ある夏の夜の幻想郷・・・
紅魔館内にあるヴワル魔法図書館の主・パチュリー=ノーレッジは頭を抱えていた。
「これで通算398冊目か・・・・はぁ。」
既に常習化しつつある、白黒魔砲使い・霧雨魔理沙による図書館の本の無断借用もとい私有化が原因で、持病の喘息に加え頭痛にも悩まされるようになったからだ。
さらにいうと、ストレスによる胃炎にも悩まされてたりする事も付け加えておく。
「このままじゃ駄目ね・・・対策を練っておかないと。」
そう考えたパチュリーは、読んでいた本をバタンと閉じてからまだ何も書き込まれていないスペルカードと、一冊のノートを取り出して作業を始めた。
その表紙には「使える外の世界のアイデア」と書いてあった。
「今度はコピーされないようにしないとね。」
パチュリーは複雑な魔法を詠唱し、ノートに書きためたアイデアを次々に形にしていった。
「初見かつ変則的なスペルを連発すれば流石の魔理沙も観念するでしょう。」
そして完成したスペカを図書館の中に仕掛けて回るパチュリー、その作業を一通り終えると真夜中の図書室に、魔女の高笑いがこだました。
「けほっ、けほっ。」
高笑いの最後の方は喘息交じりであったけれども・・・・・
そんなこんなで数日後の昼下がり。
「パチュリー様ぁ?!大変です!」
図書館の司書を務める小悪魔が、血相を変えて主たるパチュリーの元へ向かってきた。
「あら、慌ててどうしたの?」
慌てる小悪魔とは対照的に落ち着いた様子のパチュリー、小悪魔の頭を撫でながら話すように促す。
「魔理沙が館内に侵入したそうです!目的は恐らく・・・」
貴重な魔術書の借用・・・もとい強奪だろう。それは言わなくても理解できる。だが今日は十分な備えをしている事は知るまい。そう考えたパチュリーは
「良いところに来たわね。」
「へ?」
困惑する小悪魔の顔を見ながら自信たっぷりにこう言った。
「今日の図書館の防備は、一味違うのよ。」
「そうなんですか?」
「まあ見てて。いろいろ作ってみたから。」
パチュリーは水晶球を取り出して、魔力を注ぎ、図書館の扉の前にいる魔理沙の姿を映し出す。
「ここまでは楽勝だぜ。」
噂に上がった、白黒魔砲使い・霧雨魔理沙は上機嫌でポケットに入れておいたスペルカードと、懐にミニ八卦炉があることを一応確認してから、ゆっくりドアを開ける。
彼女の視界には、見慣れた図書館の風景と明らかに不自然な巨大な手が映っていた。
「ジョークにしては、ちょっと度が過ぎてないか・・・これ?」
脂汗が背中をタラーリ。魔理沙の女のカンが危険を告げてはいるが、このあまりに異常な光景を前にしては、突発的な判断はできなかった。
「パチュリー様、これは?」
「バ○チョッ符・巨人よ。これで下がってくれたらいいけどね・・・」
巨大な手が物凄いスピードで魔理沙目掛けて振り下ろされる・・・そしてその数秒後。
ZU-N
地響きのような音と、
「うぉ、痛ってぇぇええぇぇぇえええ!!」
魔理沙の悲痛な叫びと
あぽぉおぉおぉおおぉおおぉおぉ・・・
という謎の声を、小悪魔のデビルイヤーがきっちり拾い上げていた。
「うう・・・私が何をしたって言うんだ?」
叩き落とされて床に大の字で突っ伏していた魔理沙は、悪態を一つついてからゆっくりと起き上がった。
「ぁー記憶が飛ぶかと思ったぜ。」
取り落とした箒を拾い上げ、溜め息も一つついた。
ゴァフ!
「ん?」
ギャァアアアアアア!ゴオオオオオオオ!
そして爆音とも取れる轟音が魔理沙の耳をついた。
ギャリギャリギャリ!
突き抜けるようなスキール音、暫くしてから漂う焼けたゴムの悪臭。
「火事か?」
注意深く辺りを見回す魔理沙、しかし、何も変わった所はなかった。
○原豆符「伝説の豆腐屋ドリフト」
その代わり高速で四輪ドリフトをしながら突っ込んでくる魔理沙色のハチロクが彼女の視界に入ってきた。
「なんじゃこりゃぁ、冗談きついぜぇぇぇぇぇぇ!!」
高速で接近してきているのでマスタースパークを構えている間に跳ねられてしまう!そう考えた魔理沙は慌てて飛行体制に入る。
「飛べ、飛んでくれ・・・・私の箒ぃ!!! 」
ズキっとくる頭の痛みに歯を食いしばりながら、必死に魔力をコントロールする。
「いっけぇぇええぇえ!」
2つの白と黒が交差する瞬間、コンマ何秒の差で魔理沙は飛び上がった!
