注:前回からの続きです。
________22:55 博麗神社境内
にとり「文さん。決勝戦用の照明、セッティングOKです」
文 「カメラは?」
にとり「フォーカス良し、アイリス良し、アングル良し。問題ありません」
文 「うん…………。じゃあ、あとは時間ね」
文 「(現在時刻、二十二時五十九分。50……51……52…………よしっ)」
文 「にとりっ! カウント!」
にとり「了解です。55……56……57………………」
文 『……幻想郷全土にてご覧いただいている、人間、妖怪、紳士淑女から老若男女、果ては妖精精霊吸血鬼神様の皆さん!
そして会場にお越しいただいているデュエリストの方々! 大変長らくお待たせ致しました!
これより正真正銘のクライマックス、第一回チキチキデュエルモンスターズ天下分け目の対抗戦、イン幻想kyo!
その最終戦を執り行います!!』
ぬえ 「おお~。なんだか盛り上がってきたわ。パチパチ~」
勇儀 「まさか最後までもつれるとはねぇ。てっきりこっちの三タテで終わると思ってたのに」
早苗 「地上の妖怪だって強いんですっ。
この試合だって、最後まで負けられません! ねっ、諏訪子様っ」
諏訪子「まあねぇ。でも、どうなることやら……」
霊夢 「くっそ~。お腹すいてムカムカして仕方ないけど、ここは盛り上がっとかないと損だわ。
ああもう、応援しちゃうんだからね~! 気張っていきなさいよ!」
妖夢 「ああもうっ。わかりました、わかりましたから、半霊を叩かないで」
パチェ『なんだか頼りないわねぇ、地上チームの大将。
あんなのが最後で、地上の威厳は保たれるのかしらね』
幽々子『ふふふ。ま、確かに頼りないわね。
でも、だからこそ成長の余地がある。
未熟だから切り拓ける境地というのも、間違いなく存在するのよ』
妖夢 「(幽々子様……)」
妖夢 「(……わかっています。わたしはもう、〝真理〟を見つけました。
何をして、何を思い、どう戦うか。全てわかったつもりです。もう、迷いはありません。
ですから……しばしの間、そちらでお待ちください)」
魔理沙「よっ。いよいよだってのに、相変わらずシケた面だな」
妖夢 「えっ……?
そ、そうですか? それはすみません」
魔理沙「ほら、それだよ。シケた面ってのは。
根詰めすぎるのはお前の悪い癖だぜ。悪いこと言わないから、四の五の言わず楽しんでくればいいのさ。
そら、こいつをやるよ」
妖夢 「こいつって……。このカードは……?」
魔理沙「だから、やるよ。
ああ、とはいっても、今だけ貸してやるって意味だぞ。試合が終わったら返してもらうからな」
妖夢 「し、しかし……このカードは、わたしのデッキには……」
魔理沙「なにも、デッキに入れろなんて言ってないさ。お守り代わりにでも持っとけって」
妖夢 「お守り、ですか?」
魔理沙「ああ。お前は知らないだろうが、前にわたし達が紫と異次元で戦った時、
アリスはデッキに、藍から預かったカードを入れてたんだ。
そして最後に、そのカードによって救われた。
アリスも、紫も、そして幻想郷にいる全員がな」
妖夢 「(そんなことが……知らなかった)」
魔理沙「だから、これは一種のゲンってやつだ。懐にでも忍ばせとけばいいさ」
妖夢 「いえ…………そうですね。じゃあ、使わせていただきます」
魔理沙「ああ、そうそう…………って、おいおい、待てよ!
