Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

よくあるワガママの話

2012/03/17 21:28:47
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※ムラいちがムラムラいちゃいちゃしてるだけ





 夕飯も食べ終えて湯あみも終えて。本でも読みながら夜を更かそうと、自分の部屋へと繋がる廊下を歩いていた時の事だった。
 背後から軽い足音と「見つけた」と言う声。反射的に振り向いて、その瞬間なにかに腕を引っ張られた。意図せずに口から吐き出すタイミングを逃した息と変な声が出て、何事かと思う間もなく首筋に冷たい何かが巻き付いた。普段布で隠している場所に触れた冷たいそれにゾワリ、と身の毛がよだつ。訳のわからないまま目の前にある黒い何かを触ろうとした瞬間、青緑の綺麗な石のようなものが見えて、唇に冷たくて柔らかい何かが触れた。
突然の事と首にかかった重さでバランスを崩して、自分の意志とは関係なしに身体が傾く。

 「ふっ、んぁ……ぁ」

 気づいたら口の中に冷たい何か――自分の舌に絡みつかれてそれも同じく誰かの舌だと、突然の事で思考が止まった脳がやっと理解した。そう理解したはいいけれど、取り込む酸素が少なくなって物事をうまく考えられなくなった今の私にはなんの意味もなかった。
 酸素が足りなくて麻痺した脳では思った以上に体を動かす事ができなくて、何かに縋りたくて無意識に冷たい体にしがみつく。私自身は必至に立っていたつもりだったのだけれど、気づいたら床にへたり込んでいた。口の中をなぶられていたせいで攪拌された唾液が飲み込めず、口の端から溢れ出る。空気に触れて温くなったそれが首筋を伝って気持ち悪い。そこでようやっと我に返って抗議の声をあげる事を思いついた。力の入らない腕で肩を押すと意外と呆気なく、少し温くなった唇が離れた。

 「ぷはっ……は、ちょ……とムラ、サ……」

 肩で息をしていると襲いかかってきた相手、村紗がなんてことない顔で大丈夫? と呟いた。そのついでに口から溢れた唾液を舐められたけれど怒る気にもなれない。

 「嫌だった?」
 「いや、嫌とか、そういうの、じゃなくて」
 「うん」
 「急に、なに」
 「うーん、最近ご無沙汰だったっていうか」
 「は?」
 「一輪とキスしてないなー、って思ったらいてもたっていられなくて」

 村紗の服を掴んでいる私の手に村紗の冷たい手が重なって、そのまま無理やり手を絡められる。

 「うん。一輪に会いたくて」

 なんだか嬉しいことを言われているのはわかったのだけど、だからといっていきなり廊下で襲われるっていうのは困る。もし誰かが廊下を渡ってきたらどう説明するつもりだったのだろう。湯に浸かって緊張のほぐれた体が一気に重くなった気がした。

 「ねぇ、嫌だった?」

 呆れとちょっとした怒りと、久しぶりの口付の感触に興奮している自分をどうにか抑えて、村紗にどう言葉を返そうか迷っているとさっきと同じ問を投げられた。
 たださっきの問と違うのは、問の裏にこの後の事が含まれていること。
 そう。つまり、続きがしたい、と。
 基本的に子犬のような――不貞腐れたり文句を言ったりするけれど大抵言う事を聞いてくれる――従順さを持つ村紗だけど、時々どうしようもないくらいワガママになる。それは大抵、自惚れでなければ自分へのワガママだ。内容は今みたいなキスがしたいだとか、抱きしめたいだとか抱きしめてほしいとか、そういうくだらないものばかり。なのになぜか断ることのできない凶悪さをもっている、ような気がする。結局、私が我が儘を受け入れて、或いは流されてしまったせいで、最近はお願いを言う前にすでに行為に及ばれている。その行為だって私が嫌がれば村紗も諦めてくれるかもしれない。けれどそれは決して嫌なものではなく、寧ろ自分も望んでいるものでもあるから断るなんて選択肢は元からないと気付いたのはつい最近だった。
 まだうまく物事を考えられない頭でぼうっとしていると、繋がっていないもう片方の手が私の寝間着の袖を軽く引っ張って返事を促す。まっすぐに私を見つめる瞳は子犬のように可愛いけれど、その奥にはとても熱いなにかがくすぶっていて、それはもうすでに私に飛び火している。

