注:前回からの続きです。
________さらに翌日 天界(有頂天)
衣玖 「(低気圧の影響で、今頃下ではひどい天気になっているでしょうに……雲の上はまったく静かですね)」
衣玖 「(まあ、こんな日に限ってあの方が天界におられないということはないでしょうが……)」
衣玖 「……総領娘様、いらっしゃいますかー?」
衣玖 「…………」
衣玖 「(…………おられない。比名那居の屋敷じゃないということは、まさか有頂天かしら?)」
衣玖 「…………」
衣玖 「(……あ、いた)」
衣玖 「総領娘様」
天子 「……おや、あなたは永江の衣玖。
わざわざ有頂天まで、何しにきたの?」
衣玖 「他でもない、貴方様を探しに来たのです。
総領娘様こそ、どうして有頂天なんかに?
こんな何も無いところ、宴会でもなければ来られる意味が無いと思いますけど」
天子 「どうしてって、そりゃ暇つぶしだけど。見てわからない?」
衣玖 「寝ながら桃食べて漫画読んで……まあ確かに見たとおりですね」
天子 「それだけじゃないんだけどね。
じゃあ、暇つぶしの暇つぶしに教えてあげる。
今下界が台風で大荒れなのは、龍宮の使いのあなたなら知ってるわよね」
衣玖 「はい。むしろ、皆に知らせて回っていましたし」
衣玖 「……あっ。もしかして……」
天子 「この有頂天は天界でもあると同時に、その名の通り妖怪の山の頂上でもある。
今頃下界はひどい天気でしょう。
つまり、ここを知ってる地上の誰かさんがいるとしたら、
台風を嫌ってここに避難しにノコノコやってくるかもしれないのよ。
雲の上に行くには、必ずここを通らなければならないしね。
そのノコノコさんが来るのを、こうして優雅に待ってるというわけ」
衣玖 「やっぱり……この天気は総領娘様の仕業だったんですね。
遊び相手を呼び出すために、わざわざ台風を呼んだんですか?」
天子 「そんなわけないじゃないって言いたいところだけど、その通りよ。正解。
だって、天界はほんと暇だからねぇ~。遊び相手を探すのも一苦労なのよ。
わたしの苦労、わかる~?」
衣玖 「(世の中には働いても働いても飢餓に苦しむ人がいるというのに……。でも、ここは空気を読んで正論は言いません)
しょうがないですわね。もう、おてんばですこと」
天子 「仕方ないじゃない、暇だったんだもの。
緋想の剣を一振りすれば、台風だってたちまち呼び込めるわ。
って……まさかあなた、その事でわたしを叱りにきたってんじゃないでしょうね?
いやよ、そんなの」
衣玖 「まあ叱ってさしあげてもいいんですが。空気を読んでやめておきます」
天子 「別にいいでしょ。天気を変えただけで、誰にも迷惑はかけてないし」
衣玖 「それで十分すぎるほど迷惑なんですが……。
まあ、大会まではこの台風も去ってくれるみたいですから、ぎりぎり大丈夫みたいですけど」
天子 「ん? 大会って?」
衣玖 「デュエルモンスターズの大会です。
そうそう、わたしが 総領娘様にお伺いあがったのも、そのことについてなんですが……」
天子 「えー、いいないいなー。もちろんわたしも出場させてくれるんでしょ?」
衣玖 「ああいえ、すいませんが出場メンバーはもう決まっていまして。
まあ、わたしがその一人でもあるんですけど」
天子 「は~? 何よそれ。
こんなに暇してるのよ? これでも、あなたの何万倍も退屈なの。わかる?」
衣玖 「いやまあ、退屈の度合いは関係ないと思うのですが……
(というか、自慢になりませんし……)」
天子 「ならなに? 自慢しに来たの?
だったらとっとと帰ってよ。ほら、帰って」
衣玖 「ああいえ、違います。違います。ああっ、桃投げないで……」
天子 「ぶー。ていうか何で衣玖なのよ。あなた初心者でしょ」
衣玖 「まあ、ほとんど成り行きみたいなもので……。
それに総領娘様は主旨的に出場できないかと」
天子 「主旨?」
衣玖 「今回は地上の妖怪と地底の妖怪の戦いなのです。
総領娘様は……まあ、地上というよりはお空の妖怪ですので。どちらにも属さないかと」
天子 「そんなの屁理屈でしょー? あーつまんない。
もういいわ。あなたなんかと話してもつまんない。とっとと帰りなさいよ」
衣玖 「まっ、待ってください。
総領娘様も知ってのとおり、わたしはデュエルモンスターズに関しては初心者なんです。
その、ちゃんとしたルールとか、デッキの組み方とかを教えてもらいたくて
―――というか、どうせ暇してると思って―――……いけませんか?」
天子 「嫌よ。だって、教えるだけじゃん?