……本気か? もう一度言うが、わたしは別にデッキに入れろと言うんじゃ……」
妖夢 「いいんです。デュエルモンスターズが、時に人智の及ばぬ何かが作用するということは、わたしも知っています。
なら、わたしも賭けてみたいんです。だから……」
魔理沙「お前……」
魔理沙「…………やっぱり、変わったよな。なんだか、丸くなった」
妖夢 「ふふふ、なにそれ。褒めてるんですか?」
魔理沙「当然。わたしはこう見えて、人を見たら褒めずにはいられない性格なのさ」
妖夢 「ますますなにそれです。もう、あなたは最後の最後まで不真面目なんだから……」
衣玖 「いよいよ最後の戦いですね、魂魄さん。
こう言うとなんだか縁起が悪いかもしれませんが…………あなたの武運長久を祈らせてください」
妖夢 「(永江さん……)」
幽香 「そろそろ家に帰って昼寝したいしね。
とっとと勝って、さっさと食べて、いい夢を見せてほしいものだわ」
妖夢 「(幽香さんまで……)」
妖夢 「…………です、ね。皆さん、承知しました」
妖夢 「魂魄妖夢、いって参ります!!」
白蓮 「さとりさん。先ほど言ったことは……」
さとり「ご心配なく。この試合が終わったら、カードは必ずお返しします」
燐 「さとり様~。あたい達、忘れられてる……」
さとり「ああ、そういえば。あなた達、どうやら任務は失敗したようね」
燐 「あうう~、ごめんなさい~」
空 「ありゃ。お燐ってば、またなんかやらかしたの? ハハッ、こりないね~」
燐 「あんたもよっ。ついさっきのこと忘れんな鳥頭っ」
こいし「ていうか、お空さ。見た目ボロボロなんだけど、あなた大丈夫なの?」
空 「え? まあ、もう大して痛くないなぁ。
てかなんだか知らないけど、気づいたらなぜか体中黒こげになってて~」
霊夢 「あいつって下手したら、チルノよりアレよね……」
魔理沙「その分身体は頑丈すぎるぐらいだな。もうピンピンしてら。
こちとら全身第二度熱傷ってくらいヒリヒリしてんのに」
霊夢 「あれ? そういやあんたもボロボロね。今気づいたわ」
魔理沙「ふん。ま、構わないさ。鍋はあらゆる病魔にも効くっていうしな。
だから後は大人しく待とうぜ。鍋がおいしく炊けあがるのを、さ」
霊夢 「……ふーん。なんだかんだいって、あんた結構あいつのこと信頼してるわよね」
魔理沙「お? そう見えるか?」
霊夢 「なんとなくね。てか、さっきの話、聞いてたわよ。
あいつが丸くなったって、どこが? 外歩くときはいつも帯刀してるような奴なのに」
魔理沙「いやまあ、な。さっきの丸くってのはそういう意味じゃないんだが……まあいいや。
さ、わたし達も、気合いれて観戦といこうぜ」
霊夢 「ただ眺めるだけなのに気合もいらないでしょうに。
ま、いいわ。鍋がかかってることだし。いきましょ、わたし達も」
魔理沙「(…………丸くなった、か)」
魔理沙「(比喩だなんて、傍から聞いたらわからないだろうな。
丸くっていうのは、研磨されたって意味だ。
かつては荒削りで角々しかった岩が……まるで今は長時間丹念に磨かれた宝石みたいだって。
そう思ったんだ……)」
魔理沙「(わたしにもわかるぜ。あいつは、自分の中の疑問に、一つの決着をつけた。
何かに気づき、そして悟ったんだ。だったら、もう心配は無い。
わたしが渡したカードは、その信頼の証……)」
魔理沙「(ああ……そうか。
なんだか久しぶりだと思ったら……こんな気分になったのは、前の紫との戦いでアリスにバトンを渡した時以来だな)」
魔理沙「(そうだ、誰かに結末を託すってのも、案外悪いもんじゃない。
こんなふうに、そいつが心から信頼に足る人物であれば……。
がんばれよっ、妖夢!)」
*
幽々子「(…………)」
幽々子「(かそけき深淵の底……聴こえ得るは深き息吹)」
幽々子「(月が、今最も高く、そして最も輝いている……。望月ね)」
文 『さあ、数時間あまりの時間を行ってきましたが、振り返ると一瞬だったような気もします。
紆余曲折ありました今回の大会ですが、わたくしもこうした運営事業は始めてですので、
ここまでくるとまさに感無量といった心地です。
皆さんもきっと同じ心境であることでしょう。
しかし! ここで気を抜いてしまっては、あまりにももったいない!
