「パチュリー様、魔界に行きたいのですがちょっとゲート開いていただけませんか」
「えっなにそれ軽い……」
十六夜咲夜は、唐突でないことのほうが珍しい。
これは、全世界からランダムに紅魔館のメイド100人をサンプリングしてアンケートを取った結果、98人がそう答えたという結果からも明らかである。なお、残りの2人のうち1人は「いつでも咲夜さんを受け入れる準備ができているから例え熟睡中に目薬をさされても唐突とは思わない」と名言を残している。
ともあれ、訓練された妖精メイドたちほどには訓練されていないパチュリーは、いきなり図書館に現れて先の発言をした咲夜に、呆気に取られずにはいられないのであった。
「魔界に行って、どうするの? あんまりどうでもいい理由だと勘弁してほしいんだけど」
「魚を買ってこようかと」
「漠然と想像していたよりはるかにどうでもいい理由だった!?」
珍しく叫んでしまうほどの衝撃を受ける、パチュリー・ノーレッジ、魔女。
対して、瀟洒なメイドはいつも冷静である。
「そうはおっしゃいますが、パチュリー様。魚を入手するには結局ゲートを利用した魔界からの直輸入がもっとも手軽なのです」
「そうかもしれないけど。そうかもしれないけどね?」
「ではご理解いただけたということで、よろしくお願いいたします」
「してないからね?」
パチュリーは頭を抱える。
会話の開始1分も経たないうちにここまで困惑させてくれる話し相手など、そうそういない。と、パチュリーは思うのだが、もしかすると自分が世間知らずなだけかもしれない、と不安にもなるのだった。
「だいたい、なんで私なの。魔界ならレミィのほうが専門家でしょ。まあ、レミィにそんなお願いしても相手にされないでしょうけど」
「はい。まずお嬢様にお願いしてみたのですが」
「したの!?」
「残念ながら、お嬢様の接続先は内陸部だから魚を買うには使えない、とのことでした」
「えっなんですごく真面目に対応してるの……」
「ちなみにゲートは門と書いてゲートと読むそうです」
「それは聞いてない」
「故郷はお茶が美味しいところだそうです」
「それも聞いてない」
おそらく二人とも真顔のままで交わされたであろう会話を想像して、パチュリーは頭が痛くなる。
「ともかく、魔界へのゲートを開くのだってリスクを伴うのよ。コストもかさむし、そんな理由で開くことなんてできないわ」
「そうですか」
「……まあ、悪魔なら、里帰りは自由にできるからね。私じゃなくて、あの子ならもうちょっと気軽かもしれないけど」
「ありがとうございます。頼んでみます」
「いや今のは許可という意味じゃ――いや……うん、いいわ別に、好きにして」
「というわけでメイド長を魔界に案内してきます。1日ほど空けますが、問題ありませんか?」
小悪魔は言いながら、丁寧な文字で書かれた文書を差し出す。
渡魔願い(注:魔界に行くことである)と題された書類には、その理由と期間、緊急連絡手段などが書かれていた。ちなみに、紅魔館にも図書館にもこのような律儀な書面を作る習慣などない。魔界のビジネスではとにかく書面を残すことが重要でしたから、という小悪魔の流儀だった。
「ほんとに行くんだ……いや、別に図書館はどうせ暇だし問題はないんだけど、むしろ、咲夜が1日いないほうが各地に影響大きいんじゃないかしら」
「料理は作りおきしておきました。掃除くらいなら妖精メイドでも場所によってはたまに綺麗になることもあります」
「……うん。1日くらい掃除しなくても、別にたいした影響はないでしょ。いいんじゃない」
いったい妖精メイドとはなんのために存在しているのかよくわからない、とパチュリーは思っているのだが、概ね同意してくれる相手は小悪魔くらいのものである。レミリア曰く、賑やかでいいじゃない、とのことだった。託児所かここは。
