Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

紫と魔理沙

2012/05/04 02:22:09
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「おはようございます」
「くそくらえ、だ」
 ゼロ距離ノンディクショナルレーザーは強い、痛い。
 私のモーニングコールと彼女の寝起きの悪さはとても相性がよろしい。
「いけませんわ霧雨さん、朝の挨拶はきちんと厳かに」
ボムバリアがなければ一溜まりもなかったわ。でもひりひりする……
「不法侵入者は問答無用で撃って良いんだぜ」
 私だって部屋に土足で上がり込まれるのは嫌ですわ。
 自分も他人も嫌がることを進んでやるのが私ですけどね! 今日もそれで藍に嫌な顔されたけど止められないのよ困っちゃう。
 しかし今は素直に従いましょう。ボムバリアだって安くないのよ。
「分かりました、では手順を踏まえてからもう一度」
「最初からそうしろ。ドアはお前みたいな奴でも開いてくれるというのに……」
 うう、そう言われるとドアに申し訳なくなる。精神的に責められると弱い。
 なので隙間を使わずに一度ドアから外に出る。

 深呼吸……魔理沙良し、私良し、うんよし。

「おはようございます、霧雨さん」
「おはよう、紫」
 あら、拍子抜け。てっきりドアを開けた瞬間服の袖がはじけ飛ぶハメくらい想定したのに。せっかく即興で考えられる限りトラップを無効化する結界を展開したけど……してやられたわ。
 そこにはフライパンを持った、エプロン姿のシルバニアファミリーがちょこんとせっせとお勤め中。お人形さんみたいだからって変な表現。でもバービーガールとも違う感じがするし。
 パジャマ姿にエプロンっておざなりよね。今度裸エプロン教えてあげましょうか。あ、枝毛。ああもう動き回ってなければここから間接的にお櫛で梳いてあげるのに。その上昨日の残り物なんて。こんなめんどうくさがりいていいんでしょうか。
 私? ……能力を使うって、息するくらい大変な事なのよ。
「朝ご飯? 私も馳走に上がって良いかしら」
「いいぜ、卑しいお前はそう言うと思ってたからな」
 あれ、私かなり舐められてる? 
 これは分からせる必要があるみたいね。
 幻想郷を愛する私の残酷さと言う物を。
 ご飯食べてから!

「「いただきます」」
 夕べのカレーライスと、ピーマンの肉詰め。朝から重いのはいつものことだから動じないけど、どうして肉詰めなのかしら。肉はもう肉で詰まってるじゃない。肉は詰まらない存在とでも言いたいわけこの子は!?
「紫好きだろ、ピーマン! ……の肉詰め」
 強調して言っている、わざとだ、絶対わざとだ。なんて悪辣な人間なのだろう。これだから人間は……って言われる娯楽作品が後を絶たないのは間違いなくこういう人間がいるからだ。だがしかし! 伊達に長生きしていない。藍の美味しくも厳しい食事に鍛えられてるんだから! 
「うん、好きよ! それはもう――」
 口内に味覚を遮断する結界を貼り、念のため味と匂いの境界を弄くる! 万が一失敗しても人参みたいに甘くなれば平気なのよ!
 さあ、これで悔しがる魔理沙の顔を見てご飯が美味しくなるわ!
「大好きなんだから……んぐぅ!?!11」
 なにこの青臭い焦げのような不愉快な味は!? ば、馬鹿な結界も綻びを見せていないというのに!
「魔法も日進月歩。酸いも甘いも噛み分けているお前なら平気だろ?」
 苦いは噛み分けたくない! むしろ噛み分けずに生きてきましたごめんなさい!魔法で結界を崩さずにすり抜けることまでは想定したけど、私が境界を弄ることを見越してピーマンを甘くするように味付けしていたのね。
 甘いの反対は辛いと苦い……今回は彼女の意志が勝ったのか後者を引き当ててしまった。結界と境界のプロだと思ってた私もまだまだ甘いということかしら。
でも未熟ってことは伸びしろもあるとも言えるしまだ若いともとれるわねうへへ
「何か一人で落ち込んだりにやにやしている……妖怪怖い」

「ごちそうさま」
「あれからピーマンに触れずに肉だけをくり抜くなんて、恐れ入ったぜ」
 能力だけに甘えないのが長生きの秘訣って奴よ。私の恐ろしさが分かって貰えたようで何よりだわ。
「それで魔理沙、今日は何をするつもりかしら」
「あー? 特にないが掃除でもしておこうかと」
「めずらしいわね。てっきり微生物繁殖させるのが趣味だと思っていたわ」
「皮肉のつもりだろうが、まあいい。お前だって来るし、自分の本と借りた本の整理くらいしないとくつろげないからな」
 え? どういうことかしら。お前だって来るし? それはつまり私が来るから私が来るため私のために掃除をするってこと? あの霧雨 魔理沙が。そんな馬鹿な。あの子はどっちかというとこんな素直な良い子じゃないしそりゃもうツッケンドンでゾーリンゲンでアッチョンブリケで
「全部聞こえてるんだけど。事実だよ、私は嘘をつかない」
 そう言われると嘘をついてるように聞こえちゃうじゃない!弄ばれてる私がこんなに弄ばれてる、ああもう何怖いやっぱり人間って怖い。
「朝ご飯振る舞ってるんだから、憎からず思うことだってあるだろ……」
いやでもそれなら寝起きにボムするわけないじゃない!
「ドアから入ればお前も立派なお客さんだぜ」
立派なんて言葉くれたのいつ以来だろう……
駄目だ懐柔されては駄目だ、むしろ私が懐柔するべき。

