Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

2012/09/03 23:07:24
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 湖上に陰を落とし、箒は往く。
 柄の切先は熱波を切り裂き、穂先より巻き上げた風は爆風の如く。
 尚焚き付けるよに、燦々と照り付ける陽の光。

「ひゅ~っ! こりゃぁ……」

 跨る黒い塊は口笛一つ、指先で汗濡れた金色の前髪を払った。
 そして、じりじりと灼け焦げそうな素肌を一撫で。

「溶けるぜぇ……!」

 アドレナリンは最高潮。一言零し、一つ箒に鞭をくれ、目指すは陽の下、南西一直線。
 赤煉瓦の洋館が視界に入れば、湖面間際へ急降下。
 飛沫。ちらり、柄に下げた風呂敷に一瞥くれ……虹を作り益々加速を強めた。


  §


「あ……」

 湖の方角から猛烈な勢いで突っ込んで来る気の介入に、紅魔館門番の暑苦しくも甘い午睡が妨げられた。

「嗚呼、あぁ……誰彼か来てしまった……」

 こんな酷暑の最中ご来訪とは、とてつもない強靭か、呆れるほどの無神経に相違無し。
 ひとつ額を拭い、ひとつ胸元で信心薄げに適当な十字を切る。

 さて、何に祈ろう。

 ひとまず十字を切ってしまった手前、基督さんに。
 続いて、こないだ使いへ出た折に御神酒を振舞って頂いたので、山の神社におわす二柱さんの大きい方に。
 締めに、先週寺より饅頭を付け届け頂いたから、仏様に。
 いずれ御近所故、神仏相乗るは皆々様お目こぼし頂きたし。

「厄介じゃありませんように、厄介じゃありませんよう……にっ! ウゥ……スゥ、サン…アル…イ………はあぁぁ~……」

 何れか暇な神格が叶い賜れたか、嘆願のカウントダウンが終わる直前、薄目の視界に入る見慣れた姿に大きな安堵の溜息が漏れる。

「なんだよぅ、客人が来るなり溜息ってさ」
「いえ、決して失礼な意味ではなくてですね、その……」

 憎まれ口を叩く箒が軟着陸する様を、美鈴は門柱のもたらす僅かな庇の下で迎え入れた。

「御機嫌様、魔理沙さん……」
「御機嫌様、美鈴。炎天下ご苦労さん」
「いえいえ、お気遣い傷み入ります」

 決して招かれた客人では無く、気心存分知れた仲でもないが、友好を厭わない来訪者。
 さりとて、職務を放棄する訳にはいかぬ。
 そう、紅美鈴は職務に生きる女なのだ。時折寝過ごすことがあるとしたら、それは悲しき業務上の過失であり、他意があっての事で無し。

「して、本日は如何用です?」
「行商相手に如何用とは御挨拶だぜ」

 はぁ、行商なんだ。湿度の高そうな唐草模様の風呂敷をしげしげと眺め、言葉を飲み込む。

「では、どちらへ?」
「静かで涼しくて、本が読めて話し相手がいるとこ」
「あぁ、図書館ですね? ……あぁ、いいですよねぇ、図書館って涼しいですもんねぇ……」

 しみじみと遙か遠くに彷徨う視線に、どこか恨めしげな色が混じる。
 対象は涼のみではあるが、嫉妬の化身も後ずさらん一点突破の羨望。

「ところで、パチュリー様にお約束は?」
「ああ、勿論無いぜ」

 見よ、この堂々。
 古今有った験し無し、恥じ入る隙いずくんぞ在らんや。

「うーん、でも今図書館はですね……」
「ふふン、分かってるって」

 人の好い門番の言い淀みを、指先で打ち払う。
 無害故のコモンセンスではあるが、おいそれと通は通さじ、だろう?

「やってくかい? 悪いが今日は手持ちが少ないけどさ」

 陽光を好戦的な瞳の輝きに換え、エプロンのポケットから二枚の札をのぞかせる。
 職務故の条件反射か妖怪の本能か、遅れを取る事無く、むしろ後の先を優に取れる反応速度で身体の重心が臨戦のそれに合わされた。

「……お望みと有らば」

 数秒前の麗らかな笑みも、暢気な言葉も、立ちのぼる陽炎の見せた幻か。
 口調は、眼光は鋭利極まり、緩慢に上げられた右の手は抜き身の如く。
 凡百の輩であればその気迫のみで、背後の門はおろか、正眼に据えた指先より先へ進む事も叶うまい。

