Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方で遊戯王Ⅱ24 『最終戦②』

2011/03/01 14:42:50
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注:前回からの続きです。























  ________23:15 博麗神社境内









妖夢  LP6200:手札2:ゴヨウ、ガイアナイト、ゲドン、伏せ1
さとり LP5800:手札3:伏せ1



燐  「さとり様に一撃与えるなんて信じられない……。
    あのチビッ子、あんなに強かったのかぁ」

空  「ところでさ。なんでこんなとこにかかしがあるの?」

にとり「ああっ。カメラに触らないで……」

こいし「お燐、お空。お姉ちゃんのことなら心配いらないって。
    お姉ちゃんは、デュエルじゃ一度も負けたことなんてないし、それに……」

こいし「(あんなに楽しそうなお姉ちゃん、久しぶりなんだもの……本当に)

こいし「(だから……がんばって、お姉ちゃんっ!)」

さとり「ドローします」

さとり「(あの伏せは『月の書』……。
    わたしのデッキのサクリファイスを警戒して、早々に対策できるカードを伏せてきたわけですね。
    しかし……)」

さとり「ふふふ。今日一日だけでも、様々な出来事がありました。
    この会場には、あなた方の喜怒哀楽のトラウマが蔓延しています。
    次なるトラウマは、このカード……。
    手札から、パペット・プラントを捨てます。効果発動」


《パペット・プラント/Puppet Plant》 †
効果モンスター
星3/地属性/植物族/攻1000/守1000
このカードを手札から墓地に捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、相手フィールド上に表側表示で存在する
戦士族または魔法使い族モンスター1体のコントロールを得る。


白蓮 「(あれは……!? 幽香さんのカード!)」

幽香 「ああ。あれ、わたしのね」

霊夢 「……って、あんたいつの間に盗られてたのよっ」

幽香 「いやね。盗られたんじゃなくて、盗られてあげたのよ。
    有効活用してくれたみたいで嬉しいわ」

魔理沙「(そうか、白蓮のときは魔法使い族のコントロールを得るために使われたが……あのカードは戦士族に対しても使えるのか)」

さとり「ゴヨウ・ガーディアンをいただきましょうか」

妖夢 「……させない! チェーンして速攻魔法発動。月の書!」


《月(つき)の書(しょ)/Book of Moon》 †
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。


妖夢 「ゴヨウを裏守備表示に変更します!」

文  『赤コーナー、ここでモンスターを裏守備に変更させました!
    パペット・プラントの効果の対象となるのは表側表示のモンスターのみ。よって、不発に終わります! 
    いや~華麗にかわしましたね、パチュリーさん』

パチェ『そうね。しかし心の読めるさとりからすれば、こうなることは当然わかっていたはず。
    承知の上での手だったとしたら、次にくる手は……?』

妖夢 「(…………手応えが浅い)」

妖夢 「(今の月の書は、少し早計だった……? 
    いや、パペットプラントの効果を防がなければ、こちらは致命的な被害を受けていた。
    こうする以外に手はなかったはず……)」

さとり「ふふふ、そうですね」

妖夢 「(……!?)」

さとり「確かに、今のは使用して然るべきです。ですが……」

妖夢 「(…………まさか、発動を誘われた!?
    だとしたら、あのカードが……)」

さとり「正解です。あなたが対処してしまったのは、こちらが真の切り札を出すための布石に過ぎない。
    今にあなたは知ることでしょう。苦痛を最も長引かせるのは、皮肉にも希望に他ならないということをね」

さとり「手札から……高等儀式術を発動」


《高等儀式術(こうとうぎしきじゅつ)/Advanced Ritual Art》 †
儀式魔法(制限カード)
手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードとレベルの合計が
同じになるように自分のデッキから通常モンスターを墓地へ送る。
選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。


妖夢 「(……しまっ!?)」

魔理沙「(あのカードは儀式魔法……てことはっ!)」

さとり「デッキの大木炭18を墓地に送り、儀式の供物に捧げます。
    今から召喚するこのモンスターは、おそらくあなたにとって最大のトラウマであることでしょう」

さとり「さあ……開きなさい。カオスを見通す闇の眼。サクリファイス……!!」


《サクリファイス/Relinquished》 †
儀式・効果モンスター
星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0
相手モンスター1体を指定してこのカードに装備する。
(この効果は1ターンに1度しか使用できず、
同時に装備できるモンスターは1体のみ)
このカードの攻撃力・守備力は装備したモンスターの数値になる。
戦闘によってこのカードが破壊される場合、
かわりに装備したモンスターが破壊され、
超過した戦闘ダメージは相手プレイヤーも受ける。


魔理沙「(くっ……きたか。サクリファイス……)」

早苗 「なっ、何。あのモンスター……!?」

幽香 「この陰気な妖気……。
    なるほど、どうやらあのカードが、あいつのデッキのエースらしいわね」

パチェ『サクリファイス……』

文  『おお? パチュリーさん、あのカードをご存知なんですか?』

パチェ『ええ。といっても、わたしも使ってたからね。前の大会で……』

文  『ああ~、あれは妹紅さんとのデュエルでしたね。
    わたしはあの大会が終わった後出来事を全てまとめて新聞にしましたので、よ~く覚えておりますよ~』

パチェ『あの儀式モンスターは、モンスターを飲み込み、その力を自分のものとして吸収する能力を持つ。
    とてもテクニカルなカードだから、あの時のわたしはうまく使いこなせなかったけど…………どうやら先方は違うようね。
    あのカードに宿る妖気からしても、並々ならぬ念を感じる。
    過去に妖夢がどういう目にあわされたかは知らないけど、あのカードを完璧に使いこなせるというならば、この勝負は……』

さとり「このサクリファイスこそ、わたしの第三の眼の能力を体現したモンスター。起動効果発動です。
    よもやお忘れではないでしょう。相手モンスター一体を指定し、このカードに装備します。
    わたしが指定するのは、大地の騎士ガイアナイト。サクリファイスの糧となりなさい」


    サクリファイス    攻撃力2600


霊夢 「妖夢のモンスターが……吸収された!?」

衣玖 「なんて強力な効果……。
    相手モンスターを除去した上に、その分だけパワーアップするなんて……」

幽香 「月の書を先に使わせたのはこのため。あらあら、束の間の優勢だったわね」

さとり「……このモンスターを召喚すると、いつも少しだけ後悔してしまいます。
    周囲の心の声が、たちまち絶望の声で満ちてゆくのがわかるからです」

さとり「しかし妖夢さん。今のあなたの心からは、そんな悲痛な声は聞こえてこない。
    先ほどの月の書のチェーンを、軽率とわずかに謗る念はあるものの、その心には絶望など差し挟む余地など微塵もない。
    実に好ましいですね。
    願わくば、その清廉なる精神が、少しでも長く崇高なままでいられることを……と、わたしは望みます」

さとり「バトル。サクリファイスで、裏守備のゴヨウ・ガーディアンを攻撃です。
    想起、テリブルスーブニール……!!」

妖夢 「(ううっ……ゴヨウ・ガーディアンっ!)」

諏訪子「少しでも長く、だってさ。いけしゃあしゃあとよく言うよねぇ。
    えげつない能力を使っておきながらさ~」

こいし「使っておきながら……は、ちょっと違うわ。
    お姉ちゃんは、好きで他人の心を視てるわけじゃないもの」

早苗 「えっ……? どういうことですか?」

燐  「さとり様の力は常に発動されている状態で、自分でも制御不能、つまりオンオフができないんだにゃ。
    言うなら能力というよりも、六番目の感覚器官と言ったほうが的確なのにゃ」

魔理沙「その口調のせいで緊張感台無しだがな」

こいし「わたしも一応サトリ。
    この能力のせいで、今まで数え切れないほどの視たくもない心を視てきたわ。
    嫌になったから、もう捨てちゃったけどね。
    でもあの能力に対する想いは、お姉ちゃんも同じだよ。
    こんな忌まわしい能力さえ無ければって、きっと……」

