※注意※
今回も非常に人を選ぶ話です。
広い心で読んで下さい。お願いします。
「……疲れましたぁ~」
四季映姫・ヤマザナドゥは日々の激務に疲れていた。
近頃、部下である小野塚小町が急にやる気を出したおかげで一日に裁くべき罪人の量がドバーと増えたからだ。いや、部下の勤務態度はすばらしい。上司として、その意気に答えてやらねばならない。
だが、疲れるものは疲れるのだ。
「………誰も、居ませんよね」
そう呟き彼女は仕事部屋に据え付けられている着替え部屋へいそいそと入り込んでいった。布が擦れる音が暫く続いた後、カーテンをシャーっとやって出てくる。
その姿は普段の彼女を知る人物が見れば口が塞がらなくなる筈だ。
「趣向を変えてノルマンディー上陸作戦と行きますか」
場所・時期を入力し机の上の紅いボタンを押した瞬間、映姫(米軍WWⅡ装備)の仕事部屋は一瞬で荘厳な閻魔部屋から曇天の荒れるオマハ・ビーチへと姿を変える。
形としては部屋の壁と床と天井が画面で、そこに景色が写し出されていると思ってほしい。メイドイン河童。
『隊長、エイキ隊長!どうすれば良いんですか!』
気づけば映姫は数名の部下とともにチェコのヘッジホッグの影で銃撃に晒されていた。
とりあえず前進を命じて、自らも進む。海水に濡れた砂浜は予想以上に動き辛く、よく再現してある。
「ちょっとこれは想像以上ですね………土手に集合しなさい」
閻魔の部屋は広くはないのだが、一歩踏み出すごとに景色が進むため、体感では本物の戦場に居るような臨場感が味わえる。流石メイドイン河童。
やがて土手に取り付くとそこには見慣れた顔が映姫を待っていた。
『映姫隊長!良くぞご無事で』
「美鈴軍曹!他の者は?」
幻想郷に実在する人妖が出演しているあたり芸が細かい。
映姫が聞くと美鈴は首を振って叫んだ。
『まだ誰も来てません!私と貴方だけです!』
その時だった。二人が伏せている土手に勢い良く狙撃兵が飛び込んでくる。
『隊長!鈴仙二等兵です!!』
「鈴仙、良く来ました。……永琳衛生兵は?」
『向こうで治療をしています!』
「連れて来なさい!」
『了解!』
『隊長、森近伍長です』
鈴仙が走り去っていった後にやってきたのは手ぶらの森近霖之助伍長だった。
「伍長、武器はどうしました?」
『海の中だよ、溺れそうだったのでね』
「捨てた?貴方は少し物を簡単に捨てすぎる。銃をいかなる状況でも捨てないよう最善を尽くすのが軍人の勤めでしょう。………いますぐ何処かから調達してきなさい」
『了解です』
砲弾や銃弾が飛び交う中霖之助は身を屈めて土手から離れていく。
『………止血したわよ、もう大丈夫』
『うあああああ!慧音ー!あああああああ、ケーネーッ!』
『喚かないの、もう大丈夫だから』
しかし運命はかくも無常なものか、たった今処置を終え、護送しようとした途端、妹紅は敵弾を頭に受け絶命してしまった。いかに腕のいい敏腕衛生兵の永琳と言えど、こうなってしまっては処置の施しようがない。
永琳は妹紅の血で染まった包帯を地面に捨て呟いた。
『……まぁすぐリザレクションするから良いか』
『師匠!映姫隊長が呼んでます!来てください』
『でもまだ負傷者が』
『他の人に任せてください』
鈴仙が永琳の腕を引っ張ってきたのは霖之助が銃を調達して戻ってきたのと同じ頃だった。
役者はほぼ揃った。後はこの土手を爆破するための爆薬筒を抱えた兵士が何処かに居ないかと映姫は周囲を見渡す。
その時だった。映姫の目に背嚢の横に四分割したバンガロール爆薬筒を括り付けた藤原妹紅(リスポーン一回目)が映った。