 「ぃ……やじゃない、けど」

 肯定の言葉を素直に伝えられない自分が嫌いだ。けれど村紗はそんな私の事を好きだと言ってくれる。
 村紗の顔がほころんで、ひねくれた言葉は伝わったんだと安心した。そうして私はまた甘えてしまう。

 「うん。一輪、好き」

 少し考えて、私も、と言う前に再び唇が重なる。それを今度は抵抗せずに受け止めているとそのまま押し倒されそうになったので慌てて村紗の体を押し返す。少しだけムッとした顔をされた。

 「ちょ、ちょっと待ってよ! ここじゃ、駄目だってば!」

 村紗があぁ、と思い出したように周りを見まわしながら立ちあがる。離れた体にほっと少しだけ安堵の息を吐くと、ぬっと村紗の細い腕が私の眼前に伸ばされる。最初は訳がわからなかったけれど「ほら」と催促する声に呆けていた頭が意味を理解して、その手を取った。引っ張られながら足に力を込めて立ちあがる。

 「わっ」
 「おっと」

 立ちあがったつもりだったのだけど、一度力の抜けた体は言う事をきいてくれなかった。踏ん張れずにバランスを崩してそのまま村紗に向かって倒れ込む。村紗に支えられながら力を入れるけれど変わらずに足は言う事をきいてくれない。
 
 「一輪、大丈夫?」
 「……だい、じょばない」
 「えぇと」

 村紗にゆっくり導かれて再び腰をおろす。

 「あの、一輪?」
 「無理。動けない」
 「え、えぇ? ここまできて?」
 「だ、誰のせいだと……!」
 
 先ほど受けた行為を思い出して頬が熱くなる。口付けだけで気をやってしまっただなんて、はしたない女とか思われてしまいそうで。でも村紗だったからこそこんなに早く腰が砕けてしまったに違いない、とも思う。
 恥ずかしくてまともに村紗の顔を見られなくて思わず顔を隠した。なのに村紗はそんなの気にも留めずに「こっち向いてよ」なんて言う。顔を横に振ると名前を呼ばれて、それを拒否して、そんなやりとりを繰り返す。

 「じゃあさ、ここでいいの?」

 ビクッと体が震える。そもそもこうなったのは村紗のワガママのせいで、更に言うと今の村紗は無駄にワガママで強情だから、結局この状況から脱するには村紗をどうにかしない意味はないのだった。
 仕方なしにゆるゆると顔をあげると意外と近くに彼女がいた。

 「むら」
 「いいよ、連れてくから」

 休んでていいよ、とかにはならないんだ。なんて思いながら小さく頷いた。しゃがみこんだ村紗の肩に手をかけてなんとか立ち上がろうとした。

 「いいってば。連れてく」

 え、と村紗の意図を計ろうとしたらフワッと体が浮いた。危うく腕の中でバランスを崩しそうになって思わず村紗の首に腕を回す。

 「わ、ちょ、ちょっと!」
 「こっちの方が早いじゃん」
 「そ、そりゃそうだけど、そうじゃなくて」
 「一輪軽いしね。全然かまわないよ」

 私より少しだけ小さいくせに、私より力持ちな彼女だ。確かに村紗にとっては軽いのかもしれないけれどそうじゃない。自分の体重とかそういうのも気になるけれどそれよりもこの格好はそのいわゆる横抱き、つまるところのお姫様だっこという、

 「ちがっこんな……恥ずかしいじゃない!」
 「? これからもっと恥ずかしい事するのに?」

 悪びれもなくサラッとなにか言われた。先ほどから冷める気配のない頬が更に熱くなる。文句を言おうと開いた口からは意味のある単語が出てくる事はなく、ただ空気だけが漏れていった。

