Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

アルティメット雪かきトゥルース

2010/12/30 23:29:28
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雪の降りしきる白玉楼。
例年通りならば、いつものように雪かきをすれば良いのだが、今年はそういう訳にはいかなかった。 
異常に雪が積もってしまったのだ。

「これは雪かき出来ないんじゃ……」

妖夢はシャベルを持って雪かきをしようと庭に出たが、早速体全体が雪の中に沈んでしまった。
これは危ない。傍から見ているとコントみたいで大変面白いのだが。

「傍から見ているとコントみたいで面白いわー」
「幽々子様……」

その様子を縁側からのんびりと眺めていた幽々子。
体がすっかり埋もれてしまった妖夢はクスクスと笑う幽々子に対し、静かなる怒りを感じていたが、表には出さなかった。
強い子である。

「とりあえず私を助けてくれないでしょうか?」 
「2段ジャンプでいけるんじゃない?」
「雪が重くて無理です。それに2段ジャンプするぐらいなら、飛びますよ」
「そうね」
「………」

それから1分経った。

「幽々子様。そろそろ怒りますよ」
「え、本当に出られないの?」
「出られたら出てますよ! 寒くて死にそうなんですよぉ!」

それから奇跡の救出劇が始まった。
幽々子は持ってきたロープの片方を妖夢に投げつけ、妖夢がロープを握ったのを確認すると思い切り引っ張った。
そして見事妖夢を縁側の上に釣り上げた。(別に奇跡でも何でもありませんでしたね)

「久しぶりに体動かしたら疲れたわー」
「………」
「陸に打ち上げられた魚みたいね妖夢」
「………」
「妖夢ってサンタクロースの格好が似合いそうね」
「なぜこの状況でその話題が出るのです?」
「いや、なんか黙ってたから……」

妖夢にサンタクロースの格好は似合うのだろうか。
結論から言うと、「似合わないものは殆どない!」といった所だろうか。

「幽々子様。これでは雪に圧殺されるか、凍え死ぬのを待つだけです。どうにかならないでしょうか」
「えー、やっぱり寒いの?」
「凄く寒いです」
「私は幽霊だから別に寒くないんだけど」
「じゃあ、幽々子様が代わりにやって頂けますか?」
「ごめん、冗談だから……」
「どちらにせよ、このままでは雪かきができません」
「と言われても、このままじゃ建物が雪に浸食されてしまうから……とりあえず紫の所に行ってめぼしい物を探してくるわ」

流石に妖夢をあまり怒らせるのもよくないと考えた幽々子は、大妖怪であり、友人でもある八雲紫の屋敷に向かうことにした。
余談だが、妖夢が本気で怒ると大変なことになる。
怒りのまま刀を振り回す妖夢に、「殿中ですぞ妖夢殿!」と涙ながらに説得したのは幽々子の苦い思い出である。










「と言う訳で何かない?」
「貴方は私をドラ〇もんか何かだと思っているの?」
「それはまぁ……違うわね。ドラ〇もんはもっと情に厚いからねぇ」
「それどういう意味……」

屋敷に到着した幽々子は、炬燵に入っている紫に聞いてみることにした。
その紫の姿は想像を絶する堕落っぷりで、流石の幽々子も驚きを隠せなかったので、自分も炬燵に入ってフェアプレーで臨んだ。
そんな二人の姿を後ろから眺めていた藍の視線の冷たさは、ついにマイナスKに達した。

「そうねぇ、妖夢ったらスカートで寒そうだからねぇ……あと藍の視線が……」
「藍?」
「いや、何でもないわ……そう言えば奥に使わないスキーウェアがあったから持っていきなさいな」
「あらまぁ、スキーウェアなんてハイカラなものを」
「まあ、使わないんだけどね」
「へぇ」
「妖怪の山でスキーしたら楽しいかなって思ったけど、怒られたから使えなかったのよ」
「へ、へぇ……ま、ありがとね。それにしても貴方、本当になんでも持っているのね」
「幻想郷のドラ〇もんですから」
「ドラ〇もんはもっと可愛げがあるから……」
「それどういう意味……」

ピンク色の派手なスキーウェアを抱えて帰っていく幽々子を見送りながら、紫は呟いた。

「ドラ〇もんって、そんなに良い奴だったかしら……ねぇ藍?」
「ドラ〇もんになれば分かるんじゃないでしょうか」
「どうやってなるの?」
「押し入れにでも入っていれば良いじゃないですか。炬燵で堕落しているよりは見栄えも良いでしょう」
「それどういう意味……」

机の引き出しでも可、と藍は付け加えた。










「妖夢ー」
「あ、幽々子様お帰りなさいませ」
「ほら、スキーウェア」
「どぎつい色合いですねこれ……」
「紫の趣味ですから」
「ま、まあ……これがあれば何とか……ありがとうございます」

スキーウェアに着替え、シャベルを手に持つ妖夢。
しかし幽々子は、そんな妖夢を見て怪訝そうな顔をした。

「確かにどぎついわね……真っピンクよもう」
「遭難しても大丈夫ですね」
「まあそれは良いんだけど、貴方シャベルで雪かきしたら時間かかるんじゃない?」
「それもそうなんですけど……」
「スノーダンプって白玉楼になかったかしら?」
「スノーダンプって何ですか?」 
「説明しづらいわね……あの大きいシャベルみたいなやつよ」
「ああ、アレですか……私は『でっかいシャベル』と呼んでいました」
「分かりやすくて良いわね」
「えへへ」
「別に褒めてない……あ、思い出したわ。あのスノーダンプって紫の所と兼用だったわね」
「どういうことですか?」
「いや、話すと長くなるんだけど」
「何故……じ、じゃあ、白玉楼専用のを買ってきますか?」
「そんな勿体無いことしなくても、紫の所から持ってくれば良いのよ」
「そんな! 幽々子様にまた苦労は掛けさせられません!」
「良いのよ妖夢」
「幽々子様……」