「素直に通してくれるなら、見逃してやってもいいぜ」

 対するは余りに身の程を知らぬ、子供の様な挑発。
 その戯言に、門番紅美鈴は僅か柳眉を上げ、構えた手刀を……



「……じゃ、止めときましょう」

 収めた。拱手以って一礼。

「いいのか?」
「ええもう……いやー、もう先程頂いた労いのスペルカードだけで、今日は白旗ですってば」

 またも陽炎が過ったか、そこには緊張感の欠片も無い笑みで、脱いだ帽子で風を求める門番の姿。

「それにこう暑くては、弾幕ごっこよりも日陰の陣取り合戦になると思いません?」

 肺一杯に熱気を吸い込み、本日二つ目の大きな溜息と共に和解案を吐いた。
 抗う事無く頷きひとつ……心中安堵に包まれ……魔理沙もまた物騒な札をポケットの底へ落とす。

「うんうん、そうだよなー。流石、優秀な門番相手だと話も早いぜ」
「勿体無い御言葉、光栄の極みです」

 少女の、屈託の無い微笑みから漏れる白い歯が眩しい。
 たとい数秒前に応戦を選択しても、同じ台詞、同じ笑み以て事が始まったに相違無い。

「あ、それで図書館は……」
「じゃ、お邪魔するぜ! 日射病には気ぃつけな!」

 半ば食い気味に風呂敷を下げた箒にまたがると、猛然と垂直離陸。
 自ら煽っておいて、これ以上の身勝手もあるまい。

「はぁ、それは、どうも……」

 すっかり調子を外され、間の抜けた礼を宙にひとつ。
 どう見ても暑そうなのは彼女の方だし、風呂敷から何やら水の様なものが滴っていたが、そんな心配も含めて抜けるような青空に宙ぶらりん。

「それにしても、魔理沙さんもタイミング悪いなあ……図書館なんて……」

 再び午睡を決め込むべく程良く焼けた煉瓦に背をもたれ、箒の行く先を目で追いかける。
 図書館へ真直ぐ向かうかと思われた箒は半ばで二時の方角へ舵を切り、洗濯物のはためくベランダへ。
 忙し気なベランダの主は一つ行商に会釈し、又一つ、此方門番へと会釈。

 笑みから放たれた陽光をも凍てつかせる視線に目が合った刹那、美鈴の口から如何なるピン音とも似付かぬ悲痛な叫びが上がった。


  §


「よっ、御機嫌様、メイド長!」
「御機嫌様、行商さん」

 ベランダの柵を越え、箒は洗濯物の博覧会へと降り立った。
 朱や紅、桃色に純白が神経質な等間隔で翻る下、皺を伸ばす純白のブラウスで奏でられる軽やかな音は、いくらかこの館の涼を期待させる。

「炎天下ご苦労さん」
「御気遣い、傷み入りますわ。ところで」

 迷惑でも歓迎でもなく、ハウスキーパは不意の来訪者と会釈を交わしつ、門の方角へ一瞥くれた。

「当館が誇る鉄壁の門番は何と? 彼女に夏期休暇が出たと聞いた覚えは無いのだけれど」
「うんにゃ、暑いし停戦協定結んできた」

 どちらが、と云う肝心な要素を濁したのは天然か、優しさか。

「そう、午睡したまま遣り過ごすより少しはましね……」

 下界で上がった微かな悲鳴を無視し、独りごちる。
 正味な話、交わされた会話はほぼ筒抜けであったし、それ以前に悪意が介在しない事はよく識るところ。

「で、本日の御用件は?」

 呟き、スカートの裾から白銀を覗かせる。
 この魔法使いの場合、肝要なのは善悪ではない。厄介か否か。
 睨めつける陽光を存分に吸い込んだ輝きは、自称行商人の間合いを半歩退けた。