最後まで引き締め、フィナーレを最高のコンディションで迎えましょう!』
文 『では! お互いのチーム、大将の入場です。
青コーナー、地上チーム大将。魂魄妖夢!
そして赤コーナー、地底チーム大将。古明地さとり!
両雄は、境内のデュエルステージへとお進みくださ~い!!』
妖夢 「(さとりさん……)」
さとり「そういえば、まだ今日はきちんとした挨拶をしてませんでしたね。
こんばんは、妖夢さん。今宵はいい月ですね」
妖夢 「さとりさん、あなたに真意を問いたいと思う気持ちはある。
しかし、今はあえて追求はしません」
さとり「わかっていますよ。語るなら、言葉ではなくデュエルで。それがよろしいでしょう」
妖夢 「お互い、全力を望みます!」
さとり「(…………)」
さとり「(やはり精神が、あの時とはまるで違う………………なんと純粋で、美しい心の色。
不安も、疑念も、焦燥も、憂慮も、その他全ての雑念を打ち消し、
精神を闘いという一点にのみ集中させた、理想的な心理模様。
憂いと恐怖で混濁していた前のデュエルの時とは、まるで別人……)」
さとり「(これは……期待以上、といっても過言ではない。楽しめそうね……)」
さとり「どうやら先の敗北は、あなたの心に影を落としてはいないようですね。
追懐は、どんな現実でも人を大きくさせる、といったところでしょうか。
読心の能力を持つわたしですら、こころの機能全てを把握することは叶いません。
なるほど確かに、これ以上は言葉は不要。ならばデュエルにて、その精神を見極めるといたしましょう……」
魔理沙「(…………)」
魔理沙「(………………急に、静かになったな)」
魔理沙「(ここにいる全ての者が、固唾を呑んで見守っている……。
誰もが、この決闘がすでに二人の世界そのものであることを肌で感じているんだ)」
魔理沙「(だからこそ、決着をつけるのはお前達二人以外はありえない。後はたのんだぜ)」
文 『……先攻後攻ですが、先のデュエルがドローゲームだったので、コイントスにて決めさせていただきます。
お互い、表裏どちらにいたしますか?』
さとり「妖夢さん、お好きにどうぞ」
妖夢 「ならば、表でお願いします」
文 『では、いきます……』
文 『………………でたのは、表! 青コーナーの先攻で始めてください!」
妖夢 「……ふぅ」
妖夢 「(……神経が、これ以上無いほどに研ぎ澄まされていくのを感じる。
今までどれほど時間をかけて瞑想をしても、ここまで張り詰めた気配にはなれなかった。
これが、一つの答え……その果てにある境地……)」
妖夢 「(見ていてください、幽々子様。かならずやあなた様の大願、成就してご覧に入れます!!)」
妖夢 「いざ尋常に……」
さとり「(清く久しく、待ちわびたこの瞬間を……)」
妖夢&さとり「……デュエル!!!」
*
________23:00 博麗神社境内
妖夢【無我彼岸にて放たれし有終の剣】LP8000
VS
さとり【トータル・リフレクティア】LP8000
妖夢 「デッキから手札を5枚……ドローします!!」
さとり「では、わたしも……」
早苗 「ついに……始まるんですね。地上と地底、彼我の矜持を懸けた戦いが……」
諏訪子「うん、そうみたいだね~」
霊夢 「なによあんた、さっきまでつまんなそうにしてたのに」
諏訪子「まあね。でも、せっかくここまでお膳立てされたショーなんだから。やっぱし見なきゃ損じゃん」
幽香 「同感ね。よもや、水を差す者が現れるとは思えないけど……。
その時は、わたしが直々に排除してあげてもいいかしらね。ふふふ」
衣玖 「今は、とにかく見守りましょう。それがわたし達にできる、唯一のこと……」
妖夢 「わたしのターン…………ドロー!!」
妖夢 「(これがわたしに与えられた初めの6枚……。
しかし、すでにこうして意識してしまっている以上、間違いなくさとりさんに知られている。
手札はおろか、これからわたしが何をしようとしているのかも……)」
妖夢 「(でも……それでも、わたしは、わたしの道を行くのみ。
真剣勝負は、刀ではなく柄で斬らなければならない。
自分が斬られるという恐怖、相手を斬るという恐怖……あらゆる恐れを乗り越えるためには、
一歩前に踏み出さなければならないんだ。刀身ではなく、柄で斬るつもりで。
恐怖を振りぬき、わたしの剣を届かせる。さとりさんのところまで!)」
妖夢 「いきます! 手札から、終末の騎士を召喚!!」
《終末(しゅうまつ)の騎士(きし)/Armageddon Knight》 †
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1400/守1200
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
自分のデッキから闇属性モンスター1体を選択して墓地に送る事ができる。
妖夢 「召喚に成功したことによって、終末の騎士の誘発効果を発動します!