さとり「こいし」

こいし「……きっと思ってるに違いないんだから。
    そんなふうに、能力があるから卑怯みたいな言い方はやめてほしいのよ」

さとり「余計な話はやめなさい。
    そもそも、能力を捨てたあなたにはそんな話をする権利など無い。違う?」

こいし「…………」

妖夢 「(さとりさん……)」

こいし「うん、そうだね。ごめんごめん、ついつい。
    大丈夫、あとはちゃんと黙って応援してるから~。
    あれ? 黙って応援ってなんか違う?」

燐  「い、意味わからんことでいきなりこっちに振らないでほしいですにゃ」

さとり「水を差したようですみませんね、妖夢さん。
    さあ、デュエルに集中しましょう」

さとり「前のターン、奇跡的な盛り返しを見せてくれたあなたですが、わたしに勝つには奇跡は一度では足らない。
    現時点であなたの手札に、サクリファイスの対策がとれるカードが無いことはわかっています。
    本来奇跡というものは、二度三度繰り返されるものではない。
    そんなことは承知していますが、今のあなたにはどうしても期待してしまう何かがある。ターンエンド」



妖夢  LP6200:手札2:ゲドン
さとり LP5800:手札1:サクリファイス(攻2600・守800・ガイアナイト装備)、伏せ1



魔理沙「(二度三度……)」

魔理沙「(奇跡は一度では足りない、か。
    さとりを倒すには、奇跡を積み上げなければならない。
    それだけしなければ勝てない相手だっていうのか……)」

妖夢 「ドローします!」

妖夢 「……わたしは裏守備をセット。ターンエンドです!」

ぬえ 「裏守備1枚? それだけで攻撃を防げるの?」

白蓮 「さとりさんは先ほどの段階で、妖夢さんの手札にはサクリファイスに対抗できるカードは手札に無い、と言いました。
    おそらく事実でしょう。
    しかし、あの裏守備は妖夢さんが引いたばかりのカード……ならば、あるいは」

さとり「ドロー。わたしのターンです」

さとり「その裏守備は『異次元の女戦士』。よいカードを引かれましたね。
    サクリファイスで攻撃すると誘発効果で除外されてしまうので、別のモンスターを召喚したいところですが……
    生憎わたしの手札には、そのモンスターを対処できるカードはありません。
    サクリファイスでハイドロゲドンを攻撃し、破壊。ターン終了」



妖夢  LP6200:手札2:裏守備
さとり LP5800:手札2:サクリファイス(攻2600・守800・ガイアナイト装備)、伏せ1



ぬえ 「裏守備に攻撃はしない、か。このまま膠着が続いちゃうのかな、聖?」

白蓮 「かもしれませんね。
    異次元の女戦士の効果は、モンスターと戦闘した時、自分と相手モンスターを道連れに除外する効果。
    さとりさんからすればサクリファイスを除外されることは避けたいでしょうから」

諏訪子「(ふん、奇跡は先送りってわけだね。
    でも、相手はあのさとり。おそらく猶予はあと1、2ターンあるかないか……)」

妖夢 「わたしのターン……ドロー!」

妖夢 「(このモンスターは…………なら!)」

妖夢 「異次元の女戦士を反転召喚します!」


《異次元(いじげん)の女戦士(おんなせんし)/D.D. Warrior Lady》 †
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1500/守1600
このカードが相手モンスターと戦闘を行った時、
そのモンスターとこのカードをゲームから除外する事ができる。


早苗 「……異次元の女戦士! あのモンスターなら……!」

妖夢 「バトルフェイズに入り、サクリファイスを攻撃!
    異次元の女戦士は破壊されますが、相手モンスターを道連れにできます。
    サクリファイスを異次元に除外!」LP6200→5100

魔理沙「なんとか倒せたか。ライフは痛いが……」

衣玖 「ただの破壊ではなく除外ですからね。
    サクリファイスを墓地から蘇生させるカードは多いですが、除外させればそれもできない」

妖夢 「裏守備とリバースカードを1枚伏せて、ターン終了です!」



妖夢  LP5100:手札1:裏守備、伏せ1
さとり LP5800:手札2:伏せ1



さとり「ドローします」

さとり「正直、この2ターンほどで、少々考えを改めたくなりました。
    あなたを買いかぶりすぎていたのではないか、とね」

霊夢 「なにをっ! あんたのモンスターはやられたのよ。負け惜しみだわっ」

さとり「わたしは心のままを述べているだけです。
    言ったはずです。わたしを上回るには、奇跡を連続で引き起こすほどの……星の加護に等しい推力がなければならない。
    しかしわたしは今のあなたに、その推力の失速を感じました」

衣玖 「失速、ですか?」

さとり「そうです。
    妖夢さん。その裏守備モンスターは、『聖なる守り手』。違いますか?」

妖夢 「…………」

さとり「ふふふ、失礼しました。
    あなたからすれば素直にイエスと答えるわけにもいかないでしょうし、少々いじわるでしたね。
    わたしが言いたいのは、それぞれのモンスターを引いてくる順番のことです」

文  『順番……? 意味深ですねぇ。いったいどういう意味なのでしょう?
    聖なる守り手は、確かリバース効果持ちのモンスターですよね?』

パチェ『ええ……。
    裏側表示から表側表示になった時、フィールド上の表側表示のモンスターを、デッキの一番上に戻す効果があるわ。
    だからあのカードが本当に聖なる守り手だとすれば、そのリバース効果で
    サクリファイスをデッキトップに戻すことができるけど……
    それが彼女の言う、推力の失速とやらとどう関係があるのかしら』

幽々子『あら、それは簡単なことよ』

文  『幽々子さん? 何かおわかりですか?』

幽々子『さとりは、順番が逆だと言っているのよ。
    さっきまでの妖夢の運量だったら、異次元の女戦士より先に、聖なる守り手の方を先に引いていなければならない。
    言ってること、わかるかしら?』

文  『ええっと……。それはつまり、妖夢さんの運が最高潮の時なら、ということですよね。
    でも、だとしたらどうして順番が逆でなければならないんですか?』

幽々子『だから、簡単って言ってるでしょう。
    サクリファイスに対する除去手段としては、除外するよりもデッキトップに戻す方が効果的なのよ』

パチェ『そうか……! 
    一度召喚して墓地に置かれたり、除外されても、蘇生制限は満たしているから
    対応カード1枚で簡単に場に帰還させることができる。
    しかしデッキに戻されれば、場に出すには再び儀式召喚の手間をかけなければならない』

幽々子『そう。除外ゾーンから蘇生するカードは少ないけれど、この場合はやはりデッキに戻す方が強力。
    だからこの場合、サクリファイスを対処するためのベストのカードは、異次元の女戦士よりも聖なる守り手。
    でも妖夢は、それを1ターン遅れて引いてきたの」

文  『ううむ。なるほど……。じゃあそこにさとりさんは、妖夢さんの運の衰えを感じたというわけですか』

さとり「幽々子さんの仰るとおり。本来軌道に乗ったあなたのツモならば、
    サクリファイスが出現した次のターンに、確実に倒せるカードを引いていなければならない。
    事実、さっきのターンに引かれていたならば、サクリファイスはデッキに戻されていたでしょう。
    でもしかし、そうはならなかった……」

さとり「妖夢さん。
    あなたは前のターンに異次元の女戦士を引いていながら、攻撃はせず、守備表示にして出しただけでしたね。
    当然、わたしの場のリバースカードを警戒してのことです。
    あそこで無為にサクリファイスに攻撃し、万が一わたしの伏せカード、
    仮にトラップだとして、これにより異次元の女戦士が破壊されたら、目も当てられない。
    ゆえに、あなたは裏守備表示で出した―――ちなみに次のターンで攻撃できるようになったのは、
    仮にリバースカードで女戦士がやられたとしても、聖なる守り手という保険が手札にあるからですが―――。
    わたしが心を読める以上、わたしの方から裏守備の女戦士に攻撃することはありませんが、
    確かにこうしておけば堅実に守ることができる。
    ゆえにあなたほどのデュエリストならば当然のプレイングです」

さとり「しかし、守りに入ったために、わたしに猶予を与えてしまった。
    1ターン分、わたしにカードをドローさせるという猶予をね。
    この一連の流れからわたしは、試合開始当初から続いていたあなたの運勢が、次第に落ちてきたと確信します。
    それに、わざわざ自滅特攻の手段をとったのもいただけない。
    サクリファイスを除外することはできましたが、あなたはこの局面では手痛い反射ダメージまでも負ってしまった。
    今のは奇跡ではなく、ただの苦し紛れに過ぎません」