「ふン……やってくかい?」

 不敵な笑みの端には、門前の対峙では見せぬ僅かな強張り。
 視線を外さず、右手に八卦炉、左手に札を、今度は露わとし、さながら居合いの如く構える。

「見なかったフリしてくれるんなら、見逃してやってもいいぜ」
「重畳ね。でも残念ですわ……私は舞台役者には向いていないみたい」

 決裂。覚悟を決める。
 来るとすれば、次に呼気を放つタイミング。この会話の流れならば、次に彼女と交わす言葉が締められた時。

「そうかい。じゃあさっさと終わらせて……」
「つれないわね」

 その読みから、四分一の呼吸を外した絶妙の拍子に、白銀は閃いた。
 迂闊。息を呑み、目を見開いた刹那。


 ぱちん。


 凶刃と見紛う程に磨かれたピンチが、小気味良い音を立ててブラウスを挟んでいた。

「貴女の劇団は今、大根役者でも必要なんでしょう?」
「そ……そうゆうのナシだぜ、咲夜ぁ……」

 自ら誘った緊張に一瞬慄いたものの、胸を撫で下ろす。
 と同時に、思い出した様に首筋から珠の様な汗が吹き出した。

「常識的に考えなさい。この炎天下、大荷物で汗だくの黒ずくめと弾幕ごっこなんて、考えただけで目眩がしそう……それに」

 眩しそうに恨めしそうに、入道雲を睨み、溜息。

「昨日あった夕立の所為で洗濯物が貯まってしまって、あまりお構い出来ないの」

 なるほど、足下を囲む洗濯籠の数を勘定すれば肯ける。

「うんうん、そりゃ邪魔しちゃ悪いな。流石、優秀なメイド長相手だと話も早いぜ」
「勿体無い御言葉、恐悦にございますわ……。だけど、この先は貴女の舵取り次第」

 ふと気が付けば、凌いだのは先程の初撃のみ……言葉遊びに引き込まれた先は、既に彼女の世界であった。

「このところ熱帯夜が続いてるでしょう? 昨晩は妹様も暑気を起こしそうになったくらいなの。あまつさえ昼日中、おいそれと館に入れるとは思わない事ね」

 口調はやがて冷め、言葉尻は陽光を凍てつかせる程に冷たく。

「例え些事でも、陽の在る内に御休みの妨げを免す事は罷りならないわ」

 再びスカートの裾へと伸びた手の内は中空なれど、返答の次第では瞬きも許されぬ速度で白銀が喉を切り裂いていよう。

「じゃ、図書館なら問題無い訳だ」

 さりとて対するは、幻想郷一の豪胆を自負する普通の魔法使い。

「問題が無い理由が無いわ……」
「理由ならあるぜ」

 一度刃が喉元まで突き付けられたならば、それ以上恐るる物ぞあらん。
 無警戒に咲夜の下へ歩み寄り、悪戯な笑みを満面に浮かべると、内緒話の様に一言。

「いくら暑くても、パチェはあれ以上萎れようが無いだろ?」
「……あのね……」

 よりによって、ここに来て家人の冗談とは。
 しかし、これが彼女にとっての精一杯の悪意なのだろう。

「まあ、いいわ。今日は貴女のその神経に免じて、訪問先だけ伺った事にしてあげる」

 言葉と裏腹に、咲夜の手から一筋の弾が顔面へと放たれた。

「わぷ!? なっ! な……あぁ、もぉ……何度もびっくりさせんなぁっ!」

 直撃した大振りなタオルに絡まり、泡を食った黒猫の如き姿にようやく緊張が霧散する。

「持ってお行きなさい。その汗でパチュリー様にお会いするつもり?」
「そりゃ有難いけどさ……だったら普通に渡せっての、しょーしゃかなんかしらねーけど……」

 半分涙目で唇を尖らせ、もにょもにょと愚痴りながらも額から首筋までぐるぐると汗を拭う。

「なあこれ、まだ生乾きじゃないか?」
「汗を拭うのには乾いているよりいいのよ。それに風に晒せば程良く冷えるでしょう?」

 おお、成程……ぱたぱたと叩いては頬に当て、うんうんと頷く無邪気に、流石の瀟洒も遂に頬が緩んでしまった。

「拭い終わったら手近な子に渡しておいて。それと今図書館は……」
「おう! さんきゅ、咲夜! 今度キノコかなんか付け届けとくぜ!」

 籠から洗濯物を一枚取り上げる間に、黒猫は既に頭上へ身を躍らせていた。
 そのままぱたぱたとタオルを振り回し、ベランダを迂回して図書館へ突っ込んでいく。

「それはどうも……」

 目に見えた焦りと裏腹の遠回りは、あの荷物から滴る水で洗濯物が濡れるのを気遣ってか。
 無駄に引き止めてしまった事に僅か呵責はあれど、そんなこと、それこそ余計なお世話だろう。
 そう、普段である事が、あの「普通の」魔法使いにとって肝要なのだ。
 だとしたら、図書館は……

 ひとつ、音を立てて湿ったブラウスの皺を伸ばし、メイド長は本来の仕事を再開した。


  §


「失礼します。お客様です、パチュリー様」

 使いの小悪魔に通され、果たして目的地に辿り着いた自称行商人は恨めしげに司書を睨み付ける。

「御機嫌様……なぁ、司書さんよぅ……」
「御機嫌様、言いたい事は分かるわ」

 視線を鬱陶しげに日傘で遮り、パチュリーは不機嫌そうに口角を下げる。

「呼んだ覚えはないけど、いい気味ね……今日と云う日に態々貴女が間の抜けた顔を下げてくるなんて」

 果たして、大図書館は夏らしい熱気に満ち満ちていた。
 普段見上げる用事も無かった天井は大きく口を開け、普段明かり取りにしか用を成さぬ窓は全て開け放たれ、燦々と降り注ぐ陽光と外気を余さず胃袋へ送り込んでいる。
 そもここの屋根や窓は開閉式であったのか、と云う関心には至らず、裏切りの室温への怨恨が増すばかり。

「んだよ、御挨拶だな……って言うか、何なんだよこの騒ぎ……」

 周りでは日雇いなのか、見慣れぬ小悪魔達が本棚から蔵書を抜いては抱え、引切無しに飛び回っていて一層の暑さを醸し出す。
 涼しさも静けさも無ければ、本すら棚に収まっていない……これは既に知る図書館は欠片も姿を保っていない。