デッキの闇属性モンスターを一体、墓地に送ることができる!
わたしは不死武士を墓地へ。さらに1枚リバースカードをセットして、ターンエンドです!」
妖夢 LP8000:手札4:終末、伏せ1
さとり LP8000:手札5:無し
魔理沙「(妖夢……そうか、デッキは不死武士を選んだか)」
魔理沙「(いや、それでいい。
かつて一度さとりに敗れたデッキというなら、あの時からどれだけ成長したか、あいつに見せつけてやれ!)」
文 『さあさあさあ! いよいよ、ついに、やっとこさ!
最後の対戦カード、大将戦がその幕を開きました!
紆余曲折あった今大会ですが、その甲斐あってラストは派手なものになりそうな予感がしてなりません!
我々実況席も、命を懸けてこの放送をお送りする所存です!』
パチェ『いわゆるカミカゼというやつね。本で読んだことがあるわ』
にとり「(全然違うと思う……)」
ぬえ 「というかあの人達は、最後まであの意味不明な実況を続ける気なのね……」
勇儀 「まあいいじゃん。あたしはああいう馬鹿は好きだよ~。阿呆は嫌いだけど」
ぬえ 「(ああ……やっぱり馬鹿ってああいうひとたちのことを言うんだ。うすうす感じてはいたけど)」
さとり「ふふふ。では……わたしのターンです」
さとり「(何があなたをそこまで強くしたのか…………深層心理から具体的な答えは見つかりませんが、
そこまでわたしが知るのも野暮というものでしょうね。
わざわざその理由、方法は問いません。
人はふとしたきっかけで、見違えるほどに強くなることもある。
人間と幽霊のハーフという、ある意味で不安定な存在であるあなたには、殊更に顕著なのでしょう)」
さとり「(しかし……精神が強靭になったからといって、心が視えなくなるわけではない。
いかな一騎当千の名将であろうとも、この第三の眼の前には本心を露呈せざるを得ない。
あの伏せはブラフ……ならば、先制攻撃といきましょうか)」
さとり「ドロー。開幕から、ずいぶんと苦しい手を打ってくるのですね。
そのリバースカードは、『トゥルース・リインフォース』。
わたしを相手にそのような姑息なハッタリが通用しないということは、先刻承知と思いますが?」
妖夢 「……!」
早苗 「なっ……!? 伏せカードを言い当てた!?」
諏訪子「あんた知らなかったの?
あいつはひとの心を読む妖怪サトリ。隠し事の類は一切通用しないよ。
カードを言い当てるぐらい、朝飯前のラジオ体操前に決まってんじゃん」
霊夢 「くっ、そういや忘れてたわ。あいつの能力のこと。心が読めるんだったわね」
魔理沙「忘れてたのかよ。さすが霊夢」
霊夢 「さっきまでは覚えてたのよっ。
ってそんなことより、これじゃあまずいわ。
マインドスキャンができる相手なんて、人格が二つでもない限りどうしようもないじゃない」
魔理沙「そうだな。だが、だからといって勝負が決まっているわけじゃない。まあ見てな」
さとり「さて、ではまずはこのカードから。手札から、サイクロンを発動」
《サイクロン/Mystical Space Typhoon》 †
速攻魔法(準制限カード)
フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。
さとり「そのリバースカードを破壊します」
白蓮 「(……? なぜここでサイクロン?
