あたかも今までがあったかの如く始まり、
あたかも続きがあるかのように終わります。
***
場所は紅魔館、昼なお暗い、大図書館の一室のお話。
一般的には静かで穏やかな世界だと思われている大図書館だが、
その一角に魔と魔をぶつけ合い、鎬を削るために特設された"修練場"がある事はあまり知られていない。
その修練所の扉を大きく開け放ち、挑戦的な表情で中に足を踏み入れるのは、『普通の魔法使い』霧雨魔理沙。
読んでいた本から顔を上げて、悠然とした態度でそれを迎え撃つのは、『動かない大図書館』パチュリー・ノーリッジ。
これから始まる戦いは、因縁の対決でもあった。
「パチュリー、勝負だ! 私と勝負をしろ!」
「あらあら。誰かと思えば、弱虫の魔理沙ちゃんじゃない。
私にボコボコに負けて、泣いて帰った子が何の用かしら?」
「そんなへらず口もここまでだ! 私はお前に負けて以来、ずっと特訓を重ねてきた!
もう貧弱な嬢ちゃんとは言わせないぜ!」
「その自信がどれほどのものか、存分に試してあげましょうか!」
部屋の中心に位置する机を挟んで退治する2人は、懐からカードの束を取り出した。
それは、ただのカード束ではない。己の誇りと日々の研鑽の結果を凝縮した、プライドそのものだ。
それを机に置き、魔理沙が定位置に着こうとすると、再び扉を開けてアリスが入ってきた。
「ダメよ魔理沙!」
「アリス!? どうしてここに!」
「あなたの事が心配で、見に来たの。ダメよ魔理沙、今のあなたでは、パチュリーに勝てない! 負けてしまうわ!」
「おいおいアリス、何を言っているんだ。私は勝つと言ったら勝つ女だぜ?」
「だって……だってあなた、必殺技のマスタースパークが使えないのでしょう!?
そんな状態でパチュリーに戦いを挑むなんて、無謀の極みよ!」
アリスの叫びに対して、魔理沙は無言を返す。
しかしその表情は晴れやかで、自身の勝利を欠片も疑っていない。
「……ちょっと、それって本当なの?」
「ええ、本当よ。調整に付き合っていた霊夢に聞いたんだから、間違いないわ」
「もしも本当なら、そんな腑抜けた状態で私に挑戦したって事?
馬鹿にしているのなら、本気で怒るわよ?」
「馬鹿にしてなんていないさ。ただ、私は悟ったんだ」
「ふぅん?」
「私は、お前にボコボコに負けて以来、ガムシャラに色んな奴と戦ってきた。
勝ったり負けたりしたし、時には引き分ける事もあった……」
「話には聞いているわ。レミィともやりあったってね」
「その激しい戦いの中で、そいつらに教えられたんだ。『カードには、相応しいデッキがある』ってな。
私のデッキは、パチュリーに勝つためのデッキだ。マスタースパークは、必要無い!」
力強く拳を握り、その手の中にあるものをパチュリーに掲げて見せる魔理沙。
その手に握られたカードには、自身のトレードマークを封印してでも勝つと言う、一途な力が篭っていた。
「魔理沙……」
「アリス、心配してくれてありがとうな。でも大丈夫、私は勝つ!」
「なるほど、いつまでもお尻の青い小娘じゃないって事ね。面白い!
それじゃあ、早速始めましょうか。魔女と魔法使いの頂上決戦よ!」
「応!」
バチバチと火花を散らしていた視線を外す事無く、互いに手を差し出してまずは握手。
この決闘が、互いの同意の上で行われる神聖な戦いである事を証明する通過儀礼だ。
ギチギチと関節が鳴るほど強く握りしめられた手を放し、自らの力を封じた札の束を手に取る。
それを勢いよく、相手を威嚇するかのように力強く、相手の前に叩きつける!
「「 お互いのデッキを、カット&シャッフル! 」」
目の前に置かれた対戦相手のデッキを、激しく、それでいて丁寧にカット。
不正の余地を失くすお約束の儀式を終えた所で、まずは小手調べ!
「「 運命のダイスロール!! 」」
先攻・後攻の決定はじゃんけんではなく、ダイスロールによって行われるのが紅魔館のハウスルール。
力強く繰り出された両名の手から、六面体のサイコロ2つが勢い良く繰り出される。
魔理沙の出目は11、パチュリーの出目は7。魔理沙の先攻だ。
攻めを得意とする魔理沙にとっては、幸先を良くする先勝だ。
「「 デュエルスタート! 」」
【紅魔館特別マッチ】
【霧雨魔理沙/寄せ集め三色ビート VS パチュリー=ノーリッジ/青単パーミッション】
「よし、まずは私のターン! 初手プレイヤーだから、ドローは無しでメインフェイズに入る。
手札から《森》をセットして、《極楽鳥》をプレイする! 頼むぜ、相棒!」
「《極楽鳥》……なるほど、緑を軸にした多色デッキね。
確か、以前戦った時は黒白緑のビートダウンだったかしら?」
「ああ、それは今も変わってないぜ。私のデッキは三色ビートダウンだ。
だけど、デッキの中のバランスを考えて改造を施した。
そして、このカードはその改造の筆頭。霊夢に勝って譲って貰った、友情の証だぜ! ターンエンド!」
「なるほど、『楽園の素敵な巫女』から《極楽鳥/Bird of Paradice》をね。
つまり、戦った相手から選別を集めて来たって事? それは厄介ね……」
「昔の私とは違う。そういった筈だぜ?」
「見てあげましょう。アンタップ、アップキープ、ドロー、《島》をセット、ターンエンドよ」
「相変わらず、舐めたようなプレイだな。だけど、その余裕顔をメタメタにしてやる!
私のターン。アンタップ、アップキープ、ドロー!
《森》をセットして、マナ源をフルタップ。手札から《木霊の手の内》をプレイするぜ。何かあるか?」
「……いえ、何も無いわ」
「では、効果を解決。山札から基本土地を2枚探して、片方を場にタップイン、もう片方を手札に入れる。
場に《沼》を出して、手札には《平地》だ。このままターンを返すぜ」
「アンタップ、アップキープ、ドロー、セット2枚目の《島》、ターンエンド」
***
時間は少し遡って、決闘者2人がダイスロールをしていた頃。
少し離れた場所に陣を構えた小悪魔が、紅茶とお菓子を携えて観客席を作り上げていた。
小悪魔の前には『メイン実況:小悪魔』と銘打たれたネームプレートが置かれており、その隣にはアリスが座らされていた。
「こぁ~! 皆さんお元気ですか? 解説席・実況の小悪魔です!
さあ、ついに始まりました注目のこの一戦!
ルール覚えたての魔理沙さんが、パチュリー様に12立て(=12連敗)を食らい、
涙目になって帰ってしまった事に端を発するこの因縁のバトル!
この短期間に、魔理沙さんはどれほどの鍛錬を積んだのでしょうか。楽しみですね!
……しかし、パチュリー様は動かないですねぇ。実況は暇です」
「青の基本戦術ですもの。カウンターとドローで時間とアドバンテージを稼いで、場を支配する。
知識に重きを置く、パチュリーらしいスタンダードなデッキだわ」
「アリスさんもお詳しいのですね。ではこれをどうぞ」
「これは?」
「ヘッドセットマイクです」
「どれどれ。あーあー、テステス、マイクテスト、あー……うん。2人ともー、聞こえるー?
(おー、聞こえるぜー / 聞こえるわよー)
調子はいいみたいね。解説席・解説のアリス=マーガトロイドです。よろしく」
「はい、よろしくお願いします。カード解説のフリップも用意してありますので、要所要所で出してもらえますか?」
「いいわよ。小間使いをよろしくね、上海?」
「シャンハーイ!」
「これ以降、『』でくくられた台詞は私達実況席の台詞です。ご了承下さいませ」
***
第3ターン
魔理沙:LP20 手札6 森2 沼1 極楽鳥
パチュ:LP20 手札7 島2
「さぁて、まずは小手調べだ。パチュリーに私のデッキを知ってもらわないとな。
まずは、手札からさっきサーチした《平地》を出すぜ」
「まだ3ターン目だというのに、5マナ圏にアクセスするのは緑ならではね。マナ基盤では勝てそうに無いわ」
「まあ、続いて見て驚け。沼以外をタップして、《野生語りのガラク》をプレイするぜ!」
「……ガラクですって!? そんなものを通したら、アドで圧し負けるじゃない!