「ところでパチュリー様、お土産はなにがいいでしょうか」
「だからお土産とかそんな軽い……いや……うん、魚を買いに行くなんて言ってる時点で今更よね……。まあ、そうね。期待はしていないけど、ここでは見ないような魔導書でもあったら買ってきてちょうだい」
パチュリーの言葉には、小悪魔がすぐさま反応した。
すまなそうに表情を沈める。
「申し訳ございませんパチュリー様、書物の外界への輸出は1つ1つ申請して許可を得ないといけないと、商取引法第二十七条の二第三項および魔界西部の輸出入に関する条例で定められていまして、申請のための手続きを取るとなると許可が下りるまで数日」
「あ、うんもういいわなんかいろんな意味でめんどくさくなってきたから。なにもいらないからいってらっしゃい」
「ありがとうございます。では早速」
「いや咲夜あんたはレミィの許可を取りなさいって」
「そうですね。では出発は5分後ということで」
「5分以内に許可が下りること前提で話を決めていらっしゃる」
もちろんきっちり5分後、2人は魔界に向けて出発したのだった。
図書館の中に、突如門が現れた。
禍々しい黒いオーラをまとった、いかにも悪魔でも現れそうな門だ。
それを見て、ああもう1日経ったのか、とパチュリーは思った。好きなときに寝て好きなときに起きて本を読むだけの生活では、時間の感覚などほとんど残っているはずもなかった。
「よ、と。ただいまです、パチュリー様」
小悪魔が扉を開いて現れた。
可愛らしい笑顔と軽い声があまりにも門の外見とミスマッチである。
「ただいま戻りました」
続いて無表情の咲夜が現れる。こちらのほうがよほど悪魔にふさわしいように見える。迫力はないが。
二人ともなかなかの大荷物である。
「……お疲れ様」
この光景に対してなにを言おうかかなり迷ったパチュリーとは、とりあえず、無難なことを言っておいた。
とりあえず冷やしてきます、と咲夜はすぐに大荷物を抱えて去っていった。
が、すぐに戻ってきた。小さな袋だけを持って。
時間停止の能力を無駄に活用しまくることに定評のあるメイド長である。
「はい、パチュリー様。お土産です」
「あら。いらないって言ったのに」
咲夜は持っていた袋をパチュリーに手渡す。
いらないとは言っていたものの、いざ魔界のなにかとなると少しはわくわくするものだ。パチュリーはさっそく、袋から中身を取り出す。それなりに重量感のある、フィルム包装に包まれた、なにか。
「魔界名物、黒はんぺんでございます」
「魔界ってなんなの。なんなの魔界って」
「本当は最近話題の魔界焼きそばでも持って帰れたらよかったのですが。残念ながら私もお目にかかれませんでした」
「焼きそばで有名なのは東部のほうですからねー。私たち悪魔が住むのは西部ですし、西部以外にゲートを通すのは地方自治法第五条で固く禁じられていますから」
「中央のほうはもっと都会なんでしょ? 見てみたかったわ。まあ、悪魔たちが揃ってお茶畑で働いてるのを見るのも面白かったけど」
「不景気ですからねー。最近、特に上位の悪魔ほど召喚される機会がなくなってきたので、実は私みたいな下っ端のほうが仕事には恵まれてるほどなんですよ。ありがたいことですけど」
「ちょっと私の前でディープなローカル魔界トークやめてくれる? 色々と価値観が崩れていく音が聞こえてくるんだけど」
耳を塞ぎたくなるような会話とはこのことだ。
しかし咲夜は、いえ、やはり魔界は恐ろしいところですよ、と真顔で答えた。
「ええ。魔界は恐ろしいところでした。ここでは最大9割引まで勝ち取った私の値切りテクニックを駆使したにも関わらず、一銭たりとも引いていただけませんでした」
「うん。もう出てけ」
「フィッシュ・アンド・チップスでございます」