あの伏せが本当にトゥルース・リインフォースなのであれば、チェーンされてサイクロンは無駄撃ちになるはず……)」
妖夢 「チェーンしてトラップ発動です! トゥルース・リインフォース!
この効果により、デッキのトラパートを守備表示で特殊召喚します!」
《トゥルース・リインフォース/Reinforce Truth》 †
通常罠
自分のデッキからレベル2以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する。
このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行う事ができない。
《トラパート/Torapart》 †
チューナー(効果モンスター)
星2/闇属性/戦士族/攻 600/守 600
このカードをシンクロ素材としたシンクロモンスターが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで罠カードを発動する事ができない。
このカードをシンクロ素材とする場合、
戦士族モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。
さとり「妖夢さん。面と向かって公言した以上、わたしも全力をもってお相手させていただきます。
あなたには、少々酷な目にあってもらうことになりますが―――
今よりあなたの深層心理に秘められた、トラウマの群れを再現して差し上げましょう」
魔理沙「……トラウマだと?」
早苗 「ええ? どういう意味でしょう……?」
さとり「今にわかります。手札から……来なさい、ハイドロゲドン」
《ハイドロゲドン/Hydrogeddon》 †
効果モンスター
星4/水属性/恐竜族/攻1600/守1000
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
自分のデッキから「ハイドロゲドン」1体を特殊召喚する事ができる。
妖夢 「(ハイドロゲドン……?)」
妖夢 「(……ハッ!? これは、まさか……!)」
にとり「……ああっ! あれ、あたしのカードじゃん!」
文 『だああああ~っと! なんということでしょうかっ!
赤コーナー古明地さとりさん、なんと大会中に奪ったカードをそのまま使用してきました~!』
パチェ『盗ったカードをどこに隠してたのかと思ってたけど……。
まさか自分のデッキに入れていたとは……なんて奴』
幽々子『他人のカードを使用する。でも、どうやらそれだけじゃないわね』
パチェ『え?』
文 『それはまた、どういうことでしょう……? 幽々子さん』
幽々子『あいつは今、〝トラウマ〟と言った。
つまりあのハイドロゲドンは、妖夢のトラウマの一つというわけよ。
前の大会で妖夢があのモンスターに、手痛い思いを浴びたことを思い出してくれればわかると思うけど』
文 「(前の大会…………確かにとりはわたしとチームを組んで、
そして決勝トーナメントの初戦で、幽々子さんのチームと当たったはず……)」
文 『……なるほどっ。あの時にとりと戦ったのは妖夢さん。
ハイドロゲドンはその時に使われたカードでしたね。
にしても幽々子さん、よくそんなこと覚えてましたね~。
二次方程式の解法すら忘れ去ったような顔して』
幽々子『あら、こう見えて記憶力はいいのよ。
夕飯のメニューだったら、一ヶ月前のものまで思い出せるわ』
霊夢 「そりゃあんたが食べることしか頭に無いからじゃ……」
魔理沙「にしてもだ。まさか盗んだカードをそのまま使ってくるとはな……。
いや、これはむしろ、初めからこうするためにカードを盗んだと考える方が妥当か?
