Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方で遊戯王Ⅱ19 『中堅戦』<後編>

2011/01/29 19:08:36
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 注意:前編からの続きです。




















衣玖 「……やっぱり、一枚足りませんね。やられたようです」

妖夢 「そうですか……。盗られたカードは何ですか?」

衣玖 「〝次元合成師〟ですね」


《次元合成師(ディメンション・ケミストリー)/Dimensional Alchemist》 †
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1300/守 200
1ターンに1度だけ、自分のデッキの一番上のカードをゲームから除外し、
さらにこのカードの攻撃力をエンドフェイズ時まで500ポイントアップする事ができる。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分のモンスターカード1枚を選択し、
手札に加える事ができる。


衣玖 「といっても、わたしのデッキにこのカードは二枚積んでいたのですが、奪われたのは一枚だけのようです。
    これ自体は重要なカードではないし、そんなにデッキとして問題は無いと思うのですが……」

妖夢 「そうですか……不幸中の幸いですね」 

妖夢 「(今度は一枚、か……。
    河童の時は、三枚盗まれていた。どうして数が違うんだろう?)」

妖夢 「(……まさか、奪うカードの数が関係あるのか? それとも……)」

衣玖 「魂魄さん」

妖夢 「あ、はい」

衣玖 「ありがとうございます。
    こうなってしまった以上、諸手を挙げて喜ぶことはできませんが、おかげでデッキは見つかりました。
    風見さんの応援に戻りましょう。考えるのは、それからに」

妖夢 「(……そうだ。わたしには何より優先して為すことがある。
    チームを勝利に導き、この大会を制すること。
    いざとなれば、全ては大将であるわたしに懸かってしまう。
    《七色のレアハンター》の動向は確かに気になるが、わたしはわたしで、
    自分の闘いに集中しなければならない。
    あとは、魔理沙さんに任せるしかないな……)」

妖夢 「そうですね。仰るとおりです。
    仲間の健闘を見守るのが、今は何より大事ですものね」





    *



  ________22:25 博麗神社境内 



幽香  LP7300:手札4:スプレンローズ、バイオウィッチ、黒庭、改造手術
白蓮  LP5000:手札5:無し



早苗 「ブラック・ガーデン……黒い薔薇の咲き乱れる庭園なんて、
    この世のものとは到底思えないくらいの不気味さだわ。
    いったい、あのフィールド魔法にはどんな効果が……」

諏訪子「どうでもいいけどさぁ。
    あんたって選考会にいたとか吹いてるわりには、知らないカード多いよね」

早苗 「あ、いや、わたしは天変ダイヤ以外は、基本ガチしか使ったことないので……」

幽香 「ふふふ、いよいよメインステージといったところかしら。
    それにしても、ここまで演出したんだからわたし専用のBGMぐらいほしいわね。
    アリプロ流せる?」

にとり「む、無理に決まってるでしょう……」

幽香 「わかってるわよ。あなた達が気の利かない連中だってことぐらいはね。
    一伏せ、エンド」

白蓮 「ああ、なんと邪悪な……。
    かつて魔界の下層界に澱んでいたものと、同じ瘴度を感じます。
    その魔性からあなたを救い出すことこそ、わたしの務め……。
    いざ、ドロー!」

白蓮 「手札から、魔導戦士ブレイカーを召喚。
    誘発効果により魔力カウンターがのります」


《魔導戦士(まどうせんし) ブレイカー/Breaker the Magical Warrior》 †
効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻1600/守1000
このカードが召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大1つまで)。
このカードに乗っている魔力カウンター1つにつき、
このカードの攻撃力は300ポイントアップする。
また、このカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事で、
フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する。


    魔導戦士ブレイカー   攻撃力800


霊夢 「……? なんでいきなり攻撃力が下がってるの?」

魔理沙「フィールド魔法だ。ブラック・ガーデンの効果さ」

パチェ「ブラック・ガーデンがある限り、モンスターは召喚した瞬間イバラにとりつかれ、攻撃力が半分になってしまうのよ。
    同時に、相手フィールドにローズ・トークンが生成される」


    ローズ・トークン   攻撃力800


霊夢 「攻撃力を下げて、相手の場にトークン……?
    なんだかえらいややこしい効果ね」

魔理沙「お前じゃ間違いなく使いこなせないだろうな。だが、強力なことに代わりはない。
    何も考えずにモンスターを出せば、攻撃力が下がって軒並み無力化される。
    ブレイカーの起動効果を使えば、ブラック・ガーデンは破壊できるが……」

白蓮 「(……確かに厄介なフィールドですが、すぐに割る必要はありませんね。
    今は手札には無いけど、わたしもそろそろフィールド魔法を持ってこれるはず。
    なら、狙うべきは……)」

白蓮 「ブレイカーの起動効果を発動します。
    このカードは自分の魔力カウンターを取り除くことで、場の魔法・罠を破壊する能力を持っています。
    対象はその伏せカードです」

幽香 「手玉ねぇ、まったくもって。チェーンして発動、植物連鎖」


《植物連鎖(しょくぶつれんさ)/Plant Food Chain》 †
通常罠
発動後このカードは攻撃力500ポイントアップの装備カードとなり、
自分フィールド上に存在する植物族モンスター1体に装備する。
装備カードとなったこのカードが他のカードの効果で破壊された場合、
自分の墓地に存在する植物族モンスター1体を選択して特殊召喚する事ができる。
 

幽香 「スプレンディッド・ローズに装備するわ。そして直後に破壊される。
    このカードが効果で破壊されることで、墓地の植物族を特殊召喚する。
    ギガプラントを守備で特殊召喚。攻撃力を半減し、そっちのフィールドにもローズ・トークンを特殊召喚よ」

白蓮 「(……外しましたか。まあいいでしょう)
    ローズトークンで、ローズトークンを攻撃。相打ちでともに破壊します。
    1枚伏せて、ターン終了」



幽香  LP7300:手札3:スプレンローズ、バイオウィッチ(植物)、ギガプラ(攻1200)、黒庭、改造手術
白蓮  LP5000:手札3:ブレイカー(植物・攻800)、伏せ1



文  『うぬぬぬぬ~……。
    効果処理が目まぐるしくて、実況を差し挟む余地がありませんねぇ~。
    ここはここぞとばかりに、解説の方々に意見を仰いでみたいと思います。
    いかがでしょう、ぬえさん?』

ぬえ 『どうでもいいんだけどさぁ、このコーラ薄めてるでしょ?
    飲料水ケチってるなんて、天狗もずいぶんしょぼくれた生活してるのね』

文  『…………。
    やっぱりガキんちょをキャスター席になんか座らせるものではありませんねぇ~。
    幽々子さんはいかがですか?』

幽々子『惜しいわね。理解する心が無かったら、ピカソもただの落書きよ』

文  『…………なんで地上の妖怪達はこんなのばっかりなんでしょうか!
    幻想郷のサイエンスリテラシーの低さが嘆かわしいです!』

にとり「(てか、こんな実況いらないだろ……やめちまえよ)」

幽香 「外野はともかく……ドローするわよ」

幽香 「(さて、あの伏せ……今ツモのカードだけど。
    ふふ、ぷんぷん臭うわ。ミラフォの臭いがね)」

幽香 「バイオレットウィッチを守備表示に変更。バトルフェイズよ。
    スプレンディッド・ローズは、条件を満たせば二回攻撃ができるモンスター。
    攻撃するならこいつだけで十分だわ。ブレイカーに攻撃なさい」

白蓮 「リバースカードです。聖なるバリア、ミラーフォース」


《聖(せい)なるバリア-ミラーフォース-/Mirror Force》 †
通常罠(制限カード)
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する。


白蓮 「攻撃モンスターを全て破壊。スプレンディッド・ローズは返り討ちですね」

幽香 「見くびりすぎね。
    ミラフォ如きでアドをとられるのは、せいぜい三流デュエリスト。
    メインフェイズ2で、2枚目のフレグランス・ストームを発動。
    ブレイカーを破壊し、1枚ドロー。スポーアをドローしたことで、もう1枚ドロー」

幽香 「さらにギガプラントを再召喚。
    攻撃力を半減して、そっちの場にトークンを生成。
    優先権を行使し、起動効果発動。墓地のウィードを守備で蘇生して……さて」

幽香 「魔界植物の狂宴……シンクロ召喚よ。
    ウィードをバイオレット・ウィッチにチューニング。
    ヘル・ブランブルを守備表示で特殊召喚」


《ヘル・ブランブル/Queen of Thorns》 †
シンクロ・効果モンスター
星6/光属性/植物族/攻2200/守1800
チューナー+チューナー以外の植物族モンスター1体以上
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いに手札から植物族モンスター以外のモンスターを召喚・特殊召喚するためには、
1体につき1000ライフポイントを払わなければならない。