普通にデュエルするんならともかく。初心者相手にやってもねー」
衣玖 「そこをなんとか……。
下界はあんな天気ですし、頼れるのが総領娘様しかいないんです。
わたしは……その、せっかくわたしを頼りにしてくれる人のために、ご期待に応えたいと思っているだけで……」
天子 「(……ふーん。なんだか真剣なのね。
いつも気ままに空を流れているだけの衣玖にしては珍しいような……)」
天子 「まあ……わかったわ。
そんなに言うなら、教えてあげなくもないわね」
衣玖 「ほっ、本当ですかっ? 是非にお願いします!
空気の読めない依頼ですみません」
天子 「別に空気は関係無いけど……でも、実際にデュエルするより、見て覚えた方が早いものよ」
衣玖 「総領娘様のデュエルを見て勉強しろと、そういうことですか?」
天子 「そそ。どうせ少し待ってれば、下界から相手がやってくるだろうから。
それまではルールのことを一から教えて……」
小町 「……あー、まったくひどい嵐だった。たまらんたまらん」
衣玖 「あら……言ってる傍から」
天子 「あーらら。やっと来てくれたわね。待ちくたびれたわ~。
ようこそようこそ、天界へ~。
……えーと、あなたは見覚えがあるな。確か、死神ね?」
小町 「いやー、まったくひどいもんだ。
悪いね、天人。ちょっとばかり雨宿りさせておくれよ」
衣玖 「(雲の上で雨をしのぐのを、雨宿りというのかどうなのか……う~ん)」
天子 「というか、それってサボりよね?
いけませんよ、労働階級はちゃんと働かなきゃ」
小町 「あ~? 年中ぐうたらこいてるお前さんに言われたくないね」
天子 「まあまあ、せっかくのお客様なんだから歓迎するわ。ごゆっくりどうぞ。
はいこれ、テングのビーフジャーキーです」
小町 「うがああ、なんて贅沢なものを。
お前さん、毎日こんなものを食べてんの?」
天子 「それはもう。富俗層ですから」
小町 「……しれっとよく言うわね。こちとら台風にも関わらずせっせと働いてんのにさぁ」
衣玖 「死神さん、いつもいつもお疲れ様です」
小町 「ん? おや、竜宮の使いもいたのか。珍しいこともあるもんだ」
衣玖 「うふふ。いつも空から眺めている身としては、けっこうあなたの姿を見かけるのですよ。
いつもあっちらこっちら幽霊を先導してますよね」
小町 「あー、そうなんだよ~。
今日もこんな雨嵐なのに、幻想郷中走り回って魂集めなきゃいけないしさ。
船頭も楽じゃないよ。ああ、このタオル借りるね」
衣玖 「こ、これはタオルじゃなくて羽衣で……。ああ、顔を拭かないで……」
小町 「だいたい、この台風は天人、お前さんの仕業だろ?
おかげでただでさえ台風なのに、運ぶ幽霊がいつもより多くてしょうがないんだよ。
いらん仕事増やしてくれてからに、どうしてくれんのさ?」
天子 「え~? そんなに大きな台風呼んじゃったんだ。
ちょっと剣を降っただけなのに、思いのほか力がこもっちゃってたみたいね。
そんなに死人が出るとは思ってもみなかったわぁ」
小町 「ったくこれだから天人のボンボンは……。
なんだか聞いてて腹立ってきたよ。ひとが必死こいて働いてるのにさ。
お前さんは上からジャーキーしゃぶって見下ろしてたわけかい」
天子 「まあね。もう正直テング以外のジャーキーはジャーキーとは呼べないわね」
小町 「く~! ツマミなんて百均でしか買ったことないあたいに向かって、なんていい草かね。
もう怒った。今すぐ勝負しな。
勤労所得者と不労所得者の違いを思い知らせてやる!」
天子 「うんうん、そうでなくちゃ!