島2枚をタップして、《マナ漏出》をプレイ。ガラクを出したかったら、(3)を追加で払いなさい!」
「おっとっと、それは無理だな。カウンターされて、ガラクが墓地に落ちた。ターンエンドだ。手札は5」
「危険なブッパをするじゃない……。
私のターン。アンタップ、アップキープ、ドロー、3枚目の島、エンドよ」
『初っ端から大雑把な手を打ってきたのは、やはり魔理沙さん!
強力なカードを捨石のように使いましたが、あれは一体どう言う事でしょうか?』
『何か、回収系のカードを積んでいるのかもしれないわね。それはさておき、最初のカード解説行くわよ』
『はい、お願いします』
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《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》 プレインズウォーカー ガラク
[+1]:土地2つを対象とし、それらをアンタップする。
[-1]:緑の3/3のビースト(Beast)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
[-4]:あなたがコントロールするクリーチャーは、ターン終了時まで+3/+3の修整を受けるとともにトランプルを得る。
初期忠誠度:3
~アリスのワンポイント~
言わずと知れた、プレインズウォーカーの代表格よ。
これが序盤に出てしまうと、青は立て直せなくなって積むかもしれないわね。
さりげに《洗い流し》とかの全体バウンスを牽制する効能も見逃せないわ。
プレインズウォーカー・カードを知らない人は、wikiを見てね。最近のカードは凄いわよー
……まあ、昔のぶっ壊れカードに追いついただけって気もするけどね。
作者のトラウマは《転覆》と《剣を鋤に》、ついでに《梅澤の十手》よ。
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第4ターン
魔理沙:LP20 手札5 森2 沼1 平地1 極楽鳥
パチュ:LP20 手札6 島3
「アンタップ、アップキープ、ドロー!
2枚目の《沼》をセットして、《ロクソドンの戦槌》をプレイするぜ!」
「ロクソドン……悩ましいところだけど、《極楽鳥》が攻勢に回るのは厄介ね。
《対抗呪文》よ。墓地に行きなさい」
「おう」
「……ねぇ。さっきから、以前に戦った時と殆ど同じ展開じゃない。
ハッキリ言うけど、このままだと、私が押し切られるよりあなたが攻め疲れる方が先よ?」
「パチュリー、言っただろう。これは、パチュリーに勝つためのデッキだって。
現にほら、いいカードを引いたんだぜ。ドランは残念なことになったが、ここに繋げられるなら問題は無い。
《極楽鳥》から黒マナを獲得。《思考囲い》をプレイだ! 追加コストとしてライフを2点ペイ!」
「ハ、ハンデス!? ぐぅっ……と、土地は何枚起きてる?」
「森が2枚だ。《魔力の乱れ》は効かないぜー」
「……ええい! 《渦巻く知識》をプレイするわ! カードを3枚引いてから、手札を2枚デッキトップに積む!」
「お、やるじゃないか」
「では3枚引いて……あら、意外と……これとこれを戻して……はい、私の手札はこんな感じよ」
【パチュリー手札(5枚)】
・蓄積した知識
・蓄積した知識
・ジェイスの創意
・禁止
・島
「……まあ、《禁止》かな。やったらめったら沢山あるドローカードを落としたいけど、これを残すのは危険過ぎる」
「はいはい。じゃあ墓地に落としたわよ。まだ何かあるの?」
「ある。と言うかこれが本題だ。残った森2枚を使って、《タルモゴイフ》を出すぜ」
「……今までの2枚は囮ってわけ? やるじゃない」
「言っただろう? カードゲームはパワーたぜ! ターンエンドだ!」
「言われて無いけどね。私のターン、アンタップ、アップキープ、ドロー、セット《島》、ターンエンド!」
『魔理沙さんの激しい攻勢! パチュリー様は手も足も出ないッッッ!』
『《木霊の手の内》が痛かったわね。あれでテンポとイニシアチブを完全に取られてしまっているわ』
『パチュリー様のデッキには《魔力の乱れ》や《目くらまし》が入っていた筈ですので、本当にバッドラックですね~』
『まあ、ダンスっちゃったものは仕方ないわ。ここからパチュリーがどう巻き返すのかが見物ね』
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《渦巻く知識 / Brainstorm》(青) インスタント
効果:カードを3枚引き、その後あなたの手札からカードを2枚、
あなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。
~アリスのワンポイント~
手札を入れ替える魔法よ。序盤展開の安定から後半の一押しまで、一枚でこなす万能ドローね。
山札をシャッフルするカードと合わせて使うのが効果的なのだけど、単体でもご覧の通り。
パチュリーが使ったみたいに、敵のハンデスに対して最も大事なカードを守るために使う事もできるの。
さて、パチュリーがトップに積んだのは何かしら?
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《思考囲い/Thoughtseize》 (黒) ソーサリー
効果:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは手札を公開する。
あなたはその中から土地ではないカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。
あなたは2点のライフを失う。
~アリスのワンポイント~
《強迫》の親戚で、クリーチャーも落とせる代わりにライフロスがついたわ。
僅か1マナで敵の手札を覗ける点も含めて、正に青の天敵カードね。
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《タルモゴイフ/Tarmogoyf》 (緑)(1) クリーチャー ルアゴイフ
特殊能力:タルモゴイフのパワーは、すべての墓地にあるカードのカード・タイプの数に等しく、
タフネスはその点数に1を加えた点数に等しい。
【*/1+*】
~アリスのワンポイント~
魔理沙が2枚のカードを囮にして出した切り札カードで、
『逃げろ、ハンス! ルアゴイフだ! 』で有名なルアゴイフ族の一角よ。
現状だと『インスタント、ソーサリー、アーティファクト、プレインズ・ウォーカー』が
墓地に落ちてるから、2マナ4/5と言う意味不明な強さの子になっているわね。
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第5ターン
魔理沙:LP18 手札3 森2 沼2 平地1 極楽鳥 タルモ
パチュ:LP20 手札4 島4
「アンタップ、アップキープ、ドロー!
まずは3マナを使って《クローサの大牙獣》をサイクリングする。何かあるか?」
「何も無いわ」
「んじゃ、《クローサの大牙獣》の効果で、サイクリングした時に基本土地を一枚サーチする。
《平地》を手札に入れて、デッキをシャッフルして、1枚ドロー……うげぇ!?」
「何か変なモノを引いたのかしら?」
「ああ、とびっきりのカードを今更引いたぜ、コンチクショウ。
今引いた《新緑の地下墓地》を出して、効果を起動する。
1点のライフを払ってこれを生贄に捧げることで、《森》か《沼》をアンタップ状態で場に出せる。今回は《森》を選択だ」
「私が青で、何もしていないのに、魔理沙の方ばっかりライフが削れる。面白い状態ね」
「はっはっは、確かに。だが、それもこれまでだ。
土地とクリーチャーが墓地に増えたから、《タルモゴイフ》が6/7になった。パーンチ!」
「はいはい、バトルフェイズに入って、単騎で攻撃宣言ね。残り14よ」
「メイン2。《調和》を打ちたいんだが?」
「さすがにそれはさせないわよ。土地を全部寝かせて、《巻き直し》をプレイするわ」
「だよなー。でもきっついなー。《調和》はカウンターされた」
「では、《巻き直し》の効果で土地が4つアンタップ。他に何か?」
「いや、このターンはもう何も無い。ターンエンドだ」
「では、そちらのエンド前。《蓄積した知識》を3枚とも使うわ。合わせて、3ドローね。対応して何かする?」
「いや、そのままターンを持っていってくれ」
「アンタップ、アップキープ、ドロー、セット《島》、ターンエンドよ」
『むむむ、前のターンにパチュリー様がトップに積んでいたのは《巻き直し》だったのですね』
「何がむむむだ! ……それはさておき、これはパチュリーの妙手ね。
場の《タルモゴイフ》には触れてないけど、手札の補充が完了したわ。
魔理沙のデッキ特徴を考えると猶予は全く無いけど、少しずつ調子が出てきたんじゃない?』
『喘息のお薬が効いてきましたかねー。ところで、何で『今更引いた』なのですか?』
『だってあれ、初手に欲しいカードじゃない。タルモを育てるのに役立ったけど、今更引いてどうするのよ』
『あー……まあ、デッキの圧縮ですかね』
『魔理沙としては、早く後続を出したいでしょうね。
パチュリーのカウンターが途切れないし、タルモ一匹だと不安な筈よ』
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《巻き直し/Rewind》 (青)(青)(2) インスタント
効果:呪文1つを対象とし、それを打ち消す。土地を最大4つまでアンタップする。
~アリスのワンポイント~
良くも悪くも悪名高い、ウルザブロック初出の優秀なカウンターカードよ。
効果はご覧の通り極悪非道。基本セットにも収録された事があるし、知らない人は少ないんじゃないかしら?