早苗 「また、シンクロ召喚……!?」

諏訪子「庭の効果で攻撃力は半減するけど……なるほど。攻撃は二の次みたいだね」

幽香 「茨の女王。こいつがいる限り、植物族以外のモンスターを召喚するには1000ライフを失う。
    あなたのライフは5000だったかしら。ちょうど五回分ってことね」

幽香 「さて。こいつも出せたことだし、もうこのトラップはいらないかしらね。
    マジック・プランターよ。DNA改造手術を墓地に送り、2枚ドロー。ターン終了」


《マジック・プランター/Magic Planter》 †
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。



幽香  LP7300:手札5:ブランブル(攻1100)、ギガプラ(攻600)、黒庭
白蓮  LP5000:手札3:ローズトークン3



文  『青コーナー風見幽香さん、またきっついカードを出してまいりましたねぇ~!
    召喚に制限がかかれば、相手はさらに後手にまわざるを得ませ~ん!』

ぬえ 『ここからシンクロ召喚を狙うとしても、チューナーも召喚するから
    合計2000はライフを払わなきゃならないね。
    ここから逆転は難しいかもしれないけど、あそこに立っているのが聖なら別だよ』

文  『ほうほう! ぬえさんは本当に聖さんの強さを評価しているんですねぇ~』

ぬえ 『まあねぇ。というより、まだ聖は本気じゃないもの。
    でも、そろそろ出るかもしれないよ。さっき言った、あのカードがね……』

白蓮 「ドローします。
    ふ……ようやく引けましたね」

幽香 「なに?」

白蓮 「ふふふ、あなたは先ほど言われましたね。わたしを見くびるなと。
    しかし、わたしはあなたを見くびってなどいない。むしろ、買いかぶっていたと言えるでしょう。
    魔法カードを発動、テラ・フォーミング」


《テラ・フォーミング/Terraforming》 †
通常魔法
自分のデッキからフィールド魔法カードを1枚手札に加える。


幽香 「(テラフォ……ということは、ガーデンが破壊されるわね。
    でも、それぐらいならまあいいわ)」

白蓮 「魔法都市エンディミオンを手札に加えます。そしてこれを発動。
    ブラック・ガーデンを破壊し、場は新たなフィールドへと移り変わる。
    これよりここは魔法都市。エソテリアの聖地と相成りましょう」


《魔法都市(まほうとし)エンディミオン/Magical Citadel of Endymion》 †
フィールド魔法
自分または相手が魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く。
魔力カウンターが乗っているカードが破壊された場合、
破壊されたカードに乗っていた魔力カウンターと
同じ数の魔力カウンターをこのカードに置く。
1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを
取り除いて自分のカードの効果を発動する場合、
代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを取り除く事ができる。
このカードが破壊される場合、代わりに
このカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事ができる。


霊夢 「……魔法都市ですって!?」

魔理沙「きたか、エンディミオン。
    魔力カウンターを使うあいつのデッキに、入っていないわけが無いとは思っていたが……」

早苗 「そんなに強いんですか? あのフィールド魔法」

パチェ「あのカード自体に特別派手な効果は無いわ。
    でも魔力カウンターを扱う上で、使い勝手を大幅に向上させる補助的役割を持っている。
    あのフィールド魔法がある限り、魔法カードが発動されるたびにカウンターが発生するの。
    あれがあると無いとじゃ、デッキの回転速度が倍以上に違ってくるのよ」

さとり「(そう。つまり、ここからが本番……)」

さとり「(風見幽香さん、といいましたか。
    確かに、あなたの自己に対する信頼感は相当なものです。
    しかし、自信とは本来ふとしたことで揺らぐ、ひどく脆い精神機能。
    仕事で失敗した時、恋人にふられた時、物事が捗らない時、誰かを傷つけた時……
    そして、決して敵わない相手と相対した時。
    あなたの自信も、今に砂となって散りゆく運命となり得る。
    ささいな吐息でも崩れ落ちる、トランプの城のように……)」

白蓮 「ああ、暗き闇の魔界の淵、エソテリアに光がみちてゆく……。
    風見幽香さん、あなたに失われし法界の火をご覧に入れましょう。
    ローズトークン一体をリリースし、THEトリッキーを召喚」


《THE(ザ) トリッキー/The Tricky》 †
効果モンスター
星5/風属性/魔法使い族/攻2000/守1200
このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚する事ができる。


幽香 「ふふふ、フィールドが変わったからといって、こいつの効果が無効になるわけじゃないわ。
    ヘル・ブランブルの永続効果よ。1000ダメージを受けなさい」

白蓮 「構いません。わたしはさらに手札から、ナチュラル・チューンを発動します」LP5000→4000


《ナチュラル・チューン/Natural Tune》 †
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル4以下の通常モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターはフィールド上に
表側表示で存在する限りチューナーとして扱う。


白蓮 「これにより、レベル4以下の通常モンスターをチューナーにすることができます。
    そして、トークンは通常モンスターとして扱われる。
    わたしはローズトークンを指定し、このカードをチューナーとします。
    そして……ふふふ。マジックカードが発動されたことで、魔法都市エンディミオンに
    魔力カウンターが一つ乗ります」

白蓮 「人の身にて練り上げた、究極の魔術をご覧に入れましょう。
    レベル2のローズ・トークンを、レベル5のトリッキーにチューニング!」

白蓮 「シンクロ召喚! 現れよ、アーカナイト・マジシャン!!」LP4000→3000


《アーカナイト・マジシャン/Arcanite Magician》 †
シンクロ・効果モンスター
星7/光属性/魔法使い族/攻 400/守1800
チューナー+チューナー以外の魔法使い族モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを2つ置く。
このカードに乗っている魔力カウンター1つにつき、
このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
また、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを1つ取り除く事で、
相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。


幽香 「(……魔法使い族のシンクロモンスター! こいつは……)」

白蓮 「シンクロ召喚に成功したことで、アーカナイト・マジシャンに魔力カウンターが二つ乗ります。
    そしてこのカードの攻撃力は、乗っている魔力カウンター一つにつき1000ポイント上昇」


    アーカナイト・マジシャン   攻撃力2400


霊夢 「なんだ……シンクロモンスターで攻撃力2400じゃあ、そんなに強いってわけでもないわね」

魔理沙「んなわけないだろ。お前もいい加減テキスト読む癖直さないとな」

パチェ「アーカナイト・マジシャンは自身の魔力カウンターを取り除くことで、
    フィールドのカードを破壊することができるわ。
    普通はその起動効果を使えば、魔力カウンターを失うから
    アーカナイト・マジシャンの攻撃力が下がってしまう。でも……」

諏訪子「そこで、あのフィールド魔法ってわけだね~」

パチェ「そう。今この場には、魔法都市エンディミオンがある。
    このフィールド魔法は、場の魔法カウンターを消費して発動する効果を使うとき、その消費を肩代わりができる。
    すなわち、この魔法都市のなかでは、彼女の魔法使い達は
    魔法力を消耗すること無しに魔術の使用が可能となるのよ。
    つまり、魔法は使い放題というわけ」

早苗 「そんな! じゃあ、イオ○ズンやメラ○ーマも撃ち放題ってわけですか?」

パチェ「もち」

魔理沙「嘘ぬかすな」

パチェ「比喩表現の範疇よ。
    ともかく、それぐらい強力なカードということは間違いないわ。
    通常、魔術とは、使用するのに相応のリスク・対価が必要なもの。
    その絶大な威力を持った魔法を、際限なく使用することができる。
    魔法を知る者なら、誰でもその意味の凄まじさがわかるはずよ」

白蓮 「そういうことです。あなたは先ほどのフィールドは、自分の体内も同じと言いましたね。
    あの庭があなたの体内であれば、この魔法都市はわたしの創造した宇宙も同然。
    そこに存在する星たちも、重力も、時空も。その全てがわたしの思うところとなるのです」

幽香 「ふふふふふ……。
    何を言うかと思えば、宇宙ですって? 
    面白いわ。わたしが言ったことをそのまま返してくるなんて。
    あなた、大人しそうな顔をして案外負けず嫌いなのね」

白蓮 「その方があなたを矯正するには効果的、そう判断したまでですわ。
    貪欲な壷を発動。
    墓地のカイクウ、ブレイカー、見習い魔術師、マジカル・マリオネット、
    クルセイダー・オブ・エンディミオンをデッキに戻し、さらに2枚ドロー」


《貪欲(どんよく)な壺(つぼ)/Pot of Avarice》 †
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


文  『貪欲な壷! 
    ここにきて、青コーナー聖白蓮さん、魔法カードでデッキをどんどん加速させていきます!』

ぬえ 『ドローに加えて、魔法都市にカウンターを溜めにかかったね。
    こうなったら、もう止まらないよ~』

白蓮 「いいカードが舞い込んで来ましたね。魔力掌握を発動」


《魔力掌握(まりょくしょうあく)/Spell Power Grasp》 †
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
置く事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
その後、自分のデッキから「魔力掌握」1枚を手札に加える事ができる。
「魔力掌握」は1ターンに1枚しか発動できない。