「一体全体、夜逃げでもおっ始めようってのか?」
「御生憎様、どこかの貧乏商店と違って負債は抱えていないの。虫干しをしている事ぐらい見て分からないのかしら……」

 おまけに話相手は取り付く島も無し……哀しいかなこれは通常営業のようだ。
 しかし皮肉の応酬など日常茶飯事ではあるが、どうにも言葉の端々に剣呑な刺がある。

「でも、なんだってこんな時期に虫干しなんて……」
「陽が出ているからに決まっているでしょう? 貴女の家に拉致された本は一生陽の目を見る事はないのでしょうけどね」

 これは間違いない。虫は虫でも干すに飽き足らず、居所が悪い方のそれもおわすようだ。
 日傘を差しつ尚読書を続けているのは、まこと司書の鑑ではあるが、傍から日頃の不健康さを一層増長している。

「たく、こんなとこで本なんて読んだ端から蒸発しちまうぜ」
「失礼します……。わ…魔法使いさん、すごい汗ですよ……?」

 案内の小悪魔と入れ替わりに現れた、見慣れた普段付きの小悪魔が空いたティーカップを下げながら、黒ずくめから発される只事ならぬ熱気を気遣う。

「何かお飲み物お持ちしますので、少々お待ち下さいね」
「あぁ、悪いな。そういや喉もからからだったんだよな……」

 終着点に辿り着き一息ついたところで、自身もようやく暑さで蓄積された疲労に気付いたか。
 喉は貼り付くようだし、肌はひりひりするし、先程賜ったタオルも既にずっしり重く、拭えど不快感を伸ばすのみ。

「気にする必要無いわよ、招いたつもりも無いんだから……」
「そう固い事言うなって。あ、それとさ……ちょっといいか?」

 と、去り際の小悪魔に何やら耳打ち。
 小悪魔も勝手を知ったものか不躾に不快を示さず、小さく笑みを浮かべひとつ頷くと、足早にティーカートを運び出した。

「盗人猛々しいとはこの事ね」

 改めて、大図書館の主は招かれざる闖入者を冷ややかに睨み付ける。

「今日はまだ何も盗んで無いじゃん……」
「まだ……?」
「いちいち突っ込むなって……冗談に決まってるだろ? それよりさ……」
「言霊を疎かにするなら、魔法使いなんて廃業すればいいのよ」

 聞く耳持たず不機嫌に頁を繰り、黴臭さを熱の籠もった風に載せる。
 先程から熱心に読書をしているように見えたが、どうにも視線が定まっていない。
 外気と大差無い、この室温である。よほどの強靭か可哀想な程無神経でなければ、それは暑かろう。
 頬は真白なまま、額からは汗ひとつかいてはいないが単なる不健康の現れで、冷静そうでいて相当参っているようだ。

「な、なぁ、せめてこの辺だけでも、いつもみたく涼しくしたらどうなんだ?」
「いつも……?」

 伏し目がちな眼を更に気だるく細め呟く言葉には、暑さからかもやの様な怒気を孕んでいた。

「貴女……何故ここが常に一定の温度と湿度を保っていられるか知らないの?」
「え……? そんなん……」

 知った事かと悪態でも吐いてやりたいが、かねてからの暑さと目の前の尋常ならざる不機嫌に思わず一歩引き……らしくもない、無難そうなカードをそっと差し込む。

「そ、そりゃ、アレだろ? 御得意の氷と風の精霊魔法かなんかで」
「本当に考えが足らないわね……風穴に繋いだ通風孔から風を取り込んで、館内を循環させているからに決っているでしょう?」
「はぁ……そうなんだ……」

 決っていると両断されては返す言葉も見当たらない。
 これはどうも、正解のカードは悪態の方であったのか知らんと覚える間も無く……

「だからこれだけ窓を開け放てば全部逃げてしまうの。そもそも、魔法だなんて簡単に言うけれど、体感温度として涼しく感じる摂氏二十度から二十五度の温度を自然界で常に発生している精霊なんて聞いたことがある? あと、氷の精霊なんて存在しないの。水と火を相克させた上に水を載せる事で実現するけど、涼を求める為の労力としてはナンセンス過ぎるわ。それに、その方法でこの広さを年中適切な温度と湿度で管理するとして、どれだけの触媒が要ると思っているの? これだから不勉強だと言ってるの。だからいつもいつも教えてあげようとしてるのに本ばかり持って帰ってしまって、挙句に……」

 ただでさえ早口が暑さで制御も出来なくなったか、理解も追いつかぬほどの言葉が弾幕の如く打ち返される。
 こんな事なら悪態を選ぶべきであった……並の者なら悔やみ、これ以上触発せぬよう押し黙るであろう。