「Dの名は伊達じゃないって事だな・・・だが、幻想郷最速は譲れないぜ。」
ちょうどその頃、図書館の最深部では。
「流石に地上攻撃オンリーのスペカじゃ駄目みたいね。」
パチュリーがちょっと残念そうに、水晶球を眺めていた。
「なら、空からですか?」
小悪魔が尋ねる。
「ええ、空からがいいわね。次のスペカは、まさにその典型例よ。」
「全く、誰がこんな悪趣味な仕掛けを作ったんだ?」
本命・パチュリー 対抗・レミリアか咲夜 穴・小悪魔 大穴・フランか中国(じゃねえ・紅美鈴)という答えが二つ返事で脳内に返ってくる。
「多分あんなおっかないのを次々考えられるのは、どう考えてもパチュリーだな。それにしてもあんな見たことも無いデカイ鳥を出しやがって!」
そう呟いて、魔理沙は自らの後ろから激しく弾幕を張ってくる銀色の飛行物体に視線を送った。
ISA符「リボン付き1」
リボンのマークが施された飛行物体が放った2発のマジックミサイルが魔理沙目掛けて飛来!
「遅いぜ!」
魔理沙は見透かしたかのようにブレイク、バレルロールしながら下降、急旋回しミサイルを回避!
「これでも食らえ、魔符・スターダストレヴァリエ!」
美しい色とりどりの星型弾が大量に図書館内にぶちまけられるが・・・リボン付きは優雅で驚異的な回避・・・あたかも木の葉のような飛行を繰り返すので、当たる気配が全く無い。
「霊夢みたいな奴だな。よーし、そうならこちらにも考えがあるぜ!」
魔理沙は一回加速して、リボン付きを引き離してからヘッドオン。命を賭けたチキンレースの始まりだ!
魔理沙はミニ八卦炉を取り出して、正面の飛行物体目掛けて構える。
リボン付きは、中央のウエポン・ベイを開けてマジックナパームの発射体制に入っていた。
《レーダーロック!》
「チャンスだぜ!恋符・マスタースパークっ!!」
僅かに早く魔理沙がスペルカードを宣言し、発動。発射体制に入っていたリボン付きの飛行物体は、回避が間に合わずに激しい光の奔流に飲み込まれて・・・消えた。
「レーザーはミサイルよか射程が長いんだぜ。」
と言ってから更に飛行を続ける魔理沙であった。
「リボン付きは、レーザーに撃たれたことが無い事を失念してたわ・・・・・」
「そんな問題じゃないと思います・・・魔理沙さんが強すぎるんですよ!」
「そういう点で考えたら猟犬1か猛火にしとけば良かったかな?」
パチュリーが悔しそうに水晶球を眺めていると、小悪魔が
「まだ他にもあるんですか?」
と尋ねてきた。
「大丈夫よ、まだまだキッツいのがバシバシ残っているから。」
チェンジアッ符「虎の左腕」
「上から下に落ちる弾幕らしいが、大した事ないぜ。」
しっかりグレイズまで決めて、回避していった。
グ符「ザクとは違うらしい」
「当たらなければ、どうと言うことは無い!」
彗星・ブレイジングスターで特攻かましてWIN。
岐符「オヤシ○様の祟り」
「あーオヤシロ様、オヤシロ様うるさいなぁ。気味悪いぜ。」
気色悪くて少しだけ肝を潰した以外には効果なし。
サッ符「ザ・ビースト」
「HAHAHAHAHAHAHAHA」
「ああそうかい。じゃ手加減は無しだぜ!」
結果 1R KO勝ち ○魔理沙―獣● 決まり手=星符・ドラゴンメテオ
ユニ○符「恵まれない子供に愛の手を」
「そりゃ大変だ、コイン一個だぜ。」
とりあえず寄付しておいた。
「しかし今日は、変な歓迎の仕方してくれるよな。いつもの歓迎の方がよっぽどセンス良いと思うんだがなー」
パチュリーがいると思われる図書館の最深部まであと少しの所、魔理沙が思案を巡らせていた。
「私が悪いことでもしたのか?」
首を捻りながら、この図書館でやってきた事を回想する。
「何にも悪いことはしてないな、うん。」
その根拠として挙げられる記憶を掘り起こした魔理沙、その記憶によれば初めて上がりこんだ時は、パチュリーを魔砲でぶっ飛ばした後、本をさっくり貰っていった、二回目は一回目以上にさっくり貰っていった上にお菓子までご馳走になった。
その後もしばしば上がりこんではお菓子やお茶をご馳走になった上、本をさっくり貰っていった程度の記憶が蘇る。
「貰うって言っても、死ぬまで借りてるだけだしな。」
「こらぁ!!!」
パチュリーの怒号がどこからともなく聞こえてきた。
「パチュリーか?なんだよ、この攻撃は!!」
とりあえず魔理沙も答える。
「貴方が本を強奪するから、防犯対策として作成したのよ。」
パチュリーの返答、どうやら声は届いているようだ。
「だから、強奪なんかしてないだろ?」
「返してくれないじゃないの。」
「死んだら返却するぜ。」
「そんなに待てないわ。とりあえず今貸し出し中の398冊、観念して返しなさい!」
「1341回同じセリフを聞いたぜ。だから返すって、私が死んだらな」
返す予定があるので、悪気はそんなに無い魔理沙。流石にパチュリーの比較的長めの堪忍袋の尾も切れそうになる!!