白蓮 「このマジックの効果で、アーカナイト・マジシャンにさらにカウンターを乗せます。
    これにより、アーカナイト・マジシャンの攻撃力は3400に上昇。
    同時に、デッキから同名カードをサーチします。
    このカードは1ターンに一度しか使用できない制限があるので、もうこのターンは使用しません」

白蓮 「では、そろそろ参りましょうか……。
    アーカナイト・マジシャンの起動効果発動。
    魔法都市エンディミオンからカウンターを二つ取り除き、ヘルブランブル、ギガプラントを破壊!」

幽香 「(くっ、ヘルブランブルが……)」

白蓮 「これでモンスターはいませんね。
    アーカナイト・マジシャンで、風見幽香さんにダイレクトアタックです。
    光魔、スターメイルシュトロム!!」

幽香  LP7300→3900

文  『スターメイルシュトロムが炸裂~! 
    これまで鉄壁の布陣でガードを固めてきた幽香さんでしたが、
    ここで初めてダイレクトアタックをもらってしまいました~!』

白蓮 「メインフェイズ2へ移行します。
    このターン、あなたのヘルブランブルを破壊したことで、この速攻魔法を発動できます。
    グリード・グラード」


《グリード・グラード/Greed Grado》 †
速攻魔法
自分が相手フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスターを
戦闘またはカードの効果によって破壊したターンに発動する事ができる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


白蓮 「さらに2枚ドロー。
    ローズトークンを守備に。最後に1枚伏せて、終了。
    どうぞ、あなたのターンですわ」

幽香 「(く……3400のライフに羽が生えたか。
    まさか、1ターンでこれだけ盛り返すとはね。
    油断? いえ、違うわね。
    これはやつの力が思った以上だったということ。少々考えを改めざるを得ないわ)」

幽香 「(となれば……どうやら、出すしかないかもしれないわね。
    わたしの魂のカード……ブラック・ローズ・ドラゴンを!)」



幽香  LP3900:手札5:無し
白蓮  LP3000:手札2:アーカナイト(攻3400・魔3)、ローズトークン、魔法都市(魔2)、伏せ1



魔理沙「(ついに一撃喰らってしまったか……。
    だが今まで余裕をもったプレイングをしていたおかげで、手札はまだ多めに残っている。
    あいつに限って、万一ということは無いだろうが…………ん?)」

衣玖 「……ふう、ただいま戻りました」

妖夢 「戦況はどうですか?」

魔理沙「遅かったな。まあ、見ての通り、今しがた押し返されたところだな。
    状況は芳しくない」

妖夢 「(ライフこそ勝っているけど……聖さんの場にはアーカナイトマジシャン、
    それに魔法都市エンディミオン……。
    まさか、押されているのか? 
    あの底知れぬ千尋の強さを持った幽香さんが、ここまで……)」

魔理沙「そっちはどうだ? デッキは見つかったのか?」

衣玖 「え? ええ……。
    とりあえずですが、プレイに支障はありません」

魔理沙「とりあえず……? 
    奥歯にものが挟まったような物言いだな。どういう意味だ?」

妖夢 「またやられてたんです。これを見てください」

魔理沙「…………黄色の便箋、
    ……ってことは!」

妖夢 「はい。デッキは見つかりましたが、その中のカードが抜き取られてました。
    永江さんが落とした後、それを拾ってメッセージを仕込んだんだと思います。
    盗られたのは次元合成師だそうです」

魔理沙「今度はストラクのカードか。だがきっちりこれまでと違う属性みたいだな。
    これで四つ目、光属性ってわけだ」

妖夢 「メッセージの通り、七種の属性全てが狙われるとしたら、《七色のレアハンター》が行動を起こすのはあと三回。
    現在まだ大会は中堅戦に差し掛かったばかりですから、犯人の思惑通りに事が進んでいると踏んだ方が妥当です。
    このままでは、大会中に全て……」

魔理沙「そんなことさせるか。奴はわたしが必ずとっちめる。
    お前達は次の試合のことだけ考えておけばいいさ」

妖夢 「……助かります」

妖夢 「(そうだ、わたしにはわたしの戦いが残されている。
    丸投げの形になってしまうが、こうなった以上、この件はこの人に全て任せるしかない。
    今は何よりも、大将戦で全力を尽くすことだけを考えなければ……)」

妖夢 「(その為にも、幽香さん。あなたが……)」

幽香 「ドローするわ」

幽香 「(……アーカナイト・マジシャンをいつまでも居座らせておけば、わたしのカードは全て除去される。
    でも、それも魔力の源であるあの魔法都市があればこそ。
    あれさえ破壊できれば……問題ないわね)」

幽香 「ふふふ、あなたがフィールド魔法を待っている間、わたしの方は待ってないのにまた引いちゃっててねぇ。
    2枚もいらないから困ってたのよ。ブラック・ガーデンを発動するわ」

パチェ「……そうか! うまいわね。
    魔法都市エンディミオンは魔力カウンターを一つ取り除くだけで破壊を無効にできるけど、
    フィールド魔法の張替えだけは防げない!」

白蓮 「うふふ。あなたの手札にフィールド魔法がだぶついているという可能性は、もちろん考慮の内でした。
    カウンタートラップ発動、対抗魔術」


《対抗魔術(たいこうまじゅつ)/Anti-Spell》 †
カウンター罠
自分フィールド上に存在する
魔力カウンターを2つ取り除いて発動する。
魔法カードの発動を無効にし破壊する。


白蓮 「エンディミオンのカウンターを二つ取り除きます。ブラックガーデンは破壊。
    発動自体を無効にしたため、フィールド魔法の張替えも行われません」

早苗 「な……! とめられた!?」

諏訪子「ありゃりゃ、これまずいんじゃないの?
    フィールドの張替えじゃなきゃ、魔法都市は破壊できないでしょ」

幽香 「……フン、老獪な狸め。狡い真似をしてくれるわね」

幽香 「(やむをえないわ。これ以上黒薔薇を出すタイミングをもったいぶってると手遅れになる。
    切り札を出すなら、今……!)」

さとり「(ふふふ……なるほど。
    ブラック・ローズ・ドラゴンを召喚するつもりらしいですね。ですが、しかし……)」

幽香 「手札から、思い出のブランコを発動するわ。墓地のギガプラントを特殊召喚。
    再召喚し、その起動効果によって、手札のスポーアを特殊召喚よ」


《思(おも)い出(で)のブランコ/Swing of Memories》 †
通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。


《スポーア》 †
チューナー(効果モンスター)
星1/風属性/植物族/攻 400/守 800
このカードが墓地に存在する場合、
このカード以外の自分の墓地に存在する
植物族モンスター1体をゲームから除外して発動する。
このカードを墓地から特殊召喚し、
この効果を発動するために除外したモンスターのレベル分だけ
このカードのレベルを上げる。
「スポーア」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。


妖夢 「(ここでチューナー……! ということは……)」

幽香 「わたしにこのカードを出させたことを光栄に思いなさい。
    そして黒薔薇の持つ憎悪の炎に焼かれるがいいわ!
    レベル1のスポーアに、レベル6のギガプラントをチューニング!」

幽香 「漆黒の華よ、開け! シンクロ召喚!
    現れよ、ブラック・ローズ・ドラゴン!!!」


《ブラック・ローズ・ドラゴン/Black Rose Dragon》 †
シンクロ・効果モンスター
星7/炎属性/ドラゴン族/攻2400/守1800
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
フィールド上に存在するカードを全て破壊する事ができる。
1ターンに1度、自分の墓地に存在する植物族モンスター1体をゲームから除外する事で、
相手フィールド上に存在する守備表示モンスター1体を攻撃表示にし、
このターンのエンドフェイズ時までその攻撃力を0にする。


霊夢 「ぶ、ブラック・ローズ・ドラゴンですって……!?」

衣玖 「そうか、あのカードなら、この状況を突破できます!」

幽香 「真の上の更なる真の切り札とは、こういうカードのことをいうのよ。
    ブラック・ローズ・ドラゴンの憎悪の炎は、全てのものを焼き払う!
    シンクロ召喚に成功した時、フィールドの全てのカードを破壊するわ!」

白蓮 「憎悪……ですか。
    仏門に身を置く者にとってこれほど忌まわしき感情はありません。
    このカードによって、その憎しみを浄化してさしあげましょう。
    チェーンして、手札からエフェクト・ヴェーラーの効果を発動」


《エフェクト・ヴェーラー/Effect Veiler》 †
チューナー(効果モンスター)
星1/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0
このカードを手札から墓地へ送り、
相手フィールド上に表側表示で存在する
効果モンスター1体を選択して発動する。
選択した相手モンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。
この効果は相手のメインフェイズ時のみ発動する事ができる。