幽香、お前はどう思う?」
幽香 「まあ、同感といったところかしら。
古明地さとり、もとい、《七色のレアハンター》がわざわざあんな派手なパフォーマンスでカードを奪った目的……
その全ては、どうやらこの戦法のためだったようね。
すなわち、トラウマを生み出し、相手の苦手な属性を自らの力とする戦い方。
なかなか陰気なやり方じゃない。嫌いじゃないけど。うふふふふ」
さとり「では、バトル。もうあなたの場に伏せカードはありません。
ハイドロゲドンで、終末の騎士を攻撃。想起、河童のポロロッカ!」
妖夢 「っ……破壊されます」LP8000→7800
さとり「しかしこれだけではありません。
知ってのとおりハイドロゲドンには、モンスターを戦闘で破壊することで発動する誘発効果があります。
デッキから2枚目のハイドロゲドンを、攻撃表示で特殊召喚」
さとり「追撃です。新たなハイドロゲドンで攻撃、トラパートを破壊。
さらに、デッキから3体目のハイドロゲドンを特殊召喚します」
ハイドロゲドン 攻撃力1600
ハイドロゲドン 攻撃力1600
ハイドロゲドン 攻撃力1600
ぬえ 「いきなりモンスターが3体……!」
白蓮 「(なるほど……そういうことでしたか。
あのサイクロンは、妖夢さんがチェーンしてモンスターを特殊召喚することを見越してのもの。
ハイドロゲドンの効果を有効的に使うために……)」
白蓮 「(やはり……強い。なんとしたたかな戦術。
これも、あの心読の力があってこそ……)」
さとり「これでモンスターは消えました。三体目のハイドロゲドンでダイレクトアタックです。
もう一度このトラウマ、噛み締めるといいでしょう。
想起、河童のポロロッカ……!」
妖夢 「う……くぅっ!」LP7800→6200
文 『……ああ~っと! 青コーナー、いきなりダイレクトアタックをもらってしまった~!
これはいきなりのビハインドですよ~!』
パチェ『成る程……。心を読めるだけあるわね。
今の攻防だけ見ても、まるで隙が無い……』
幽々子『どうやら、最初の分水嶺となりそうね。うふふふふ』
こいし「さっすがわたしのお姉ちゃんね。でも、まだまだこんなもんじゃないけど~」
燐 「さとり様が負けるなんて考えられないにゃ。ほら、お空も応援しな」
空 「え? ああ、オッケーオッケー。じゃ、一発盛大に花火でもあげとく?」
魔理沙「誰かあいつの両手縛っとけよ」
さとり「メインフェイズ2で、カードを1枚伏せます。ふふふふふ……」
妖夢「(く……。予想はしていたとはいえ、この背中に震えを起こすような寒気は……)」
妖夢「(いや……躊躇や不安は、決意を鈍らせる。この程度で……!)」
さとり「(……次のターントゥルース・リインフォースを使い、
不死武士の特殊召喚からシンクロ召喚に繋ぐのがあなたの策だった。
しかしこれでその企ては破綻。
そして、今あなたの手札には、攻撃力1600を越える下級モンスターも、チューナーもいない。
現状でこのハイドロゲドン達を倒す術は持っていないはず……)」
さとり「(にもかかわらず……その眼に灯る光の強さはどうでしょう。
その意志の輝きは、いささかも鈍りはしない。
次に引くカードの可能性を、全く疑っていないのですね。
いったい、何を仕掛けてくるのかしら……)」
さとり「(うふふ、楽しい……そうでなくては。
見せてもらいましょう。あの時とは違う、あなたの力を……)」
さとり「これにてターンエンドです」
妖夢 LP6200:手札4:無し
さとり LP8000:手札3:ハイドロゲドン3、伏せ1
妖夢 「(このドローカード……いったい何がくるのかはわからない。
でもわからなくとも、確かなことがある。
それは、このデッキなら、必ずわたしの声に、意思に答えてくれるということ。
今ならそう信じられる……!)」
妖夢 「わたしのターンです! ドロー!」
さとり「(……!
今のドローカードは……!)」
妖夢 「スタンバイフェイズ、わたしの墓地の不死武士の効果が発動します。攻撃表示で特殊召喚です!」
《不死武士(ふしぶし)/The Immortal Bushi》 †
効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻1200/守 600
このカードは戦士族モンスターの生け贄召喚以外の生け贄にはできない。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターカードが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地に戦士族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
幽香 「(場にモンスターがいなければ特殊召喚できるモンスターか。なかなかね)」
妖夢 「メインフェイズです。魔法カード、精神操作を発動!」
《精神操作(せいしんそうさ)/Mind Control》 †
通常魔法(制限カード)
このターンのエンドフェイズ時まで、
相手フィールド上に存在するモンスター1体のコントロールを得る。
このモンスターは攻撃宣言をする事ができず、リリースする事もできない。
妖夢 「精神操作は、このターン中だけ、相手モンスター一体のコントロールを得ることができる魔法カードです。
ハイドロゲドンAのコントロールを奪取!」
魔理沙「(精神操作ってことは……)」
幽々子『ふふふ。シンクロ召喚ね』
妖夢 「手札から、ジャンク・シンクロンを召喚!」
《ジャンク・シンクロン/Junk Synchron》 †
チューナー(効果モンスター)
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する
レベル2以下のモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。
妖夢 「ジャンク・シンクロンの誘発効果発動!