あ、パーミッション同士のカウンター対決には重い分不利だから注意ね。作者はそれでウボァーした事があるわ。
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第6ターン
魔理沙:LP17 手札2 森3 沼2 平地1 極楽鳥 タルモ
パチュ:LP14 手札4 島5
「アンタップ、アップキープ、ドロー! とりあえず、《平地》をセットしてから《タルモゴイフ》でアタックだ」
「残り8よ」
「メイン2……はやる事が無いな。ターンエンド」
「では、そちらのターンエンド前に《ジェイスの創意》をプレイ。インスタント3ドローのカードよ」
「ほいほい」
「そしてこっちのターン、アンタップ、アップキープ、ドロー、セット《島》。ここまではもはやテンプレね」
「何を今更」
「そして、ターンエンド。これも様式美よ」
『魔理沙の動きが鈍ってきたわね。これからがパチュリーの巻き返しのターンよ』
『これで、さっきの《思考囲い》で見られたカードは全部処理した計算になりますね』
『そうね。結果的に、《思考囲い》はそこまで致命傷にならなかったらしいわね。
まあ、タルモが出せたから魔理沙としては満足でしょう』
『あれが無かったら、全部カウンターできていたかもしれないのに……』
『こらこら、実況者が片方に肩入れしてどうするのよ』
『私はパチュリー様の使い魔ですからー』
第7ターン
魔理沙:LP17 手札3 森3 沼2 平地1 極楽鳥 タルモ
パチュ:LP 8 手札6 島6
「アンタップ、アップキープ、ドロー! このまま押し切る! 《タルモゴイフ》でプレイヤーにダイレクトアタッ……」
「お待ちなさい! そちらの攻撃クリーチャー指定前! 私は手札から《送還》をプレイするわ。さあ、手札に戻りなさい!」
「おっと、それには及ばないぜ。私は手札から《岩石樹の祈り》をプレイする。対象はもちろん《タルモゴイフ》だ!」
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《岩石樹の祈り/Stonewood Invocation》 (3)(緑) インスタント
効果:刹那
クリーチャー1体を対象とする。
それはターン終了時まで+5/+5の修整を受けるとともに被覆を得る。
~アリスのワンポイント~
緑が得意とする《巨大化》系統のカードで、対象クリーチャーを二回り大きくした上に、被覆までつけるの。
しかも、『刹那』がついているからカウンターも不可能。パチュリーは手も足も出せないわ。
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『あーっと、ここで魔理沙さんの切り札が発動! ただでさえ強い《タルモゴイフ》に被覆がついたー!
この光景はさながら《ブラストダーム》を相手にした青使いのよう!』
『タルモの弱点は、単純にサイズだけで回避能力も何も無い事。それを補ったのね! これは、決まったんじゃない!?』
「《タルモゴイフ》の能力は『11/12』にまで成長した! このまま殴って私の勝ちだ! デュエルはパワーだぜ!」
「甘い! 甘すぎるわ! その程度を私が読んでいないとでも思ったの?」
「……何だと?」
「被覆だか何だか知らないけど、このカードの前には無力よ。攻撃クリーチャー指定前は代わらず。
発動、《謎めいた命令》! モードはタップとドロー!」
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《謎めいた命令/Cryptic Command》 (1)(青)(青)(青) インスタント
効果:以下の4つから2つを選ぶ。
・「呪文1つを対象とし、それを打ち消す。」
・「パーマネント1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す。」
・「あなたの対戦相手がコントロールするすべてのクリーチャーをタップする。」
・「カードを1枚引く。」
~アリスのワンポイント~
ローウィン初出の『命令』サイクルの青版で、選ぶモード次第では何でもできる万能選手ね。
今回使われた三つ目のモードは、対象を取っていないから『被覆』では防げないわ。
当然、タップすれば攻撃はできなくなるから、結果的にカウンターできない筈の《岩石樹の祈り》をカウンターした形になったわ。
さすがはパチュリーと言った所かしら。首の皮一枚繋がったわ。さてさて。
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「くそっ、《岩石樹の祈り》は無駄撃ちか。……仕方ない。
《タルモゴイフ》と《極楽鳥》をタップするぜ」
「……ああ、いたわね。そんな子も」
「私の相棒に酷いんだぜ。バトルを抜けて、メイン2。《タルモゴイフ》を出し直すぜ」
「それは通したわ。それで?」
「通るのかよ……嫌な予感しかしないぜ。
セット《沼》で……ええい、仕方ない! 2枚目の《調和》だ!
マナはいくらか余裕があるし、島は1枚しか起きてないから、あのカードが無い限り通る……」
「あのカードとは、このカードの事かしら? 《撃退》をプレイ。
手札から《魔力の乱れ》と《島》を捨てて、《調和》をカウンターするわ。残り手札は2枚」
「やっぱりあったか……。ターンを返すぜ」
「では、私のターン。アンタップ、アップキープ、ドロー、セット《島》はしないわ。
代わりに、私は手札から《不実》をプレイする。対象は《タルモゴイフ》。何か?」
「……いや、何も無いぜ」
「《タルモゴイフ》のコントロールがこちらに移って、土地を5つアンタップ。
……よく頑張ったわね、魔理沙。でも、ここで引導を渡してあげる。
私は手札から、《精神を刻む者、ジェイス》をプレイするわ」
「ジェイスか……へっ、私をぼこってくれたカードがここでご登場か。憎い演出だぜ」
「ジェイス第一の能力を起動。魔理沙のデッキトップを見るわ。……このままで」
「やれやれ、何を掴まされるんだか」
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《不実/Treachery》 (3)(青)(青) エンチャント オーラ(クリーチャー)
効果:不実が戦場に出たとき、土地を最大5つまでアンタップする。
あなたはエンチャントされているクリーチャーをコントロールする。
~アリスのワンポイント~
良くも悪くも悪名高い、ウルザブロック初出の優秀な……このフレーズ2回目よ。まあいいけど。
相手のクリーチャーを奪った上で、土地まで起こせると来れば弱いわけが無いわ。
ノン・クリーチャーデッキが相手だと腐るんだけど、魔理沙相手なら問題ないわね。
スピード重視の環境だと5マナは重いけど、これは魔理沙対策のカードみたいね。
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《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》 (2)(青)(青) プレインズウォーカー ジェイス
[+2]:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーの一番上のカードを見る。
あなたはそのカードを、そのプレイヤーのライブラリーの一番下に置いてもよい。
[0]: カードを3枚引く。その後、あなたの手札のカード2枚をあなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。
[-1]:クリーチャー1体を対象とし、それをオーナーの手札に戻す。
[-12]:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーからすべてのカードを追放する。
その後、そのプレイヤーは自分の手札を自分のライブラリーに加えて切り直す。
【初期忠誠度:3】
~アリスのワンポイント~
ワールドウェイクで登場したプレインズ・ウォーカーで……って、パチュリーは何てものを積んでるのよ! 自重しなさい!
知っている人には説明不要、知らない人は効果を見てゆっくり驚いて行ってね!
詳しくちゃんと説明すると長くなるから割愛! wikiを見なさい!