幽香 「(……!?)」

白蓮 「この効果は相手ターンでも使える誘発即時効果。
    墓地に送ることで、このターン相手モンスター一体の効果を無効化します。
    よって……ブラック・ローズ・ドラゴンの誘発効果は不発に終わります」

早苗 「なんてこと……。
    ブラック・ローズ・ドラゴンですら通用しないなんて。これじゃあ……」

パチェ「終わりは近いわね。
    迎撃系のトラップを伏せても、アーカナイト・マジシャンの効果で破壊されてしまう。
    それにあの僧侶の手札には魔力掌握が残ってるから、次のターンさらにカウンターを乗せられる。
    詰み一歩手前といったところかしら」

幽香 「(ち……小癪な)
    ブラック・ローズ・ドラゴンの攻撃で、ローズトークンを破壊しておくわ。
    1枚伏せて、ターン終了」



幽香  LP3900:手札2:黒薔薇、伏せ1
白蓮  LP3000:手札1:アーカナイト(攻3400・魔3)、魔法都市(魔1)



白蓮 「ふふふ、命蓮寺の門戸はすぐそこですね。ドロー」

白蓮 「魔力掌握を発動します。
    アーカナイト・マジシャンに四つ目の魔力カウンター、そして魔法カードを
    使用したことで、魔法都市にもカウンターが乗せられます」

白蓮 「全体破壊効果を失った今、ブラック・ローズ・ドラゴンももはやただの壁でしかない。
    我が超魔力をもって消し去って差し上げましょう。
    アーカナイト・マジシャンの起動効果発動。
    エンディミオンのカウンターを二つ乗り除き、ブラックローズと伏せカード破壊します」

幽香 「チェーンしてスケープ・ゴートよ。羊トークン4体を特殊召喚するわ」


《スケープ・ゴート/Scapegoat》 †
速攻魔法(制限カード)
このカードを発動するターン、自分は召喚・反転召喚・特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上に「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)
4体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンはアドバンス召喚のためにはリリースできない。


早苗 「おおっ……これでなんとか、壁が増えましたね」

諏訪子「悪運強いねぇ。これでなんとか生き残れたか」

白蓮 「なるほど。あくまで最後まで抵抗の意志を貫徹するおつもりですね。
    それもいいでしょう。わたしは見習い魔術師を召喚します」


《見習(みなら)い魔術師(まじゅつし)/Apprentice Magician》 †
効果モンスター
星2/闇属性/魔法使い族/攻 400/守 800
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
置く事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
このカードが戦闘によって破壊された場合、
自分のデッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター1体を
自分フィールド上にセットする事ができる。


幽香 「(ち……面倒なものを引いてるわね)」

白蓮 「これだけトークンを並べれば、少なくともこのターンはダイレクトアタックはされないと思っているのでしょう。
    しかしながら、わたしはそこまで甘くはありません」

白蓮 「見習い魔術師は召喚した時、魔力カウンターを置くことができます。
    対象はもちろん、アーカナイト・マジシャン……ふふふ」

妖夢 「(く……これで聖さんの場のカウンターは、エンディミオンに1つ、
    アーカナイト・マジシャンに5つ……)」

白蓮 「さて、お待たせいたしました。アーカナイト・マジシャンの起動効果を発動。
    エンディミオンから1つ、そしてアーカナイト・マジシャンから2つのカウンターを
    取り除くことで、羊トークンを3体破壊。
    ここまで破壊すれば十分でしょう。
    バトルフェイズに入ります。見習い魔術師で、羊トークンを攻撃」

霊夢 「トークンの壁もあっという間に破壊……ダイレクトアタックがくるわ!」

白蓮 「ふふふ、アーカナイト・マジシャンの攻撃力は、現在3400。
    受けなさい、我が大魔法を! スターメイルシュトロム!!」

幽香 「くっ……」LP3900→500

文  『ああ~っと、またしてもダイレクトアタックが決まってしまった~!
    これで風見幽香さんのライフは、わずか500! 千の位を割ってしまいました!』

ぬえ 『ほ~ら、見たことか。
    魔法を使えるだけでも強いのに、使う回数に制限が無くなったらこうなるに決まってるじゃない。
    無双よ、無双』

幽々子『ふふふ。妖怪もおだてれば木に登る。常識ね』

にとり「(最後意味わからん……)」

白蓮 「願わくば、サレンダーをお願いしたい。
    所詮改心とは、強制されるものではないのです。
    自分の行いを見つめなおしてこそ、あなたにも初めて御仏の後光が垣間見えることでしょう。
    1枚伏せてエンドです」



幽香  LP 500:手札1:無し
白蓮  LP3000:手札1:アーカナイト(攻2400・魔2)、見習い、魔法都市



幽香 「…………」

妖夢 「(まさか、あの風見さんがここまでやられてるなんて……。
    このままでは、わたし達の二敗。地底チームにリーチの権利を与えてしまう……)」

妖夢 「あのう……魔理沙さん」

魔理沙「…………」

妖夢 「(……? 考え事? 例の事件についてかな?)
    ねえ。ちょっと、魔理沙さんってば」

魔理沙「……ん? ああ、何の話だっけ。
    トゲウオの求愛行動についてなら、家に帰ってから文献を……」

妖夢 「誰もノーベル賞のことなんか訊いてませんし、だいいち話はこれからするんですっ。
    そのう、風見さんなんですが……」

魔理沙「風見? なんだ、何かと思えば幽香のことか。
    あいつなら心配はいらん。お前は自分の試合に集中しとけって言っただろ?」

妖夢 「すみません……。それでもやっぱり不安なんです。
    確かに、あの方の強さは承知してますが……。でも……」

魔理沙「やれやれ、あいつの強さはお前も見ただろうに。
    心配なんて、するだけ無駄ってもんさ。
    まあ、この状況を楽しんでいるあいつもあいつだが……」

妖夢 「楽しんでる……んですか?」

魔理沙「ああ。口許をよく見ればわかるはずさ。
    決して余裕があるわけじゃないが、こんな状況でもあいつはしっかり笑っている。
    きっと苦戦なんて経験自体、新鮮なんだろうな。
    まったく、不謹慎な奴だぜ」

妖夢 「苦戦が新鮮、ですか。
    強者の感覚はわかりませんね……」

幽香 「ふふふふふ……」

白蓮 「(……? まだ笑う余裕が……)」

幽香 「なるほどね。案外と悪くないわ。首の皮一枚で繋がってるのもね」

幽香 「ドロー。……ふふふ。来たわね、急所のカードが。
    手札から、パペット・プラントを捨てて起動効果を発動させるわ」


《パペット・プラント/Puppet Plant》 †
効果モンスター
星3/地属性/植物族/攻1000/守1000
このカードを手札から墓地に捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、相手フィールド上に表側表示で存在する
戦士族または魔法使い族モンスター1体のコントロールを得る。


白蓮 「……!?」

ぬえ 「(あのカードは……魔法使い族に対するメタカード……!?)」

幽香 「アーカナイト・マジシャン。なかなかのモンスターね。
    でも、強大な力であればあるほど、それが敵に渡った時のことも考えなければならない。
    かの有名な人類と異星人の侵奪戦を描いたSFにおいても、
    人類は相手の火器を奪い利用することで勝利を収めた。戦の常套ね」

幽香 「よって、アーカナイト・マジシャンはわたしのしもべとなる。
    自慢の効果を使わせてもらうわ。魔力カウンターを取り除き、見習い魔術師を破壊よ!」

白蓮 「(わたくしの見習い魔術師が……)」

幽香 「ふふふ、喰らいなさい。アーカナイト・マジシャンでダイレクトアタックよ」

白蓮  LP3000→1600

霊夢 「ダイレクトアタック……。幽香のやつ、やり返したわ!」

幽香 「まだよ。メインフェイズ2で、再びアーカナイト・マジシャンの効果発動。
    このフィールドは小賢しい人間どもの臭いが鼻について仕方ないわ。
    カウンターを取り除き、魔法都市エンディミオン破壊する!」

白蓮 「ああ、なんということを……」

幽香 「ふふふ、そんなに悲しい顔しないでよ。
    デュエルは楽しいもの、でしょう?」

妖夢 「(うっ、ここであの満面の笑顔……)」

文  『ああ~っと! 青コーナー風見幽香さん、なんと不敵な笑みでしょうか!
    観戦しているこっちまで背筋が寒くなってきます。これはもうほとんどホラーの域です!』

幽々子『亡霊であるわたしを差し置いてホラーだなんて。ちょっと嫉妬しちゃうわ』

幽香 「メインフェイズ2で、貪欲な壷を使おうかしら。
    墓地のボタニティガール、バイオレットウィッチ、ヘルブランブル、ブラックローズ、
    スプレンディッドローズをデッキに戻し、2枚ドロー。モンスターをセットしてターンを終了するわ。

