな、どうしてこうなるのかさっぱりだぜ。とはいえ、動けないように縛って放っておけば無害だとは思うが。

「あと、変に手を出したり縛っておいたりしても自爆するかもしれないから。私や魔理沙が魔力を抜こうとして刺激を与えるのもお奨めしないわね」
「……よくできた状況だな」
「日頃の行いのせいでしょ。私の人形が関わってる事だしパチュリーに会いに行くなら付き合うけど、どうするの?」
「当然行くぜ、間接的とはいえアリスの人形とパチュリーにどうこうされてるなんて癪だしな。それと、キノコ袋は一旦ここに置いておくぜ」
「キノコ臭いのは嫌なんだけど……事が済んだらさっさと持って帰りなさいよね」

事が済んだらこの人形をパチュリーに投げつけてやるのも悪くないな、なんて考えながら紅魔館に向かう事にした。

少女移動中……


「それにしても、宝石入りなんて珍しいな。何か特別な物なのか?」
「ロケット自慢パーティーの時に、あそこに居る赤い髪の妖精メイドにせがまれたのよ。お嬢様に貰った宝石だからそのまま埋め込んで欲しいだとか」
「ふむ、変わった奴だな。妖精はそういう執着なんて無いと思ってたぜ」
「森に落とされてるぐらいだし、単なる気紛れだったんでしょ。作り手としては複雑だけど」
「……そういうもんか」
移動がてらの何気ない会話のつもりだったが、あんまりいい話題じゃなかったな。それにしても捨て人形か……やけに大人しくなったし、何を考えてるか分からなくて不気味だな。


少女移動中……


……そういえば門の前にこんな障害物が居たんだったな、紅魔館。

「要件は何?」
「マスタースパークとか」
「この窓口でマスタースパークは受け付けてないし、図書館は営業時間外よ」
「面倒な事だな。全く、アリスと一緒に来るなんて慣れない事をするからうっかり正門から入ろうとしちゃうんだぜ」
「どんな言いがかりよ。そもそも正門から入れないような日頃の行いしてるからいけないんでしょ」
「常識人っぽく振る舞ってるけど、そこの人形使いも無断で押し入った事あるわよね」
「あ、あー……あの時は悪かったわ。その話は別として、今日はどうしても通して欲しいのよ。最悪こっちの田舎派魔法使いの命に関わる事だから」
「命に……?」

怪訝そうな顔をする門番。まあ普通の反応だろうな。とはいえ、こんな事で死ぬ気は全く無いが……話が楽になりそうだし流れに乗っておくか。

「ああ。それにそっちのもやし派魔法使いにも非がある事だしな。今回は余計な事は聞かずに通してくれ」
「……分かったわ。そういう事なら通すけど、私の面子に賭けて変な事はしないで。お願いだから」
「させないから安心していいわよ」
「……まあ用事を済ませたら大人しく帰るぜ」

別にこの門番を酷い目に遭わせたい訳じゃないしな。さくっと済ませてさくっと帰るとするか。


少女移動中……


「今日はメイドが襲ってこないのね」
「門番をぶっとばして入った訳じゃないのにメイドに襲われる筋合いは無いぜ。大体メイドが大群で弾幕張ってきたりナイフ投げてくるのがおかしいだろ」
「まあ、それもそうよね」

そんなわけでスムーズに図書館の中だ。例の人形はアリスの腕の中でぐらい大人しくしてるし、パチュリーを締め上げれば今回の件は解決するだろう。
どうせあいつの事だからあの辺りの席で本でも読んで……居た。

「……何よ、また来たの?しかも2人」
「来たぜ」
「来たわ」
「鼠取りは役に立たないわね。ちなみにお帰りはあちらよ」
「相変わらず釣れないし顔色も悪い奴だな。それに今日はちゃんと正面から普通に入ったぜ」
「「明日は大雨ね」」
「お前らな……」

アリスとパチュリーがどういう仲なのかは知らないが、自然と1対2になりそうなのが納得いかないぜ。さっさと本題に入るとするか。

「そんな事より、今日は本じゃなくてお前に用事があるんだよ」
「……珍しいわね。その人形の関係かしら、うっすらとだけど私の魔力を感じるし」
「ああ、かくかくしかじかでまるまるうまうまだぜ」
「さっぱり分からないわ」
「説明ぐらいちゃんとしなさいよ。ええと……」