「もう容赦しないわよ!私のとっておきのスペル、見せてあげるわ!」
「なんでキレてんだよ・・・返すっていってるのになぁ。」
返事はなかった、魔理沙は未使用のスペルカードを何枚か用意して身構える。
軽快な音楽とともに真下に出現した火山が爆発、大量の岩が魔理沙目掛けて飛んできた。
「こんなのがとっておきなのか?」
飛来する岩をレーザーやマジックミサイルで破壊する魔理沙、ひとしきり破壊し終わった所で・・・
「パチュリー様のためです、覚悟していただきます!!」
見慣れた顔の小悪魔が、魔理沙の前に立ちはだかる。しかし、いつもと違う点が2点だけ。
中ボス「ビッグ・こぁ」
「でかっ!」
魔理沙の指摘通り、通常の3倍ほど巨大化していたと言う点、そして胸元に大きな青色のブローチが装備されていた事だ。
「いきますよ!」
小悪魔の凛とした声と共にと特大弾の乱射が始まった。
サイズに比例して破壊力は上がっているだろう、被弾したらただでは済みそうにもない。そんな事を考えながら回避する魔理沙。
「くっ?当たり判定も大きくなってるみたいだな。」
目の前を巨大クナイ弾がかすめていった。続いて特大弾が迫りくる。しかし、魔理沙はある単純な事に気が付いていた。
「大玉の後のクナイ弾、その繰り返しはいつもと変わらないな、と、言うことはいつも通りで良さそうだぜ。」
弾のサイズと攻撃力は大きくなったが、パターンが全く変わっていなかったのである。
「こいつでどうだぁ!」
そしてお返し代わりのマジックナパーム乱射!そして着弾、煙がもうもうと立ち込める。
「今日の私は一味違いますよ!」
煙の向こう側から再び特大弾の応酬。いつもならこのくらいで下がってくれるだろ、と考えていた魔理沙は軽く舌打ちをしてからスペルカードを取り出して宣言。
「恋符・ノンディレクショナルレーザー!」
光の帯が四方八方に飛び、周辺の特大弾を一掃、薄暗い図書館がパッパと何度か明るくなる。
「きゃっ!」
レーザーが小悪魔の胸元に付いたブローチに命中、僅かに変色したのを魔理沙は見逃さなかった。
「そうか、あれだな。魔符・ミルキーウェイ!」
大量の星型弾が小悪魔の胸元のブローチ目掛けて放たれる。
「そんな、もう見抜かれた?!」
気合だけは十分だったが、それだけでは勝てないのが弾幕バトルの厳しいところである。弾幕を相殺できるスペルカードを持たない小悪魔にはどうすることも出来なかった。
魔理沙の一撃で真っ赤になったブローチが砕け散ると同時に、小悪魔は元の体格に戻った。
「なるほど、予想どおりあのブローチが巨大化させてたのか。」
「パチュリー様、申し訳ありませーーーーーん。」
普通に戦っては勝ち目が無いと悟ったのか、本当に申し訳無さそうに叫びながら、小悪魔は尻尾を巻いて逃げていった。
「・・・壊してしまったのが悔やまれるぜ。」
魔理沙は再びパチュリーの元へ向かおうとするが・・・ここで寒気を感じ始めていた。
シャラッ符「サイレス+マホトーン」
「なんかゾクゾクするな・・・気持ちが悪いぜって、きゃあああああ!」
高度が急激に下がる。魔理沙は飛行を魔力に依存しているため、魔法を封じられてしまえば・・・飛行に必要なエネルギーを確保できずに落ちてしまう。
「これもパチュリーの仕業なのかぁーっ?」
本日二度目の墜落、着地の激しい衝撃の影響で魔理沙は気を失った。
「魔法が使えないってどんな気分?」
次に気が付くとはっきりしない視界の先に、パチュリーが居た。
「最悪だぜ・・・・・しかしいつの間にあんなスペルを?」
「図書館に入ったときからずっとよ、ただ効きにくい場合があるから何回も発動しないといけなかった、だから今までの変則的なスペカと、小悪魔に頑張ってもらったのよ。」
「そうだったのか・・・本命は魔法を封じることだったんだな?」
そう言いながら身を起こす魔理沙。そしてパチュリーに訊いた。
「本を持ってかれるのが嫌だからこんな事を?」
「そうよ、ちゃんと返してくれるならこんな事はしなくて良かったのに。」
「悪いが今日は本持ってきてないぜ。」
「なら返すって約束して。そしたら今度からこんな歓迎はしないから。」
まあ、本さえ返してくれたら魔理沙はパチュリーにとって貴重な友人である。意地悪の結果来なくなるのは正直寂しいのである。そのような理性がまだ働いていたからこそ、最後の一線を越えさせずに済んでいたのだが・・・・
「ああ、覚えてたらちゃんと返すから。」
魔理沙が何気なく言ったこの一言が、完全にパチュリーをキレさせた。
パチュリー LIMIT BREAK!