幽香 「あらあら、魔力カウンターを消費した分、攻撃力が下がってるわね。
    アーカナイト・マジシャンはエンドフェイズに洗脳が解けるけど、残りの魔法力はゼロ。
    もう魔力を貯蔵する魔法都市も無い。役立たずは返すわ。
    もう何もできやしないでしょうしね。
    魔法の使えない魔法使いほど、無価値で存在意義の欠けたものはないわね。
    アイデンティティ・クライシス。滑稽だわ。あはははは……!」



幽香  LP 500:手札1:裏守備
白蓮  LP1600:手札1:アーカナイト


ぬえ 「(そんな……アーカナイト・マジシャンが奪われるなんて。聖……)」

白蓮 「……どうやら、わたくしは間違っていたようです。
    あなたの裡に存在する悪は、もはや巨悪に等しい。
    わたくしがいくら喉を震わせ叫んだとしても、あなたにとっては小鳥の囀りにしか聞こえなかったのですね……」

白蓮 「ならば仕方ありません。わかりあえぬ運命ならば、せめて滅してくれましょう。
    秩序を照らす、大いなる法の光で!」

幽香 「……ふふふふふ」

白蓮 「っ……! 
    何がそんなにおかしいのです」

幽香 「ふふふふふ……。
    滅してくれる、か。ついに底が知れたわね」

白蓮 「なんですって。それはどういう意味……」

幽香 「あなたが優しくできるのは、自分より弱い者に対してだけ。
    手に負えない強者には、法の名の下に服従を強要する。
    人間も妖怪も平等の世界なんて謳っておきながら、その思考は極めて貴族的。
    あなた、根本的に勘違いしているわ。
    それは優しさなんかじゃない、ただの憐れみよ」

白蓮 「―――!!! 
    ……おおお、これほどの辱めを受けたことはかつてありません!
    今に、この天下の無法者に、星天の裁きを!!」

白蓮 「ドロー! 
    わたしの手札には魔力掌握があります。
    このカードでアーカナイト・マジシャンに魔力カウンターを乗せ、起動効果を発動! 
    その裏守備を破壊!」

幽香 「もうあなたの思考パターンは把握したわ。これはダンディライオン。
    破壊されてもトークンを生み出すことができる。残念だったわね」


《ダンディライオン/Dandylion》 †
効果モンスター(準制限カード)
星3/地属性/植物族/攻 300/守 300
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」
(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。


早苗 「またダイレクトアタックを防いだ……!
    これは逆転できるかもしれないですねっ」

衣玖 「確かに。ライフこそあとわずかですが、流れは完全にこちらのものです!」

白蓮 「バトルフェイズで、綿毛トークン一体を破壊しておきます。
    1枚伏せて、終了―――」



幽香  LP 500:手札1:綿毛トークン1
白蓮  LP1600:手札0:アーカナイト、伏せ1



幽香 「ふふふ、威勢は増したみたいだけど、どうやらここまでのようね。ドロー!」

幽香 「(…………魔法カードか。
    モンスターならアーカナイトを倒せてたんだけど、まあいいわ。
    奴はもう魔力掌握も使い果たした。アーカナイトはいつでも倒せるわね)」

幽香 「2枚伏せましょう。ターンエンドよ」

白蓮 「お待ちなさい」

幽香 「あん? このわたしに対して、そんな口の訊き方……」

白蓮 「エンドフェイズに、トラップを発動します。バスター・モード」


《バスター・モード/Assault Mode Activate》 †
通常罠
自分フィールド上に存在する
シンクロモンスター1体をリリースして発動する。
リリースしたシンクロモンスターのカード名が含まれる
「/バスター」と名のついたモンスター1体を
自分のデッキから攻撃表示で特殊召喚する。


幽香 「(……!
    あのカードは……)」

白蓮 「このカードは、特定のシンクロモンスターをバスターモードへと移行させます。
    アーカナイト・マジシャンをリリース……!!」

白蓮 「信貴山縁起絵巻の極意よ! 今ここに体現せよ!!
    アーカナイト・マジシャン/バスター!!!」


《アーカナイト・マジシャン/(スラッシュ)バスター/Arcanite Magician/Assault Mode》 †
効果モンスター
星9/光属性/魔法使い族/攻 900/守2300
このカードは通常召喚できない。
「バスター・モード」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを2つ置く。
このカードに乗っている魔力カウンター1つにつき、
このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
このカードに乗っている魔力カウンターを2つ取り除く事で、
相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する。
また、フィールド上に存在するこのカードが破壊された時、
自分の墓地に存在する「アーカナイト・マジシャン」1体を特殊召喚する事ができる。


霊夢 「な……何!?
    アーカナイト・マジシャンが変身したわ!」

早苗 「スラッシュバスター……! そんな、このタイミングで……!」

パチェ「まさかここで出してくるとは……。
    アーカナイト・マジシャンのバスター形態。
    あれこそが、魔力カウンターデッキの真の切り札……」

白蓮 「……わたしは悲しい。
    どうして同じ妖怪同士、争わなければならないのでしょう。
    愛する妖怪達を、同胞をこの手にかけるのは、何より辛いことです。
    しかし風見さん、許してください。
    大きすぎる力には、大いなる責任が伴う。
    あなたの力を、その際限無き悪意を、野放しにするわけにはいかないのです……」



幽香  LP 500:手札0:綿毛トークン1、伏せ2
白蓮  LP1600:手札0:AKB(攻2900・魔2)



文  『うわぁ~! なんと青コーナー聖白蓮さん、この局面でスラッシュバスターを召喚~!
    アーカナイト・マジシャンが無力化したのも束の間、まさかパワーアップして
    復活させるとは、一体誰が予想したでしょうか!』

ぬえ 『まさか……聖があのモンスターまで出すとは、わたしですら思わなかったわ。
    バスター形態は魔力カウンターを二つ消費して、相手の場のカードを全て破壊する効果を持ってる。
    言うならマダ○テね』

妖夢 「(くっ、そんな呪文をくらったらひとたまりもないわ。幽香さん……)」

こいし「あ~らら、決まっちゃったわね。
    あのカードが出た以上、この勝負の勝ちは絶対。
    あ~あ、次の副将戦でどうせわたしは勝っちゃうから……ありゃ、お姉ちゃんの出番無くなっちゃうね。
    残念、お姉ちゃんとやって手も足もでない相手を見たかったのに」

さとり「馬鹿な……」

こいし「…………お姉ちゃん?」

さとり「(いったいこれはどういうこと?
    風見幽香…………彼女の感情図、さっきまでとまるで変わってはいない。
    バスターが召喚され、向こうにとって状況は絶望的といっても過言ではないはず。
    これほどの苦境にまで追い詰められながら、依然として揺るぎない自信に満ち溢れている……)」

さとり「(……あり得ない。
    心が論理的な精神構造である以上、誰のものでもその感情パターンに当てはまる。
    自己を支えるべき精神の柱は、ただ一つ限り。
    これほどの窮地に立たされれば、誰もがその要因となった自信が過信だと気づいて然るべきのはず。
    それをいまだ一片の澱みもなく、自分の力を信じ続けられるはずが……)」

白蓮 「ドロー。これで幕です。
    しかし、永遠にも思える暗闇も、ひと時のことに過ぎません。
    解脱への道は、生死の苦海を渡って涅槃の彼岸に至ること。
    それがいつになるかは、わたしにもわからない。
    十年、百年、あるいは千年もの砌に及ぶやもしれない。
    ですが、永き航海の旅が終える頃には、あなたにも光が垣間見えることでしょう。
    その日が来るまで、わたしはいつまでもあなたをお待ちしています……」

白蓮 「アーカナイト・マジシャン/バスターの、起動効果発動!
    魔力カウンターを二つ取り除き、あなたのフィールドのカードを全て破壊します!!
    飛鉢、フライングファンタス……」

妖夢 「(く……万事休すか!)」

妖夢 「(…………? あれ?)」

白蓮 「(……アーカナイトマジシャンの姿が……無い?)」

白蓮 「(消えた……?
    ……いや、〝裏になっている〟!?)」

幽香 「ふふふ、お生憎。
    スタンバイフェイズ時に、わたしの場のリバースカードが発動していたのよ。
    月の書!!」


《月(つき)の書(しょ)/Book of Moon》 †
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。


文  『ああ~! なんと風見幽香さん、宣言無しでリバースカードを使用していました~!
    アニメや漫画でのみ許されているご都合技です!
    良い子は決して真似しないでくださ~い!』