妖夢 「…………」

幽香 「運勢、か。ふふふ。一理あるわね」

早苗 「えっ? 幽香さんまで、何を……」

幽香 「遊戯王に限らず、札遊びとはすべからく運が勝負を左右するもの。
    遊戯王といえば構築やプレイングに目がいきがちだけど、勝つための要因にどうしても運ははずせない。
    どれだけ構築を磨き上げ、勝率をぎりぎりまで高めても、最終的には運がものをいう。
    蓋然性と偶然性。それを知り尽くすのは、デュエリストとしての必須条件よ」

霊夢 「運ですって~? そんなの知り尽くすとか、できるわけがないじゃない」

幽香 「だからあなたはヘボなのよ。
    麻雀を見なさい。あれは理屈と確率だけでは勝てないゲーム。
    根幹を支配するのは、運というものに他ならない。
    天運、地運、そして人運。運というものはなんたるかを悟らない限り、絶対に必勝はできないのよ。
    麻雀において常勝する者は、少なからずその者自身、運に対する見解を持っている。
    それが真理には遠いにしろ近いにしろ、ね。
    〝流れ〟というものがあるでしょう? デュエルモンスターズにも然り。
    流れを操り、引き寄せ、己がものとしてこそ、真のデュエリスト。そう言えるわね」

幽香 「(それにしても……げに恐ろしきは古明地さとり。
    心を読むだけでなく、デュエルの本質までも理解の範疇に置いているのか。
    やはり奴には、ひとには見えないものが見えているとしか……)」

さとり「正解です、幽香さん。
    この眼はただ他者の心が視えるだけではない。
    〝流れ〟とは複雑に絡み合う因果が織り成す奇蹟の軌跡。
    すなわちカオスの領域です。
    なれば、この第三の眼で見通せぬはずがない。
    この世のカオス、律、全てを見通す。それがわたしの能力なのですから……」

幽香 「(カオス……ということは)」

幽香 「(…………ふ、なんてこと。こんな妖怪がいたとは、認識不足だったわね。
    こんな奴にデュエルで勝つのは、わたしですらどうか……。
    未だ未成熟の妖夢ならば尚更……)」

さとり「ところで、妖夢さん。
    わたしは、あなたのデッキに異次元の女戦士があることがわかっていました。
    わたしがサクリファイスを召喚した時、一瞬、あなたの脳裏にサクリファイスを倒すためのカードが浮かびましたね。
    次に何を引ければ、サクリファイスをこの場から取り除くことができるか。
    思考を極力控えても、反射的に浮かぶイメージはどうしても生じてしまう。
    わたしの第三の眼は、その瞬間すらもしっかりととらえていました。
    で、ある以上、それを引かれた場合の対処もすでに打っていたのです。
    リバースカードオープン、闇次元の解放」


《闇次元(やみじげん)の解放(かいほう)/Escape from the Dark Dimension》 †
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


さとり「除外されたサクリファイスを特殊召喚します」

早苗 「そんな……! せっかく倒したのに……」

魔理沙「(除外が仇になったか……。
    しかしまさか、除外ゾーンから帰還するカードまですでにセットしていたとはな。
    心を読めるってだけでできる芸当とは思えないぜ。いったい、あいつは……)」

さとり「『あいつは何手先まで読めているんだ?』ですか、魔理沙さん? 
    少し、違いますね。正しくは、読めているのではなく視えているのです。
    サクリファイスの起動効果発動。裏守備の聖なる守り手を吸収します。
    1枚伏せて、ターン終了です」



妖夢  LP5100:手札1:伏せ1
さとり LP5800:手札2:サクリファイス(裏表示装備)、闇次元(サクリ)、伏せ1



文  『赤コーナー、サクリファイスを除外ゾーンより帰還! 
    デュエル開始当初こそは拮抗した場面が見られましたが、なんだかじわじわと形勢が傾いてきた感じでしょうか』

パチェ『まあね。拮抗というより、喰らいついていたといった方が正しいかしら。
    サトリの妖怪を相手にここまで踏ん張れただけでも、あなたの庭師は殊勲賞ものだと思うけど?』

幽々子『それはお褒めに預かり光栄……と言いたい所だけど、
    この程度じゃあまだまだわたしは賞なんてあげれないわね』

幽々子「(そう。このぐらいではまだまだ足りない……。
    まだ、修行の成果は見せてもらってなくてよ……)」

魔理沙「(やはり……まずいな。またサクリファイスか。
    今のターン、さとりがモンスターを召喚して攻撃してこなかったってことは、あのリバースカードを警戒してのことだ。
    多少は時間を稼げるかもしれないが……そう長くはないはず。
    早くこっちから手を打たなきゃやばいぜ……)」

さとり「(ふふふ……。魔理沙さんの考えている通り、あのリバースカードは『次元幽閉』。
    ならば焦って攻撃せずとも、次のターンで対応ができる。
    でも、それは妖夢さん。あなたからすれば、このターンしか猶予が無いということなのです)」

さとり「(〝流れ〟とは文字通り、寄せては帰す潮のようなもの。
    高波が来てもそれは一時的なことで、一箇所に長く留まることはない。
    あなたの強運も、永遠に続かないのは自明の理なのです)」

さとり「(さて、ここまでの展開は予想通り……。わたしが知りたいのはここから。
    思考を読まれ、頼みの綱である天運すら尽きようとする今この時こそ、あなたの真価が問われる。
    ここで何もできず敗北するようなら、わたしの見込み違いだったということになりますが……)」

妖夢 「…………」

さとり「(さあ、どうするのかしら? 次にくる手は……)」

妖夢 「…………」

さとり「(……ん?)」

妖夢 「(……さとりさん)」

さとり「(声……じゃない? 心の中で、わたしに呼びかけている??)」

妖夢 「(さとりさんの仰ったことには、少し誤謬があります。
    わたしはなにも、奇跡をおこそうなんて思ってなどいません)」

さとり「(えっ……?)」

妖夢 「(わたしは気づいたんです。わたしは半人前。人間と幽霊のハーフ。
    だからたまにだけど、人間のようにくじけることもある……)」

妖夢 「(でも、いいんです。くじけてもいい。だって、立ち直ればいいだけだから。
    何度躓いても、それを絶対に乗り越えるという意志一つ忘れなければ、いずれ壁は乗り越えられる。
    絶望は、恐るるに値しないんです。だから……!)」

妖夢 「……わたしのターンです! ドロー!」

妖夢 「スタンバイフェイズ、わたしの場にモンスターがいないことにより、墓地の不死武士を特殊召喚できます。
    守備表示で特殊召喚。そしてメインフェイズで、ミスティック・ソードマンLV2を召喚します!」


《不死武士(ふしぶし)/The Immortal Bushi》 †
効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻1200/守 600
このカードは戦士族モンスターの生け贄召喚以外の生け贄にはできない。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターカードが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地に戦士族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。


《ミスティック・ソードマン LV(レベル)2/Mystic Swordsman LV2》 †
効果モンスター
星2/地属性/戦士族/攻 900/守 0
裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、
ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊する。
このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、
このカードを墓地に送る事で「ミスティック・ソードマン LV4」1体を
手札またはデッキから特殊召喚する。


燐  「あんな攻撃力の低いモンスターを攻撃表示? どういうつもりかにゃ?」

こいし「サクリファイスを倒そうとしてるのよ。
    あれを戦闘で破壊するには、一度目の攻撃で装備モンスターを破壊しなきゃ駄目だからね。
    だから戦闘で破壊するなら、二体で攻撃しないといけないの」

妖夢 「バトルフェイズです。ミスティック・ソードマンで、サクリファイスに攻撃!」

さとり「…………その攻撃は通しません。
    メインフェイズ終了直前に、トラップ発動。威嚇する咆哮」


《威嚇(いかく)する咆哮(ほうこう)/Threatening Roar》 †
通常罠
このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。


さとり「威嚇する咆哮の効果で、このターン、相手は攻撃をすることができません」

衣玖 「攻撃を、防がれた!?」

早苗 「ああっ、惜しい……。サクリファイスを倒すチャンスだったのに」

諏訪子「当然でしょ。あんな単純な攻撃、さとりに通じるはずないじゃん」

妖夢 「……ターンを終了します!」



妖夢  LP5100:手札1:不死武士、ミスティックLV2、伏せ1
さとり LP5800:手札2:サクリファイス(裏表示装備)、闇次元(サクリ)