「まーりーさぁああああああああああ!!」
「おぉ!?」
「もう我慢の限界よ!!言っても分からないなら、体で分からせてあげるわ!!!!!」
「お、おい・・・冗談にきまってるだろ!ちゃんと返すって!」
「問答無用っ!!!!貴女の所為で溜まりに溜まったストレスの所為で胃炎と頭痛になったこの恨み、ここで晴らさでおくべきか、いいえ晴らすべきよ!!」
スペルカードを懐から取り出し、発動させるパチュリー。魔法を封じられている魔理沙は、全力で逃げようとするが・・・・・
「あれ!?体が動かないぞ?」
「クレラッ符・ぐるぐる巻きよ。」
「どういう事なんだ・・・ってあーっ!?」
気が付くと文字通りクレラップで固くぐるぐる巻きにされていた。これでは身動きが取れない。
「もう逃げられないわ・・・」
「分かった、ちゃんと返すから許してくれよぉ!」
魔理沙が必死に懇願するが、もうパチュリーには聞こえていない。
「いいえ、ちゃーんと制裁は加えとかないとね!」
ポケットからゆっくりとスペルカードを取り出すパチュリー。
「これが本日のトリよ!!!」
と高らかに叫んでから、本日のトリとなるスペルカードを発動!
ドリ符「お約束のパターン!」
魔理沙は天井から落ちてくる大量のタライを頭で受けたあと、数回の水攻めを喰らった。
「返すっていったのにぃーーーーーうわあああああん・・・・・・・」
ひとしきりタライ+水責めが終わると、魔理沙は女の子らしく大声で泣きながらほうほうの体のまま図書館を出て行った。
そして翌日、ヴワル魔法図書館に借りた本の一部と菓子折りを持った魔理沙の姿があった。
「その・・・・・ちゃんと返すから、許して欲しいんだ・・・」
昨日の事がよっぽど堪えたらしく、ちょっとしおらしい。菓子折りと本を渡すと、パチュリーも思わず笑顔になる。
「ええ。ちゃんと返してくれたら、また借りてってもいいわよ。」
昨日とはうってかわって穏やかな態度を取りながら魔理沙に語りかける。
「延滞したら・・・またタライ+水責めなのか?」
「それは貴女しだいよ。今までみたいにしていたら、またやるかもね?」
少し微笑むパチュリー、言いようの無いみょんな悪寒を感じた魔理沙はすかさず。
「それだけは勘弁してほしいぜ!!」
と全力で言った。
さらに数日後。
「これで全部ですね。」
「本当、帰ってきてくれてよかった。」
本棚にきちっと揃った本を見ながら、小悪魔はパチュリーにこう言った。
「頭痛や胃炎、大丈夫ですか?」
「ええ、頭痛は無くなったし、食欲も戻ったわ。」
「良かったです。これでまた美味しい物も食べられますね。」
「魔理沙が持ってきてくれた菓子折りも食べなきゃ。まだ残ってるし。」
元気そうな主を見て小悪魔も一安心。
しかしながら、当分の間魔理沙は、タライと落ちてくる水に対して強烈な拒否反応を示すようになるのだが、これはまた別のお話。
おしまい
ネタの方も、AC0でメビウス1落とすのに
レーザーの世話になった人間としてはツボでしたwww
しかしパチュリーのリミットブレイクが余りにもお約束過ぎてお腹が痛いのなんの…w
グ、グラ○ィウス?
スク○ア・エ○ックス・・・・恐ろしい子
蛇足ながら、クレラップとサランラップは別物ですよ?
誤字ですけど、下から22行目のみヴアルになってますよ
カバード・こぁも見たかったなぁ。
その次はユニ○符かな?面白かったです^^
>妹紅があるいてきました
あるいておかえり