パチェ「……そうか。
    月の書で裏にされたことで、反転召喚しても魔力カウンターは元に戻らない。
    これを狙っての月の書……」

早苗 「……効果の発動を防いだんですね!」

白蓮 「(うぬうう、よもやここでフリーチェーンのカードを引いていたとは……。
    なんと御しがたくも根深い……)」

白蓮 「(今カウンターを乗せる術が無い以上、アーカナイトバスターの反転召喚はできない。
    裏守備のまま、次のターンを凌ぐしか……)」

白蓮 「……一枚伏せて、ターン……エンドです!」



幽香  LP 500:手札0:綿毛トークン1、伏せ1
白蓮  LP1600:手札0:裏守備、伏せ1



妖夢 「(ふう、これで形勢は逆転……とまではいかないものの、相手の切り札を再び無力化できたのは大きい。
    AKBの元々の攻撃力は低いから、聖さんはカウンターを乗せるカードが来るまで、守備表示で守らざるを得ないはず)」

妖夢 「(お互い手札もライフも、反撃の余力は無い。勝負はここからまた振り出しに……)」

幽香 「ドロー。終わりよ」

妖夢 「…………えっ!?」

白蓮 「お……終わりですって!? 何を……」

幽香 「あなた、間違っても友人にしたいような奴じゃなかったけど、なかなか楽しかったわ。
    お望みみたいだし、そろそろ幕引きといきましょう。
    その切り札が使い物にならなくなった以上、今よりさらに楽しいことは期待できなさそうだからね。
    ただし……」

白蓮 「ただし……?」

幽香 「引くのはあなたじゃない。わたしの手によってよ!
    手札から、シード・オブ・フレイムを召喚!」


《シード・オブ・フレイム/Seed of Flame》 †
効果モンスター
星3/炎属性/植物族/攻1600/守1200
自分フィールド上に存在するこのカードがカードの効果により
破壊され墓地へ送られた時に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する「シード・オブ・フレイム」以外のレベル4以下の
植物族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚し、
相手フィールド上に「シードトークン(植物族・地・星1・攻/守0)」
1体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンはアドバンス召喚のためにはリリースできない。


霊夢 「……幽香が新たなモンスターを召喚したわ!
    あのカードに、この状況を乗り切る能力が隠されてるっていうの?」

諏訪子「いや、そういうわけじゃないと思うよ。あれはたぶん星の数合わせだね」

早苗 「星……と、いうことは……!」

幽香 「墓地のスポーアの起動効果よ。
    ウィードを除外し、このカードを墓地より特殊召喚する。
    この効果により特殊召喚した時、スポーアは除外したモンスターのレベルの数だけレベルが上昇するわ。
    よってスポーアのレベルは3になる!」

幽香 「レベル3のスポーアを、レベル3のシード・オブ・フレイムと、レベル1の綿毛トークンにチューニング!」

幽香 「冷たい炎が世界の全てを包み込む……。
    憎悪の薔薇は二度咲くのよ。
    さあ来なさい! シンクロ召喚!!」

幽香 「再び現れよ、ブラック・ローズ・ドラゴン!!!」


    ブラック・ローズ・ドラゴン   攻撃力2400


白蓮 「(馬鹿なっ……!?
    まだこれほどのモンスターを出す余力が……)」

勇儀 「ま、またあのモンスターかい……!?」

文  『な、なんと! 青コーナー風見幽香さん、再びブラック・ローズ・ドラゴンを召喚~! 
    先ほどはエフェクト・ヴェーラーの効果により抑えられてしまいましたが、再びのシンクロ召喚を果たしました~!』

幽香 「さっきは誰かさんのせいで、いいところを見せられなかったからね。
    なら、せめて最後ぐらいこいつで決めないと、幕引きとは呼べないでしょう?」

ぬえ 『そ、そのためにわざわざ……!?』

文  『なんという執念でしょう! やられたらやり返す、やったらやり返される!
    ただそのためだけのブラックローズ召喚です!』

さとり「(……そうか、なるほど。今ようやくわかったわ。
    彼女の強さの源泉……それは自己に対する圧倒的な信頼だけではない。
    自分の力と同じぐらい、いやそれ以上に、〝自分のデッキ〟も信頼している……。
    元より、彼女の精神は一つではなく、二つの強固な支柱によって支えられていた。
    いずれかが崩れようとも、もう片方の存在によって決して瓦解することはない……。
    ふふふ。道理で、強いはずですね)」

幽香 「ふっ、ブラック・ローズ・ドラゴンの起動効果発動!
    墓地のパペットプラントを除外することで、フィールドの守備表示モンスターを表にし、その攻撃力を奪う!」


    アーカナイト・マジシャン/バスター   攻撃力0


ぬえ 「ああっ! 聖のバスターの攻撃力が0に……」

こいし「攻撃されたら……危ないよっ!」

幽香 「危ない? 違うわね。すでにこの状態がデッドよ!
    バトルフェイズ! ブラック・ローズ・ドラゴンで、アーカナイトスラッシュバスターに攻撃!!」

白蓮 「それでも……! 
    わたしは邪悪に屈するわけにはいかないのです!
    ダメージステップで速攻魔法発動! 収縮!!」


《収縮(しゅうしゅく)/Shrink》 †
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。


妖夢 「(な…………収縮!?)」

白蓮 「このカードの効果で、ブラックローズの攻撃力は半減!
    アーカナイトマジシャンは破壊されますが、これでライフは残……」

幽香 「忘れたの? 幕と言ったのは、あなたじゃない。このわたしよ!」

幽香 「トラップ発動! シンクロ・ストライク!!」


《シンクロ・ストライク/Synchro Strike》 †
通常罠
シンクロ召喚したモンスター1体の攻撃力はエンドフェイズ時まで、
シンクロ素材にしたモンスターの数×500ポイントアップする。


白蓮 「……!?」

幽香 「悪いけど、わたしも同じタイミングでこれを発動させていたの。
    ダメージステップ中のクイックエフェクトはそのターンのプレイヤー側が優先権を持つ。
    よってあなたの速攻魔法より先に、シンクロ・ストライクの効果が発動。
    収縮はこれにチェーンする形になるわね」

文  『ああ~っと! 幽香さん、またしても発動していた宣言~!
    一度ならず二度までも! さすがは風見幽香!
    この鬼! 悪魔! でもそこに痺れちゃう~!』

幽香 「ふっ、盛り上げるための演出よ。
    このトラップによってブラック・ローズ・ドラゴンは、シンクロ召喚した際の素材の数だけ、攻撃力が上昇するわ。
    チェーン2で、先に収縮を処理してからね。
    よって、ダメージステップ時のブラック・ローズ・ドラゴンの攻撃力は……!」


    ブラック・ローズ・ドラゴン   攻撃力2700


ぬえ 「(……そんな! 聖のライフは、1600……)」

幽々子『決まったわね』

白蓮 「おお……! 汝こそ天人ともに許されざる女!」

幽香 「喚いてなさい偽善者! バトル続行!」

幽香 「ブラック・ローズ・ドラゴンで、アーカナイト・マジシャン/バスターに攻撃!!
    花鳥風月、嘯風弄月!!!」

白蓮  LP1600→0



    *



妖夢 「(幽香さんが……勝った!)」

文  『……風見幽香さん渾身のスペルが炸裂~!
    今の攻撃によって、赤コーナー、聖白蓮さんのライフはゼロ! よって勝負アリです!
    激しい戦いの末、中堅戦は地上チームが制しました~!!』

ぬえ 『えええ……うっそぉ、聖が負けるなんて』

霊夢 「……ぃよっしゃあ!
    幽香の勝ちだわ。鍋もあと間近よ!」

衣玖 「これで二勝っ。リーチですね」

白蓮 「ああ、そんな……」

幽香 「今の世の中、駆け込み寺もそこそこに需要があるみたいだけど。
    ふっ。どうやら出家するには、わたしは永く生きすぎたらしいわね」

白蓮 「わたくしは……、わたくしは、法の光で世を曙光へと導くためにも、決して悪に屈してはならないのに……。
    あなたを邪悪より救い出すためにも、負けるわけにはいかなかったのに……。
    だのに、それなのに……。おお、御仏よ、申し訳ありません……」

幽香 「やれやれ、最後まで暑苦しい奴なのね。僧職はこれだから肌に合わないわ。
    塩の味しかしない汁を啜って、干からびた腕で天の光を仰ぐ。
    そんな生き方、わたしには耐えられない。でも……」

白蓮 「…………」

幽香 「あなたがわたしの生き方を決めることはできないのと同様に、わたしもあなたの自由を束縛することはない。
    だから……それでもあなたが、まだわたしを改心させたいというならば、なにも今回限りってわけじゃない。
    いつでも来なさいな。受けて立ってあげるわ」

白蓮 「……そう、ですか」

ぬえ 『聖……』

幽々子『勝敗は、壁の差ね』

文  『えっ? 壁、といいましたか。
    それはどういう意味でしょう?』

幽々子『両者の境にある壁のことよ。
    それは互いに越えられない、途方も無く壮絶な壁。
    甲は強引に乗り越えようとしたけど、乙はあろうことか飄々とそれをすり抜けてみせた。
    いいえ、元々、壁なんてものは初めから存在しなかったのよ』