「妹紅、こっちに来なさい!」
『了解、どうすれば良い?』
「この向こう側にそいつを全部繋げて放り込んでください、突破口を作って雪崩れ込みます」
『わかった。鈴仙、手伝って』
妹紅(リスポーン一回ry)と鈴仙が伏せの状態で爆薬筒を全て繋げ終え、半分ほど土手の向こう側へ押し込むと一旦そこで止め、妹紅(リスポーン一ry)が安全ピンを引き抜き、一気に押し込む。
『爆発するぞ!』
妹紅(リスポーンry)の一言に皆が頭を覆い伏せる。腹の底が浮き上がるような振動の後、映姫たちに大量の砂が降り注いだ。
『全員、私に続きなさい!』
最初に映姫が躍り出、土手の向こう側へと突っ込んだ次に美鈴が立ち上がり、全員を引っ張って土手の向こう側へと駆けてゆく。
コンクリートの遮蔽物の陰に隠れている映姫に追いついた美鈴は如何するのかと尋ねた。
「この向こう側に機関銃陣地があります、なんとかしなければ」
すると映姫は腰のポーチからガムを取り出し、ものすごい勢いでガムを噛み始めた。暫く噛み続けた後口の中からガムを取り出し、それを接着剤として悔悟棒に浄玻璃の鏡を装着して遮蔽物から突き出す。
「……機銃陣地。鈴仙、頼みます、土嚢の向こう側に弾薬が集積しているはずですから撃ち抜いて下さい」
『了解』
「美鈴、霖之助、妹紅は援護に」
三人が飛び出し、猛烈な射撃を加え始めた瞬間、鈴仙は狙撃銃のスコープのキャップを外し、狙いをつけた。
『月の桃よ、我に力をお与え下さい』
祈りを捧げ、引き金を引くと銃弾は土嚢を突き抜け、集積されていた弾薬や手榴弾に着弾し爆発した。
「全員私に続………け……」
勇ましく突撃しようとした瞬間である。
「四季………様?」
入り口に小町が立っていて呆然としていた。
小町はひどく驚いた。何時も閻魔服に身を包み、間違いを起こさずそして争いごとを嫌っていると思っていた上司がまさか第二次世界大戦中の軍装をし、あまつさえバーチャルなゲームに浸っているところを目撃してしまったのだから。
「何時から、こんなことを?」
「それは、その……もう一年前ほどからですね。一人の休日のときに、薦められたのが切っ掛けで………」
スイッチを切り、何時も通りになった部屋で映姫は小町相手に正座していた。
ヘルメットを脱ぎ、ガムと浄玻璃の鏡がくっついた悔悟棒を横に置き、映姫はひたすら平伏している。
「だ、だってだって、私みたいな閻魔と一緒に休日を過ごそうなんて言う奇特な人は居ませんし……それでも、こっちの世界だとみんな私の言うことを聞いてくれて、素直に従ってくれるんです………」
「四季様………」
「貴方の昼寝がですね、私にとってのヒストリカルゲームなんです。分かって下さい……どうか………」
その瞬間だった。映姫は、下げていた上半身が彼女の意思以外で持ち上げられ、抱きしめられたのだ。
「四季様………ッ」
映姫はわけが分からなかった。目の前の死神がきっと自分に失望していたのではないか、幻滅したのではないかと恐れていたのだが、現実はそうなってはいない。むしろ、逆の方向になっている。
「四季様。四季様、あたいじゃ、あたいじゃ駄目ですか?その……休日一緒に過ごす相手……その、お説教だって何分でも何時間でも何日でも何年間でも聞き続けますから、一人でそんなことしないでください…ッ」
「小町…………ありがとう」
映姫は目を瞑り、小町を力強く抱き締めた。
「…………ちょうど上陸用舟艇の運転手が欲しかったんです」
「え?」
今回も非常に人を選ぶ話です。