 しかし霧雨魔理沙たる豪儀は、そんな選択肢など物ともせぬ。

「そんなん知った事かよ! なんだよ……さっきっからさ……」

 後出し上等、降り注ぐ弾幕を前に二枚目のカードを切ってのけた。

「暑いからって他人様に当たるなんて、大図書館サマも大概だぜ!」
「……何ですって?」

 安っぽい憎まれ口だが図星を指されたか、らしからず、あからさまに色めき立った表情で魔理沙を睨みつける。

「暑いなら暑いって言えばいいのに、意地張ってるから……」
「生憎だけど、暑いからといって苛立つほど落ちぶれてはいないの、貴女みたいにね」
「嘘だ。大体さっきから、私の話なんて全然聴いてないだろ?」
「聴く価値に値しないからよ。現に、貴女は何をしに来たって言うの? 招かれもしないのにのこのこ顔を出した挙句、人が苛々してるみたいに……」

「パチェのわからずやっ!! イライラしてるじゃんかぁ~っ!!」

 突如、目の前で破裂した風船の爆音にさしもの本の虫もたじろぎ、遂に読書らしき姿勢を中座された。
 周囲で作業をしていた日雇い小悪魔達も何事かと一瞬手を止める。

「なんだよなんだよ! 我慢したって悪口言ったって、涼しくなんかなりゃしないぜ!」

 まくし立てる顔は鬼灯の如く、額から絶えず流れる汗は水打ちに遭ったよう。もはや、激高してるのか号泣しているのかさえ判らない。

「な……何よ……。それじゃあ、貴女は涼しくする手段を知っているとでも……」
「もぉいいよ! 帰……るっ……」

 勢い良く背を向けた拍子に、魔理沙の身体が大きく傾いだ。
 支えようと箒を掴んだものの、括り付けた風呂敷包みの重さに負け、もろともに引っ繰り返ってしまった。

「何やってるのよ、もう……!」

 いつもの大袈裟かと無視を決め込もうとしたが、そのままぐったりと横たわり悩ましげに……否、弱々しく呻く姿に胸騒ぎを覚え、呼び掛ける。

「……魔理沙……? ねえ、魔理沙……!?」

 尋常ならざる事態に、動かぬ図書館も腰を上げるや否や日傘を捨て、力の抜けた肩を抱き起こした。
 ぐっしょりと濡れた汗の不快感よりも、火蜥蜴でも誤食したかと思う程に熱い首筋の体温が不安を煽る。

「すごい熱じゃない……! ねえ、ちょっと誰か……!」
「はい、こちらに!」

 呼びかけが終わらぬ内に、先程の小悪魔が何やら見慣れぬ箱を乗せたティーカートを駆り、足早に到着した。
 そのまま側にしゃがみこむと、何故か風呂敷包みを手に魔理沙へ問い掛ける。

「魔法使いさん、包み……開けてしまいますよ?」

 辛そうに眉を寄せ頷くのを見ると、小悪魔は器用な手つきで濡れて固くなった風呂敷の結び目を解く。
 暴かれた行商人の荷に、パチュリーは半ば呆気に取られた。

「こおり……ただの、氷?」

 言葉と裏腹に、曇り一つ、気泡一つ無く輝く天然のプリズムは、如何なる魔法の触媒よりも目を引き付けた。
 しかし、幻想は瞬時に現実へと引き戻される。

「失礼します……!」

 冷静な口調と裏腹にアイスピックを閃かせると、小悪魔は氷を拳ほどに欠き割った。
 刹那、四散した氷粒がまるで癒しの魔法のように降り注ぐ。
 見とれる間にも、いつの間に魔理沙から取り上げたタオルで氷をくるみ、熱ぼったい首筋へと添えていた。

「暫く当てておいて下さい。あと、これ……ちょっとしょっぱいですけど全部飲んでくださいね」
「さんきゅ……んぐ……うぅ、まず……」

 グラス一杯に満たされた常温の塩水を飲み干すと、幾許か瞳に生気が戻る。

「わりぃ、ぱちぇ……いらいらしてたの、私のほうだったぜ……」
「そんな…事……。それよりもこれ、どうしたの……?」
「たまたま…湖でチルノにもらってさ……どうしても、パチェに届けたかったから……」
「そんな……こんな炎天下に……わざわざ氷なんかを……」

 くだらない、と無関心を装うと出しかけた言葉が詰まる。
 炎天下、湖から風呂敷一つで運んでくるとは、なんと非効率で、なんと非合理なことか。
 魔法使いとして何の工夫もないとは、どれだけ未熟で、どれだけ無能なことか。
 どれだけ魔法使いとしての心得を叩きこめばいいのか。
 紡ぐ言葉を、練りに、練り……

「ばか」

 遂に口を衝いて出たその言葉は、説教はおろか罵倒にすら及ばぬ子供の駄々。

「分かってたけど……貴女って大概のばかものだわ……!」

 それどころか、ぽろぽろと、ただぽろぽろと涙が溢れ出る。
 だって、仕方がないこと。
 暑さで溶けた理性は言葉にする前に、溶けた感情は制御する前に流れ出てしまうのだから。