 「大丈夫? 足とか痛くない?」

 誰のせいでこんな事になってるのかわかってるんだろうか、こいつは。
 問いかけには答えずに、間抜けな顔を見られないようにとさっきとは逆に私が村紗の首に抱きついた。

 「一輪?」
 「しらない」 
 「そう? あ、一輪の部屋でいいよね」
 「……しらないっ」

 村紗の部屋は何もないけれど、そこは村紗の空間である事には違いなくて、一層彼女の事を意識してしまう。だから今日みたいに村紗がワガママで無駄に積極的な日は自分の部屋の方がいいだろうな、なんて思う。……そもそも運ばれる私に選択肢なんてあってないようなものだけど。
 ギシリ、と廊下が軋んだ音が鳴って村紗が歩き始めた。行先はきっと、私の部屋。
 雲山の手によって運ばれた事は何度もあるけれど全く感覚が違う。ふわふわ浮いてるのが少し怖い。
 耳元でフンフンと鼻歌が聞こえた。きっと機嫌がいいんだろう。私の気持ちも知らないで。
 私は、といえばまた流されてしまった、なんてちょっと後悔している。けれど確かに彼女が言う通り私と村紗が二人きりで過ごす時間は最近少なくなっていて、そんな彼女との二人きりの時間は楽しみなものであって、甘美な匂いを含ませていて。
 冷たい身体に抱き付いているはずなのに、頬の熱は一向に冷める気配がない。悔しくなって「馬鹿」と小さな声で呟いた。無駄に密着しているからその声は村紗の耳へと入ったはず。

 「うん、ごめん」

 でも嬉しいんだ、って声が聞こえて、結局私の負けだった。



 そうこうしている間に私の部屋の前についた。私を抱いたまま戸を開けるのは少し苦労していたようだけど手伝ってはやらなかった。
 部屋の中へ入る。掃除はしてあったかな、とぼんやり思い出していると「降ろすね」とゆっくり体を降ろされた。床についた足に力が入らなくて、そのまま背中を預ける形で村紗に寄りかかる。なんとか自力で立てそうだった。
 後ろから彼女の嬉しそうな笑い声が聞こえる。それが悔しくて振り向きながら睨みつけると、怒んないでよ、と少しだけ困ったような顔になっていた。
 そのまま目があって自然と口が重なった。触れるだけのそれは先ほどの深いものと比べると少しだけ物足りない。

 「村紗」
 「ん、どうしようかな。ずっとこうしていたい気もする」

 ぽすん、と寄りかかられて少しふらつく。
 とりあえず出入り口の前で立ったままと言うのもあれだからと、入口に置いてある灯りの火種と一緒に部屋の中央へと村紗を押しやった。
 戸がしっかりと閉められているのを確認しながら――自分の部屋だというのに――無駄に緊張している気持ちを落ち着かせようと一度大きく深呼吸をしてから振り返る。

 「……なにしてんの」
 「え、お布団敷いてる」

 見ればわかる。見ればわかるんだけど。

 「なに勝手に」
 「まま、いーじゃん。ほらこっちこっち」

 綺麗に敷かれた人の布団の上に平気で座って横へ座れという。掛け布団がつぶれるから直接乗られるのは好きじゃないんだけど、村紗はそんな事お構いなしとポンポン布団を叩いて私を呼でいる。
 わざとらしいため息をついてからそろそろと近づいて腰を降ろす。村紗の腕がすぐに伸びてきて私を閉じ込めた。

 「はぁ、暖かい」
 「ひゃ」

 甘えるように抱き付いてきた村紗の冷たくてすべすべした頬が、首筋に触れて思わず変な声が出た。

 「あ、ごめん。冷たかった?」
 「や、違うの。その、いきなりで吃驚しただけだから」
 「大丈夫? 嫌じゃない?」

 嫌なわけない。夏でも冬でも村紗は村紗なんだから。それに冬はいつも近づいてこないからこうして村紗が甘えてきてくれるのが素直に嬉しい。
 答えずに少しだけ癖っ毛の村紗の髪を撫でてやる。くすぐったいよと笑う村紗がかわいくて、そういえば毛づくろいも最近してなかったな、なんて思い出す。よく懐いてくる犬を撫でるように、ちょっと乱暴に可愛がると不満そうなうめき声が聞こえた。さっきの仕返しらしいものが少しだけできたような気がして頬を緩めていると、もぞもぞと村紗が動いて私の手から逃げていった。私の不満の声も無視して、赤くなった顔を誤魔化すように髪の毛を乱暴に直している。

 「なによ、甘えたいんじゃないの?」
 「そ、そうだけどさー……それより大丈夫なのかなって」
 「? なにが」
 「だから、寒くない?」

 なんだ、そんなこと。別に気になんてなんないのに。

 「大丈夫。村紗だし。それにまぁ……冷たくてもいいの。丁度いい」
 「なにそれ」
 「わかんないけど。それに今更よ」

 ついさっきまでは真剣な表情だった村紗が今は間抜けな、呆れたような表情をしているのがおかしくて思わずクスクスと笑ってしまう。そんな私を見て今度は少し戸惑ったような照れたような複雑な表情で「あんま笑わないでよ」と困ったように笑っていた。ごめん、と謝って髪に触れようとすると、その前に村紗が顔を寄せてきた。お互いの鼻頭が触れるぐらい近づいてそのまま唇を啄ばまれる。