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『いやいやいや! 解説を放り投げないで下さいよ!』
『だって、もう終わりでしょう? この状況で魔理沙が勝てる要素は無いわよー』
『まぁ……そうですね。頼りに綱である《タルモゴイフ》もパチュリー様のものになりましたし、コントロールも完全に確立しました。
この状況から抜け出すのは困難でしょう』
『タルモゴイフのパワーが、そのまま跳ね返ってくる形ね。
ジェイスのせいでドローの質が低下している状況下で、カウンターの防御を掻い潜り、
クリーチャーを出して、タルモを突破し、パチュリーのライフを8点も削る……まあ、不可能に近いわね』
『この状況を打破できるクリーチャーってどれくらいいますかね?』
『クリーチャーではいないと思……あ、そうか、あれなら……ひぃ、ふぅ、みぃ……面白いわね』
『? どうしましたか?』
『魔理沙のデッキに、あのカードが入っていれば分からないわね。
魔理沙の手札に残った最後の1枚と、今のパチュリーの選択が全てを決めるわ』
第8ターン
魔理沙:LP17 手札1 森3 沼3 平地1 極楽鳥
パチュ:LP 8 手札1 島6 神ジェイス タルモ
「ターンを始める前に、一つ聞きたい。パチュリー、私は強くなったか?」
「ええ、それは認めてあげる。
《木霊の手の内》等のマナ加速も何も無しに、愚直に毎ターン土地を出して、
《甲殻のワーム》やら《クローサの雲掻き獣》やらの馬鹿みたいに大きなクリーチャーだけをデッキに積んで、
私のデッキに手も足も出ないでボコボコにされた泣き虫まりちゃんが、私を後一歩まで追い詰めた。
正直、大した進歩だと思うわ」
「ハハッ、まだ勝ったわけじゃないって言うのに、随分と余裕だな。優位と勝利は違うんだぜ?」
「そうね。まだ何があるか分からないわね。だから一つ教えてあげましょう。
私の手札にあるのは、《対抗呪文》よ」
手札を表返して、魔理沙にそれを見せ付けるパチュリー。
そこには《対抗呪文》の四文字が堂々と記されていた。
「……へぇ。やっぱり握ってやがったのか」
「そして、あなたのデッキトップは《森》よ。これから毎ターン、あなたには要らないカードを押し付けてあげる。
ライフが尽きるのが先か、ジェイスがデッキを削るのが先か。残された未来はそれだけよ」
「……」
「サレンダー、認めてあげてもいいわよ」
「……くっ」
『魔理沙さんの腕がガックリと落ちて、顔も下を向いてしまいました。
肩も震えていますし……泣いているのでしょうか?
パチュリー様ラブの私としては、正しくメシウマです』
『こら。でも、このまま無駄にターンを過ごすくらいなら、いっその事サレンダーも……
いえ、待ちなさい。様子が変だわ!』
『こぁ!?』
「……くっくっく……」
「ん?」
「くっくっくっく……はーっはっはっはっは! そうか、デッキトップは土地か! はっはっは!」
「な……っ! 何を笑っているの!?」
「くっくっく……いやぁ、悪いなパチュリー。お前には一つだけ嘘をついていたことがある」
「……言ってみなさい」
「このデッキが、緑黒白のビートダウンだと言ったな。あれは嘘だ!」
「!?」
「私のターン! アンタップ、アップキープ、ドロー! セット《森》!
行くぜ相棒! 《極楽鳥》をタップして、『赤マナ』を出すぜ!」
「赤……まさか、X火力!? でも、それじゃあ私は倒せないわよ!」
「ところが、倒せるんだな! 行くぜ、私は手札から、《悪魔火》をプレイする!
「あ、《悪魔火》ですって!? それはレミィが愛用しているカード!」
「ああ、レミリアから貰ったカードだ! それでお前を倒す!
土地も全部タップして、これで合計9マナ! Xの値は……8だ!」
「私の残りライフは……8!」
「とどめだパチュリー! 喰らいやがれ!」
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《悪魔火/Demonfire》 (赤)(X) ソーサリー
効果:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。悪魔火はそれにX点のダメージを与える。
このターン、これによりダメージを与えられたクリーチャーが墓地に置かれる場合、代わりにそれを追放する。
暴勇 ― あなたの手札にカードがない場合、悪魔火は呪文や能力によっては打ち消されず、そのダメージは軽減されない。
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「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
轟ッ!
カードから招来された地獄の炎がパチュリーの全身を焼き焦がし、それが決め手となった。
魔理沙による乾坤一擲の一撃によってライフを0にされたパチュリーは、胸を押さえて机に倒れ付した。
「ふぅ……。デッキトップが土地じゃなかったら、ダメージが足りないで負けていた。
それが今回の勝因だな。パチュリー、借りは返したぜ!」
「ぐ、ぐぅ……! まさか、あの状況から負けるなんて……! 詰めを誤ったと言うの?」
「パチュリーの選択は、間違ってなかったさ。ただ……そうだな。お前は『初見殺し』に引っかかったんだよ。
《木霊の手の内》や《クローサの大牙獣》で《山》を持ってこなかったのは、これを狙っていたからさ」
「むきゅう、不覚……」
「魔理沙、やったわね!」
「おう! 応援してくれて、ありがとうなアリス!」
互いのプライドと研鑽を賭けてのデュエルは現実にまで影響を与え、パチュリーの身体にまで影響を与えたのだ。
慌てて駆け寄る小悪魔、苦悶の表情を浮かべるパチュリー、満面の笑顔をアリスへと返す魔理沙と、それに涙さえ浮かべて頷きを返すアリス。
決着は、ついた。
「……まだよ」
「……ああ、まだだな」
「「 !? 」」
そう思っていたのは、アリスと小悪魔だけだった。
笑顔を浮かべながらも、魔理沙は自身の闘志を抜き身のままにしており、鞘に収めては居なかった。
それはパチュリーも同じで、自身の介護をしようとした小悪魔を突き飛ばした。
「きゃう!? パチュリー様……?」
「……まだよ! まだ終わってはいないわ!」
「ああ、そうだな。まだ終わっちゃいない! 私の闘志は、お前を完全粉砕するまで収まることはないぜ!」
「魔理沙! もう勝ったんだからそれでいいでしょう!? パチュリーはもうボロボロよ!」
「パチュリー様! 落ち着いて、落ち着いて下さい! 喘息の発作が出てしまいますよ!」
「この程度、気合で何とかするわよ! 魔女を舐めるんじゃないわ! ……魔理沙、席に着きなさい!」
「もちろんだパチュリー! 私はパチュリーに正式なデュエルを申し込みに来たんだ!
まだ初戦が終わったばかり……まだ、マッチは終わってないぜ!」
「よろしい! どうやら、私はあなたの事を甘く見ていたみたいね。
まさか、使うことになるとは思わなかったけど……先に宣言するわ。
私はサイドカードを15枚、フルで投入する!」
「……ほーう? それはつまり、それは私対策のためのサイドボードだって事か?」
「その通り! 第二戦は、10分のインターバルを挟んだ後! 私の本気を見せてあげるわ!」
「望むところだ! このまま連勝して、トラウマを克服してやるぜ!」
次回、魔理沙 vs パチュリー 第二回戦!
『鮮烈! 裏切りのD・M・スパーク!』
待て次回!
(了)
あたかも続きがあるかのように終わります。
***
場所は紅魔館、昼なお暗い、大図書館の一室のお話。
一般的には静かで穏やかな世界だと思われている大図書館だが、
その一角に魔と魔をぶつけ合い、鎬を削るために特設された"修練場"がある事はあまり知られていない。
その修練所の扉を大きく開け放ち、挑戦的な表情で中に足を踏み入れるのは、『普通の魔法使い』霧雨魔理沙。
読んでいた本から顔を上げて、悠然とした態度でそれを迎え撃つのは、『動かない大図書館』パチュリー・ノーリッジ。
これから始まる戦いは、因縁の対決でもあった。
「パチュリー、勝負だ! 私と勝負をしろ!」
「あらあら。誰かと思えば、弱虫の魔理沙ちゃんじゃない。
私にボコボコに負けて、泣いて帰った子が何の用かしら?」
「そんなへらず口もここまでだ! 私はお前に負けて以来、ずっと特訓を重ねてきた!
もう貧弱な嬢ちゃんとは言わせないぜ!」
「その自信がどれほどのものか、存分に試してあげましょうか!」
部屋の中心に位置する机を挟んで退治する2人は、懐からカードの束を取り出した。
それは、ただのカード束ではない。己の誇りと日々の研鑽の結果を凝縮した、プライドそのものだ。
それを机に置き、魔理沙が定位置に着こうとすると、再び扉を開けてアリスが入ってきた。
「ダメよ魔理沙!」
「アリス!? どうしてここに!」
「あなたの事が心配で、見に来たの。ダメよ魔理沙、今のあなたでは、パチュリーに勝てない! 負けてしまうわ!」
「おいおいアリス、何を言っているんだ。私は勝つと言ったら勝つ女だぜ?」
「だって……だってあなた、必殺技のマスタースパークが使えないのでしょう!?