蓋を開けてみると――これは、レミリアとパチュリーの前に出された皿に実際にかけられていた蓋を物理的に開けたという意味も含むダブルミーニングである――、咲夜の料理はこれであった。
「え?」
パチュリーは反射的に声を漏らした。
「え?」
二回。
「魔界にまで行って、買ってきた食材で、作ったものが、これ?」
「はい」
「いやもうちょっと……もうちょっと、ね? ほら、ね? ブイヤベースとか、色々あるじゃない?」
「すみません、私は地中海より北のことはよく存じなくて」
「あんたどこの人間だ。というか今目の前にあるコレは地中海よりはるか北の庶民料理のような気がするんだけど」
「過ぎたるは及ばざるが如し、という言葉がありまして」
「ちょっともうなにいってるかわからない」
会話とはパチュリーのほうが先に諦めるものである。紅魔館ではそう定義されている。
はあ、とため息をつく。
「まったく、わざわざ遠出までして買ってきて、まず作るのがこれだなんて、レミィもほら」
「懐かしいね――この味」
「呆れて……えっ」
「フィッシュ・アンド・チップスにはヴィネガー。わかってるじゃない、咲夜。揚げ色も上品になりすぎない程度に。よくできているわ」
「はい。私も懐かしく感じます」
「いやあんたほんとにお嬢様なの? ねえ?」
「――パチェ。そんなつまらないこだわりで、美味しいものを楽しめなくなるなんて、不幸じゃない? なんでも楽しんだほうが勝ちなのよ、人生」
「すごく正論だし。吸血鬼に人生を説かれるとは思わなかったわ……」
「あっ」
「あっ?」
「これは、お疲れのパチュリー様にもしっかり元気をつけていただこうという思いもあってのメニュー選びでございます」
「そんないかにも今思いつきました的なことを言われても」
「今思いつきました」
「改めて告白されても」
もう一度ため息をついて、まあせっかくだし、とパチュリーも一口、口に含む。
「あふふっ」
熱かった。
ふー、と息を吹きかけて冷まして、もう一度。
さくさくの衣の下から白身魚の柔らかい身が飛び出てきた。
「……おいしい」
「うむ、うむ」
パチュリーが呟くと、レミリアも少し嬉しそうに同意した。
「このお茶も魔界のお茶だね。懐かしい味がするよ」
「……レミィってそもそも魔界の生まれだっけ?」
「違うよ。ま、でも、嗜みとしてね。一時期留学していたからね。いちいちルールが細かくて面倒なところだったけど、のんびりしてていいところだったよ」
「魔界という言葉からイメージできる単語が1つもでてこなかったんだけどどうすれば」
「なあ咲夜、今度いつかみんなで、パチェも連れて魔界に行ってみようかね。観光案内なら、パチェの部下ができるだろうし」
「いいですね。川下りとか、お茶摘みとか、そういうのも楽しそうです」
「懐かしいねえ」
「……魔界……魔界とはいったい……」
いろいろな言葉を処理しきれず置いてけぼりになりつつ、じゃがいもの揚げ物にも手を出す。これもまた、おいしかった。
楽しくて、おいしければ、なんでもいいのさ。
そんなレミリアの言葉が、心地よく感じられた。くらいに、いろいろとなげやりになるパチュリー・ノーレッジ、魔女であった。
「えっなにそれ軽い……」
十六夜咲夜は、唐突でないことのほうが珍しい。
これは、全世界からランダムに紅魔館のメイド100人をサンプリングしてアンケートを取った結果、98人がそう答えたという結果からも明らかである。なお、残りの2人のうち1人は「いつでも咲夜さんを受け入れる準備ができているから例え熟睡中に目薬をさされても唐突とは思わない」と名言を残している。
ともあれ、訓練された妖精メイドたちほどには訓練されていないパチュリーは、いきなり図書館に現れて先の発言をした咲夜に、呆気に取られずにはいられないのであった。