妖夢は感激していたが、幽々子はそんな彼女を尻目に、「雪かきの方がずっと辛いでしょうからね」と独りごちた。









「で、また来たんだけど」
「あ、紫様は自室の押し入れの中にいらっしゃいます」
「どうして……」

幽々子が呆れた顔をしながら、紫の部屋の押し入れを開けると、本当にそこに紫がいた。
虚ろな目だった。

「な、何をしているの紫」
「貴方と藍の所為……」
「どういうこと……」
「ところで、また何しに来たの……」
「兼用のスノーダンプあったじゃない? あれ使いたいんだけど」
「良いわよ……」
「紫元気出してよ……」

スノーダンプを担いで去っていく幽々子を見送りながら、紫は「妖怪がドラ〇もんになろうだなんて、傲慢じゃないかしら……」と心の中で疑問を抱いていた。










「持って来たわよ」
「豪快な担ぎ方ですね……」
「カッコいいでしょ?」

妖夢は何も言わなかった。
それが優しさだから。

「これだけ揃えば出来るでしょうが……さっきよりも強く吹雪いているんですよ……」

妖夢の言う通り、普段は穏やかな冥界も恐ろしい程に吹雪いていた。
これだけ吹雪いていると、何を言っても死亡フラグになってしまうだろう。
(例)「この雪かきが終わったら、博麗神社にお賽銭入れるんだ……」

「まあ大変。じゃあ私はおやつでも食べて貴方の雄姿を見守っているわ」
「……幽々子様がこの雪も食べてくだされば」
「あ、あはは、妖夢ったら酷いわねぇ。いくら私でも雪は……」
「いえ、幽々子様が手伝ってくだされば、この吹雪でもいけそうな気がします」
「………」

幽々子は傷付いた。
従者の剣は心さえも抉るのだと思い知らされたのだった。(うまいこと言った)










「ねぇ紫……」
「何……?」
「押し入れって暖かいね……」
「そうね……」
「従者ってストレスを溜め込ませると、グサッとくること言うよね……」
「同感だわ……」
「妖夢に化け物みたいな大喰らいだと思われていたわ……」
「貴方はもっと食事を控えるべきだと思うの……」

紫と幽々子は、仲良く押し入れに収まっていた。
二人とも心に傷を負っている。 
彼女達はメンタル面を強化するべきである。

「あ、紫様! スノーダンプがないのですが!」
「あらごめんなさい。それ私が借りたわ」
「そう言えば先程、幽々子様が持っていってましたね……どうしましょうか……この屋敷にはシャベルも置いてないのですよ」
「藍。雪かきなら、また今度で良いじゃない」
「しかし、今日はもう年末ですので橙が泊りに来るのですよ? 玄関先が雪で一杯だったら可哀そうじゃないですか!」
「べ、別に飛べば大丈夫なんじゃない?」
「それに、大妖怪の屋敷が雪かきされてなかったら沽券に関わるじゃありませんか!」
「この屋敷には誰も訪れないから大丈夫よ」
「現に幽々子様がいらっしゃっているじゃありませんか……」
「あらほんと、気付かなかったわ」
「気付いてくださいよ! 幽々子様も悲しそうな顔をしているじゃないですか!」
「まぁまぁ落ち着きなさい。貴方の高速縦回転を使えば雪なんて一発で吹っ飛ぶわよ」
「な、なるほど……」

藍は慌てて外に飛び出していった。
そして強烈な吹雪を見て絶望した。
しかし彼女は諦めなかった。
獣人の跳躍力を活かして積もりに積もった雪にダイブし、体を張って雪を吹き飛ばそうとした。
気合を入れる為に「ホァァァーッ! ホァーッ!」といったような奇声も発した。
普段の知的で冷静な彼女を知っている者がこの光景を見たなら、ビックリし過ぎて炬燵の角に小指をぶつける程だ。       

「橙……紫様……私はここまでのようです……」

そんな彼女もついに力尽きてしまう。
しかしその顔は不思議と安らかだった。










妖夢は1時間ぐらい雪と格闘した。
そうして分かったことは、スキーウェアを着用してスノーダンプを装備しても、無理なものは無理だということだった。
香霖堂でパシられた時とは比べようもない程の雪の量だった。

「諦めるのも大切な事なんじゃないかな……」

だが、そんな彼女の脳裏に師匠の教えがよぎる。

 ”斬ればわかる……多分な”

「師匠……わかりました。やってみせます!」 

自らを奮い立たせ、最後の力を込めて刀を抜こうとする妖夢。
しかし彼女の手に握られていたのはスノーダンプだった。
彼女は体中の力が抜けていくのを感じた。





橙が、虚ろな目で押し入れに収まっている4人を発見したのは、それから2時間後のことであったという。
橙「吹雪? もう止みましたよ」
樫桐鉄道
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
せつねえwwwwww
2.名前が無い程度の能力削除
かわいそうだけど笑ってしまうwww
特にゆかりんwwwww
3.奇声を発する程度の能力削除
>奇声も発した
ホァァァーッ! ホァーッ!
色々ツッコミが追いつかないwwww
4.名前が無い程度の能力削除
なんかもういろいろと駄目だwww
5.名前が無い程度の能力削除
>>炬燵の角に小指をぶつける
 あれ超痛いですよね~

スノーダンプを豪快に担ぐ幽々子様・・・惚れるぜ!www