Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

貪欲の影法師

2011/07/23 19:42:22
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 窓から差し込む日差しに熱を覚えて、肌がねっとりと水気を帯びる。
 これは決して太陽のせいだけではないだろう。
 首筋から流れた汗が背筋をじわりと濡らすと、それだけで寒気を感じて身を震わせた。

 私は魔法使いだ。
 超常の神秘から星を繰り出し、栄光の枠を虚空に浮かべ、その中に誉れを鋳造する。
 そうして出来上がった魔法を空に放ち、夜と見紛うほどの煌めきを曇天にさえ生むことが出来る魔法使いだ。

 人間ではあるけれど、妖怪に負けたことなど無い。
 弾幕ごっこの上で破れようとも、不屈の魂を穢したことなど、一度もない。
 けれど私は今、そんな今日に至る純潔を覆さんばかりの、無機質な悪意に追い立てられていた。

「くそっ」

 淑女であれと、そう育てられた。
 里の道具屋の店主で、里人からの信頼の厚かった父。
 私と理解の相違から親と子の縁を切った、私の父親。
 彼に言われた言葉は、粗雑であると自称する今も、根深く残っていた。

 だからこんな悪態を吐くしかない状況に、些かの苛立ちを覚える。

「どこへ、行った?」

 ふと、私は視界から彼奴の姿が無くなっていることに気がつく。
 先程まではひび割れた四方の壁から、私を舐めるように見ていたあの影。
 それはいつしか視界より消え去り、乱雑した本や雑貨の暗澹たる影へ潜り込んでしまった。

「まずい」

 ベッドの上から、動けなくなる。
 こうして彼奴から逃げ回り始めた切っ掛けは、朝目が覚めたときのことだ。
 瞼の裏から眩しく照らす光から逃れようと、落ちたばかりであろう月の方角へ顔を向けたとき。
 ふと、私の視界を掠めるおぞましい存在があったのだ。

「はぁ、はぁ」

 鼓動が速くなり、喉の奥から息が零れ始める。
 苦しい、苦しいと感じる理由はただ一つ。
 この狭苦しい空間に、暑苦しい日差しの中で、じっと息を潜める影の存在があるからだ。

――……
「ッ」

 音がした。身の毛もよだつ音。
 毛穴という毛穴から冷たい汗が噴き出し、また、私の肌をねばねばと覆う。
 八卦炉は机の上。けれど、ベッドの下から気配がしているような、そんな気がしてならない。

「どこだ、出てこい!」

 次出て来たら。
 次出て来たらその時は、彼奴とは真反対の方角へ全力で走ろう。
 砂利で足の裏を怪我してしまうかも知れない。けれどそうなったら、森の隣人に治療して貰えばいい。
 彼女なら、端正な眉をほんの少し寄せるだけで、その白魚のような手で私の足を庇ってくれることだろう。

 そう考えたら、俄然やる気が出て来た。
 次に出て来た時こそが、彼奴との別れの時だ。
 自室という限定された空間の中では、魔砲の一発も撃てやしない。
 けれど、彼奴にむざむざと餌を提供するようなマネは、しなくてすむはずだ。

「そうだ、それで終わりだ」

 そうしたら、人形の手でも借りてここを一掃すればいい。
 なんだ、簡単なことじゃないか。それだったら隙間妖怪のラストスペルを避ける方がずっと難しい。

 そう油断したのだ。
 確かに私はそう、油断してしまったのだ。

――……ゥゥゥゥンッ
「ひっ」

 予想だにしない方向。
 頭上から私に奇襲するそれに、ただ乙女のような悲鳴を上げることしかできなかった。

「きゃぁぁぁっ」

 黒き疾走者は、闇の中でもぬめりを見せつける羽を何度も何度も空に打ち付ける。
 咄嗟に頭を下げると、彼奴はそのまま私の背後に降り立った。

「今しか、ないッ!」

 パジャマのままでも良い。
 裸足だって構わない。

 私は空を飛べることも忘れて、ただ一目散に逃げ出した。






















「ちょ、ちょっとどうしたのよその格好」
「……はぁ?え?ゴキ……油虫?」
「もう、ちゃんと掃除しないからよ」
「はいはい、わかったから抱きつかないで。暑くて仕方がないわ」
「はぁ……もう、わかったわよ。とりあえずシャワー浴びてきて」
「しょうがないわね……いいわ、冷たいミルクティーも淹れてあげるから」

「一緒に?――――はぁ、いいわよ。だからほら、そんな顔しないで。魔理沙」





――了――
 暑くなってきたので、私の天敵を。
I・B
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
奴が…奴が来る…
読み終わった後、マジで回り確認しちゃったw
2.名無し程度の能力削除
魔理沙かわいい
昨夏は苦労したが今年はどうか
3.名前が無い程度の能力削除
奴の気持ちが悪い所と言ったらあの足の速さだよ。あんなでかいのにあんな速い、あれマジチート。
あれでのっそりのっそり動くならまだ許せるかもしれないけどあんだけ早いとかマジ止めて欲しい。
まぁでも魔理沙は可愛いな。
4.名前が無い程度の能力削除
馬鹿め馬鹿め
奴の真の気持ち悪さは、目が合うと顔に向かって飛びかかってくるところだよ
お陰でフローリングで後ろ受け身をする羽目に・・・
まぁでも魔理沙は可愛いよ
5.名前が無い程度の能力削除
蟲の王に(体で)責任を取って貰おうぜ
6.名前が無い程度の能力削除
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

足の速さもだけど体の薄さもチートだよな
7.名前が無い程度の能力削除
あいつは速いし飛ぶからなー
リグルに頼むしかなくね?
8.名前が無い程度の能力削除
飛ぶし駆けるし叩いたらクリーミィになるし、ホントこの時期はリグ・・・黒いスーツのお客様に困るわ
9.名前が無い程度の能力削除
いつもは憎いあんちくしょうだけど彼の活躍のおかげで可愛い魔理沙が見れたから
今日だけはGJと言っておいてやる!
10.名前が無い程度の能力削除
アリスがお姉さんすぎていいぞもっとやれ←
あ、ゴキ……油虫はもっとやらなくて良いです(汗