文  『なるほど~! 
    言ってることはまったくちんぷんかんぷんですが、珍しく幽々子さんの口から
    解説らしい文章が出て、わたくしいたく感激しております~! 
    幽々子さんはやればできる子。やればできる子なんですよ~!』

妖夢 「(な、なんだかわたしが恥ずかしい……)」

さとり「(……なるほど。
    彼女、西行寺幽々子さんの考えている通り、壁……すなわち善と悪の境界線は、
    本質的な意味ではあってないようなもの。
    概念は公に既知でも、明確な線引きは個人によって異なっている。
    いや、そもそも彼女は悪などではなかった。
    純粋に自分の意志の通りに邁進し、気の赴くまま、ただそれだけが彼女、風見幽香の動機だった。
    この場合は、戦い。つまりは、デュエルを楽しむということだけを。
    彼女の唯我独尊的な言動からは見失いがちですが、
    その動機はデュエルをするうえで、最も無垢で偽りの無い至純の精神。
    勝敗を決したのは、その純粋さだったわけですね……)」

さとり「(ふふふ……きっと幽香さんは、ああ見えてこの場にいる誰よりも、
    この大会を楽しみにしてたのでしょうね)」

早苗 「すごいですっ! わたし、感動しましたっ!」

幽香 「うるさい。大声がキンキン響くのよ。黙るか消えるかしなさい」

早苗 「あうぅ……、ほ、本当に感動したのに」

諏訪子「あ~あー。危ない奴とは付き合うなって言ってるのに。子供だなぁ、早苗は」

ぬえ 「……聖~!」

白蓮 「ぬえ……? 
    あなた、いいのですか? 解説のお仕事の方は……」

ぬえ 「えっ……いや、その……」

ぬえ 「(言えない……。聖が心配で思わず飛び出してきちゃったなんて。でも……)」

ぬえ 「(でも、こんなに打ちのめされた聖なんて見たことない。
    わたしがどんな言葉をかけたところで……)」

白蓮 「……ぬえ」

ぬえ 「あ……うん」

白蓮 「わたくしは、間違っていたのでしょうか。
    この世の全ての妖怪と、人間達が手を取り合って共生できる世界……
    その理想のために、数百年もの間耐え忍び、苦肉を噛んで生きてきました。
    でも、その理想は、誰しもが求める夢想ではない……。所詮わたくしだけの理想に過ぎなかったのでしょうか……」

ぬえ 「それは……」

白蓮 「わたくしはこれまで悪意ある人間によって虐げられた妖怪達のために、一身にこの身を粉にしてきたつもりです。
    それでも……風見さんがそうであったように、それは必ずしも万人が望む世界ではなかったのかもしれません。
    わたくしにとっては本物の善でも、傍から見れば偽善に見えてしまっていたのかもしれません……。
    やはり、全てはわたくしの一人よがりだったのでしょうか……。
    他の方々にとっては、押し付けの善意でしかなかったのでしょうか……」

ぬえ 「……違うよっ!」

白蓮 「えっ……?」

ぬえ 「あっ……いや、だから…………その、そんなことないよ。
    確かに聖はちょっと強引で、おせっかい焼きで、たまに空気読めてないとこあるけど……
    ……でも、少なくともわたしは、聖のおかげで助かってるよ。
    聖が凄くいい人で、一緒にいるといつもこっちの事を考えてくれてるってわかる。
    それが凄く真剣だってことも知ってるよ。
    たまに眩しすぎてまっすぐに見れない時もあるけど……でも、わたしは助かってるから。
    だから……押し付けの善意だなんて、そんな寂しい言い方やめようよ」

白蓮 「…………」

白蓮 「…………そう、ですね。ふふふふふ」

ぬえ 「なっ、なんで笑うのよぉ」

白蓮 「うふふふふ……」

ぬえ 「もう、ずるいよ……。
    自分はこれくらいの台詞、空気読まずに四六時中言い聞かせるくせに……」

白蓮 「ごめんなさいね。つい、嬉しくて……。
    ねえ、一つだけ、いいかしら?」

ぬえ 「な、なによ……」

白蓮 「ありがとう、ぬえ。
    あなたのような優しい妖怪にめぐり合えて、わたくしは幸せです」

ぬえ 「(…………はううううぅ。は、恥ずかしい……)」

白蓮 「それと…………風見さん」

幽香 「うん? まだ何か用かしら」

白蓮 「今回は引き下がりますが……わたくしは何度でも、あなたを振り向かせる努力をしてみせます。
    それがあなたのためであると、わたくしは信じていますから」

幽香 「ふふっ、好きにしなさい」

霊夢 「なんだか知らないけど、思わぬところで地固まったみたいね」

早苗 「ううう、なんだかいい話です……。
    わたし、こういうのに弱いんですよぉ……」

妖夢 「(一片たりとも自分とデッキに対する強さを失わない。
    あれが、風見幽香さんの強さ……か)」

魔理沙「なっ、言ったろ? 心配するだけ損だってな」

妖夢 「えっ。……あ、はい。
    そうですね。わたしもなんだか理解できました。
    あの人の強さには、力以外の確固たる何かがあると……」

魔理沙「それはいいとして、だ。さっきからずっと考えていたんだが……」

妖夢 「《七色のレアハンター》のことですね?」

魔理沙「ああ。ひょっとしたら、わかったかもしれない」

妖夢 「えっ……!
    わかったって、犯人がですか!?」

魔理沙「しっ……! 声が大きいぜ。
    誰が聞き耳立ててるともわからん」

妖夢 「す、すみません……。
    でも、本当ですか?」

魔理沙「とりあえず、あっちで話そう。
    なるべくなら、誰にも聞かれたくはないからな」



    *



妖夢 「……拝殿の裏。ここなら大丈夫でしょうけど、なにも
    こんな人気の無いところまで来なくてもよかったんじゃないですか?」

魔理沙「念には念だ。じきに副将戦も始まる。手短に済ますぞ」

妖夢 「はい。聞かせてもらえますか? 先ほどの話の続きを。
    本当に《七色のレアハンター》が誰かわかったんですか?」

魔理沙「まあな。というか、実は犯人については、随分前から見当はついてたんだ」

妖夢 「ええっ!? 
    そ、そうだったんですか……」

魔理沙「ああ。だが、まだ推測の域は出ていない。
    だからこそ、ずっと黙ってたんだよ」

妖夢 「一体誰なんですか? 《七色のレアハンター》は」

魔理沙「言ったろ。推測の域だって。まだおおっぴらに言えるようなことじゃない。
    それに、この事件、犯人が誰かはそう問題じゃないんだ」

妖夢 「はあ……。
    じゃあ、何を話すためにここまで連れて来たんですか?」

魔理沙「わたしが新たに気づいたのは、犯人じゃない。
    〝犯人が狙うカード〟についてだ」

妖夢 「犯人の狙うカードって……。例の属性のこと?
    さっき永江さんが光属性のカードを奪われたことで、これで残りは闇と地、風になってしまいましたが」

魔理沙「その属性の件はそれで間違いないだろう。だが、それだけじゃなかったんだ」

妖夢 「それだけじゃない……というと?」

魔理沙「つまりだ。〝属性の他にも、狙われたカードには法則性があった〟」

妖夢 「……やっぱりですか! わたしも、なんだか変だと思ってたんです。
    犯行予告なんか出すほど自己顕示欲の強い犯人が、属性だけしかヒントを与えないなんて……。
    やっぱりそれぞれには何か関連性があったんですね」

魔理沙「ああ。関連性、すなわちミッシングリングってやつがな。
    まだ確証はできないが、まあ、おそらくは間違いないと思う」

妖夢 「おお、自信があるということですね!
    して、その法則性とはどのような……?」

魔理沙「悪いが、それは言えない」

妖夢 「……ガクッ。
    な、なんでですかぁ。教えてくださいよう」

魔理沙「自信はまんまんだが、こちらもまだ確定ってわけじゃないからな。
    それに言っただろ? こっち(事件)の件は、わたしに任せとけって。
    お前は余計なことに気をとらわれる必要は無いさ。
    お前が今しなきゃいけないことは、試合に集中して、万全の状態で臨むこと。だろ?」

妖夢 「(……ああ、そっか。気づかってくれてたんだな。
    今まで……全然気づかなかった。
    この人は普段がああだから、他人の気持ちなんてこれっぽっちも忖度しないんだとばかり思ってたけど……)」