「魔界に行って、どうするの? あんまりどうでもいい理由だと勘弁してほしいんだけど」
「魚を買ってこようかと」
「漠然と想像していたよりはるかにどうでもいい理由だった!?」
珍しく叫んでしまうほどの衝撃を受ける、パチュリー・ノーレッジ、魔女。
対して、瀟洒なメイドはいつも冷静である。
「そうはおっしゃいますが、パチュリー様。魚を入手するには結局ゲートを利用した魔界からの直輸入がもっとも手軽なのです」
「そうかもしれないけど。そうかもしれないけどね?」
「ではご理解いただけたということで、よろしくお願いいたします」
「してないからね?」
パチュリーは頭を抱える。
会話の開始1分も経たないうちにここまで困惑させてくれる話し相手など、そうそういない。と、パチュリーは思うのだが、もしかすると自分が世間知らずなだけかもしれない、と不安にもなるのだった。
「だいたい、なんで私なの。魔界ならレミィのほうが専門家でしょ。まあ、レミィにそんなお願いしても相手にされないでしょうけど」
「はい。まずお嬢様にお願いしてみたのですが」
「したの!?」
「残念ながら、お嬢様の接続先は内陸部だから魚を買うには使えない、とのことでした」
「えっなんですごく真面目に対応してるの……」
「ちなみにゲートは門と書いてゲートと読むそうです」
「それは聞いてない」
「故郷はお茶が美味しいところだそうです」
「それも聞いてない」
おそらく二人とも真顔のままで交わされたであろう会話を想像して、パチュリーは頭が痛くなる。
「ともかく、魔界へのゲートを開くのだってリスクを伴うのよ。コストもかさむし、そんな理由で開くことなんてできないわ」
「そうですか」
「……まあ、悪魔なら、里帰りは自由にできるからね。私じゃなくて、あの子ならもうちょっと気軽かもしれないけど」
「ありがとうございます。頼んでみます」
「いや今のは許可という意味じゃ――いや……うん、いいわ別に、好きにして」
「というわけでメイド長を魔界に案内してきます。1日ほど空けますが、問題ありませんか?」
小悪魔は言いながら、丁寧な文字で書かれた文書を差し出す。
渡魔願い(注:魔界に行くことである)と題された書類には、その理由と期間、緊急連絡手段などが書かれていた。ちなみに、紅魔館にも図書館にもこのような律儀な書面を作る習慣などない。魔界のビジネスではとにかく書面を残すことが重要でしたから、という小悪魔の流儀だった。
「ほんとに行くんだ……いや、別に図書館はどうせ暇だし問題はないんだけど、むしろ、咲夜が1日いないほうが各地に影響大きいんじゃないかしら」
「料理は作りおきしておきました。掃除くらいなら妖精メイドでも場所によってはたまに綺麗になることもあります」
「……うん。1日くらい掃除しなくても、別にたいした影響はないでしょ。いいんじゃない」
いったい妖精メイドとはなんのために存在しているのかよくわからない、とパチュリーは思っているのだが、概ね同意してくれる相手は小悪魔くらいのものである。レミリア曰く、賑やかでいいじゃない、とのことだった。託児所かここは。
「ところでパチュリー様、お土産はなにがいいでしょうか」
「だからお土産とかそんな軽い……いや……うん、魚を買いに行くなんて言ってる時点で今更よね……。まあ、そうね。期待はしていないけど、ここでは見ないような魔導書でもあったら買ってきてちょうだい」
パチュリーの言葉には、小悪魔がすぐさま反応した。
すまなそうに表情を沈める。
「申し訳ございませんパチュリー様、書物の外界への輸出は1つ1つ申請して許可を得ないといけないと、商取引法第二十七条の二第三項および魔界西部の輸出入に関する条例で定められていまして、申請のための手続きを取るとなると許可が下りるまで数日」