 笑って笑われて、触れて触れられて。たったそれだけの事なのに。

 「んーむ……でもやっぱ寒いのはなぁ……あ、布団の中なら暖かいんじゃない?」
 「ちょっと」

 最初からそのつもりだったくせに。
 そう文句を言おうとする前に、村紗があっという間に布団の中に潜り込んでしまった。一応隠れてるつもりなのかもしれないけれど、私がまだ掛け布団の上に乗っているから完全に潜り込めておらず、体が布団から少しはみ出ていて寒そうに、それ以上に間抜けに見える。
 布団の膨らんでいる所を力一杯叩いてもいいのだけど、結局の所それも最初のじゃれあいにしかならなくて、どちらにせよ私はここで寝るしかないのだからとっとと同じ空間に身を置いてしまった方がいいのかもしれない。
 それに春が近づいてきているといっても夜の、暖をつけてない部屋の中は少しだけ寒くて、布団の暖かさは――今日はいつもよりちょっと冷えているかもしれないけど――なにものにも耐えがたいものなのだから。

 「もう」
 「えっへへ」

 膨れた布団を軽く叩いて潜り込む。ほのかに部屋を照らす灯りを消そうか迷っていると村紗が抱き付いてきた。

 「一輪」
 「ん、村紗?」

 好き、と耳元で囁かれて今度こそ私もそれに応える。肌に吐息がかかってそのくすぐったさに思わず身を捩ろうとすると、村紗の手が私の頬を挟んで身動きが取れなくなった。

 「キスしたい」
 「……ほんと、今更よね」
 「むー……ん。あ、でもキスもされたい」
 「どっちもかわんないじゃない」
 「かわるってば」

 そんなの何度も繰り返しているし、私からキスをするとひどく嬉しそうな顔をしているから、知っている。でもキスを強請る村紗は可愛くて、私自身も少しだけ恥ずかしくて「どうだか」とわからないふりをした。

 「まぁ恥ずかしがり屋の一輪さんですから?」
 「……なによ」
 「ゆっくり、ね」

 口を開く前に唇が塞がれてすぐに離れて、そのまま鼻の頭、眉間、おでこに口づけを落とされる。すぐ近くにあった村紗の顔が離れたと思ったら、フッという息を吐く音と共にすぐそこまできていた夜が一瞬で私たちを包み込みこんで、私と村紗との境界を曖昧にした。
 そんな一瞬の暗闇にもすぐに目は慣れて暗闇の中に村紗の姿を見つける。深い海を思わせる瞳が暗闇の中で爛々と輝いて私を真っ直ぐに見つめていた。無意識に唾を飲み込んで再び触れられるのを待つ。
 名前を呼ばれた。それに導かれるように顔を寄せる。

 「大好き」

 唇を寄せられる前に、私の返事を直接口元へ届けた。驚いた顔と嬉しそうな顔に満足して目を瞑る。
 後は村紗に身を任せてしまおうかな。二人で浅い海を漂って、夜明けを待つのは気持ちがいい事を、知っているから。
※二人は一通り健全にイチャイチャちゅっちゅした後は大人しく手を繋ぎながら寝ています

ここまでの読了感謝です。ムラいちです。ムラいちですね。船長に弱い入道使いはいいものだと思います。二人ともお互いが弱点、そんなムラいちが私は拝みたいです。

さてどこかおかしい所や誤字脱字、或いは恋人関係になったはいいものの戒律やら世間体やらにぶち当たって「この関係は間違ってるんじゃ……」と不安になりお互いの事を大切に思っているが故にお互いを傷つけて泣いて、それを「それこそ間違ってるんじゃない?」と寺のメンバーに指摘されて二人で困難を乗り越えて晴れて幸せになるムラいちなどがあるならば詳しく教えていただけると幸いです。ごめんなさい調子のりました
まろ茶
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
つづき、つづきはどこですか?
2.奇声を発する程度の能力削除
これはヤバい…可愛いすぎて興奮が治まらないです
3.名前が無い程度の能力削除
なんという素敵なムラいち
ごちそうさまでした、おかわりを希望します
4.名前が無い程度の能力削除
ムラいちで村紗が積極的なのっていいですね
素晴らしい