Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

妖夢は白玉楼を乗っ取ろうとしてるのよ!

2011/05/05 02:04:13
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ある日の白玉楼。
「ねぇ、紫。真剣に聞いてほしいことがあるの」

縁側で二人幽々子とお茶を飲んでいると……

「妖夢はおそらく白玉楼を乗っ取ろうとしているのよ!」

親友が妙なことを言い始めた。

「なんでそんなこと思うのよ?」
「まず、妖忌がある日突然連れてきた素姓の分からない少女よ?」
「いや、孫でしょ」
「似てないわよ!あの仏頂面の妖忌の孫!?笑わせないで!」
「でも、妖忌が言ったんでしょ?彼は信用に足る人物じゃなくて?」

魂魄妖忌は昔から幽々子に仕えていた剣術指南役兼庭師だ。
今は孫の妖夢に全ての仕事を引き継がせ引退してしまったが、主を甘やかすでも無く、それでいて主の為を第一に考えていてくれた。いい付き人だった。

「その妖忌なんだけど……恐らく妖忌は妖夢に操られてるのよ」

何を言ってるのかこの友人は。

「そんな変な顔しないでよぅ!だって妖忌、妖夢のお願い事を片っ端から叶えていくのよ!?異常なまでに!」
「そりゃあ、かわいい孫の頼みを断れないだけでしょう」
「それだけじゃないわ!妖忌が妖夢のことを話すときや、妖夢と話してるとき、明らかに眼がギラギラしてたの。あれは洗脳されてるのよ!」
それは、妖忌が少女愛好家だったからではなかろうか。

「あと、決定的な証拠もあるわ」
「証拠?」
「妖夢は食事に麻薬を混ぜているのよ」
「なっ……麻薬!?」

絶句した。本当ならば決定的すぎる証拠。
今まで大して信じていなかった話だけど、話が変わってきた。

「そう、もうやめられないのよ」
「!!」

そうだ、もし妖夢が麻薬を混ぜているのなら、幽々子は毎日それを摂取していることになる。
もう、幽々子は麻薬ジャンキーに……。

「妖夢のご飯を食べていると、箸が止まらなくなるの」

ん?

「妖夢が来る以前の、妖忌が用意したご飯の何倍もおいしく感じるの」

え?

「小食だった私なのに、妖夢のご飯を食べると、もっと、もっとと、食が太くなっていったの」

おい。

「どうしよう紫。私、妖夢のご飯ジャンキーになっちゃった……うぉん、私はまるで亡霊火力発電所よ」

それって

「ただの料理上手なんじゃない!!」
「紫にはわからないのよ。あのおいしさは異常よ」
「へぇ、一度食べてみたいわね」
「やめるのよ紫!私みたいになるわよ」
「どうなるのよ……。
だいたい、仮に妖夢が白玉楼を乗っ取る気があったとしても、実力不足よ。霊夢や魔理沙、それに紅魔館のメイドにも負けてるじゃない。もし、幽々子を何かの策に嵌めても、周りが黙っちゃいないわよ。よくて一日天下」

「紫、甘い!甘いわ!おやつの自家製カスタードプリンよりも甘いわ!」
「いつのまにプリンを……」

「紫様の分もございますよ」

「ひゃあっ!?」

気づくと斜め後ろに妖夢本人が正座していた。

「あ、申し訳ございません紫様。お取り込み中のようでしたので、こっそりと置いておきました。驚かせてしまいましたか?」
「あ、いやいいのよ!うん。わぁ~!おいしそうね~!」
「ありがとうございます。では、私はこれで失礼させていただきますね」
「……びっくりしたわ。もしかして話聞いてたのかしら?……って幽々子!このプリンは渡さないわよ!」
「駄目よ紫!あなたまで中毒になったら、妖夢の思うつぼよ!」

スキマにプリンを一時避難!