広い心で読んで下さい。お願いします。
「……疲れましたぁ~」
四季映姫・ヤマザナドゥは日々の激務に疲れていた。
近頃、部下である小野塚小町が急にやる気を出したおかげで一日に裁くべき罪人の量がドバーと増えたからだ。いや、部下の勤務態度はすばらしい。上司として、その意気に答えてやらねばならない。
だが、疲れるものは疲れるのだ。
「………誰も、居ませんよね」
そう呟き彼女は仕事部屋に据え付けられている着替え部屋へいそいそと入り込んでいった。布が擦れる音が暫く続いた後、カーテンをシャーっとやって出てくる。
その姿は普段の彼女を知る人物が見れば口が塞がらなくなる筈だ。
「趣向を変えてノルマンディー上陸作戦と行きますか」
場所・時期を入力し机の上の紅いボタンを押した瞬間、映姫(米軍WWⅡ装備)の仕事部屋は一瞬で荘厳な閻魔部屋から曇天の荒れるオマハ・ビーチへと姿を変える。
形としては部屋の壁と床と天井が画面で、そこに景色が写し出されていると思ってほしい。メイドイン河童。
『隊長、エイキ隊長!どうすれば良いんですか!』
気づけば映姫は数名の部下とともにチェコのヘッジホッグの影で銃撃に晒されていた。
とりあえず前進を命じて、自らも進む。海水に濡れた砂浜は予想以上に動き辛く、よく再現してある。
「ちょっとこれは想像以上ですね………土手に集合しなさい」
閻魔の部屋は広くはないのだが、一歩踏み出すごとに景色が進むため、体感では本物の戦場に居るような臨場感が味わえる。流石メイドイン河童。
やがて土手に取り付くとそこには見慣れた顔が映姫を待っていた。
『映姫隊長!良くぞご無事で』
「美鈴軍曹!他の者は?」
幻想郷に実在する人妖が出演しているあたり芸が細かい。
映姫が聞くと美鈴は首を振って叫んだ。
『まだ誰も来てません!私と貴方だけです!』
その時だった。二人が伏せている土手に勢い良く狙撃兵が飛び込んでくる。
『隊長!鈴仙二等兵です!!』
「鈴仙、良く来ました。……永琳衛生兵は?」
『向こうで治療をしています!』
「連れて来なさい!」
『了解!』
『隊長、森近伍長です』
鈴仙が走り去っていった後にやってきたのは手ぶらの森近霖之助伍長だった。
「伍長、武器はどうしました?」
『海の中だよ、溺れそうだったのでね』
「捨てた?貴方は少し物を簡単に捨てすぎる。銃をいかなる状況でも捨てないよう最善を尽くすのが軍人の勤めでしょう。………いますぐ何処かから調達してきなさい」
『了解です』
砲弾や銃弾が飛び交う中霖之助は身を屈めて土手から離れていく。
『………止血したわよ、もう大丈夫』
『うあああああ!慧音ー!あああああああ、ケーネーッ!』
『喚かないの、もう大丈夫だから』
しかし運命はかくも無常なものか、たった今処置を終え、護送しようとした途端、妹紅は敵弾を頭に受け絶命してしまった。いかに腕のいい敏腕衛生兵の永琳と言えど、こうなってしまっては処置の施しようがない。
永琳は妹紅の血で染まった包帯を地面に捨て呟いた。
『……まぁすぐリザレクションするから良いか』
『師匠!映姫隊長が呼んでます!来てください』
『でもまだ負傷者が』
『他の人に任せてください』
鈴仙が永琳の腕を引っ張ってきたのは霖之助が銃を調達して戻ってきたのと同じ頃だった。
役者はほぼ揃った。後はこの土手を爆破するための爆薬筒を抱えた兵士が何処かに居ないかと映姫は周囲を見渡す。
その時だった。映姫の目に背嚢の横に四分割したバンガロール爆薬筒を括り付けた藤原妹紅(リスポーン一回目)が映った。
「妹紅、こっちに来なさい!」