「お客さんだなんて……私達恋人同士でしょう?」
「紫が恋人かぁ……いいかもな」
 っていやいやいやどうしてこうピッチャー返しをしてくるのかしら!?
 私はしどろもどろに恥ずかしがる魔理沙の顔を見てにやにやするつもりだったのに。少しだけ考えて、いいかもだなんて、その。
「紫と契約したらお前も藍達も式として使役できそうだしな。ちょっと面白そうだぜ」
 そんなことだろうと思ってました、ほんとうですよー。ん? 契約ですって。契約ってことはまさっかっかか、かけっこ! 
 ……クールになるのよ八雲 紫。契約でそうなるなら藍は私の妻になってしまう。それと目の前にいるのは力を欲する青二才。弄ぼうったって三度も同じことは通用しないんだから。
「力こそパワーってくらい見境無いわね。もっとこう、努力とか魔法とか」
「努力はしてるぜ。あと強いて言うなら、恋の魔法?」
「ああもう良いわよそれで!」
 にこにこぷんぷん! 

 どうして私がこんな奴と一緒にいて虚仮にされてるのかですって?
 何て言うのかしら。面白いのよ。愉快なのよ。楽しいのよ。甘い匂いなんてしないわ。味付けできるけど。私も長生きしていろんな人の死に目を見てるけど、これって結構悲しいし辛いことなの。
 でも、悲しくなったり辛くなるのってそれだけ失いたくない人だったってことでしょ? だったら目一杯楽しめばいいのよ。それを帳消しどころか埋め尽くせるくらいに。
 ちょっと面白いのはね、こう見えて私に遠慮してるところ。
 あの時だったかしら。その時もこんな風にお邪魔してたわ。


「あなたにつきまとったりするのって、恋?」
「私の恋心、汚れるなぁ」
それってスペルカードに影響するのかしら。
「ねえ魔理沙。聞いてちょうだい」
「あー?」
 安楽椅子に座ってギーコギーコとしながら本を読んでる魔理沙の肩にあごを乗せちゃう。無理な姿勢もそうでない姿勢も隙間を使ってしちゃうのが悪い癖よねホント。
「恋人って何すると思う?」
「少なくとも、こうじゃないな」
「そう、違うわ。恋人になったらこうじゃなくなる」
「な、何を言っているんだ?」
「私、結構義理堅いの。寿命が違っても責任は持てるわ」
「どうしたんだ、」
 隙間からするりと、膝立ちで向き合う体勢になって魔理沙の顔に両手で触れる。二人も乗って倒れないかしら、安ちゃん。
「汚したなら、ごめんなさい。責任を取って籍をいれましょうか」
「!?」
驚くこと無いじゃない。
「いいかもね、結婚。子供は、ほらできないけど」
「こ、子供って」
照れること無いじゃない。
「いやいや。でもそうなると家で暮らす方が良いわよね。八雲魔理沙ってちょっと慣れないかもしれないけど」
「あ、あのね紫」
俯くこと無いじゃない。『否定の連続』ってやつよく干渉してくるわねぇ。
「どうしたの?」
「そういうの、まだ、ちょっと、いや、」
うれしいけど、ねえ。聞こえてるわよ。
「そう、ごめんなさい。けど残念」
「だから、さ」
魔理沙の触れていた手を優しく剥がされたと思ったら、
「今は、これだけ」
指にすぐ乾く程度のものがついた。
「ふふっ」
「笑うなよ、もうしてやんない」
「いいわよ、次はもっとすごいのしてもらうから」
 この調子だとお婆ちゃんになってから後悔するんでしょうねぇ。
 そうならないようにしなくちゃ、ね。

 てなことがあってね。
 だから今日もそんなことにならないかなーって。その時の記憶をちょちょいと消してまた『こんにちは』したけど。どうして今私はベッドに押し倒させれてるのかしら。らーん、助けてー。主人の危機よー。お外に吊されてる物体は油揚げ? ああダメだ。詰んでる。今日の魔理沙は二枚ほど上手だ。仮説だけど実は体が覚えていたとか。
 でも懲りないわよ、これからもっとあなたを見つけて私だけの楽しみにするのですから。
紫と魔理沙は5:5
紫とピーマンは0:10
acty
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
何だろう…なんかよく分からないけど何故か魔理沙に違和感を感じた
2.名前が無い程度の能力削除
ゆかまりとは新しい!
3.名前が無い程度の能力削除
ピーマン最強キャラだったかー
ゆかりん可愛い