そんな状態でパチュリーに戦いを挑むなんて、無謀の極みよ!」
アリスの叫びに対して、魔理沙は無言を返す。
しかしその表情は晴れやかで、自身の勝利を欠片も疑っていない。
「……ちょっと、それって本当なの?」
「ええ、本当よ。調整に付き合っていた霊夢に聞いたんだから、間違いないわ」
「もしも本当なら、そんな腑抜けた状態で私に挑戦したって事?
馬鹿にしているのなら、本気で怒るわよ?」
「馬鹿にしてなんていないさ。ただ、私は悟ったんだ」
「ふぅん?」
「私は、お前にボコボコに負けて以来、ガムシャラに色んな奴と戦ってきた。
勝ったり負けたりしたし、時には引き分ける事もあった……」
「話には聞いているわ。レミィともやりあったってね」
「その激しい戦いの中で、そいつらに教えられたんだ。『カードには、相応しいデッキがある』ってな。
私のデッキは、パチュリーに勝つためのデッキだ。マスタースパークは、必要無い!」
力強く拳を握り、その手の中にあるものをパチュリーに掲げて見せる魔理沙。
その手に握られたカードには、自身のトレードマークを封印してでも勝つと言う、一途な力が篭っていた。
「魔理沙……」
「アリス、心配してくれてありがとうな。でも大丈夫、私は勝つ!」
「なるほど、いつまでもお尻の青い小娘じゃないって事ね。面白い!
それじゃあ、早速始めましょうか。魔女と魔法使いの頂上決戦よ!」
「応!」
バチバチと火花を散らしていた視線を外す事無く、互いに手を差し出してまずは握手。
この決闘が、互いの同意の上で行われる神聖な戦いである事を証明する通過儀礼だ。
ギチギチと関節が鳴るほど強く握りしめられた手を放し、自らの力を封じた札の束を手に取る。
それを勢いよく、相手を威嚇するかのように力強く、相手の前に叩きつける!
「「 お互いのデッキを、カット&シャッフル! 」」
目の前に置かれた対戦相手のデッキを、激しく、それでいて丁寧にカット。
不正の余地を失くすお約束の儀式を終えた所で、まずは小手調べ!
「「 運命のダイスロール!! 」」
先攻・後攻の決定はじゃんけんではなく、ダイスロールによって行われるのが紅魔館のハウスルール。
力強く繰り出された両名の手から、六面体のサイコロ2つが勢い良く繰り出される。
魔理沙の出目は11、パチュリーの出目は7。魔理沙の先攻だ。
攻めを得意とする魔理沙にとっては、幸先を良くする先勝だ。
「「 デュエルスタート! 」」
【紅魔館特別マッチ】
【霧雨魔理沙/寄せ集め三色ビート VS パチュリー=ノーリッジ/青単パーミッション】
「よし、まずは私のターン! 初手プレイヤーだから、ドローは無しでメインフェイズに入る。
手札から《森》をセットして、《極楽鳥》をプレイする! 頼むぜ、相棒!」
「《極楽鳥》……なるほど、緑を軸にした多色デッキね。
確か、以前戦った時は黒白緑のビートダウンだったかしら?」
「ああ、それは今も変わってないぜ。私のデッキは三色ビートダウンだ。
だけど、デッキの中のバランスを考えて改造を施した。
そして、このカードはその改造の筆頭。霊夢に勝って譲って貰った、友情の証だぜ! ターンエンド!」
「なるほど、『楽園の素敵な巫女』から《極楽鳥/Bird of Paradice》をね。
つまり、戦った相手から選別を集めて来たって事? それは厄介ね……」
「昔の私とは違う。そういった筈だぜ?」
「見てあげましょう。アンタップ、アップキープ、ドロー、《島》をセット、ターンエンドよ」
「相変わらず、舐めたようなプレイだな。だけど、その余裕顔をメタメタにしてやる!
私のターン。アンタップ、アップキープ、ドロー!
《森》をセットして、マナ源をフルタップ。手札から《木霊の手の内》をプレイするぜ。何かあるか?」
「……いえ、何も無いわ」
「では、効果を解決。山札から基本土地を2枚探して、片方を場にタップイン、もう片方を手札に入れる。
場に《沼》を出して、手札には《平地》だ。このままターンを返すぜ」
「アンタップ、アップキープ、ドロー、セット2枚目の《島》、ターンエンド」
***
時間は少し遡って、決闘者2人がダイスロールをしていた頃。
少し離れた場所に陣を構えた小悪魔が、紅茶とお菓子を携えて観客席を作り上げていた。
小悪魔の前には『メイン実況:小悪魔』と銘打たれたネームプレートが置かれており、その隣にはアリスが座らされていた。
「こぁ~! 皆さんお元気ですか? 解説席・実況の小悪魔です!
さあ、ついに始まりました注目のこの一戦!
ルール覚えたての魔理沙さんが、パチュリー様に12立て(=12連敗)を食らい、
涙目になって帰ってしまった事に端を発するこの因縁のバトル!
この短期間に、魔理沙さんはどれほどの鍛錬を積んだのでしょうか。楽しみですね!
……しかし、パチュリー様は動かないですねぇ。実況は暇です」
「青の基本戦術ですもの。カウンターとドローで時間とアドバンテージを稼いで、場を支配する。
知識に重きを置く、パチュリーらしいスタンダードなデッキだわ」
「アリスさんもお詳しいのですね。ではこれをどうぞ」
「これは?」
「ヘッドセットマイクです」
「どれどれ。あーあー、テステス、マイクテスト、あー……うん。2人ともー、聞こえるー?
(おー、聞こえるぜー / 聞こえるわよー)
調子はいいみたいね。解説席・解説のアリス=マーガトロイドです。よろしく」
「はい、よろしくお願いします。カード解説のフリップも用意してありますので、要所要所で出してもらえますか?」
「いいわよ。小間使いをよろしくね、上海?」
「シャンハーイ!」
「これ以降、『』でくくられた台詞は私達実況席の台詞です。ご了承下さいませ」
***
第3ターン
魔理沙:LP20 手札6 森2 沼1 極楽鳥
パチュ:LP20 手札7 島2
「さぁて、まずは小手調べだ。パチュリーに私のデッキを知ってもらわないとな。
まずは、手札からさっきサーチした《平地》を出すぜ」
「まだ3ターン目だというのに、5マナ圏にアクセスするのは緑ならではね。マナ基盤では勝てそうに無いわ」
「まあ、続いて見て驚け。沼以外をタップして、《野生語りのガラク》をプレイするぜ!」
「……ガラクですって!? そんなものを通したら、アドで圧し負けるじゃない!
島2枚をタップして、《マナ漏出》をプレイ。ガラクを出したかったら、(3)を追加で払いなさい!」
「おっとっと、それは無理だな。カウンターされて、ガラクが墓地に落ちた。ターンエンドだ。手札は5」
「危険なブッパをするじゃない……。
私のターン。アンタップ、アップキープ、ドロー、3枚目の島、エンドよ」
『初っ端から大雑把な手を打ってきたのは、やはり魔理沙さん!
強力なカードを捨石のように使いましたが、あれは一体どう言う事でしょうか?』
『何か、回収系のカードを積んでいるのかもしれないわね。それはさておき、最初のカード解説行くわよ』
『はい、お願いします』
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《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》 プレインズウォーカー ガラク
[+1]:土地2つを対象とし、それらをアンタップする。
[-1]:緑の3/3のビースト(Beast)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
[-4]:あなたがコントロールするクリーチャーは、ターン終了時まで+3/+3の修整を受けるとともにトランプルを得る。
初期忠誠度:3
~アリスのワンポイント~
言わずと知れた、プレインズウォーカーの代表格よ。
これが序盤に出てしまうと、青は立て直せなくなって積むかもしれないわね。
さりげに《洗い流し》とかの全体バウンスを牽制する効能も見逃せないわ。
プレインズウォーカー・カードを知らない人は、wikiを見てね。最近のカードは凄いわよー
……まあ、昔のぶっ壊れカードに追いついただけって気もするけどね。
作者のトラウマは《転覆》と《剣を鋤に》、ついでに《梅澤の十手》よ。
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第4ターン
魔理沙:LP20 手札5 森2 沼1 平地1 極楽鳥
パチュ:LP20 手札6 島3
「アンタップ、アップキープ、ドロー!