『了解、どうすれば良い?』
「この向こう側にそいつを全部繋げて放り込んでください、突破口を作って雪崩れ込みます」
『わかった。鈴仙、手伝って』
妹紅(リスポーン一回ry)と鈴仙が伏せの状態で爆薬筒を全て繋げ終え、半分ほど土手の向こう側へ押し込むと一旦そこで止め、妹紅(リスポーン一ry)が安全ピンを引き抜き、一気に押し込む。
『爆発するぞ!』
妹紅(リスポーンry)の一言に皆が頭を覆い伏せる。腹の底が浮き上がるような振動の後、映姫たちに大量の砂が降り注いだ。
『全員、私に続きなさい!』
最初に映姫が躍り出、土手の向こう側へと突っ込んだ次に美鈴が立ち上がり、全員を引っ張って土手の向こう側へと駆けてゆく。
コンクリートの遮蔽物の陰に隠れている映姫に追いついた美鈴は如何するのかと尋ねた。
「この向こう側に機関銃陣地があります、なんとかしなければ」
すると映姫は腰のポーチからガムを取り出し、ものすごい勢いでガムを噛み始めた。暫く噛み続けた後口の中からガムを取り出し、それを接着剤として悔悟棒に浄玻璃の鏡を装着して遮蔽物から突き出す。
「……機銃陣地。鈴仙、頼みます、土嚢の向こう側に弾薬が集積しているはずですから撃ち抜いて下さい」
『了解』
「美鈴、霖之助、妹紅は援護に」
三人が飛び出し、猛烈な射撃を加え始めた瞬間、鈴仙は狙撃銃のスコープのキャップを外し、狙いをつけた。
『月の桃よ、我に力をお与え下さい』
祈りを捧げ、引き金を引くと銃弾は土嚢を突き抜け、集積されていた弾薬や手榴弾に着弾し爆発した。
「全員私に続………け……」
勇ましく突撃しようとした瞬間である。
「四季………様?」
入り口に小町が立っていて呆然としていた。
小町はひどく驚いた。何時も閻魔服に身を包み、間違いを起こさずそして争いごとを嫌っていると思っていた上司がまさか第二次世界大戦中の軍装をし、あまつさえバーチャルなゲームに浸っているところを目撃してしまったのだから。
「何時から、こんなことを?」
「それは、その……もう一年前ほどからですね。一人の休日のときに、薦められたのが切っ掛けで………」
スイッチを切り、何時も通りになった部屋で映姫は小町相手に正座していた。
ヘルメットを脱ぎ、ガムと浄玻璃の鏡がくっついた悔悟棒を横に置き、映姫はひたすら平伏している。
「だ、だってだって、私みたいな閻魔と一緒に休日を過ごそうなんて言う奇特な人は居ませんし……それでも、こっちの世界だとみんな私の言うことを聞いてくれて、素直に従ってくれるんです………」
「四季様………」
「貴方の昼寝がですね、私にとってのヒストリカルゲームなんです。分かって下さい……どうか………」
その瞬間だった。映姫は、下げていた上半身が彼女の意思以外で持ち上げられ、抱きしめられたのだ。
「四季様………ッ」
映姫はわけが分からなかった。目の前の死神がきっと自分に失望していたのではないか、幻滅したのではないかと恐れていたのだが、現実はそうなってはいない。むしろ、逆の方向になっている。
「四季様。四季様、あたいじゃ、あたいじゃ駄目ですか?その……休日一緒に過ごす相手……その、お説教だって何分でも何時間でも何日でも何年間でも聞き続けますから、一人でそんなことしないでください…ッ」
「小町…………ありがとう」
映姫は目を瞑り、小町を力強く抱き締めた。
「…………ちょうど上陸用舟艇の運転手が欲しかったんです」
「え?」
フーバー
それにしてもさすが、メイドイン河童やってみたいですね
なんちゅーバチあたりな閻魔様だw