妖夢 「(パートナー……か。
    うん、これがそうなんだな、きっと……)」

妖夢 「あー……でも、やっぱり気になるものは気になるんですけど……」

魔理沙「我慢することだな。おまえはサムライなんだから、我慢は得意だろ」

妖夢 「うう~。なんだか馬鹿にされてる気がする」

魔理沙「ははは。でもいいじゃないか。
    これでもう悩みのタネは無くなるはずだぜ」

妖夢 「ですね。法則性が判明したというなら、次に犯人が狙うカードもわかったということでしょう?」

魔理沙「そこなんだが。
    実は、今この段階ではまだちょっと絞り込めそうにないんだ」

妖夢 「えっ、法則がわかってても、ですか?」

魔理沙「まあな。何せ遊戯王カードも、今や一万もの種類がある。
    その中から一枚を探し出すっていうんだから、まあ少々難儀するわけだ」

妖夢 「うーん。確かに、そう言われると……」

魔理沙「だが、心配することはない。
    わたしの推測では、次に《七色のレアハンター》が行動を起こしたら……
    つまり、次に奪われたカード如何によって、その後の標的となるカードが特定できるはずだ」

妖夢 「おお! 凄いじゃないですか。
    ……あ、でもわからないですよ? 
    またカードが盗られるって、その保障は無いわけでしょう?」

魔理沙「いや。《七色のレアハンター》は、また必ず現れる。
    第一、さっきの置き手紙にも書いてあっただろ。
    〝虹にかかる七つの光。黄の光は失われた。これで残りは三色となる〟。
    つまりはあと三回機会があるって推理は変わらない」

妖夢 「あと三回、か……。
    でも、もう副将戦ですよ? 
    《七色のレアハンター》が動くとしたら、今この時にも行動を起こさないと………
    ………って、あ! もしかして、わざわざこんなところまで連れて来たのは……」

魔理沙「そう。《七色のレアハンター》に行動を起こしてもらうためさ。
    唯一警戒していたわたし達がいなくなれば、奴にしてみればもう障害は無い。
    なにせ、他の奴らはみんな舐めきってるからな。なら、今すぐにでも事に走るはずだろ?」

妖夢 「おびきだそうってわけですね。まったく、悪知恵が働くというかなんというか……。
    これでまた一枚、誰かさんのカードがみすみす相手の手に渡ってしまいますね」

魔理沙「これも言ったはずだぜ? 
    殺人事件と違って、最終的に犯人を捕まえれば盗られたものは全部返ってくるんだ。
    大物を釣るには、相応の餌を撒かないとな。
    要は、細かいことは気にするなってことだ」

妖夢 「ちょっとは見直したと思えば……口が減らないのは相変わらずなんですね」

魔理沙「ん? なんか言ったか」

妖夢 「いーえ、別に…………ん?」

文  『……あやややや。騒がないで。どうか落ち着いてくださ~い!』

魔理沙「境内の方からだ! どうやらおいでなすったようだぜ」

妖夢 「くっ、行くしかないですね。急ぎましょう!」






















                                             ・・・・・・To be continued
 カラスに空爆されました。クラミ痔あです。

 今回なんですが、長いので分けました。合わせて120KBとかww
 といっても、前シーズンも最後の方は、一話がこのぐらいはざらだったんですよね。 
 とにかく、長々とお読みいただき、ありがとうございましたm(_ _)m


 さて、聖さんのデッキなんですが、特に捻りもなく魔法使い族。
 一応アリスとの差別化という意味もあって、魔力カウンターデッキにしました。
 他にもいろいろ考えたんですが、カウンターをたくさん使うデュエルが今まで無かったので。
 肉体を強化する魔法が得意という設定を生かしたかったんですが、いいアイデアが無く却下しました。
 ゆうかりんがブラックガーデンを使ったり、いろいろとややこしいデュエルでしたが、いい勝負になったかなと思います。
 心残りは、神聖魔導王を登場させられなったこと。だって出すの難しいんだもの(´∀、)

 そしてゆうかりんは、満を持しての黒薔薇使用。
 植物は普通に使うととても強いんですが、高レベルのフィニッシャーがいないので、こういうSSにする分にはちょっと向かなかったかもですね。
 あと、アマリリスバーンのトラウマがどうたら言ってましたが、実際よく使ってトラウマを振り撒いてるのは自分です。こういうデッキ大好きですw


 
 今回は相当注意深く確認して、その都度何度も手直ししたので、もう間違いは無いと信じたいです……。
 というかこんなに書くの大変なら、魔力カウンターなんて使うんじゃなか(ry


 次は副将戦なんですが、セミファイナルということで、そろそろ謎解きの方も大詰めです。
 一応、次回でヒントは大体出揃うと思います。
 というか、次は今回よりもさらに容量多いので……三分割ぐらいはするかなぁ。
クラミ痔あ
http://
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
今回も熱戦でしたね。
アーカナイトは覇魔導士アーカナイト・マジシャンまで持っていって欲しかった。

なんという格好いいゆうかりん。これは間違いなく惚れますね。

謎解きは全く良く分かりません。
盗んでいる枚数もまちまちだし、有名どころからマイナーまで統一性が見えない。
カード同士にシナジーはあるようなのですが。
残り三種でわかるのでしょうか。
2.藍色狐削除
私が見つけられた誤字は、前編に書いたものだけですね。念入りな推敲、お疲れ様です。
アーカナイトマジシャンも、「魔法による肉体強化」という点では間違っちゃいないように思いますね。
覇魔導師も面白いけど、やはり効果の豪快さでは/バスターに分があります。今回は残念ながらかませに終わったけど。

トラウマもありますが、私もアマリリスのようなカードは大好きです。
そんな私のホルスに次ぐ相方はヴォルカニック・バーン。妹紅スリーブ完備です。
3.名前が無い程度の能力削除
ゆうかりんが純粋過ぎて堪らん(*´ω`*)
二度にわたる発動していた発言にはクスリと来た。
次はこいしと衣玖か。昨日出たこいしスリーブに入れるデッキの候補が出来るよやったね!
次元合成師を何に使うんだろう分からぬ
4.クラミ痔あ削除
皆さんありがとうございますm(_ _)m
とりあえず間違いらしい間違いは無かったみたいでホッとしてます。
こうも長いと後から修正きかないんですよね。

>>1
確かに魔法使い族デッキだと融合を突っ込むだけでいいので、覇魔導士は実はそんなに召喚は難しくないんですよね~。
出してもよかったんですが、効果と用途がアーカナイトとほとんど変わらないので、結局バスターの方にしました。
謎解きは……よくよく考えると難しいです。
暗号からは一応狙うカードの法則がわかるんですが、この時点では魔理沙の言うとおり、法則はわかったとしても次に狙うカードまではきついです。ちゃんと推理できるようになるのは、次回ですね。

>>2
言われてみれば、自分に魔力カウンターを乗せるんだから肉体強化になりますね! そういってくださると嬉しいです~。

関係無いんですが、以前コメントでいただいたので、自分も久々にホルスを組んでみました(オンラインでですが)。
何回か帝とクイックデブダンにふるもっこされましたが……禁じられた聖杯とエフェクトヴェーラーがくればまだまだ頑張れそうな感じですね!

>>3
スリーブの画像見てきました。ええのう(*´ω`*)
日曜だし、さっそくとらあな行くか……。
ぜひこいしのデッキを使ってあげてください。……と言いたいところですが、かなりの玄人向けデッキになりそうでヤバイですw
5.名前が無い程度の能力削除
いつも楽しく読ませてもらってます。
植物デッキは私も使ってますが、アマリリスバーンは使う方は楽しいのですが、相手からしたらやっぱりくるしいですよね(^^;

後、誤字?報告を
テキスト読む癖>テキスト読まない癖
6.名前が無い程度の能力削除
ゆうかりんが貪欲使ったから魔法都市にカウンター乗ってるんじゃ…
7.アジサイ削除
魔法都市とアーカナイトはうっざいですよね。アーカナイトをよく知らないで戦ってたら、激流葬しそこねて、フィールド全滅。さらに融合態まで出されて死にました。
幽香のデッキはフェニキシアン使ってるから、異次元からの埋葬が入ってるんじゃないかと思ってたら、そんなことはなかったぜ!
レアハンターの予想として、こいしちゃんが候補にいたんですが。手口とかで。地底メンバーが狙われてないこともあるので。でも違う……んでしょうね。なんだか。
霊夢!その癖は直しちゃいけない!テキスト読もう!
8.クラミ痔あ削除
>>5
やっぱり相手にはしたくないですよねw
今後控えるようにします。
誤字の方直させていただきました。ありがとうございます。

>>6
修正させていただきました。
大した間違いじゃなくてホッとしてます。

>>7
普通にアマリリスバーンを組むのであれば、玄米はやっぱり入れたいですね~。
霊夢さんはモンスターは攻撃力守備力のとこしか見ない人種らしいですw
9.名前が無い程度の能力削除
フィールド=薔薇の庭園でアリプロって聖少女領域ですかwww
たしかにゆうかりんにピッタリな歌詞がちらほら…

ゆうかりんの深い胸の奥にまでひじりんが届きますように
ゆうかりんはけして自分を曲げはしないだろうけども