2枚目の《沼》をセットして、《ロクソドンの戦槌》をプレイするぜ!」
「ロクソドン……悩ましいところだけど、《極楽鳥》が攻勢に回るのは厄介ね。
《対抗呪文》よ。墓地に行きなさい」
「おう」
「……ねぇ。さっきから、以前に戦った時と殆ど同じ展開じゃない。
ハッキリ言うけど、このままだと、私が押し切られるよりあなたが攻め疲れる方が先よ?」
「パチュリー、言っただろう。これは、パチュリーに勝つためのデッキだって。
現にほら、いいカードを引いたんだぜ。ドランは残念なことになったが、ここに繋げられるなら問題は無い。
《極楽鳥》から黒マナを獲得。《思考囲い》をプレイだ! 追加コストとしてライフを2点ペイ!」
「ハ、ハンデス!? ぐぅっ……と、土地は何枚起きてる?」
「森が2枚だ。《魔力の乱れ》は効かないぜー」
「……ええい! 《渦巻く知識》をプレイするわ! カードを3枚引いてから、手札を2枚デッキトップに積む!」
「お、やるじゃないか」
「では3枚引いて……あら、意外と……これとこれを戻して……はい、私の手札はこんな感じよ」
【パチュリー手札(5枚)】
・蓄積した知識
・蓄積した知識
・ジェイスの創意
・禁止
・島
「……まあ、《禁止》かな。やったらめったら沢山あるドローカードを落としたいけど、これを残すのは危険過ぎる」
「はいはい。じゃあ墓地に落としたわよ。まだ何かあるの?」
「ある。と言うかこれが本題だ。残った森2枚を使って、《タルモゴイフ》を出すぜ」
「……今までの2枚は囮ってわけ? やるじゃない」
「言っただろう? カードゲームはパワーたぜ! ターンエンドだ!」
「言われて無いけどね。私のターン、アンタップ、アップキープ、ドロー、セット《島》、ターンエンド!」
『魔理沙さんの激しい攻勢! パチュリー様は手も足も出ないッッッ!』
『《木霊の手の内》が痛かったわね。あれでテンポとイニシアチブを完全に取られてしまっているわ』
『パチュリー様のデッキには《魔力の乱れ》や《目くらまし》が入っていた筈ですので、本当にバッドラックですね~』
『まあ、ダンスっちゃったものは仕方ないわ。ここからパチュリーがどう巻き返すのかが見物ね』
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《渦巻く知識 / Brainstorm》(青) インスタント
効果:カードを3枚引き、その後あなたの手札からカードを2枚、
あなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。
~アリスのワンポイント~
手札を入れ替える魔法よ。序盤展開の安定から後半の一押しまで、一枚でこなす万能ドローね。
山札をシャッフルするカードと合わせて使うのが効果的なのだけど、単体でもご覧の通り。
パチュリーが使ったみたいに、敵のハンデスに対して最も大事なカードを守るために使う事もできるの。
さて、パチュリーがトップに積んだのは何かしら?
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《思考囲い/Thoughtseize》 (黒) ソーサリー
効果:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは手札を公開する。
あなたはその中から土地ではないカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。
あなたは2点のライフを失う。
~アリスのワンポイント~
《強迫》の親戚で、クリーチャーも落とせる代わりにライフロスがついたわ。
僅か1マナで敵の手札を覗ける点も含めて、正に青の天敵カードね。
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《タルモゴイフ/Tarmogoyf》 (緑)(1) クリーチャー ルアゴイフ
特殊能力:タルモゴイフのパワーは、すべての墓地にあるカードのカード・タイプの数に等しく、
タフネスはその点数に1を加えた点数に等しい。
【*/1+*】
~アリスのワンポイント~
魔理沙が2枚のカードを囮にして出した切り札カードで、
『逃げろ、ハンス! ルアゴイフだ! 』で有名なルアゴイフ族の一角よ。
現状だと『インスタント、ソーサリー、アーティファクト、プレインズ・ウォーカー』が
墓地に落ちてるから、2マナ4/5と言う意味不明な強さの子になっているわね。
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第5ターン
魔理沙:LP18 手札3 森2 沼2 平地1 極楽鳥 タルモ
パチュ:LP20 手札4 島4
「アンタップ、アップキープ、ドロー!
まずは3マナを使って《クローサの大牙獣》をサイクリングする。何かあるか?」
「何も無いわ」
「んじゃ、《クローサの大牙獣》の効果で、サイクリングした時に基本土地を一枚サーチする。
《平地》を手札に入れて、デッキをシャッフルして、1枚ドロー……うげぇ!?」
「何か変なモノを引いたのかしら?」
「ああ、とびっきりのカードを今更引いたぜ、コンチクショウ。
今引いた《新緑の地下墓地》を出して、効果を起動する。
1点のライフを払ってこれを生贄に捧げることで、《森》か《沼》をアンタップ状態で場に出せる。今回は《森》を選択だ」
「私が青で、何もしていないのに、魔理沙の方ばっかりライフが削れる。面白い状態ね」
「はっはっは、確かに。だが、それもこれまでだ。
土地とクリーチャーが墓地に増えたから、《タルモゴイフ》が6/7になった。パーンチ!」
「はいはい、バトルフェイズに入って、単騎で攻撃宣言ね。残り14よ」
「メイン2。《調和》を打ちたいんだが?」
「さすがにそれはさせないわよ。土地を全部寝かせて、《巻き直し》をプレイするわ」
「だよなー。でもきっついなー。《調和》はカウンターされた」
「では、《巻き直し》の効果で土地が4つアンタップ。他に何か?」
「いや、このターンはもう何も無い。ターンエンドだ」
「では、そちらのエンド前。《蓄積した知識》を3枚とも使うわ。合わせて、3ドローね。対応して何かする?」
「いや、そのままターンを持っていってくれ」
「アンタップ、アップキープ、ドロー、セット《島》、ターンエンドよ」
『むむむ、前のターンにパチュリー様がトップに積んでいたのは《巻き直し》だったのですね』
「何がむむむだ! ……それはさておき、これはパチュリーの妙手ね。
場の《タルモゴイフ》には触れてないけど、手札の補充が完了したわ。
魔理沙のデッキ特徴を考えると猶予は全く無いけど、少しずつ調子が出てきたんじゃない?』
『喘息のお薬が効いてきましたかねー。ところで、何で『今更引いた』なのですか?』
『だってあれ、初手に欲しいカードじゃない。タルモを育てるのに役立ったけど、今更引いてどうするのよ』
『あー……まあ、デッキの圧縮ですかね』
『魔理沙としては、早く後続を出したいでしょうね。
パチュリーのカウンターが途切れないし、タルモ一匹だと不安な筈よ』
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《巻き直し/Rewind》 (青)(青)(2) インスタント
効果:呪文1つを対象とし、それを打ち消す。土地を最大4つまでアンタップする。
~アリスのワンポイント~
良くも悪くも悪名高い、ウルザブロック初出の優秀なカウンターカードよ。
効果はご覧の通り極悪非道。基本セットにも収録された事があるし、知らない人は少ないんじゃないかしら?
あ、パーミッション同士のカウンター対決には重い分不利だから注意ね。作者はそれでウボァーした事があるわ。
----------
第6ターン
魔理沙:LP17 手札2 森3 沼2 平地1 極楽鳥 タルモ
パチュ:LP14 手札4 島5
「アンタップ、アップキープ、ドロー! とりあえず、《平地》をセットしてから《タルモゴイフ》でアタックだ」
「残り8よ」
「メイン2……はやる事が無いな。ターンエンド」
「では、そちらのターンエンド前に《ジェイスの創意》をプレイ。インスタント3ドローのカードよ」
「ほいほい」
「そしてこっちのターン、アンタップ、アップキープ、ドロー、セット《島》。ここまではもはやテンプレね」
「何を今更」
「そして、ターンエンド。これも様式美よ」
『魔理沙の動きが鈍ってきたわね。これからがパチュリーの巻き返しのターンよ』
『これで、さっきの《思考囲い》で見られたカードは全部処理した計算になりますね』
『そうね。結果的に、《思考囲い》はそこまで致命傷にならなかったらしいわね。
まあ、タルモが出せたから魔理沙としては満足でしょう』
『あれが無かったら、全部カウンターできていたかもしれないのに……』
『こらこら、実況者が片方に肩入れしてどうするのよ』
『私はパチュリー様の使い魔ですからー』
第7ターン
魔理沙:LP17 手札3 森3 沼2 平地1 極楽鳥 タルモ
パチュ:LP 8 手札6 島6
「アンタップ、アップキープ、ドロー! このまま押し切る! 《タルモゴイフ》でプレイヤーにダイレクトアタッ……」
「お待ちなさい! そちらの攻撃クリーチャー指定前! 私は手札から《送還》をプレイするわ。さあ、手札に戻りなさい!」
「おっと、それには及ばないぜ。私は手札から《岩石樹の祈り》をプレイする。対象はもちろん《タルモゴイフ》だ!」
----------
《岩石樹の祈り/Stonewood Invocation》 (3)(緑) インスタント
効果:刹那
クリーチャー1体を対象とする。
それはターン終了時まで+5/+5の修整を受けるとともに被覆を得る。
~アリスのワンポイント~
緑が得意とする《巨大化》系統のカードで、対象クリーチャーを二回り大きくした上に、被覆までつけるの。
しかも、『刹那』がついているからカウンターも不可能。パチュリーは手も足も出せないわ。
----------
『あーっと、ここで魔理沙さんの切り札が発動! ただでさえ強い《タルモゴイフ》に被覆がついたー!