このカードが召喚したとき、墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚できます。
トラパートを守備で特殊召喚!」
早苗 「よしっ、これでシンクロ召喚をかませるわ!」
諏訪子「(いや、でもこれは……まさか)」
諏訪子「(ただのシンクロじゃない?
場にはチューナーが2体……ということは!)」
妖夢 「参ります!
レベル3、ジャンク・シンクロンに、同じくレベル3の不死武士を。
同時に、レベル2のトラパートに、レベル4のハイドロゲドンをそれぞれチューニング!!」
霊夢 「にっ、2体同時っ!?」
魔理沙「ダブルシンクロかっ!」
妖夢 「シンクロ召喚です!
推参せよ、ゴヨウ・ガーディアン!! 大地の騎士、ガイアナイトッ!!!」
《ゴヨウ・ガーディアン/Goyo Guardian》 †
シンクロ・効果モンスター (制限カード)
星6/地属性/戦士族/攻2800/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
そのモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する事ができる。
《大地(だいち)の騎士(きし)ガイアナイト/Gaia Knight, the Force of Earth》 †
シンクロモンスター
星6/地属性/戦士族/攻2600/守 800
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
ぬえ 「シンクロモンスターを……2体同時召喚ですって!?」
早苗 「すごいわ! 初期のレベル6シンクロモンスターが揃い踏みですっ!」
文 『なんとなんと~!
いきなりやってくれました! まさかの同時シンクロ召喚!
青コーナー魂魄妖夢、開始早々観衆の度肝を抜いてしまいました~!』
妖夢 「バトルフェイズです!
ゴヨウ・ガーディアンで、ハイドロゲドンを攻撃! 幽明の苦輪!!」
さとり「破壊、ですね」LP8000→6800
妖夢 「ゴヨウ・ガーディアンは、戦闘で破壊したモンスターのコントロールを奪うことができます。
ハイドロゲドンを守備で特殊召喚。
そして大地の騎士ガイアナイトで、もう一体のハイドロゲドンに攻撃!」
妖夢 「秘剣……天女返し!!!」
さとり「っ…………ふふふふふ」LP6800→5800
霊夢 「……いよっしゃあっ! 一気にライフを削ったわ!」
魔理沙「ああ! さとり相手にこれだけ派手な攻撃を決めるなんてな。たいしたもんだ」
文 『天女返しが決まったぁっ!
お互いのライフが、一瞬でまた並びました!