「話の続きよ。私の何が甘いのかしら幽々子」
「妖夢の認識が甘いのよぅ!妖夢の肩書きを思い出して」
「剣術指南兼庭師だったかしら。これがどうかしたの?」
「もぅ!それでも妖怪の賢者なの?
妖夢は私の剣術指南役なのよ!つまり、教える立場の人間兼幽霊なのよ!」

なんか腹の立つ言い方ね。ゆかりんイラッ☆としたわ。

「それがどう……あー、なるほど。つまり妖夢は……」
「そう。本来私より強いハズなのよ」

ちゃんとした教育というのは、教える側の人間は教わる側の人間よりも三倍は理解している必要があるわ。
いえ、そう難しく考えなくても、師匠と弟子みたいなものと考えたら簡単よね。師匠より強い弟子では成り立たない。

「でもそれは剣術に限った話でしょう?弾幕戦となったら幽々子にはかなわないわよ」
「そこが甘いのよ!妖夢は妖忌の弟子なのよ!」
「!!」

ガンっと頭をバールのようなもので殴られたような衝撃が走ったわ。
そうよ。自分が先程言ったばかりじゃない。妖夢は妖忌の孫であり、
弟子なのよ。

「本気を出せば斬れない弾幕なんてあんまり無いかもしれないじゃない」
「……それだけは否定できないわね。あの規格外の妖忌の弟子だもの」

以前、幽々子と一緒に妖忌に悪戯をしたときのことを思い出……したくないわ。
あれは私たちにとっての一生のトラウマよ。あ、幽々子は死んでるか。

「買い被りすぎですよ。私の剣はまだ師匠には届きません」

「妖夢!?仕事してたんじゃ!?」
振り返ればヤツがいるリターンズ!?
「え、ああ、はい。庭の剪定は終わりました。お洗濯物を取り込む前にお茶を煎れなおそうかと」
「え、ええ、そうね。お願いしようかしら」
ついでに次からは一声かけてほしいわ。

コポコポコポ

「妖夢」

幽々子が若干固い声で妖夢を呼ぶ。
どんだけ苦手なのよ。威厳ともとれるから妖夢は気にしないでしょうけど。

「はい、なんでしょう幽々子様」
「お洗濯物を取り込んだら、ちょっと地底まで行って辛子レンコン買ってきてくれる?水橋屋の。紫がどうしても食べたいって」
「ちょっ!幽々子?」
「はぁ、それはかまいませんが、少々お時間いただきますよ?」
「構わないわよぅ。紫が帰るときにお土産に持たせるから。時間はたっぷりあるわ」
「わかりました。では紫様、後ほどお持ちしますので楽しみにしていてくださいね」



……




「これで妖夢の邪魔は入らなくなったわね」
やっぱりそういうことだったのね。スキマを使えば店まで一瞬だもの。
「で、本題よ紫。私はどうしたらいいと思う?」
「どうもしなくていいわよ」
「ええっ!?だってこのままじゃ私殺されちゃうかもしれないのよ!?」
「落ち着いて。幽々子はもう死んでるわよ」
「真面目に聞いてちょうだい紫ぃ~!早く対策を練らないと妖夢が帰ってきちゃうわよぉ」
「ここから水橋屋までだったら往復で四時間程度かかるわよ」
「妖夢だと30分で帰ってくるわよ~」
「はやっ!!いくらなんでもそれは」
「さっき、プリンを持ってきて、次にお茶を注ぎにきたときまでの間に二百百合の桜を剪定したのよ?」
「う、うわぁ……。そういえば来る度に気配が読めないのよね。」
「そう、暗殺向きね」

辻斬りの暗殺者?

「そういうわけだから急いで!場合によっては私は逃げなきゃいけないんだから!」
「あのねぇ幽々子。何度も言うけど、何もしなくていいのよ。あの子はあなたを慕っているし、なにより、あなたに仕えることを誇りに思ってるわ。あなたが妖夢を信用してあげないと関係が空回りするだけよ?」
「うぅ……こ、根拠は何かあるのかしらぁ?」
「私の観察眼。それじゃ不満かしら?」
「……わかったわよぅ。努力してみるわぁ」
「よろしい。じゃあ私は帰るわね」
「あら、妖夢を待たないの?」
「ええ、ちょっとお庭を見ながらゆっくり帰らせてもらうわ。突飛な話過ぎて少し疲れたの。辛子レンコンは今度来たときに貰うわ」
「そう、じゃあ妖夢にも伝えておくわ。またねー紫」