「あ、うんもういいわなんかいろんな意味でめんどくさくなってきたから。なにもいらないからいってらっしゃい」
「ありがとうございます。では早速」
「いや咲夜あんたはレミィの許可を取りなさいって」
「そうですね。では出発は5分後ということで」
「5分以内に許可が下りること前提で話を決めていらっしゃる」
もちろんきっちり5分後、2人は魔界に向けて出発したのだった。
図書館の中に、突如門が現れた。
禍々しい黒いオーラをまとった、いかにも悪魔でも現れそうな門だ。
それを見て、ああもう1日経ったのか、とパチュリーは思った。好きなときに寝て好きなときに起きて本を読むだけの生活では、時間の感覚などほとんど残っているはずもなかった。
「よ、と。ただいまです、パチュリー様」
小悪魔が扉を開いて現れた。
可愛らしい笑顔と軽い声があまりにも門の外見とミスマッチである。
「ただいま戻りました」
続いて無表情の咲夜が現れる。こちらのほうがよほど悪魔にふさわしいように見える。迫力はないが。
二人ともなかなかの大荷物である。
「……お疲れ様」
この光景に対してなにを言おうかかなり迷ったパチュリーとは、とりあえず、無難なことを言っておいた。
とりあえず冷やしてきます、と咲夜はすぐに大荷物を抱えて去っていった。
が、すぐに戻ってきた。小さな袋だけを持って。
時間停止の能力を無駄に活用しまくることに定評のあるメイド長である。
「はい、パチュリー様。お土産です」
「あら。いらないって言ったのに」
咲夜は持っていた袋をパチュリーに手渡す。
いらないとは言っていたものの、いざ魔界のなにかとなると少しはわくわくするものだ。パチュリーはさっそく、袋から中身を取り出す。それなりに重量感のある、フィルム包装に包まれた、なにか。
「魔界名物、黒はんぺんでございます」
「魔界ってなんなの。なんなの魔界って」
「本当は最近話題の魔界焼きそばでも持って帰れたらよかったのですが。残念ながら私もお目にかかれませんでした」
「焼きそばで有名なのは東部のほうですからねー。私たち悪魔が住むのは西部ですし、西部以外にゲートを通すのは地方自治法第五条で固く禁じられていますから」
「中央のほうはもっと都会なんでしょ? 見てみたかったわ。まあ、悪魔たちが揃ってお茶畑で働いてるのを見るのも面白かったけど」
「不景気ですからねー。最近、特に上位の悪魔ほど召喚される機会がなくなってきたので、実は私みたいな下っ端のほうが仕事には恵まれてるほどなんですよ。ありがたいことですけど」
「ちょっと私の前でディープなローカル魔界トークやめてくれる? 色々と価値観が崩れていく音が聞こえてくるんだけど」
耳を塞ぎたくなるような会話とはこのことだ。
しかし咲夜は、いえ、やはり魔界は恐ろしいところですよ、と真顔で答えた。
「ええ。魔界は恐ろしいところでした。ここでは最大9割引まで勝ち取った私の値切りテクニックを駆使したにも関わらず、一銭たりとも引いていただけませんでした」
「うん。もう出てけ」
「フィッシュ・アンド・チップスでございます」
蓋を開けてみると――これは、レミリアとパチュリーの前に出された皿に実際にかけられていた蓋を物理的に開けたという意味も含むダブルミーニングである――、咲夜の料理はこれであった。
「え?」
パチュリーは反射的に声を漏らした。
「え?」
二回。
「魔界にまで行って、買ってきた食材で、作ったものが、これ?」
「はい」
「いやもうちょっと……もうちょっと、ね? ほら、ね? ブイヤベースとか、色々あるじゃない?」
「すみません、私は地中海より北のことはよく存じなくて」
「あんたどこの人間だ。というか今目の前にあるコレは地中海よりはるか北の庶民料理のような気がするんだけど」
「過ぎたるは及ばざるが如し、という言葉がありまして」
「ちょっともうなにいってるかわからない」