「ったく……ばかばか言うなよ……馬鹿って言った方が馬鹿なんだぜ?」

 唇を尖らせながらも、ついぞ見た事の無かった日陰の少女の涙を優しく拭う。
 指先から伝わる熱は、どんな理知的な言葉よりも雄弁に語る。
 そう……この魔法使いは、何をか語るに及ばぬちからで動いているのだ。
 倒れるまで走り続け、身一つで危険極まる館に転がり込み、豪胆だけで壁を飛び越え……

「知らないわよ……ほんと、計り知れない大ばかものなんだから……」

 まったく、そんな事、どんな魔導書に書いてあるものか……尚心配そうに頬を撫でる手のくすぐったさに相貌を崩し、恥ずかしげに顔を逸らす。

「あの」

 にわか和らいだ空気を察したか、暫し沈黙を守っていた小悪魔が絶妙の呼吸で言葉を挟んだ。

「氷……溶ける前に作ってしまいますね、ここで」
「作る……?」
「ええ、本当は虫干しのお手伝いに来てくれた子に振舞おうと思って取り寄せたんですけど、パチュリー様と魔法使いさんに先越されちゃいましたね」

 頷きつつ、ティーカートで運んで来た件の見慣れぬ二階建ての箱に、片手鍋ほどの大きさになった氷塊を設置する。
 そして手早く一階に銀製の受け皿を配し、屋上にはクランクを差し込むと、くるくると二三度調子を確認。

「ねえ、それは一体……作るって、何を……?」
「えっ? パチュリー……これ何だか知らないのか?」

 物言いたげな御両人様を軽く制し、準備完了とばかりにひとつ腕まくり。

「まあ、見てて下さい。こう見えて、すごい上手なんですよ、私」


  §


「ひゃぁ~……すっげえ冷たくて美味そうだな!」
「大袈裟ね……氷が冷たいのは当たり前でしょう……」

 果たして床に座り込んだままの二人の前には、銀の大地にそびえ立つ雪山がひとつ。
 その周りには霊薬の薬瓶かと思わせる、色とりどりの液体の詰まった小瓶がずらり。

「分かってないなあ、ただの氷なら美味しくないんだって!」
「またそういう根拠の無い事を……」

 小瓶から仄か果実香るシラップの雨を降らせ、匙で掬った結晶を、魔理沙はにこやかに捧げる。
 無論、博学を由とするパチュリー・ノーレッジ、かき氷なるものを知らぬ訳ではないが、ついぞ口にする機会も無かっただけに、味を否定する事までは出来ぬ。

「ほらほら、パチェ! あ~んしてみ?」
「自分で食べられるわよ……そんな、子供みたいに……」
「かき氷もスプーンも一つしか無いんだから、仕方ないだろ?」

 本当に仕方がないのだろうか。
 確かにかき氷なぞ食べつけないから正確な事は分からないが、一杯分と言うには、器がいささか大きくはなかろうか。
 否、食べつけなくとも、匙が一つしかないのは明らかにおかしい。

「だ、だったら、あの子にもう一つ匙を持って……」

 ただでさえ先程から、ばつの悪さから目も合わせられないのに、逸らす視線の先々に匙が付いて回る。
 そう言えば、ごゆっくりと残し去った小悪魔の後姿、あの尻尾の動きは大概おせっかいを能動的に行った時の癖であったような。

「早く~! と~け~る~! ぱ~ちぇ~!」

 そういう事…………小悪魔め。
 しかし諦めて目を閉じ、恐る恐る小さな口を開く。

「わかったわよ……。は、はい…ぁ……ん……」

 優しく、優しく舌に触れた匙の冷たさを、ゆっくりと含む。
 繊細に削られた氷は、粉雪の様にふわりと口中に冷気を運び、霞の様に儚く甘く溶けた。

「……美味しい……」

 それは如何なる感情をも押し退け、口にせざるを得ない魔法。

「な? だろ? だろ~!?」

 また泣き出してしまいそうに潤みを湛えた瞳が、眩い程輝く。

「ほかのヤツらに分けたら無くなっちゃうし……、パチェに一番最初に食べさせたかったんだ!」
「だ、だから……なんで、私なの?」
「決まってんだろ! そりゃあ………………」

 瞬き、ひとつ。

「ん? なんでだろな?」
「私に訊かないで、もう……その不確かな行動理念から、よくここまで発展させたわね……」
「あー、もう難しい事言いっこなし! ほら、今度はパチェの番だぜ!」

 答えの途切れた一呼吸の間に僅かでも色の付いた雑念が混じった事への自戒を込め、差し出された匙を素直に受け取ると、山盛りに乗せた雪山を返杯する。
 口元へ運ばれるのを待たず、ぱくりと音が聞こえないのが不自然な勢いで一口に喰らい付き、やはり色気とは無縁に破顔一笑。