 

さとり「…………」

さとり「(…………今、彼女は何を引いた?)」

さとり「(一瞬、集中力が途切れてしまったわね…………彼女の心がよく視えなかった)」

さとり「(気のせいかしら……。
    ドローの瞬間、ノイズのような光が邪魔をして…………なんだったの?
    一体、今のは……)」

妖夢 「…………」

さとり「(……駄目ね。もう場に集中して、手札のことは頭に無い様子。
    無意識を探ろうにも、意識で閉ざされていては引いたカードはわからない。
    ミスティック・ソードマンは元から手札にあったカードだけど……)」

さとり「(まあ……その程度ならばいいでしょう。
    今の彼女の心情…………今一度奇跡のドローをと、そう思っているのは確か。
    しかし、その真意がよくわからなかった。
    わかったのは、彼女は本心だけを胸に抱いているというだけ……)」

さとり「(興味深いわね。まさかあなたに、まだ隠された力があるとでもいうのか、あるいは……。
    いずれにしても、その力、早く発揮しないと手遅れになりますよ)」

さとり「ドロー。今の攻撃は、少々リスクに見合わない行為でしたね。
    サクリファイスの前にモンスターを攻撃表示で並べて残すのは、至極愚かな事。
    特攻から自分の装備カードを破壊し、さらに起動効果を発動することができますからね」

霊夢 「…………。
    えーと、どういうこと?」

魔理沙「wikiれ。何度も言わせるな」

衣玖 「よ、要するにですね。
    サクリファイスというモンスターは吸収したモンスターを装備していれば、一度限り戦闘破壊から逃れることができます。
    同時に、吸収したモンスターは破壊される。
    サクリファイスは常に一匹しかモンスターを装備できませんが、自分から攻撃表示のモンスターに攻撃することにより、
    わざと装備モンスターを身代わりに破壊し、メインフェイズ2でさらにモンスターを吸収することができるのです」

早苗 「でも、自分から攻撃すると、ダメージを受けちゃいますよね?
    例えば今ならば裏守備を吸収しているわけですから、攻撃力は0。
    攻撃表示のモンスターに攻撃すると、かなりダメージがいっちゃいますよ?」

諏訪子「それもあんまり問題無いんだよ。
    サクリファイスは吸収モンスターを装備している時、戦闘ダメージを相手にも与える誘発効果を持っている。
    お互い同じ分ライフが減るから、実質的にそう痛手ってわけじゃないの」

早苗 「戦闘ダメージを相手にも返す……。そんな能力まで持っているんですか」

魔理沙「だからサクリファイスを相手にするときは、迂闊に攻撃表示でモンスターを置いておけないんだ。
    ライフに余裕さえあれば、たとえモンスターを吸収したサクリファイスの攻撃力が0でも、
    アドバンテージを損なうことなく相手のライフを減らすことができるからな。
    場合によっちゃそれで最後の一手にすることもできる」

霊夢 「あっ、そっか。妖夢のライフが2000しかないとしたら、
    攻撃力0のサクリファイスで攻撃力2000のモンスターを攻撃されれば、反射ダメージだけでも……」

幽香 「ゆえに、この状況で大事なのはライフ差。ライフに差が無ければ、その特攻戦法は使えないからね。
    でも逆に差をつけられたなら、常にダメージレースで後手に置かれている状況になる。
    あのおチビさんも、それぐらいはわかっているはずだけど……」

さとり「ふふふ……そのリバースカードは『次元幽閉』。
    わかっていた以上、前のターンはあえて余計なことはしませんでした。
    しかしこちらの準備が整ってしまった以上、もう指をくわえて待つ必要はありません。
    手札から、このカードを特殊召喚。インフェルノです」


《インフェルノ/Inferno》 †
効果モンスター
星4/炎属性/炎族/攻1100/守1900
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の炎属性モンスター1体をゲームから除外して特殊召喚する。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
相手ライフに1500ポイントダメージを与える。


パチェ「(あれは、わたしの……!)」

さとり「このカードは墓地の炎属性モンスター一体を除外することで、手札から特殊召喚することができます。
    大木炭18を除外。わたしはさらに、霞の谷の戦士を召喚」


《霞の谷(ミスト・バレー)の戦士(せんし)/Mist Valley Soldier》 †
チューナー(効果モンスター)
星4/風属性/鳥獣族/攻1700/守 300
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードとの戦闘で破壊されなかった相手モンスターは、
ダメージステップ終了時に持ち主の手札に戻る。


妖夢 「(チューナー……!)」

ぬえ 「じゃあ……まさか、シンクロ召喚!?」

さとり「わたしが儀式召喚しか能の無い女だと思われていたなら心外ですね。
    レベル4のインフェルノに、同じくレベル4の霞の谷の戦士をチューニング……」

さとり「現れなさい。メンタルスフィア・デーモン」


《メンタルスフィア・デーモン/Thought Ruler Archfiend》 †
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/サイキック族/攻2700/守2300
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。
サイキック族モンスター1体を対象にする魔法または罠カードが発動された時、
1000ライフポイントを払う事でその発動を無効にし破壊する。


魔理沙「(メンスフィだと……!?)」

文  『ここで赤コーナー古明地さとり、レベル8のシンクロモンスターを召喚~! 
   一気に勝負を決めにきましたよ~!』

パチェ『メンタルスフィア・デーモンということは…………あの伏せが対象を取る効果であることを前提としての召喚ね。
    やはり次元幽閉なのか……』

さとり「メンタルスフィア・デーモンに対象を取る効果は通じません。
    遠慮なく攻撃させていただきます」

さとり「バトル。メンタルスフィア・デーモンで、ミスティック・ソードマンLV2に攻撃!
    脳符、ブレインフィンガープリント……!!」

妖夢 「くッ……!」LP5100→3300

さとり「この瞬間、メンタルスフィア・デーモンの誘発効果発動。
    モンスターを戦闘で破壊し墓地に送ったことで、その攻撃力分、わたしはライフを回復します」LP5800→6700

霊夢 「さとりのライフが……!」

幽香 「差がついてしまったわね。言わんこっちゃない。
    このライフ差、早くなんとかしないと大変なんじゃないかしら」

諏訪子「(大変、ねぇ。あるいは、もう遅いのかもしれないけどね……)」

さとり「ターン終了、ですね」



妖夢  LP3300:手札1:不死武士、伏せ1
さとり LP6700:手札1:サクリファイス(裏表示装備)、メンスフィ、闇次元(サクリ)



早苗 「これは……モンスターは奪われ、ライフも回復され、
    さらにはシンクロモンスターまで並べられて……いったいどうすれば?」

諏訪子「足りないよ、早苗。『心まで読まれて』ってつけくわえないとね」

早苗 「そうでしたね……。でも、だったら尚更妖夢さんに勝ち目は……」

霊夢 「そんなの嫌ぁ~。ここまできて、諦めきれないわよぅ。え~ん」

魔理沙「いい大人が泣くな。それも鍋ごときで。
    それに、まだ負けたって決まったわけじゃないぜ?」

霊夢 「何言ってんの、もう負けたも同然よ~。
    わたしにだって妖夢がどれだけ今不利な状況かってぐらいわかるわ。
    もうこのままわたしは餓死する運命なのよ~」

魔理沙「餓死できるもんならやって見せてほしいところだが、まあ見てろよ。
    まだ妖夢は、本当の力を出していない」

霊夢 「本当の力? なにそれ。んなもんがあるならとっとと出せばいいじゃない」

魔理沙「力ってのは、そうホイホイだせるもんじゃないのさ。
    物語の主人公が力を発揮するのは、ピンチの時って相場が決まってるんだ」

幽香 「ふふ、ピンチの時ねぇ。冗談というよりも、強がりに聞こえるわね」

妖夢 「…………」

さとり「……ふふふ。今、わずかですがはっきりと感じました。敗北を前にした、恐れという名の感情を。
    感情はカテゴリカルに分類・特定できるものではなく、次元上のベクトルとして表現し得るもの。
    どれだけ強固な精神であろうと、わずかな揺れさえあればこの第三の眼に見通せぬはずがありません」