会話とはパチュリーのほうが先に諦めるものである。紅魔館ではそう定義されている。
はあ、とため息をつく。
「まったく、わざわざ遠出までして買ってきて、まず作るのがこれだなんて、レミィもほら」
「懐かしいね――この味」
「呆れて……えっ」
「フィッシュ・アンド・チップスにはヴィネガー。わかってるじゃない、咲夜。揚げ色も上品になりすぎない程度に。よくできているわ」
「はい。私も懐かしく感じます」
「いやあんたほんとにお嬢様なの? ねえ?」
「――パチェ。そんなつまらないこだわりで、美味しいものを楽しめなくなるなんて、不幸じゃない? なんでも楽しんだほうが勝ちなのよ、人生」
「すごく正論だし。吸血鬼に人生を説かれるとは思わなかったわ……」
「あっ」
「あっ?」
「これは、お疲れのパチュリー様にもしっかり元気をつけていただこうという思いもあってのメニュー選びでございます」
「そんないかにも今思いつきました的なことを言われても」
「今思いつきました」
「改めて告白されても」
もう一度ため息をついて、まあせっかくだし、とパチュリーも一口、口に含む。
「あふふっ」
熱かった。
ふー、と息を吹きかけて冷まして、もう一度。
さくさくの衣の下から白身魚の柔らかい身が飛び出てきた。
「……おいしい」
「うむ、うむ」
パチュリーが呟くと、レミリアも少し嬉しそうに同意した。
「このお茶も魔界のお茶だね。懐かしい味がするよ」
「……レミィってそもそも魔界の生まれだっけ?」
「違うよ。ま、でも、嗜みとしてね。一時期留学していたからね。いちいちルールが細かくて面倒なところだったけど、のんびりしてていいところだったよ」
「魔界という言葉からイメージできる単語が1つもでてこなかったんだけどどうすれば」
「なあ咲夜、今度いつかみんなで、パチェも連れて魔界に行ってみようかね。観光案内なら、パチェの部下ができるだろうし」
「いいですね。川下りとか、お茶摘みとか、そういうのも楽しそうです」
「懐かしいねえ」
「……魔界……魔界とはいったい……」
いろいろな言葉を処理しきれず置いてけぼりになりつつ、じゃがいもの揚げ物にも手を出す。これもまた、おいしかった。
楽しくて、おいしければ、なんでもいいのさ。
そんなレミリアの言葉が、心地よく感じられた。くらいに、いろいろとなげやりになるパチュリー・ノーレッジ、魔女であった。
細か過ぎるでしょ、魔界情勢wwwww
いやとっても面白かったけど
えっ
自称都会派にしては微妙なところですなー
前の話の時もそうだったしw
黒はんぺん辺りでもうだめ
あと黒はんぺんフライも美味しいよ
三丁目魔界が静岡なのはいつもの事として…
魔理沙が魔界煎餅とか買ってた魔界はきっと怖くない。観光旅行会社とかあるし。
でも障気に溢れるのが基本っぽいから人体には悪そうだ。
魔界商人すげぇ。
…まさかアリスや咲夜さんのテクが魔界では一般人レベルとか…?
きっとこの商人が特別なんですよね。
そうじゃなかったら魔界恐ろしすぎるんですが
お茶を作る悪魔でどこかの平和菜食主義者の魔竜が浮かんだのは秘密。
次はペガサスが群を成して飛んで行くと噂の岐阜と、北部・南部・秩父で分かれてる(らしい)都市国家埼玉をお願いします。
フラグだと思ったのに……!小悪魔のフラグクラッシャー!!
ローカル魔界トークw
面白かったです
東部・・・?
アリスさんか小悪魔さん、私も魔界の蜜柑を食べたいです
全部ネタがわかるわ
でも川下りは・・・うん、まあアレだよな
「焼きそばがおいしいのよ」
「えっ」
「あと桜えび」
「えっ」
こうですk
そうか、隣のK県から自転車で訪れたが、まさに魔界辺境だったn(撲
ちなみに、K県西部も政令市のY市やK市から見れば魔疆だそうn(滅
平和だなぁ。
魔界は不思議やな