「っひゃ~、おいし~っ! やっぱ、夏はこれだよな~……」

 こめかみを押さえながらじたばたと足を動かすと、ようやく人心地ついた様に開け放たれた天井を眩しそうに仰ぐ。

「うん、やっぱ苦労した甲斐があったなー。大変だったんだぜ? すっげえ重いしどんどん溶けるし……」
「だから、氷の性質を考えれば当たり前でしょう? ……そもそも、何の工夫もしないで風呂敷に包んでくるなんてどうかしてるわ」
「工夫って、じゃあパチェならどうしたんだよぅ……」
「簡単な事じゃない。わざわざ湖から氷の方を運ぶ必要は無かった訳でしょう? 逆に……」

 半ば得意げに高説を打ったところで失言を悟り、慌てて口を噤む。
 しかし僅か数秒で悟ったか、きょとんと聴いていた白黒が七色に爆発した。

「あぁ~っ、そっか! そうだよな、パチェと一緒にこれ持ってチルノんとこ行けばいいんじゃん! さっすが動く図書館だぜ!!」
「ち、違うの魔理沙、そういう事じゃ……!」

 良策を画し愚策に嵌まるは賢者故か。
 迂闊を悔いた時にはもう遅い。騎兵は高々と軍旗を掲げ、颯爽と馬に跨っていた。

「じゃ、決まりだな! 明日十時に迎えに来るぜ!」

 何を今、急くことがあろう。
 否、急くのだ。彼女が霧雨魔理沙で在るが故に、普通の魔法使いで在るが故に。
 魔法とは、発動してしまえば中座は易く叶わぬ、それが真理。

「ちょっ、ま、待ちなさい! もう少し安静にしてないと……」
「平気平気! かき氷食べたら治っちまったぜ。あの小悪魔に里で店出せるぐらい美味かったって伝えといてくれな」

 箒も軽さを取り戻したか、ぐんぐんと急上昇。
 徐々に膨らむ穂先から良からぬ気配を察し、窓辺にいた小悪魔達もそそくさと道を譲る。

「それと! 門番とメイド長にはナイショだからな~!?」

 捨て台詞と共に、白黒の弾丸は猛然と図書館から放たれた。

「な……なんなのよ、もう……」

 開け放たれた窓からは、沸き立つ入道雲の鮮烈な白に彩られ、見渡す瞳を灼く蒼を放つ空。
 その中央を、彼女の得意とする魔法の如く一直線に軌跡を描きながら、箒は東の空へと消えていった。


  §


 ……その後ろ姿を見送りながら、

「あれじゃあ、内緒になってないですよね……」
「聞こえる様に言ったのよ、きっと」

 ようやく傾いた陽光に広がった日陰の領地に二人、優秀と評されたハウスキーパーとゲートキーパーが隣り合わせて、荒く挽いたみぞれに匙を突き立てていた。

「それにしても、言ってくれれば氷室貸してあげられたのに、魔理沙さんも水臭いなぁ……」
「そんな野暮、あの子に限って言わないでしょうし、貴女が言ったところで聞かないでしょうけどね」

 呆れると表現するには柔らかな微笑で、その遠い後姿を目で追いかける。
 むしろ、こんな方向へ転がって行ったのなら、氷室の件を漏らさずにいた事は僥倖だったのかもしれない。

「だからと言って、今後彼女を特別扱いして通す必要はないわ。少なくとも近付くまで寝ているなんて事の無いように」
「あぅ……すみません……。でも、そこまで警戒する子じゃないと思うんですけど……今日だって、結局氷を運んで来ただけでしょう?」
「結果論で語らないの。それに、私がお嬢様の為に氷を届けるなら、館に着くより先に貴女の眉間にナイフが刺さってるわよ?」

 怖いなぁ、もう……。美鈴は、しかし嬉しそうに、また一口匙を運んだ。

「ところで、湖の氷って本当に美味しいんですか?」
「ええ、美味しいでしょう、その霙。その余りを拝借して作ったのだけど」
「なるほど、それじゃ保証付きですね。いや~、こういう炎天下で湖に足を浸しながら食べるかき氷、絶対美味しいですよ~!」
「ええ、二人きりなら尚更でしょうね……だから」

 どこか浮かれた調子を察し、念の為と釘を刺す。

「サボって着いて行こうなんて思わない事」
「えー? 護衛は必要ですよ! ほら、あそこ悪戯っ子の妖精多いですし……」

 その魂胆は予想通りではあったものの、口先では否定する所であろう。
 この門番もまた、陽気に晒されて判断が鈍ったか……否、これは天然か。

「最強の護衛がエスコートするのよ? 騎士様の邪魔になって、馬に蹴られるのがオチね」
「うぅ……でも、いつもの小悪魔ちゃんだって着いて行くんでしょう?」
「食い下がるわね、貴女も……。問題無いわよ、あの子はこのお屋敷でもいっとう空気の読める子だもの」
「……あぁ……そうですよねぇ……」

