「お嬢様はなぜ私をメイドにしようと思ったのですか?」
「運命だったからよ」
本を読んだまま、パチュリー様が口を挟む。
「レミィがメイド好きだからよ。それと当時は銀髪萌えの白髪狂だった。覚えてないの?」
「そういう運命だったのね。咲夜、おかわり」
ソーサーに置かれた空のカップに紅茶を注いだ。
「ではもうひとつ。なぜ十六夜咲夜という名前なんでしょうか」
「不満かしら」
「いえ、誇りに思います。なんとなくです」
「満月、つまり私の隣にいつも控えているから十六夜。夜にも咲き誇るから咲夜よ」
パチュリー様をちらと見る。
「当時私と二人で嵌まってた漫画の主人公が十六夜。切り裂きジャックから取って、夜を裂くなんてどうかしらって私が言ったら、レミィは切り裂きジャックを知らなかったみたいで誤字っただけよ」
パチュリー様は尚も本から目を放さない。
「十六夜、咲夜。ふふ、咲夜はこんないい名前貰って幸せ者ね。おかわり」
ソーサーに置かれたカップを取り替えて、温まった新しいカップを用意した。
「完全で瀟洒な従者って通り名だけはなんとかして欲しかったですわ。魔理沙や霊夢、果ては山の巫女に会う度馬鹿にされてしまいますし」
「完璧だけど出過ぎず、私に付き従う。なんて素敵な通り名なのかしら」
パチュリー様は等々本を閉じた。パチュリー様が本を閉じるときは、紅魔館の危機とはまったく関係の無い、正直どうでもいい内容だと、相場が決まっている。
「あのときはラップにはまってたのよ。映画で白人がラップやる話を見たばかりだったから。さらにレミィはラップのことを親父ギャグのことだと思ってたのね。
強者は瀟洒な従者に感謝されるとかほざき始めたから、まさかと思ったけれど」
パチュリー様が立ち上がる。
どうやら今日のお茶会はここまでのようだ。時間的にも、いい頃合いだろう。
「あらパチェ、もう帰っちゃうの?」
「えぇ、もうすぐ夜明けよ。レミィも寝たら?」
「そうするわ。……咲夜、おかわり」
本日最後の紅茶になるであろう一杯を、お嬢様のカップにお淹れする。
「ところでお嬢様」
「何かしら」
「私は今まで十年程騙されて育ってきたのですね」
「……だって聞いてこなかったじゃない」
カタカタとお嬢様の手が震えている。緊張して喉が乾くのだろう、今淹れたばかりの紅茶も一気に飲み干し、またおかわりを催促されてしまった。
「眠れなくなると大変ですので、お控えください」
時間を止めて、テーブルの上を片付ける。
パチュリー様が済ました顔で通り過ぎて行くのを、止めた。
「最後に、いいですか?」
「えぇ、何でも」
「教えてくれてもよかったじゃないですか」
「面白いからに決まってるわ」
やっぱりだ。
急に疲労感が押し寄せる。
「ちなみに、この話は紅魔館のどのくらいの面子が知っているのでしょうか」
これが聞きたかった。
もし妖精メイドまでもが知ってるとしたら、今までの私は何だったのだろうか。完全で瀟洒な従者とか堂々と名乗っていた私は一体……!
妖精メイド達がこれを知っていると知ったら、私は半日くらい引きこもってしまうかもしれない。
「何を言っているの」
パチュリー様が向けた優しい笑顔に、ほっと胸をなで下ろす。
ふふふと笑って、パチュリー様は後ろを向いて部屋の中へ歩いていった。
「おそらく、今日で幻想郷の住人全てが知ったことになるわ」
「え、それは、つまり?」
振り向いて、ため息をつかれてしまった。とても残念そうに。
「貴女以外、この地に住む全員が知っていたということよ。私達が酒の肴に言いふらしてたからね」
その後私は三日間引きこもりになった。
1様
笑わせる事できました!
奇声を発する程度の能力様
最初はシリアスだったんですけどね。まぁ、シリアスもシリとアスで分けて考えると、シリ→尻 アス→ass→尻 で尻々って書けるので、ギャグと紙一重だから仕方ないことだと思うんですけども。
愚迂多良童子様
ロリコン疑惑が最近あがってたんですよ。私の中で。こいしとかフランドールとか見たときにときめくこの気持ちはなんだろうと悩んでいたのですが、こいしやフランドールはさとりとレミリアがいるからいいんだなと気づかされたんです。恋かと思ったら恋じゃなかったっていう、あれです。
といっても無害なほうの。
こう、遊んでいる子供を遠くから眺めてほんわかする感じ?