衣玖、わかった? こんな感じで煽って、カモをデュエルに誘い込むのよ」
衣玖 「(そんなこと聞いてないのに……。ハァ、まあここは見学させていただきましょうか)」
小町【魔界巡遊・地獄編】LP8000
VS
天子【酒池天使肉林の宴】LP8000
小町 「……って、なんだいデュエルかい。たまには死神らしく、魂狩ってやろうと思ったのにさ」
天子 「船頭なんかにわたしの魂は狩れないよ。大人しくデュエルにしておくといい」
小町 「あんまり遊んでると上司に怒鳴られるんだけどねぇ。
まあいい、たまには憂さ晴らしも悪くないさね。ついでにあたいが勝ったら、下界の天気も元に戻してもらおうか」
天子 「あらあら、正義の味方っぽいセリフだこと。怠慢役人のくせに」
小町 「ふん、死神が義賊を気取ると思うかい? 死人が増えてこれ以上仕事を増やされたくないのさ」
天子 「ふふふ。天気は須らく、天の上の気まぐれによって決まるもの。天人の気まぐれも然り。
それで落とした命ならば、もともとそういった運命にある人生だというだけの話なんだけどね」
天子 「まあ、いいですわ。
じゃあわたしが勝ったら、あなたは今日一日、わたしの暇潰し相手に大抜擢。オーケイ?」
小町 「仕事って言ってんだけどねぇ。まあいい、速攻で終わらせてやるさ」
天子 「よきかなよきかな♪ じゃあ先攻もらうわよ。ドロー」
天子 「さて、衣玖。
天界においてデュエルモンスターズでは敵のいないわたしが、その極意ってやつを教えてあげる。
よく見ておきなさい」
衣玖 「お願いします」
天子 「遊戯王で勝つなんて簡単なこと。強いモンスターをガンガン出してけばいいのよ」
衣玖 「そうなんですか? そんな単純なゲームには思えませんが……」
天子 「まあ見てなさいって。手札から、永続魔法発動よ。神の居城、ヴァルハラ」
《神(かみ)の居城(きょじょう)-ヴァルハラ/Valhalla, Hall of the Fallen》 †
永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
小町 「神の居城だって? 大層な名前じゃないか」
天子 「名称にはそれなりのわけがある。
わたし達天人は、神と同じ天空に居住を許された身。
我らが居城に足を踏み入れたことがいかに愚かな所業か、とくと知るがいいわ」
天子 「ヴァルハラの効果発動。
このカードは、わたしの場にモンスターがいない時、手札から天使族モンスターを特殊召喚できる。
降臨なさい、光神テテュス」
《光神(こうしん)テテュス/Tethys, Goddess of Light》 †
効果モンスター
星5/光属性/天使族/攻2400/守1800
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分がカードをドローした時、そのカードが天使族モンスターだった場合、
そのカードを相手に見せる事で自分はカードをもう1枚ドローする事ができる。
衣玖 「(いきなり攻撃力2400のモンスターが……)」
天子 「ヴァルハラは召喚制限さえ無ければ、あらゆる天使を特殊召喚できる。
例え上級モンスターでもね。ターン終了よ」
小町 「ふん。ご挨拶じゃないか。ドロー」
小町 「モンスターセット、エンドといこうかい」
小町 LP8000:手札5:裏守備
天子 LP8000:手札4:テテュス、ヴァルハラ
天子 「あらあら。なによなによ、急いでるとか言う割には裏守備が一体だけなのね。ドロー」
天子 「さて、テテュスが場にある時、ドローしたカードが天使族ならもう一枚ドローできるんだけど……
あいにく引いたのはこれだったわ。封印の黄金櫃を発動」
《封印(ふういん)の黄金櫃(おうごんひつ)/Gold Sarcophagus》 †
通常魔法(準制限カード)
自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。
天子 「神聖なる魂を除外。さらに手札から、ガーディアン・エアトスを特殊召喚」
《ガーディアン・エアトス/Guardian Eatos》 †
効果モンスター
星8/風属性/天使族/攻2500/守2000
自分の墓地にモンスターカードが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
このカードに装備された装備魔法カード1枚を墓地へ送る事で、
相手の墓地に存在するモンスターを3枚まで選択し、ゲームから除外する。
この効果でゲームから除外したモンスター1体につき、
エンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は500ポイントアップする。
天子 「エアトスはレベル8の最上級だけど、墓地にモンスターがいない時特殊召喚できるのよ」
光神テテュス 攻撃力2400
ガーディアン・エアトス 攻撃力2500
小町 「ちょっ……。いきなりすぎやしないかい?」
天子 「わたしのデッキは、天界にて神に愛でられし天使のデッキ。
天使が死神に容赦する必要なんて無いってね」
天子 「では、戦闘ね。ガーディアン・エアトスで、裏守備に攻撃」
小町 「ったく、これだから天人は。贅沢し過ぎて風情の味わい方を知らないね。
こいつは魔導雑貨商人。リバース効果発動だ」
《魔導雑貨商人(まどうざっかしょうにん)/Magical Merchant》 †
効果モンスター
星1/光属性/昆虫族/攻 200/守 700
リバース:自分のデッキを上からめくり、
一番最初に出た魔法か罠カード1枚を自分の手札に加える。
それ以外のカードは墓地へ送る。
小町 「こいつが表になったとき、魔法か罠が出るまでデッキを上から墓地に捨てる。
じゃあ、やっていこうかね」
つ 暗黒界の軍神 シルバ
メタモルポット
暗黒界の武神 ゴルド
オネスト
冥府の使者ゴーズ
天子 「(あれは暗黒界……いや)」
魔轟神チャワ
魔轟神ソルキウス
魔導雑貨商人
魔轟神クシャノ
魔轟神ディフ
月の書
小町 「ふっふっふ。ずいぶん景気よく落ちてくれたもんだ。月の書を手札に加えるよ」
天子 「(……なるほどなるほど、暗黒魔轟神ってわけ。面白いじゃないの)」
天子 「まあとりあえず、くらっときなさいな。
光神テテュスでダイレクトアタック、緋想の剣気!」
小町 「あいたたた……。きついねぇ」LP8000→5600
天子 「衣玖、これでわかったでしょう?
強いモンスターを出して、殴る。これで100%勝てるわ。ターンエンド」
小町 LP5600:手札6:無し
天子 LP8000:手札3:エアトス、テテュス、ヴァルハラ
衣玖 「うーん。まあ、確かに強いですけど……」
天子 「あによ、何か文句でも?」
衣玖 「ああいえ、決してそのような空気の読めないことは……。
確かにレベルの高いモンスターは場に出すのが大変だけど、その分強いわけですし」
小町 「しかしそうはイカ娘ってね。
重量級をバカバカ出すだけで勝てたら、デュエルに苦労はいらんのさ」
天子 「あらあら、ずいぶん余裕な口をきくのね。
仕事ができる女は無口って相場は決まってるんだけどねぇ」
小町 「お前さんは久しく死と縁が無いせいで、死神の恐ろしさをすっかり忘れているようだ。
あたいのこの鎌で、魂の冷たさを肌で感じさせてやるよ!」
小町 「手札から、魔轟神レイヴンを召喚!」
《魔轟神(まごうしん)レイヴン/Fabled Raven》 †
チューナー(効果モンスター)
星2/光属性/悪魔族/攻1300/守1000
自分の手札を任意の枚数捨てて、その枚数分このカードの
レベルをエンドフェイズ時まで上げる事ができる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
この効果によって捨てた手札の枚数×400ポイントアップする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
衣玖 「あれは……チューナーですか?」
天子 「やはりね。暗黒魔轟神ね、死神さんのデッキは」
小町 「そうさ。暗黒界だけじゃ些か物足りなくなってきてね」
天子 「面白いじゃない。天使と悪魔……天国の番人か、地獄からの御使いか。
この代理戦争、暇つぶしにしては悪くないわ」
小町 「ほざいてな! 手札から、魔轟神グリムロの効果発動!」
《魔轟神(まごうしん)グリムロ/Fabled Grimro》 †
効果モンスター
星4/光属性/悪魔族/攻1700/守1000
自分フィールド上に「魔轟神」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、
手札からこのカードを墓地へ送る事で自分のデッキから「魔轟神グリムロ」以外の
「魔轟神」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。
小町 「こいつは場に魔轟神がいる時、手札から捨てることで、デッキからグリムロ以外の魔轟神をサーチできる。
デッキの魔轟神クルスを手札に加えるよ」
小町 「そこの竜神の使いよ、初心者なら覚えときな。
デュエルを制するのはモンスターのレベルじゃない。数さ!」
小町 「魔轟神レイヴンの起動効果発動!