……




白玉楼の庭を抜け、階段まであと少しというところで私は一人、今回のことを考える。

「まったく、幽々子ったら。妖夢に限ってそんなことあるわけないじゃない」

「幽々子様の妄言でしたら気にしないでください。いつものことなので」

「へ?妖夢!?早すぎない!?」
振り返ればヤツがいるサード!?二度あることは三度あるの!?
なんで大妖怪とも言われている妖怪の賢者、この八雲紫に気づかれずにこの距離まで接近できるのよ!?

「ああ、ちょっとタクシーで行ったもので」
「タクシー?」

幻想郷にそんなものあったかしら?しかも冥界から地底まですぐに行けるような……。

「魔理沙さんです。日雇いで頼んでいます」
「ああ、それでこのスピード」

法廷速度くらい決めるべきかしら。
天狗と空中で衝突事故なんて起こした日には……





「いっけなぁーい!遅刻遅刻ぅ!!」
私、射命丸文。幻想郷学園最速の文屋をしてるの☆(射命丸心の声)

「うわっ!!あぶねぇ!!」
「え?わっ!きゃあ!」

どごぉおおおおおおおおおおおお!!!

「ど…どこ見てやが……る……」
「あやややや!!すみませんすみません!!いそいでまして!!」
きゃっ!あの幻想郷一かっこいい魔理沙先輩(私のほうがのほうが年上だけど)とお話しちゃった///ё///(射命丸心の声)
「早く永遠亭に……」
「(か、顔が近いぃいいい///!!)す……すみません!私、ほほほ本当に急いでいましっててて///すぐにしんぶんはいたつにいかなきゃああ///」
ばさばさばさ!!

「なんだアイツ?ぶつかってどこかおかしくなったのか?ああ、他人の心配してる場合じゃねえな。い……医者」







「ところで紫様、今お帰りですか?これ、お土産の辛子レンコンです」

妖夢の声で変な妄想から現実に引き戻された。二人の続きが知りたければわっふるわっふると。
それはともかく、念のため確かめてみようかしら?

「ありがとう妖夢。……ねぇ妖夢。妖夢は今の白玉楼に……幽々子に不満はあるかしら?現状を変えてみたいと思うかしら?」

「はい不満だらけです。現状にも満足できませんね」

「そうよねぇ。妖夢に限って……え、そうなの?」

意外。いえ、幽々子に不満はあろうとも、この私に話すとは思っていなかったのだ。
……ああいや、私の先入観があったせいで驚いていただけね。幽々子があんなこと言っていたから。

「ええ、私が幽々子様に仕え始めたときに、つい料理に張り切ってしまい、机一杯に料理を作ってしまい、『私は小食だから、こんなに食べきれないわよぅ』と、言われたんですが……。
十分後には『妖夢!何してるの!?こんな量じゃ満足できないわよ!さぁ、もっと私を満足させてちょうだい!』と、理不尽なことを仰り始めまして。夕食だったはずが、次の日の昼頃まで料理を作り続けましたよ。」
「……」
「普段のスケジュールもかなり詰まっていまして、否応無しに仕事の高速化を図らなければ、私に睡眠時間なんてありませんでした」
「……」
「そして、仕事も幽々子様の突飛な思いつき等もなんとかこなして、給料日が来ると、指定の額より遥かに高い金額を手渡しされるんですよ」
「え?それはよかったじゃない。働きに見合った報酬を貰えているってことじゃない」
「普通ならそう考えるんでしょうけど、幽々子様が(普段以上に)青ざめた顔で震えながら渡されるんですよ。まるで『この金額で勘弁してください』みたいな涙目で見るんですよ」
「幽々子……(怯えてるのバレバレじゃない)」
「お客様である紫様に聞くのは筋違いかもしれませんが……私は何か、幽々子様を怯えさせるようなことをしているんでしょうか?私が仕事を頑張るたびに幽々子様は私を避けるようになって……私はどう幽々子様と接するべきなんでしょうか?」

幽々子ったら……なんだかんだで最後はあなたのことを気にかけてくれている従者がいるのに、その子を不安にさせちゃって……。
自業自得じゃない。

「妖夢、その答えを教える前に一つ聞いていいかしら?」
「はい、なんでしょう」
「あなたは白玉楼に不満を持ち、変えてみたいと思っている。なら、どのように変えてみたいのかしら?」

「幽々子様をアゴで使える関係を築きたいです」

「……!?」

なっ!?