開始早々、波乱の展開です!』
パチェ『……確かに、たいしたものね。しかし根本的な解決にはなっていないわ。
今のジャンク・シンクロンは今ツモったばかりのカード。
すなわち偶発的な産物ゆえに、さとりは予測できなかった。それだけのことに過ぎない。
言わば交通事故のようなものよ。そんな偶然が、そう何度も起きるはずがない』
幽香 「(……あの魔女の言う通りね。肝心なのは、心が読まれてしまうということ。
多少ライフを削ったからといって、優位に立ったわけでは決してない。
思考が丸見えである以上、掌の上であることは変わりないのだから)」
幽香 「(でも……かといって、あの能力を防ぐ術など、あるはずが……)」
妖夢 「1枚伏せて……ターン終了です!」
幽香 「(……それでも、根を上げる気は毛頭無い。ましてや油断や慢心など……か。
ふふふ。なりは小さいけど、なかなか頼りになりそうじゃない。うちの大将は)」
さとり「…………」
さとり「(さすがね。まさか本当にチューナーを引いてくるとは。
しかもジャンク・シンクロン……。デッキに眠るチューナーの中でも、現状においてベストのカードだったはず。
彼女のデッキが仮に40枚だとして、3枚積んでいる可能性も考えれば、確率は約10分の1……)」
さとり「(ふふふ……その程度の確率など、ものの数ではないということね。
いいでしょう。ならばその引きの運が枯れ果てるまで、追い詰め続けてあげましょう……)」
幽々子「…………」
幽々子「(まだよ、妖夢。あなたが辿り着いた真理は、こんなものではないはず……)」
幽々子「(その力、思う存分解放なさい。その上での結果なら、わたしは勝敗に拘らない。
あなたは、あなたの決着をつけなさい)」
幽々子「(そして…………その後で、わたしも……)」
・・・・・・To be continued
あのときのデッキで妖夢がどうやって勝つのか楽しみです。
ところであとがきの、
>>そんなわけで、六武はまた今度ですね(´∀、)
これはつまり東方で遊戯王Ⅲが出るということですか?
期待していいんですか?
最後に、お大事に。
てっきりハイドロゲドンからオベリスクにつなげるもんだと思ってました。
てっきり……(ry
ゼアルになってから、またルールが変わりますね。優先権での起動効果が使えなくなるそうで。ウリアが奈落に引っかかる時代の到来ですよ。ウボァー
パワーツールとか裁きの龍とかも、効果を使う前に奈落で地獄行きですよ。
奈落の落とし穴なんてだいっきらいだぁああ!!ソウルオーガが引っかかるぅう!!。
フリーチェーン除去で、サクリファイスが吸収前に除去されるぅう!!
優先権起動効果不可になるのか……。
まあ、その辺の処理でより大きな影響を食らうのはワンショットキルやガチデッキでしょうし、私は別に構いませんけど。
ダブルシンクロ後のさとり様のセリフ、ジャンク・シンクロンがウォリアーになってますね。
チルノは氷結界しかおもいつかんがシンクロが強すぎるし、レティも氷結界ぽいしな~
あと真六武は妖夢より妖忌のイメージだとおもう
ありがとうございます。
続編は、今のところはまだまったく考えてません。
たぶんこのⅡが終わったらモチベがすっからかんになってると思いますし(´∀、)
でもまた新しいキャラが出て、新しいカードが出たら、またこっそりやっちゃうかもしれないです。
そのときは、今度こそ真六武衆も使わせてあげたいですね。
というか、別に長編じゃなくても単発投稿でも全然いいんですよね。番外編っていう形もありだし。
>>2
>優先権
らしいですね。
ダムドがなんで禁止行きにならなかったのか疑問でしょうがなかったんですが、なるほどそういうことかと少し納得がいきました。
個人的にはこのルール変更はありだと思います。
裁きしかり、ダムドしかり、ゲイルしかり、氷結界の龍しかり、よくよく考えればぶっ壊れた効果ばかりだし。
シーラカンスとかテーマ系が犠牲になったのは残念ですが。
ただ煽りを受けてフリーチェーンのトラップは間違いなく増えるでしょうし、大嵐解禁はすべきだったかと。トラップ・スタンは個人的に気に食わないんですよね~、剣闘獣以外に入れるの。
そしてウリアたんマジ涙目すぎるw
サクリファイスも、今までサンブレにチェーンされてアド稼げてたのに……(´・ω・`)
ダメドや青血なんかも惜しいですね。
>>3
言われてみれば、確かに味気ないかもですね。
やっぱり雪辱を晴らすなら、同じデッキでないと!
そして指摘ありがとうございます。修正しました。
>>4
やっぱり氷結界ですよね~。
でもテーマ色が弱いし、シンクロがチルノにしては強すぎるしと、微妙に齟齬があってためらってます。
ゴヨウ禁止でベンチのガイアナイトさんが代打に指名されたよ!
闇+獣で似合わないしで何気にキャラデッキが難しいんだよな
だいだらぼっち的に巨人のズシン(アニメオリカ)という手もないことはないけど……