妖夢 「(恐れ…………確かに、そうかもしれません)」

さとり「(……? また……)」

妖夢 「(恐怖はあります。でもそれは、剣を握る上で常につきまとう感覚。
    敗北に裏打ちされたものだけではありません。言うなれば、真剣勝負にこの身を投じることに端を発する恐怖です)」

さとり「あなたは……」

妖夢「(刀ではなく、柄で斬るのが真剣勝負……。
   握るのは、わたしの心。なら、無二の信念をもって、わたしは……)」

妖夢 「(……この剣を、あなたの元まで届かせる!)」

妖夢 「いきます! わたしのターン、ドロー!!」

さとり「(…………なっ!? あのドローカードは!)」

妖夢 「(来た! わたしが心に描いた、このカード……!)」

妖夢 「手札から、ダブル・サイクロンを発動!」


《ダブル・サイクロン/Double Cyclone》 †
速攻魔法
自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚と、
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して発動する。
選択したカードを破壊する。


こいし「!?」

ぬえ 「なっ……ダブル・サイクロンということは、まさか!」

妖夢 「わたしの場の伏せカードと……さとりさん、あなたの闇次元の解放を破壊します!」

パチェ『それが狙い……! 
    闇次元の解放も破壊されたことで、サクリファイスは再び除外される!』

早苗 「でも、まだ相手の場にはメンタルスフィア・デーモンがいます!」

妖夢 「ならば、わたしはさらに、調律を発動!」


《調律(ちょうりつ)/Tuning》 †
通常魔法
自分のデッキから「シンクロン」と名のついたチューナー1体を
手札に加えてデッキをシャッフルする。
その後、自分のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。


さとり「(これは…………まさかこれが、前のターンに引いたカード!?
    しまっ……)」

妖夢 「デッキからジャンクシンクロンを手札に加え、一番上のカード、ネクロ・ガードナーを墓地に送ります!
    そしてジャンクシンクロンを召喚!
    誘発効果で、墓地のミスティックソードマンを蘇生する!」


《ジャンク・シンクロン/Junk Synchron》 †
チューナー(効果モンスター)
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する
レベル2以下のモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。


妖夢 「いきます! レベル2、ミスティック・ソードマンと、レベル3、不死武士に……
    レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!!」

妖夢 「シンクロ召喚……! 推参せよ、ギガンテック・ファイター!!」


《ギガンテック・ファイター/Colossal Fighter》 †
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/戦士族/攻2800/守1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードの攻撃力は墓地に存在する
戦士族モンスターの数×100ポイントアップする。
このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、墓地に存在する
戦士族モンスター1体を選択し自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。


燐  「……ギ、ギガンテック・ファイターだってぇっ!?」

早苗 「レベル8のシンクロモンスター! 戦士族の切り札ですねっ!」

妖夢 「ギガンテック・ファイターの攻撃力は、お互いの墓地の戦士族の数×100だけ上昇します! 
    よって、ギガンテック・ファイターの攻撃力は……」


    ギガンテック・ファイター   攻撃力3600


さとり「(ううっ、3600……)」

霊夢 「これだけの攻撃力なら……いけそうだわっ」

妖夢 「バトルフェイズですっ! 
    ギガンテック・ファイターで、メンタルスフィア・デーモンを攻撃!!」

妖夢 「断迷剣……迷津慈航斬ッ!!」

さとり LP6700→5800

文  『……迷津慈航斬が決まったァッ!
    シンクロモンスター同士の対決は、見事青コーナーが制しました!』

パチェ『まさかここで盛り返す余力があったとは……。
    心を読む妖怪サトリ相手に、信じられないわ。
    ひょっとしたら……本当に、奇跡は起きるかもしれないわね』

幽々子『ふふっ……違うわね。奇跡は起きるのではなく、自身の手で起こすものなのよ』

妖夢 「……ターンエンドですっ!」



妖夢  LP3300:手札0:ギガンテック(攻3600)
さとり LP5800:手札1:無し



魔理沙「(……やっぱり、さすがだな妖夢!
    あの時は負けたギガンテック・ファイターだが、今度こそ借りを返したぜ!)」

さとり「……ドローします」

さとり「(ふぅ……まさか1枚のカードを読み取り損ねただけで、これほどの被害を被るとは。
    さすがに想定外でしたね。それにしても……)」

さとり「(まただわ。さっき彼女のドローする瞬間に、また光が……)」

さとり「(周りの心の声からすると、どうやら他に気づいた者は誰もいない様子……。
    わたしにしか見えなかったのかしら)」

さとり「(いや……違うわね。
    〝わたしにしか〟というよりも、〝わたしのこの第三の眼でしか見えなかった〟と考えるのが妥当……。
    ということは、今のは外見的に光ったのではなく、彼女の精神の輝き。
    しかし、なぜそんなことが……?)」

さとり「(不可解ですが……今は余計なことに意識を向けるのはやめましょう。
    こんな愉快で楽しいデュエル、わたしにとって二度と無いかもしれませんしね……ふふふ)」

さとり「裏守備をセット。エンドです」

妖夢 「わたしのターンです! ドロー!」

魔理沙「(……ん?)」

早苗 「さとりさんの場に伏せカードは無い……チャンスだわ!」

妖夢 「ギガンテック・ファイターで、裏守備を攻撃! 迷津慈航斬!!」

さとり「破壊されます。これは次元合成師です」


《次元合成師(ディメンション・ケミストリー)/Dimensional Alchemist》 †
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1300/守 200
1ターンに1度だけ、自分のデッキの一番上のカードをゲームから除外し、
さらにこのカードの攻撃力をエンドフェイズ時まで500ポイントアップする事ができる。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分のモンスターカード1枚を選択し、
手札に加える事ができる。


妖夢 「(……このモンスターは!)」

衣玖 「今度はわたしのカード……!?」

さとり「誘発効果発動。
    このモンスターが破壊され墓地に送られた場合、自分の除外されているカードを
    1枚選んで、手札に加えることができます。
    わたしが選ぶのは……サクリファイス」

パチェ『これは……まずいわね。彼女の手札にまた儀式魔法があれば……』

文  『えっ!? じゃあ、またサクリファイスが……』

幽々子『来る、でしょうね。次のターン、確実に』

妖夢 「1枚伏せ……ターンエンドです!」



妖夢  LP3300:手札0:ギガンテック(攻3600)、伏せ1
さとり LP5800:手札2:無し



さとり「ドローします」

さとり「闇の誘惑を発動。2枚ドローし、手札のサクリファイスを除外します」


《闇(やみ)の誘惑(ゆうわく)/Allure of Darkness》 †
通常魔法(制限カード)
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。


幽香 「(手札増強……。間違いなく、来るわね。このターンに攻撃が……)」

さとり「(ふふふふふ……あなたの成長したその力、堪能させていただきました。
    しかし、名残惜しいですがそれももう終わりです。
    このターン、サクリファイスを召喚しギガンテック・ファイターを吸収。
    そのままダイレクトアタックをすれば、今度こそ体勢は決する。
    そう、その伏せカードがなんであろうと……)」

さとり「(なんで……あろう……と……?)」

妖夢 「…………」

さとり「(…………な、なぜ? どうして〝あの伏せカードがわからないの〟!?)」

こいし「(…………? 
    お姉ちゃん??)」

さとり「(……お、落ち着くのよさとり。
    第三の眼は、ちゃんと開いている。観客の心も……妖夢さんの心も視える。
    彼女の意識を深く探せば、必ず……)」

さとり「(…………)」

さとり「(……な、無い。
    伏せカードのイメージが……瞬間的に視野に焼きついているはずの記憶が……どこにも!?)」

妖夢 「…………」

さとり「(ま…………まさかっ!?)」

魔理沙「……なあ、霊夢。妖夢のやつ、さっきドローカードを見たか?」

霊夢 「えっ? 見たかって、確認したかってこと?」

魔理沙「ああ。今、見ないでそのまま伏せたような気がしたんだが」

霊夢 「そんなはずないでしょ。モンスターか魔法かもわからないのに、伏せれるわけがないじゃない」

魔理沙「それはそうなんだが……」

魔理沙「(……いや、やっぱりそうだ。
    さとりのあの狼狽ぶり、間違いない。妖夢のやつ、なんて真似を……!)」

さとり「(まさかドローしたカードを確認もせずに伏せるとは。なんという奇策を……。
    し、しかし……)」

さとり「あなたは正気なのですか……? あなたはその伏せカードが何か知らない。
    もし表になった時にモンスターカードだったとしたら、どう責任を取るおつもりですか?」