「冗談です。幽々子様と仲良くしていきたいです。今みたいな上辺だけの付き合いで、お互いに心を開けない関係は嫌なんです!」
「ごめんなさい。妖夢。間に挟んだ冗談のせいで、あなたの本音がよくわからなくなってきたわ。いえ、むしろ、あなたがわからなくなってきたわ」
あら?おかしいわね?真剣な話にふざけて水をさすような子じゃなかったはずだけど。
「?……冗談は冗談ですよ?おかしな紫様ですね。
それで、話は戻りますが、私は幽々子様に嫌われているんでしょうか?」
「……あなたがさっきみたいな冗談を言わなければ、幽々子はあなたに怯えなくてすむでしょうね。」
「と、いわれますと?」
「あなた次第ってことよ」
「私次第……ですか?」

そう。私がどんなに相談に答えようとも、結局は本人次第。
私は妖夢じゃないし、幽々子でもなければさとりでもない。当人の心なんて分からない。
結局、私ができるのは助言だけだろう。

「わかりました紫様。今後は半霊に冗談を言わせないように努力してみます」
「そうね。流石にさっきの冗談は悪質だったと……」

半霊?

「半霊ってどういうことかしら?」
「ええ、たまに半霊が私の身体を乗っ取って会話することがあるんですよ。やれ白玉楼を支配するーだの、幽々子様を封印するーだの、くだらない妄言ですけど」

なんのことはない。とどのつまりは半霊が原因で、幽々子の言っていることも全てが全て妄想ではなかったのね。近い内に事情を話してみましょう。
ああ、でもなんだかバカらしくて笑えてくるわね。

「うふふふふふ」
「紫様?」
「妖夢、事情が変わったわ。明日にでも私から幽々子に話しておくから、もう心配しなくていいわ」
「は……はぁ」

少なくともタネが分かれば怖がる理由も薄くなるだろう。
本人の意思とは関係ない妄言なのだから。

「それじゃあ妖夢。辛子レンコンとプリンはあとで頂くわね。また明日来るけど、そのときは豪華な料理でも用意して待ってて頂戴」

相談料としては格安でしょう?ふふ、私ってば良心的ね。

「わかりました。では紫様。明日、お待ちしております」

私はスキマに入って白玉楼を去った。













紫様が去った後、私は一人呟いた。

「紫様、自分の言うことを『妄言』『冗談』なんて自己申告する人を信じちゃ駄目じゃないですか。
でも忠告はありがとうございます。次からは半霊から『本音』がなるべく出ないように気をつけてみますね」
「紫様!どうなされたんですか!?」
「妖夢の……妖夢の手料理が食べたいのよぉおおおお!!」
「空腹なのでしたら、私がなにか作りますけど」
「違うのよ藍。妖夢の手料理以外の料理から味がしないほどに私の舌は肥えてしまっているのよ。フフ……私もすっかり幽々子の同類ね」


……


「はっ!ドリーム!?どこからどこまで!?」


へんてこな話ばかり量産している気がするアジサイです。
誤字脱字ご意見ご感想等がありましたら、よろしくお願いします。
アジサイ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
妖夢こえぇぇぇ!!
2.奇声を発する程度の能力削除
>亡霊火力発電所
ここでめっちゃ吹いたwww
ツッコミ所が多くて面白かったですw
3.名前が無い程度の能力削除
中毒になっても構わない。妖夢の料理が食べたいです。
わっふるわっふる。
4.名前が無い程度の能力削除
プチホラー
怖いっす