アリスがパチュリーに事の経緯を説明した。まあこういう事は私よりアリスの方が向いてるだろ。

「……成程ね。呪術に興味は無いし身に覚えも無い事だけど、後始末で魔力を抜くぐらいはしてあげる」
「珍しく協力的だな」
「その人形、見覚えがあるから。大事な人形だからどうとかって得意気に見せびらかしてるメイドが居たわ。弾を撃ち切るまではやられないっていう珍しい子だったけど、確かもうメイドを辞めてどこかに行ったわね。レミィから貰った大事な物を無くしたから責任がどうとか言ってたわ」
「妖精にしては珍しい性格ね」
「私もそう思うわ……まあ、そういう訳だから一応身内と私の不始末。そうじゃなければ後始末なんてしないわ」

赤い髪で弾を撃ち切るまでやられないっていうと……パチュリーの厄日の時に出てきたあいつか?それにしても、別にパチュリーの陰謀とかじゃなかったんだな。

「……それでも面倒には変わりは無いけど。さっさと終わらせるから、それをここに置いてくれるかしら」
「ええ、分かったわ」

アリスが机の上に例の人形を座らせ、それに続いてパチュリーが小さい声でぶつぶつと呪文を唱える。これで一件落着か、割とあっけなかったな。
なんて事を考えてると、突然人形が立ち上がって私の方に走り出した。が、崩れるように倒れて顎を打ち、そのまま動かなくなった。

「あっ」

一瞬の事で、思わず間抜けな声が出た。無表情の人形を目が合う。さっきから随分大人しかったが、今は完全に動かなくなった。なぜか罪悪感のようなものを感じる。

「……これで終わりね。元々魔力を抜くのと解呪ぐらい大した事じゃないけど」
「ありがとう、助かったわ。それにしても、やっぱりこの子……」
「結局呪い人形だったのか。さっき呪術には興味無いって言ってたじゃないか」
「私は、ね。館の中でまじないみたいなものが流行っていた事もあったし、多分そういう類の影響よ。ぽっくりさん、だったかしら」
「こっくりさんな。死なせてどうする」
「……誤差の範囲よ」
「私の知らない内に誤差の範囲も広くなったもんだぜ」

誤差で殺されたらたまったものじゃないな、実際。

「そんな事はいいから、用が済んだならさっさと帰りなさい。読書の邪魔よ」
「へいへい。とりあえずこいつは持って帰るぜ。わざわざ悪かったな、パチュリー」
「……今日は気味が悪いぐらいに大人しいわね。本当に明日が大雨かしら」
「言ってろ」

ぐったりと倒れている人形を抱き抱えて図書館を後にする。アリスは何かぶつぶつ言ってたから置いてきたが。
赤い廊下を歩きながらこいつの事について考える。パチュリーの呪いじゃないなら、単にこいつが捨てられたり供養されたりしたくなかったんじゃないか、とか。傷付けちゃいけないって思わせれば捨てられる事は無いしな。
メイド連中の恨みを買ってたっていう線もありえなくも無いが……多分無いだろう。何たって私は善良な魔法使いだぜ。
……まあ、今更推測してもしょうがないな。館を出て、門番に軽く挨拶して紅魔館を後にする。門番の頭に刺さりやすい感じの銀のアクセサリが増えてたが、気のせいだろう。

「ちょっと魔理沙、一人でさっさと帰らないでよ。その子の供養だってしないといけないのに」

人形抱えて片手運転に加えて考え事をしながらだったとはいえ、私がアリスに追いつかれただと……不覚だぜ。

「お前がぶつぶつ言ってて動かないのが悪い。それにこいつは私が引き取るから供養の必要は無いぜ」
「何、そんなに宝石が欲しいの?今回の迷惑料っていう事でそれぐらいはいいけど、その子はちゃんと供養しないと本当に付喪神になるかもしれないわよ」
「そういう訳じゃないぜ。それに、もしそういう事になったら私がちゃんと始末する」
「ふーん…いいわ、何かあったら魔理沙の責任だし」
「それでいいぜ。それと、お前もしかしてパチュリーの呪いとかじゃないって分かってたのか?」
「かくかくしかじかでまるまるうまうまよ」
「使い方間違ってるぜ」

その後もいつものノリで馬鹿話をしながらアリスの家まで帰り着いた。霧雨魔法店の仕事に妖精探しが追加されたが、まあのんびりやる事にするか。
やりたかっただけリスト
・別に甘くないまりあり
・妖精メイドに焦点を当てる
・何かいい話っぽくする

魔理沙とアリスって、なんだかんだでトラブルか宴会でもないと一緒に居ないイメージ。
まりも
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
余韻が無いので終わりがちょっと寂しく感じたけど、サクサク読めました。自分の中のマリアリもそんなイメージが近いかなぁー
2.奇声を発する程度の能力削除
こんな感じもありかなと思いました