妖夢 「…………」

文  『えっ? どういうことです? 今のさとりさんの発言は……』

幽々子『くすくす、そのままの意味よ。妖夢は、ドローしたカードを確認してないの』

文  『なっ、なんですってぇっ!?』

早苗 「うそっ!? ほんとに……?」

諏訪子「あーりゃりゃ。それが事実だったら、とんでもないわね」

勇儀 「はははっ。やるね! 面白いっ!」

ぬえ 「そんな、ムチャクチャだよっ! 
    いくら心を読まれるのが嫌だからって、カードの種類もわからないで、そんなことしたら……」

白蓮 「です、ね。ふむ……。
    運営の方々、もしあれがモンスターカードだったりしたらどうするか、
    これは〝決め〟が必要なのではありませんか?」

文  『そ、それは、そのう……。
    ええ~っとぉ……そおですねぇ。チョンボで8000点払いってわけにも……いきませんよね?』

にとり「(いってたまるかよ……)」

幽々子『反則負け、でいいんじゃないかしら?』

霊夢 「ええっ!?」

文  『反則負けって……あわあわあわ。
    た、確かに普通に考えればそうなるかもしれませんが、それだと番組が……』

幽々子『あら、だってこれぐらい当然じゃない。
    常識的に考えて、そんな良識を欠いたプレイ……しかも故意にともなれば、その代償は大きくて然るべき。
    あなたも、そうは思わない?』

パチェ『え、わたし? それは、確かに正論だけど…………でも、あなたはいいの?
    自分の従者が、反則負けになんてなっても……』

幽々子『身内だからといって贔屓しちゃいけないでしょう。
    だいたい、本人もそれぐらいの覚悟はあるはずよ。ねえ、妖夢?』

妖夢 「……はい! わたしは構いません!」

さとり「(なっ……!?)」

霊夢 「ちょちょちょちょぉっと~! 
    なにオッケーしてんのよっ。それも二つ返事でっ」

魔理沙「(妖夢……。確信があるのか。
    あいつの第六感が告げているのか、それとも……)」

妖夢 「…………」

さとり「(あの自信の色……はったりなどではない。
    心を視るに、彼女自身、あのカードが何かはまったくわからないのは間違いないのに……)」

さとり「(それに……なんなの? 
    先ほどから彼女の心の周囲をちらつく、あの光は……)」

幽々子「(うふふふ……おそらくここが妖夢にとって、最大の剣が峰。
    真理を見出し、奥義を会得するに足る器と成り得たか、否か……その是非が問われる瞬間……)」

幽々子「(それでも妖夢……。あなたは、あなたの為すべきことをなさい。
    地摺星眼(じずりせいがん)を極めたあなたなら、自ずと理解できているはず……)」

妖夢 「(幽々子様…………わたしの意を汲んでくださったのですね。ありがとうございます。
    貴方様への御恩、忠義……全てに報いるために、わたしは……)」

妖夢 「(わたしは……自分の力を信じます!!)」

さとり「(ううっ……! この凄絶な気迫は……)」

さとり「(い、いけないわ……。
    今攻撃を仕掛けては駄目だと、わたしの第六感……いえ、第七感が告げている)」

さとり「(とはいえ、あのモンスターを放置することも…………ならば、ここは……)」

さとり「手札より、儀式の準備を発動します……!」


《儀式(ぎしき)の準備(じゅんび)/Preparation of Rites》 †
通常魔法
自分のデッキからレベル7以下の儀式モンスター1体を手札に加える。
その後、自分の墓地から儀式魔法カード1枚を手札に加える事ができる。


さとり「このカードの効果で、デッキからレベル7以下の儀式モンスターと、
    墓地から儀式魔法をそれぞれ1枚ずつ手札に加えることができます。
    わたしはデッキから2枚目のサクリファイスと、墓地の高等儀式術をサーチ。
    そして高等儀式術を発動!」

幽香 「(きたわね、儀式術。やはりサクリファイス……)」

幽香 「(これでギガンテック・ファイターは間違いなくやられる。
    妖夢に防ぐ手段は、あの正体もわからぬ伏せカードのみ。とても正気の沙汰とは……)」

さとり「デッキの2枚目の大木炭18を墓地に送ることで、手札の儀式モンスターを儀式召喚します。
    三度現れなさい、サクリファイス……!!」

こいし「(やったわっ! これでお姉ちゃんの勝ちがほぼ確定……)」

こいし「(……? あれ?)」


    サクリファイス   守備力0


こいし「(守備表示……? なんで??)」

さとり「(これがわたしにでき得る限界……これ以上は踏み込んではならない、そんな気がする……)」

さとり「(しかし……これで、ギガンテック・ファイターを倒せば!)
    優先権を行使し、サクリファイスの起動効果を発動!
    ギガンテック・ファイターを吸収しなさい!!」

妖夢 「(………………ここだ!!)」

さとり「(……!?)」

魔理沙「(まさか、使う気か!? 伏せカードを!)」

妖夢 「リバースカード……オープン!!」

さとり「(なっ!? あれはっ……!?)」

妖夢 「(……このカード。不思議だ。
    まるで予期していなかったのに、このカードであって当然なような、そんな感覚がする。
    これが……これこそが……)」

妖夢 「(わたしの啓いた、剣の境地……!!)」

妖夢 「トラップ発動……!! バスター・モード!!!」


《バスター・モード/Assault Mode Activate》 †
通常罠
自分フィールド上に存在する
シンクロモンスター1体をリリースして発動する。
リリースしたシンクロモンスターのカード名が含まれる
「/バスター」と名のついたモンスター1体を
自分のデッキから攻撃表示で特殊召喚する。


諏訪子「!?」

早苗 「うそっ……!?」

パチェ『リバースカードを見ずに当てた…………それも、バスター・モードですって!?』

妖夢 「サクリファイスエスケープです! 
    場のシンクロモンスターをリリースすることで、デッキの同名モンスターをアサルトモードで特殊召喚!!」

さとり「(なに……これは……?)」

さとり「(彼女の心から……発せられる光が、どんどん強くなって……)」

さとり「(まさか、これが……あなたの本当の力!?)」

妖夢 「推参せよ!! ギガンテック・ファイター/バスター!!!」


《ギガンテック・ファイター/(スラッシュ)バスター/Colossal Fighter/Assault Mode》 †
効果モンスター
星10/闇属性/戦士族/攻3300/守1500
このカードは通常召喚できない。
「バスター・モード」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
全ての相手モンスターの攻撃力は、
自分の墓地に存在する戦士族モンスターの数×100ポイントダウンする。
このカードが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキから戦士族モンスターを2体まで選択し墓地へ送る事ができる。
また、フィールド上に存在するこのカードが破壊された時、
自分の墓地に存在する「ギガンテック・ファイター」1体を特殊召喚する事ができる。


霊夢 「す、スラッシュバスターですって!?」

幽香 「(サクリファイスの効果は、1ターンに一度のみ。もうこのターンには使うことができない。
    吸収をかわし、さらに強力なモンスターを召喚するとは……)」

幽香 「(ふふっ、なるほど。正気の沙汰では届かない境地、というわけね)」

文  『ご、ご覧になられましたでしょうか!
    今しがたの攻防、青コーナー魂魄妖夢、信じがたいことをやってのけました!
    視聴者の「そんなのありか」という声が聞こえてくるようです!』

幽々子『うふふふふ。よかったわね、放送事故にならなくて』

文  『いや~、まったくですよぉ。
    ここで反則負けなんて起きた日にゃ、後で再録してVTRから差し替えせにゃなりませんでしたし……
    ……と、こっちの事情は置いといて、今のはどういうことなんです!?
    幽々子さん、あなたは何かおわかりなのですか? てかぶっちゃけインチキしました?』