この光景はさながら《ブラストダーム》を相手にした青使いのよう!』
『タルモの弱点は、単純にサイズだけで回避能力も何も無い事。それを補ったのね! これは、決まったんじゃない!?』
「《タルモゴイフ》の能力は『11/12』にまで成長した! このまま殴って私の勝ちだ! デュエルはパワーだぜ!」
「甘い! 甘すぎるわ! その程度を私が読んでいないとでも思ったの?」
「……何だと?」
「被覆だか何だか知らないけど、このカードの前には無力よ。攻撃クリーチャー指定前は代わらず。
発動、《謎めいた命令》! モードはタップとドロー!」
----------
《謎めいた命令/Cryptic Command》 (1)(青)(青)(青) インスタント
効果:以下の4つから2つを選ぶ。
・「呪文1つを対象とし、それを打ち消す。」
・「パーマネント1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す。」
・「あなたの対戦相手がコントロールするすべてのクリーチャーをタップする。」
・「カードを1枚引く。」
~アリスのワンポイント~
ローウィン初出の『命令』サイクルの青版で、選ぶモード次第では何でもできる万能選手ね。
今回使われた三つ目のモードは、対象を取っていないから『被覆』では防げないわ。
当然、タップすれば攻撃はできなくなるから、結果的にカウンターできない筈の《岩石樹の祈り》をカウンターした形になったわ。
さすがはパチュリーと言った所かしら。首の皮一枚繋がったわ。さてさて。
----------
「くそっ、《岩石樹の祈り》は無駄撃ちか。……仕方ない。
《タルモゴイフ》と《極楽鳥》をタップするぜ」
「……ああ、いたわね。そんな子も」
「私の相棒に酷いんだぜ。バトルを抜けて、メイン2。《タルモゴイフ》を出し直すぜ」
「それは通したわ。それで?」
「通るのかよ……嫌な予感しかしないぜ。
セット《沼》で……ええい、仕方ない! 2枚目の《調和》だ!
マナはいくらか余裕があるし、島は1枚しか起きてないから、あのカードが無い限り通る……」
「あのカードとは、このカードの事かしら? 《撃退》をプレイ。
手札から《魔力の乱れ》と《島》を捨てて、《調和》をカウンターするわ。残り手札は2枚」
「やっぱりあったか……。ターンを返すぜ」
「では、私のターン。アンタップ、アップキープ、ドロー、セット《島》はしないわ。
代わりに、私は手札から《不実》をプレイする。対象は《タルモゴイフ》。何か?」
「……いや、何も無いぜ」
「《タルモゴイフ》のコントロールがこちらに移って、土地を5つアンタップ。
……よく頑張ったわね、魔理沙。でも、ここで引導を渡してあげる。
私は手札から、《精神を刻む者、ジェイス》をプレイするわ」
「ジェイスか……へっ、私をぼこってくれたカードがここでご登場か。憎い演出だぜ」
「ジェイス第一の能力を起動。魔理沙のデッキトップを見るわ。……このままで」
「やれやれ、何を掴まされるんだか」
----------
《不実/Treachery》 (3)(青)(青) エンチャント オーラ(クリーチャー)
効果:不実が戦場に出たとき、土地を最大5つまでアンタップする。
あなたはエンチャントされているクリーチャーをコントロールする。
~アリスのワンポイント~
良くも悪くも悪名高い、ウルザブロック初出の優秀な……このフレーズ2回目よ。まあいいけど。
相手のクリーチャーを奪った上で、土地まで起こせると来れば弱いわけが無いわ。
ノン・クリーチャーデッキが相手だと腐るんだけど、魔理沙相手なら問題ないわね。
スピード重視の環境だと5マナは重いけど、これは魔理沙対策のカードみたいね。
----------
《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》 (2)(青)(青) プレインズウォーカー ジェイス
[+2]:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーの一番上のカードを見る。
あなたはそのカードを、そのプレイヤーのライブラリーの一番下に置いてもよい。
[0]: カードを3枚引く。その後、あなたの手札のカード2枚をあなたのライブラリーの一番上に望む順番で置く。
[-1]:クリーチャー1体を対象とし、それをオーナーの手札に戻す。
[-12]:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーからすべてのカードを追放する。
その後、そのプレイヤーは自分の手札を自分のライブラリーに加えて切り直す。
【初期忠誠度:3】
~アリスのワンポイント~
ワールドウェイクで登場したプレインズ・ウォーカーで……って、パチュリーは何てものを積んでるのよ! 自重しなさい!
知っている人には説明不要、知らない人は効果を見てゆっくり驚いて行ってね!
詳しくちゃんと説明すると長くなるから割愛! wikiを見なさい!
----------
『いやいやいや! 解説を放り投げないで下さいよ!』
『だって、もう終わりでしょう? この状況で魔理沙が勝てる要素は無いわよー』
『まぁ……そうですね。頼りに綱である《タルモゴイフ》もパチュリー様のものになりましたし、コントロールも完全に確立しました。
この状況から抜け出すのは困難でしょう』
『タルモゴイフのパワーが、そのまま跳ね返ってくる形ね。
ジェイスのせいでドローの質が低下している状況下で、カウンターの防御を掻い潜り、
クリーチャーを出して、タルモを突破し、パチュリーのライフを8点も削る……まあ、不可能に近いわね』
『この状況を打破できるクリーチャーってどれくらいいますかね?』
『クリーチャーではいないと思……あ、そうか、あれなら……ひぃ、ふぅ、みぃ……面白いわね』
『? どうしましたか?』
『魔理沙のデッキに、あのカードが入っていれば分からないわね。
魔理沙の手札に残った最後の1枚と、今のパチュリーの選択が全てを決めるわ』
第8ターン
魔理沙:LP17 手札1 森3 沼3 平地1 極楽鳥
パチュ:LP 8 手札1 島6 神ジェイス タルモ
「ターンを始める前に、一つ聞きたい。パチュリー、私は強くなったか?」
「ええ、それは認めてあげる。
《木霊の手の内》等のマナ加速も何も無しに、愚直に毎ターン土地を出して、
《甲殻のワーム》やら《クローサの雲掻き獣》やらの馬鹿みたいに大きなクリーチャーだけをデッキに積んで、
私のデッキに手も足も出ないでボコボコにされた泣き虫まりちゃんが、私を後一歩まで追い詰めた。
正直、大した進歩だと思うわ」
「ハハッ、まだ勝ったわけじゃないって言うのに、随分と余裕だな。優位と勝利は違うんだぜ?」
「そうね。まだ何があるか分からないわね。だから一つ教えてあげましょう。
私の手札にあるのは、《対抗呪文》よ」
手札を表返して、魔理沙にそれを見せ付けるパチュリー。
そこには《対抗呪文》の四文字が堂々と記されていた。
「……へぇ。やっぱり握ってやがったのか」
「そして、あなたのデッキトップは《森》よ。これから毎ターン、あなたには要らないカードを押し付けてあげる。
ライフが尽きるのが先か、ジェイスがデッキを削るのが先か。残された未来はそれだけよ」
「……」
「サレンダー、認めてあげてもいいわよ」
「……くっ」
『魔理沙さんの腕がガックリと落ちて、顔も下を向いてしまいました。
肩も震えていますし……泣いているのでしょうか?
