「ドア挟み桃源郷」
深夜の紅魔館。
静まり返った館の廊下。
並ぶ窓から月明かりが差し込み血より紅いカーペットの上で動く人影が垣間見える。
「ちょっとレミィ! こんな夜遅くになんなのよ!」
よく見れば人影は二つ。
「いいから来なさいって」
「何なのよ! ってここは咲夜の部屋じゃない、どうしたって言うのよ」
「だから静かに! 耳を済ませて」
紅魔館の主レミリア・スカーレットにつれられここまで走って来たは良いが実は何も知らされていない。
急に部屋に押しかけてきたかと思ったら本を読んでいた私の手を取り走り出したのだ。
しかも当の本人はドアに耳を当てて中の様子を伺っている様子。
なにをしているのか……。
従者にもプライベートと言うものがあるだろうと教えなければ。
『……さん』
「ん? この声は」
そんなことを考えていると、ドアの隙間からかすかに漏れる声に気付きレミリアと同じようにドアに耳をつけてみる。
木造のドアは走って火照った体には程よく冷たく気持ちがいい。
少しだけその冷たさに身を委ねる様にすると、布を擦るような音がかすかに部屋の中から聞こえた。
『じゃあここに横になってください』
『いざとなると恥かしいわね……』
『ふふふ、大丈夫ですよ。小さくて素敵です』
『ば、バカ!』
中から紅魔館の門番である紅美鈴と、メイド長である十六夜咲夜の声が聞こえる。
話し声の中にスプリングの軋む音がまじっているので、どうやらベッドの上にいるようだ。
前々から仲の良い二人であったが、美鈴も咲夜も変に奥手なためその関係は平行線をたどっていたのだが。
まさかこれは?
「ようやく進展を見せたってことね、それにしても美鈴からとは意外だわ……」
「これは観察せざるを得ないでしょ?」
「もちろんだわ、スニーキングミッションね」
「なにそれ」
「……レミィには早いわ」
ドアの外でレミリアと小さな声で会話を交わす。
小悪魔とのノリで話してしまい、ネタが通じず恥かしいのでとりあえずごまかしておく。
『じゃあ入れますよ~?』
「い、いきなり!?」
「! 声が大きいっ」
思わず大きな声を出してしまった私の口をレミリア慌てて塞ぐ。
小さな手で必死に口を押さえようとしているのだろか、その手は口と一緒に鼻まで押さえ込んでしまっている。
『何か言いましたか?』
『? いいえ、何も言ってないわ』
「むぐぐぐぐ……」
『そうですか?』
『それより早くして、この体制は恥かしいわ』
「ぷはっ!」
二人が怪しんでいないことを確認しレミリアが手を放す。
それにあわせ思いっきり息を吐くき、ぜいぜいと荒く息を吸い呼吸を整える。
鼻まで塞ぐ事ないではないか、おかげでお花畑の幻想が見えたよ。
「ちょっと、流石に苦しいわよ」
レミリアを見ればすでにこちらなど気にする事無くドアに耳を傾けている。
咲夜はもっとも信頼できる従者なのでその気持ちはわからなくも無いのだが。
少しムスッとしながら私も並んで盗聴を再会する。
部屋の中は変に静まり返り、何も聞こえない。
『痛っ! 美鈴!!』
『だ、大丈夫ですか!?』
『んんっ!? 変に動かさないでよ、奥まで入っちゃう』
静寂からの二人の会話に自ずと鼓動が早くなる。
顔が赤くなり俯くと、視線の先に顔を真っ赤にしているレミリアが見えた。
「帰る?」
「ここで帰ったら負けなきがするわ」
意地を張るところなのだろうか?