幽々子『もう。野暮なこと言わないでほしいわ。
    あれは正真正銘、妖夢が引き当てたカードよ』

文  『ええっ、でも……。じゃあどうやったっていうんです?』

幽々子『そんなことわたしが知るわけないでしょう。後で妖夢に聞いてみたら?
    もっとも、あの娘もよくわかっていないでしょうけど』

文  「(…………。
    最終戦になって少しは真面目に解説してくれてたかと思えば……。
    まあいいや、いつもの幽々子さんに戻っただけね)」

幽々子『とにかく……。あの娘は最大の土俵際を乗り越えた。
    今頃相手は、目を白黒させてるでしょうね。うふふふふふ……』

さとり「…………」

さとり「(そ、そんな……あり得ない。妖夢さんの心が、光であふれて……。
    何なの、あの心の色は……)」

さとり「(うう……駄目だわ。眩しすぎて、彼女の心を正面から直視できない。
    これでは…………〝彼女の心が視れない!?〟)」

さとり「(この光の色……。この心の色は……〝信頼〟の光?)」

さとり「(間違いないわ。
    わたしの眼は、感情の度合いは色で表される。
    怒りは赤、落胆は青、喜びは黄色……そしてこの目を穿つばかりに眩い白銀の光は、〝信頼〟の輝き……)」

さとり「(でも、これほどの光なんて……。
    通常、どれだけ想いが強くとも、感情は淡く潤む程度なのに。
    これほどまでに、内から迸らんばかりに光り輝くなんて、今まで視たことは……)」

さとり「あなたは、一体……」

妖夢 「……わたしは、一介のしがない庭師に過ぎません。
    少なくとも、この大会が始まるまでは、そう思っていました」

妖夢 「でも、大会を経てわたしは気づいたんです。
    師がわたしに託した、最後の奥義。究極の剣の境地、〝無心〟。
    その境地に到達するに至る、精神の極意というものを。
    わたしが導き出した答えは、信頼……そう、〝信じる〟ことの本質です」

さとり「信じる…………確かに、視えなくともあなたの心からは、はっきりとなにかへの信頼の光が見られます。
    しかし、それがどうして……」

妖夢 「わたしは気づいたんです。〝信じる〟ことは、世に二種類あると。
    それは一つは自分を信じるということ。
    そしてもう一つは、誰かを……仲間を信じるということです。
    この二つは一見まったく違うことに見えて、決して切れない糸で繋がっている。
    自信という言葉がありますが、それは前者だけでは決して成り立たない。
    自己を信じ、また他人と信じあうことによって、初めて生ずるものなんです」

魔理沙「(妖夢……)」

妖夢 「剣の道は、修羅の道にあらず。わたしは今回のことで理解しました。
    剣の道とは、人の道だということを!
    自分への確信は、紡ぎ合う絆の果てに辿り着ける。
    そのときこそ初めて、真に肉体を精神に預け、究極の境地、〝無心〟に達することができるのだと!!」

さとり「(無心……。これが……?
    そんな、本当の奇跡みたいなことが……)」

さとり「(そんなもの……無我の境地など、眉唾だと思っていた。
    古い文献や御伽噺の中でしか存在しないものだと。
    現にわたしは今まで数々の心を視てきたけれど、完全に心を無にできた人物など、ただの一人も出くわさなかった……)」

さとり「(でも今、現にもう、わたしには光に満たされた彼女の心は視れない。
    彼女が今どういう思考をして、何を考えているか……まったくわからない)」

さとり「(そう、なのね……。
    無心とは、ただ何も考えず心を空にするなどと、そんな単純なものではない。
    たった一つの想いを、一片の余地も差し挟むことなく、ひたすらに磨き上げることによって到達する境涯……)」

さとり「(それこそが、〝無心〟……)」

こいし「(お姉ちゃん……あんなに呆然として)」

さとり「………………モンスターを裏守備でセット。ターンエンドです」



妖夢  LP3300:手札0:ギガンテックバスター
さとり LP5800:手札1:サクリファイス、裏守備



妖夢 「ドローします!」

さとり「……妖夢さん。差し支えなければ、教えていただけませんか?
    あなたが如何にして、そのような境地に至ったのかを……」

妖夢 「これまでわたしは自分のデッキとはそれなりの信頼関係があったと思っていました。
    でも、その一方で、どこか芯の通らない感覚を覚えていた。
    わたしはデッキを信頼していましたが、わたし自身のことを信頼し切れていなかったからです」

妖夢 「わたしはこれまで、一日も鍛錬を欠かさず腕を磨き、精進を続けてきました。
    それでも、自分の力を今ひとつ信じ切れなかった。
    どれだけ努力をしても、自分はまだ半人前で、年端もいかないただの小娘なのだと、心のどこかでそう見做していたのです。
    ですが、わたしは幽香さんのデュエルを見て、自分を信じることの意義を学びました。
    また、自分のデッキを信じることも……」

妖夢 「そして……魔理沙さんや皆さんとともにいて、自分以外の誰かを信じることを理解したのです。
    西行寺家で唯一の使用人であるわたしは、今まで誰の力も借りることなく万事を為してきました。
    頼る相手がいなかったのは別にしても、他人の力に必要性を感じなかったからです。
    己自身を磨き、五体を極限まで鍛え上げれば、他に何もいらない。ゆえに、わたしは誰のことも信じられずにいた。
    しかし、それは大きな誤りでした。
    他人を信じられない人間は、結局自分も信じられない。信じることができない。その逆も然り。
    そう今回の巡業で、そう悟ったんです!」

妖夢 「だから……わたしは今、全てが信じられる。
    この無二たる想いを胸に……さとりさん、今度こそ、あなたに勝ってみせます!!」

魔理沙「妖夢……。なんだかお前、かっこいいぜ!」

幽香 「ふふふ、周りが見えないぐらい自分を信じられるなんて。とんだお馬鹿さんもいたものね。
    でも、嫌いじゃないわ。わたしは」

幽々子「(そう……。
    あなたにどうしても不足していたもの、それは〝自信〟……)」

幽々子「(あなたは強い。あなた自身がそう認めることで初めて、その強さは何倍にもなる……)」

幽々子「(人によって真理とは、自分が信じたいと思うことに過ぎない。
    それが本当に真理かどうかは無関係なの。でもだからこそ、人は人を信じることができる……)」

幽々子「(今こそ胸を張りなさい。あなたには、その資格がある。
    そう、あの世でたった一人、西行寺家警護役という資格を持っているのだから……)」

妖夢 「バトルフェイズです! ギガンテック・ファイター/バスターで、サクリファイスを攻撃!!」

妖夢 「魂魄流奥義……西行春風斬!!!」

さとり「…………くぅぅっ!!」

霊夢 「やった! サクリファイスが真っ二つだわっ!」

早苗 「凄いわ! 今度こそやりましたねっ!」

勇儀 「くぅ~たまらないね、あのチビッ子! 魅せてくれるじゃん!」

妖夢 「1枚伏せ……ターンエンドですっ!」



妖夢  LP3300:手札0:ギガンテックバスター、伏せ1
さとり LP5800:手札1:裏守備



さとり「…………」

燐  「そ、そんな馬鹿にゃ……。さとり様がこれほど押されてるなんて……」

こいし「お姉ちゃん、まさか……」

さとり「……ええ。今のわたしには、彼女の心は視えていないわ」

ぬえ 「視えていないって……。ど、どうして!?」

白蓮 「能力が使えなくなったということですか? 左胸の眼は開いているようですが……」

さとり「力が失われたわけではありません。
    しかし、どうやら彼女の……妖夢さんの心だけは、読み取ることができなくなったようです」

さとり「(かつてわたしは……あなたに、信じることの視野の狭窄を指摘した。
    しかし、周りが見えなくても……いや、ひたすらに前しか見ないからこそ、
    一貫した途方も無いエネルギーが生まれる……)」

さとり「(今のあなたが……そうだというのですね。ふふふ……)」

霊夢 「妖夢の心だけ……? なんでそんなことが……」

さとり「さあ……? 正直、わたしにもわかりません。
    こんなことは、永きに渡るわたしの人生の中でも、まったくもって初めてのこと。
    奇跡、としか言いようがないですね」