パチュリー様ラブの私としては、正しくメシウマです』
『こら。でも、このまま無駄にターンを過ごすくらいなら、いっその事サレンダーも……
いえ、待ちなさい。様子が変だわ!』
『こぁ!?』
「……くっくっく……」
「ん?」
「くっくっくっく……はーっはっはっはっは! そうか、デッキトップは土地か! はっはっは!」
「な……っ! 何を笑っているの!?」
「くっくっく……いやぁ、悪いなパチュリー。お前には一つだけ嘘をついていたことがある」
「……言ってみなさい」
「このデッキが、緑黒白のビートダウンだと言ったな。あれは嘘だ!」
「!?」
「私のターン! アンタップ、アップキープ、ドロー! セット《森》!
行くぜ相棒! 《極楽鳥》をタップして、『赤マナ』を出すぜ!」
「赤……まさか、X火力!? でも、それじゃあ私は倒せないわよ!」
「ところが、倒せるんだな! 行くぜ、私は手札から、《悪魔火》をプレイする!
「あ、《悪魔火》ですって!? それはレミィが愛用しているカード!」
「ああ、レミリアから貰ったカードだ! それでお前を倒す!
土地も全部タップして、これで合計9マナ! Xの値は……8だ!」
「私の残りライフは……8!」
「とどめだパチュリー! 喰らいやがれ!」
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《悪魔火/Demonfire》 (赤)(X) ソーサリー
効果:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。悪魔火はそれにX点のダメージを与える。
このターン、これによりダメージを与えられたクリーチャーが墓地に置かれる場合、代わりにそれを追放する。
暴勇 ― あなたの手札にカードがない場合、悪魔火は呪文や能力によっては打ち消されず、そのダメージは軽減されない。
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「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
轟ッ!
カードから招来された地獄の炎がパチュリーの全身を焼き焦がし、それが決め手となった。
魔理沙による乾坤一擲の一撃によってライフを0にされたパチュリーは、胸を押さえて机に倒れ付した。
「ふぅ……。デッキトップが土地じゃなかったら、ダメージが足りないで負けていた。
それが今回の勝因だな。パチュリー、借りは返したぜ!」
「ぐ、ぐぅ……! まさか、あの状況から負けるなんて……! 詰めを誤ったと言うの?」
「パチュリーの選択は、間違ってなかったさ。ただ……そうだな。お前は『初見殺し』に引っかかったんだよ。
《木霊の手の内》や《クローサの大牙獣》で《山》を持ってこなかったのは、これを狙っていたからさ」
「むきゅう、不覚……」
「魔理沙、やったわね!」
「おう! 応援してくれて、ありがとうなアリス!」
互いのプライドと研鑽を賭けてのデュエルは現実にまで影響を与え、パチュリーの身体にまで影響を与えたのだ。
慌てて駆け寄る小悪魔、苦悶の表情を浮かべるパチュリー、満面の笑顔をアリスへと返す魔理沙と、それに涙さえ浮かべて頷きを返すアリス。
決着は、ついた。
「……まだよ」
「……ああ、まだだな」
「「 !? 」」
そう思っていたのは、アリスと小悪魔だけだった。
笑顔を浮かべながらも、魔理沙は自身の闘志を抜き身のままにしており、鞘に収めては居なかった。
それはパチュリーも同じで、自身の介護をしようとした小悪魔を突き飛ばした。
「きゃう!? パチュリー様……?」
「……まだよ! まだ終わってはいないわ!」
「ああ、そうだな。まだ終わっちゃいない! 私の闘志は、お前を完全粉砕するまで収まることはないぜ!」
「魔理沙! もう勝ったんだからそれでいいでしょう!? パチュリーはもうボロボロよ!」
「パチュリー様! 落ち着いて、落ち着いて下さい! 喘息の発作が出てしまいますよ!」
「この程度、気合で何とかするわよ! 魔女を舐めるんじゃないわ! ……魔理沙、席に着きなさい!」
「もちろんだパチュリー! 私はパチュリーに正式なデュエルを申し込みに来たんだ!
まだ初戦が終わったばかり……まだ、マッチは終わってないぜ!」
「よろしい! どうやら、私はあなたの事を甘く見ていたみたいね。
まさか、使うことになるとは思わなかったけど……先に宣言するわ。
私はサイドカードを15枚、フルで投入する!」
「……ほーう? それはつまり、それは私対策のためのサイドボードだって事か?」
「その通り! 第二戦は、10分のインターバルを挟んだ後! 私の本気を見せてあげるわ!」
「望むところだ! このまま連勝して、トラウマを克服してやるぜ!」
次回、魔理沙 vs パチュリー 第二回戦!
『鮮烈! 裏切りのD・M・スパーク!』
待て次回!
(了)
良く誤解されるのがMTGはバトルじゃなくてコンバットなんよねー。細かい事だけど。
華麗に対抗呪文リムーブしてミスディレかましたら格好良かったんですけど、手札が無かった……!
パチェさんのデッキで気になったのは、送還ですね。
アドバンテージ失うカードなので、キャントリップ付きの排撃が一般的じゃ無いかなぁ、と
ビートとは魔理沙らしいなぁと思って読んでましたが、成る程。X火力の方がしっくりきますねw
……是非銀枠込みで書いていただけませんかだめですかそうですか
バッパラの扱い的に最後は赤マナ出ししてキッカー付きrageで10点本体かと思ったけれど、今はこんなカードもあるのかぁ
やっぱり魔理沙のデッキはバーンが入ってるほうがらしいですねー
そろっと評価も落ち着いたようなので、軽い解説も含めてコメント返しをさせて頂きます。
>1様
ノリが遊戯王なのは意識して書きました。コンバットをバトルと言っているのも半ば仕様です。(キリッ
何分そちらには先達様が二人もおられますので、TCG繋がりでリスペクトしようかと。
読みきりなので、勢いを大事にしたかったのもあります。
>tukai様
ミスディレは咲夜さんのデッキに入っているのでパチュさんは使いません……と言うのは冗談で、その通り手札が足りませんでした。
《撃退》を《Force of Will》にすれば足りるのですが、そうするとX火力でピッタリライフが0と言うシチュにできない……と言う寸法です。
《送還》も演出に関する調整の結果ですね。《排撃》は3マナなので、《謎めいた命令》が撃てません。
マナの問題だけなら、《ブーメラン》でも良いのですけどねー
>2.5様
何故か消えておりますが、耳に痛いコメントがあった事を覚えております。
確かに、ドローをムリヤリ連発してムリヤリ強く見せようとする演出の不味さは自分でも思ったことです。
それでもGOサインを出したのは……まあ、単に演出の問題ですね。
青と言えば『カウンター』、『バウンス』、『エンド前のドロー』だと思っていますので、
これらを多用してそれっぽさを出したかったのです。
パチュリーさんがカウンターを積みすぎと言うのは確かにそうですね。
ですが、青単で『マナ漏出』が積まれている辺りからお察し下さい。
>3様
実は、魔理沙のデッキは作者のデッキの半分コピーです。寄せ集めでも、作者の貧乏デッキより強いです(笑)
作者は《包囲の搭、ドラン》が大好きなので、カジュアルでは緑黒白ビートを未だに使っております。
決め技は、もちろん《悪魔火》。何故なら、このカードも私のとって特別な存在だからです。
銀枠……魔理沙が魅魔様相手に《Ashnod's Coupon》を起動したり、
咲夜が平然とした顔で《Charm School》を多用するんですね、分かります。
個人的な脳内設定では、紫様は無限マナコンボから《Gleemax》を出して満足するデッキです。
>4&5様
実際のところ、アイディアはあっても肝心のシナリオとプレイのネタがありません。
第二回戦の、魔理沙がボコボコにやられるお約束展開までは考えてあるのですが、
その後に使う魔理沙のサイドデッキが決まらないのですよね。
いやはや、リプレイ執筆と同様に難しいです。
>デン様
そのような意図で書きましたので、懐かしい気分&今のカードへの関心を抱いてもらえたのなら"非常に"幸いです。
《ウルザの激怒》は考えたのですけど、そこまでマナ加速をする構成にしたくなかったので、泣く泣く諦めました。
まるでタイムシフト・カードで激怒の再録を諦めた製作スタッフのような気分です。
今回は「パワーと火力」を演出するためのX火力と、パワーに定評のあるタルモ君でしたが、
それ以外の各キャラクターらしいデッキも考えてみたいですね。
だけどパチュリー、ジェイスはダメだろw