 止めを喰らい、すっかりしょげてしまった美鈴から空の器を回収する。
 どうにか門番不在は阻止出来たが、このまま張り合いを無くされては意味も無い。

「あの氷の妖精と仲が良いのでしょう? 行くのだったら、今度自主的に……」
「じゃあ! じゃあ咲夜さん、一緒に行ってくれますよね!?」
「えっ? そ、それは、私が決める事ではないわ。お嬢様にお暇を出して頂かないと……」
「わかりました! じゃあ今晩、私がお嬢様に掛け合っておきますね!」

 ここにも、策に溺れた軍師が一人。事情を説明されてしまえば、当館の主人は野暮も無く承諾するであろう。
 気を許した瞬間、思わず漏らした曖昧を搦手に取られるとは……のみならず、自分も炎天に当てられていたという事か。

「……私の犠牲で、館の均衡が保てるのなら、安いものね……」

 不意に熱を持ってしまった心根を自虐極まる独りごちで包み隠すと、優秀なメイド長は優秀とおぼしき門番に一撃加え、持ち場へと戻って行った。


  §


「はぁ……とんだ災難だわ……」

 暫し茫然と東の空を見つめていたパチュリーは、箒の穂先が森に隠れたところで思い出したように悪態を吐く。

「それで、如何なさいますか? パチュリー様」

 いつの間にか背後では、空気が読めると評された小悪魔がモップとバケツをお供に騒動の始末を初めていた。

「如何もなにも、災害は予知できているのだから、被害は最小限に食い止め…あっ、ん……」

 氷菓子の残りが手の内で溶けゆくのを見て、半ば慌てた様に口へ運ぶ。
 そしてこめかみに指を当て、うずくまる事暫し。

「さ、最小限に食い止めるしか無いでしょう……」
「かしこまりました。では、被害を最小限に抑える為の対策として、お出掛けの準備を明朝……白黒の魔法使いさんがパチュリー様をお迎えに上がられる、午前十時までに整えておきますね」
「…………」

 わざわざ包み晦ました言葉を丁寧に紐解き、メモを取りながら復唱。
 睨めど、天然でも朴念仁でも悪意でもない、総意を酌んだ極上の微笑で迎え撃たれる。

「あと、二次災害に備えるべく、水遊びに発展してしまった場合のお着替えのご用意と、お昼をまたぐでしょうから軽めのお弁当をメイド長さんにお願いして……パチュリー様、魔法使いさんのお好きなものってご存じですか?」
「し、知らないわよ! ……もぅ……」

 この小悪魔め……諦めたように、溜息。

「それなら、支度の準備をもう三十分早くなさい。あの様子では、きっと急いて来るでしょうし」
「かしこまりました」
「あ、あと……」

 言い淀み、雪解けの名残となった薄いシラップを口に運ぶ。
 そう、被害を拡大させぬ為には、寸分の予断をも許されないのだ。

「何か日除けになる物を余分に持って来て。きっと何も学習しないで来るでしょうし、また倒れられたら迷惑だし……」
「はい。では、日傘とケープを……柄はお揃いの物をご用意しますね」
「柄の確認なんてしなくていいの! ……そ、それと、魔理沙はあまり辛いものは好まないから……と思う…って、その、人伝てに聞いた事が……」
「わかりました。では、メイド長さんに依頼するお弁当は、胡椒を控えめにしたきのことベーコンソテーのサンドウィッチと……」
「ま、魔理沙の好きなものを知ってるのなら、最初から訊かないで!」
「いえ、当てずっぽうですよ? なるほど、魔法使いさんはきのこ中心で攻めれば良し、と……」

 遂に涙目で睨む主人に、小悪魔は恭しく拝諾の礼をひとつ。

「それでは、今日はパチュリー様も早めにお休み下さいね」

 憮然とティーカートを押す後ろ姿を見送り、いつしか陽の傾きかけた天井を仰ぐ。
 虫干しが終わる頃には、蒸し蒸していた空気も湖から差し込む空気に入れ替わるだろう。
 その時に改めて考えよう、明日の事を、あの未熟で……未だ識らぬ魔法を操る、自称普通の魔法使いの事を。

「……甘んじてあげるわ、今回だけはね……」

 器の残り香に独り言ち、パチュリーは読書を再開する。

 傍らに、氷菓子の文献を携えて……。
お目汚し失礼致します。
基本に忠実な話を書こうと苦心し、結果散漫とした内容になってしまいました。
ご指導ご鞭撻、頂けましたら幸いです。

http://www.cx.sakura.ne.jp/~serenity/
コメント



1.i0-0i削除
みんな可愛くてとても良かったです。
かき氷たべたいなあ……。
2.奇声を発する程度の能力削除
可愛くて良かったです
3.名前が無い程度の能力削除
みんな可愛いなぁ。
凄い好みのお話しでした。
4.名前が無い程度の能力削除
ほのぼのしてていいなあ
魔理沙もパチュリーもかわいい