諏訪子「(奇跡……ふぅん)」

妖夢 「それは……本当なんですか? さとりさん」

さとり「はい。あなたに自覚は無いでしょうが……。
    あなたの起こした奇跡のほど、これ以上ないぐらいに堪能させてもらっていますよ」

妖夢 「しかし、それでは全力で戦うことは……」

さとり「ふふふ、気にされることはありません。
    確かに、心が読めない以上、あなたの思考も、手札も、戦略も見通すことはできない。
    いつもの変則的なプレイングではなく、ただの凡庸な打ち回しとなってしまうかもしれません。
    相手をするあなたからすれば、きっとこれからは、さっきまでよりも歯応えが無く感じられるでしょう。
    でも…………わたしは決して悲観しているわけではありません。むしろ嬉しいのです」

妖夢 「嬉しい……?」

さとり「ああ……なんと言ったらいいのかしら。言葉が浮かばないわ。
    わたしは正直、奥手な妖怪です。この喜びをうまく表現する術を、うまく思いつかない……」

こいし「(お姉ちゃん……)」

こいし「(そうだよね…………お姉ちゃん、今まで本気でデュエルしたことなかったもの。
    ううん、本気を出したくても出せなかった。一度だって、全力を出せた戦いなんて無い。
    だって、心を視れば勝って当たり前だから。
    わたし以外とのデュエルで負けたことだって、本当に一度も無かったし……
    ……そのせいで、お姉ちゃんが段々デュエルに対して冷めてくのも感じてた。
    深い深い、絶望にも似た、そんな冷たさ……)」

こいし「(でも…………今、初めて能力の効かない敵と出会った。
    敵……ううん、好敵手に)」

こいし「(やっとできるんだね。お姉ちゃんがずっと望んでた、本当のデュエルが……。
    本当によかったね、お姉ちゃん……)」

さとり「わたしは神というものを信じておりません。
    ですが、もしそんな存在がいるとしたならば、今だけは感謝したい心地です。
    1枚伏せ、裏守備のモンスターを反転召喚、メタモルポット」


《メタモルポット/Morphing Jar》 †
効果モンスター(制限カード)
星2/地属性/岩石族/攻 700/守 600
リバース:お互いの手札を全て捨てる。
その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする。


幽香 「!?」

魔理沙「メタポだと……っ!?」

さとり「お互いの手札は0枚となり、それぞれデッキから5枚ずつドローします」

文  『な、なんと~! このよもやのタイミングで、メタモルポットのリバース効果が発動~!
    赤コーナー、とんだ隠し玉を用意しておりました~!』

パチェ『お互いが手札を消費しつくしたところで、5枚ドロー……。
    まだだわ。これで、まだ勝負はわからない!』

さとり「仕切り直しといきましょう。
    手札も五分、ライフも五分、そして能力が封じられた今、わたし達は初めて平等の地平、同じ土俵に立った。
    妖夢さん……ここからが、本当の勝負です!!」

妖夢 「(本当の勝負…………。そうか、きっと、これがさとりさんの初めての……)」

妖夢 「心得ました! わたしの全てをこの剣に懸けさせていただきます! いざ……!!」





















                                             ・・・・・・To be continued
 とりあえずここまで。大将戦②、お読みいただきありがとうございました。
 若干投稿が遅れてすみません。風邪治らないの……(´;ω;`) 

 まだ途中なので余計な事は書かず、あとがきは次回にまとめます。
 次で大将戦ラストです。


 それにしても、まさか寝込んでいる間に新作の情報が出てたとは……。
 妖夢自機復活おめでとう! よかったね!
クラミ痔あ
http://
コメント



1.名無し削除
バスター・モードをチェーン2で発動しているので、戦士族モンスターを墓地に送る効果はタイミングを逃します
2.名無し削除
連レス失礼
ギガンテック・ファイター/バスターの効果は読まれているのでしょうか?
攻撃力変化は自身でなく相手フィールド上のモンスターに及ぶのですが
3.名前が無い程度の能力削除
ををうw凄い熱い展開になってきましたねぇ。ドローを見ずに当てるとは…、妖夢はアテムと同境地なのか。もはやありえないとしかw

あと、間違い報告です~。
ギガンテック/バスターは自分の攻撃力アップじゃなくて、相手モンスター全ての攻撃力をダウンさせる効果です。なので、攻撃力は4400じゃなく、3300のままです~。
4.名前が無い程度の能力削除
>魔理沙「いい大人が泣くな」
魔理沙よ君も霊夢も大人じゃないでしょうに
今回の展開でvsマリクの時の
磯野「確認してください」王様「断る!!」を思い出して滾ったw
5.クラミ痔あ削除
>>1
ありがとうございます。修正しました。
真っ先に指摘いただいて本当に助かりましたorz
ここにきてなぜこんなポカを……。
せっかくの展開なのに、つまらない間違いでお茶を濁してもうしわけないです><


>>3
>ドローを見ずに
すみません。どうしてもやりたかったんですw
実際の妖夢の感覚としては、「引いたカードが何かはまったくわからないけれど、なぜかあのタイミングで発動するのがベストであることを確信している」といったところでしょうか。
どっちにしろ人間業じゃないんですが(´∀、)


>>4
確かに大人じゃないw
それにしても、毎夜平気で酒盛りしている彼女達からしたら、きっと自分たちが子供だなんて思ってないんでしょうね。
すでに精神は老境の域なんでしょうか。
6.藍色狐削除
いくらてんぺコン以外はガチだったからって、早苗さんカード知らなすぎじゃあ……。 はッ! まさか早苗さん、古参デュエリストではないな!?

「仲間の存在が読心に対する対抗手段」という意味では、確かに王様と似てるかも……? しかし、妖夢は王様と違ってセコいデュエルはしないと信じてる!
7.名前が無い程度の能力削除
王様www 無性にペガサスの格好をしたさとりが見えてしまうorz
8.クラミ痔あ削除
>>6
早苗さんの選考会いたという経歴はあくまで自分で言ってることなので、ひょっとしたら詐称かもしれませんw
王様は最終的に、直接仲間ガード(?)してましたが、妖夢の場合は仲間の存在は覚醒するきっかけに過ぎず、さとりの能力をはじいたのは妖夢自身の力なので、若干意味合いは違うかもです。


>>7
もしさとりがペガサスだったら、遊戯ボーイじゃなくて妖夢ガールって呼ぶんでしょうね。
あんまり想像したくないw
9.名前が無い程度の能力削除
こんなかっこいい妖夢久々に見た。
状況が五分に戻って俄然熱くなってきたし、次回が待ち遠しいw

心の色はパラサイトムーンから?
10.名前が無い程度の能力削除
半霊と心を入れ替えるマインドシャッフル!とか言い出すのかと思ってたらクリアマインド……熱い展開に俺のハートがカットビング。

さとりにメンタルスフィアはしっくりきますね。サイキックだからかな。サイコデッキ組みたいです。

最終戦も楽しみにさせていただきます!
風邪、お大事に。
11.クラミ痔あ削除
>>9
>パラサイトムーン
ではなく、自分で勝手に(というか適当に)つけた設定です。
作中でさとりんが言ってたように、感情というものが類型的ではなく、特性的に表されるものなのであれば、色で視覚するのが適当かな、といった具合です。
まあ、ありがちと言えばありがちですが(´∀、)


>>10
変な心配かけてすみませんorz
一人暮らしなので寝て治すつもりでしたが、明日医者に行ってきます(´;ω;`)

メンスフィはなんか合ってますよね。さとりの能力自体がエスパーっぽいからかな。
12.アジサイ削除
サクリファイスの戦闘ダメージについての説明がありましたが、守備モンスターを攻撃した場合、反射ダメージをうけるのはサクリファイスをコントロールしているプレイヤーのみです。サクリファイスが戦闘破壊確定して、代わりに装備モンスターを破壊した場合のみ、お互いにダメージが発生します。
TF5では守備モンスターを攻撃したときの反射はお互い受ける設定になっていましたが、遊戯王Wikiによると、先に記述した通り、「自分のみ」ダメージを受けるそうです。
サクリファイスデッキを作った際に、さんざんWikiで調べましたよ!

さぁ盛り上がって参りました!さとりさんはまだオベリスクを出さなければならない課題が残ってます。
13.クラミ痔あ削除
>>12
そうだったんですか!
オンラインだとTF5同様未だにこの裁定なので、まったく知りませんでした。
裏守備吸ったサクリで守備に特攻なんてよくやるのに……ちゃんと裁定されるまで今後は控えるようにしようかな(´∀、)
とりあえず、修正をしておきました。