「とにかくすにーきんぐみっしょん? 再開よ」
そんな疑問もあったが、レミリアが動く気配は無い。
しかたない、もう少し付き合うとしよう。
『とにかくもっと優しく……』
『は、はいっ。どうでしょうか?』
『んんっ。ふぁ、気持ち、いい』
『ふふふ。そうですか、嬉しいですよ』
部屋の中から二人の声だけが聞こえてくる。
時折思い出したかのようにベッドが軋み、それが妙に生々しさを醸し出しているようだ。
私達は思わず顔を見合わせ、またそれがほぼ同時だったことに妙に恥かしくなり赤い顔のままそっぽを向く。
レミリアが生唾を飲む音が静かな廊下に聞こえ、自分の心音が彼女に聞こえているのではないかと思い、変な緊張を感じてきた。
『痛ッ!』
『あ、ご、ごめんなさい』
『もう、調子に乗らないの』
『すみません……』
何だかこのまま聞いていることに罪悪感を感じる。
「どう思うこの状況」
「またとなく美味しいわね」
「いや、そうなんだけど聞いちゃっていいの? 二人の事じゃない、私達は温かく見守るべきよ」
「今更なに言ってるのよ、ここまで来たら今帰っても同じようなもんでしょ?」
中から聞こえてくる咲夜の声は普段よりリラックスして甘えているように思える。
逆に美鈴は少し緊張しているのか、いつもより声が堅い。
「しかし、咲夜を痛がらせるとは美鈴許せないっ!!」
「それは……そうね」
咲夜を気に入っているレミリア的には咲夜の幸せを押したいのだろうけど、その心境は複雑だろう。
主として、裂いてしまおうと思えばその関係を裂けると言うのがまたきつい。
(この子なりにがんばっているわよね……)
思えばあれだけ我が侭ほうだいだった彼女がこの程度のことで済ましているのだ。
大人になったと言うことなのだろう。
『んっ、終わりましたよ咲夜さん』
「……物静かに終わったわね」
レミリアの背中を眺めたらいつの間にか中では事が終了したようだ。
「なんか盛り上がりが」
「そこに期待してどうするのよレミィ……」
『ふぅ、ようやく終わったのね』
「なんかおかしくない?」
「流石におかしいわね。なんていうか静か過ぎるって言うか、落ち着きすぎているような……」
咲夜が痛がってはいたがそこまで空気が死んでいたようには思えないが……
『見てください、こんなにいっぱい――』
『いや、見せないでよ馬鹿』
「声が……!」
「め、美鈴っ」
微妙に声色が変わり、部屋の中が騒然とする。
飛び込みかけたレミリアを抑えつけ、話の続きを待つ。
『あ、あれ!? ご、ごめんなさい、そんなに嫌でしたか?』
『違うわよ、ちょっと遅れて涙が出ただけ』
『ご、ごめんなさい咲夜さん……』
咲夜が鼻をぐずらせている音が聞こえる。
『だから次は貴女の番よ』
『えっ!?』
「えっ!」
「えっ?」
が、ここで思ってもいない言葉に思わず腕の力が抜け、レミリアの拘束が解けてしまった。
しかし、レミリアも驚いているのか。
はたまた続きが気になるのかおとなしく声に耳を傾けている。
『ほら、こっちに来なさい』
「思ってもいない咲夜攻め!?」
「まって、様子がおかしいわ!」
『あっ、い、いやでも待ってください! 着替えてきますっ!』
『あ、こら!』
美鈴が駆けて来る音に嫌な予感を感じた次の瞬間。
私とレミリアを弾き飛ばすように木造の扉が大きな音を立てて開いた。
紅いカーペットをごろごろ転がり、反対側の壁に強く背中を打つ。
痛みにうめきなが視線だけで一緒に飛ばされたはずのレミリアを探すと、なぜか彼女はドアの目の前で蹲っているようだ。
よく見ればドアの方が粉々に砕かれ、ドアノブを持った美鈴が驚いてその場で立ちすくんでしまっている。
その奥にはネグリジェに身を包んだ咲夜が耳かきを片手にその様を眺め、固まっているようだ。
なんだ、そういう事か。さすがあの二人と言った所かもしれない。
あぁ、それにしてもレミィ、私は貴女のように体が丈夫じゃないのよ……
あの怪力でドアをぶつけられ、痛いで済む友人をうらやましく思いながら、私は意識を手放した。
なんともお決まりだなぁなんて思いながら。
ちなみに翌日、小悪魔に介護され目を覚まし、心配したと泣き叫ぶ彼女に事情を説明し安心させると今度はなぜ連れて行ってくれなかったのかと怒られた。
なんとも厄介な1日だった……
奥?
うん、まぁ予想はしてましたけどね…
なるほどねぇ・・・(ニヤリ
まあ、他人の秘密(?)を覗き見る背徳感はたまりませんよね
でも悔しい
いつも通りコメントありがとうございます、大変励みになっております。
予測どおりだね!さすが美鈴さん!!
誤字指摘ありがとうございました!
>>2さん
うまい!もう1杯!
もうこうなるとマッサージか耳かきぐらいしか思いつかないよ、あえて本番させてもいいけど俺活動できなくなっちゃう><。
コメントありがとうございました!!
>>3さん
でも見ちゃう!ビクンビクン
てきなものがありますよね、こういうネタのものってw
秘密は握った後が重要ですからねぇ~?(ぁ
コメントありがとうです!
>>4さん
もう王道、でも王道だからこそやってしまう。
さすが美鈴さん、さすがや…ぐすん
見たいな感じですね、俺の期待を返せ!
言われても困るがなぁ!!(なんだおい
コメントありがとうでしたっ!