捨てた手札の数だけ、レイヴンの攻撃力とレベルを上昇させる。
あたいは暗黒界の軍神シルバを捨てるよ」
衣玖 「手札を……捨てるのですか? わざわざ」
小町 「暗黒界モンスターは手札から捨てられた時に効果が発動するのさ。
墓地のシルバを、攻撃表示で特殊召喚だ!」
《暗黒界(あんこくかい)の軍神(ぐんしん) シルバ/Sillva, Warlord of Dark World》 †
効果モンスター
星5/闇属性/悪魔族/攻2300/守1400
このカードが他のカードの効果によって手札から墓地に捨てられた場合、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
相手のカードの効果によって捨てられた場合、
さらに相手は手札2枚を選択し、好きな順番でデッキの一番下に戻す。
衣玖 「なるほど……。本来コストとなるべきところを、メリットに変えるわけですね。
ふむふむ、確かに無駄が無い。勉強になります」
天子 「ちょっとちょっと。あいつじゃなくて、わたしを参考にしろって言ってるんだけど」
小町 「参考にならないってんだろうさ。
デュエルはいかにスマートに、迅速な手際にするかなんだよ。死神の仕事とおんなじでね」
小町 「だから速攻で終わらせてやるよ。
場のレベル3となったレイヴンを、レベル5のシルバにチューニング!」
小町 「シンクロ召喚だ! 現れなっ! 魔轟神ヴァルキュルス!!」
《魔轟神(まごうしん)ヴァルキュルス/Fabled Valkyrus》 †
シンクロ・効果モンスター
星8/光属性/悪魔族/攻2900/守1700
「魔轟神」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
手札から悪魔族モンスター1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
衣玖 「わあ。なんだか強そう」
小町 「実際なかなかのもんさ。ヴァルキュルスの起動効果を使う。
手札の魔轟神クルスを捨てて、一枚ドロー。
そしてクルスは墓地に捨てられた時、誘発効果が発動。墓地のグリムロを特殊召喚」
《魔轟神(まごうしん)クルス/Fabled Krus》 †
効果モンスター
星2/光属性/悪魔族/攻1000/守800
このカードが手札から墓地へ捨てられた時、自分の墓地に存在するこのカード以外の
レベル4以下の「魔轟神」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
天子 「しかし長いわねぇ、あなたのターン。まだ続くの?」
小町 「ターンが長いのはデッキがよく回ってるからさ。このぐるぐる回るのがデュエルの醍醐味、最高に楽しい瞬間なんじゃないか」
小町 「だから、まだいくよ。墓地の魔轟神ソルキウスの効果発動。
手札の魔轟神獣キャシー、魔轟神クシャノを墓地に送り、こいつを特殊召喚!」
《魔轟神(まごうしん)ソルキウス/Fabled Soulkius》 †
効果モンスター
星6/光属性/悪魔族/攻2200/守2100
手札から「魔轟神ソルキウス」以外のカード2枚を墓地へ送って発動する。
このカードを墓地から特殊召喚する。
衣玖 「(凄い……。どんどんモンスターが出てくる。
これが数……展開力ですか)」
小町 「キャシーも手札から捨てられた時に効果が発動する。
フィールド上のカード一枚を破壊できるのさ。光神テテュスを破壊しようかね」
《魔轟神獣(まごうしんじゅう)キャシー/The Fabled Catsith》 †
チューナー(効果モンスター)
星1/光属性/獣族/攻 800/守 600
このカードが手札から墓地へ捨てられた時、
フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊する。
天子 「へー。攻撃力が低い方を破壊しちゃうんだ」
小町 「素人みたいなこと言わないでほしいね。
お前さんのデッキは見たとこ天使族だろ?
手札にオネストでもあったら、泣くに泣けないからね」
小町 「さて次はこいついこうか。手札の魔轟神獣チャワの起動効果を発動。
コストで手札の魔轟神獣ガナシアを捨て、こいつを特殊召喚。さらにガナシアも自身の効果で特殊召喚する」
《魔轟神獣(まごうしんじゅう)チャワ/The Fabled Chawa》 †
チューナー(効果モンスター)
星1/光属性/獣族/攻 200/守 100
自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。
手札から「魔轟神」と名のついたモンスター1体を捨て、
このカードを手札から特殊召喚する。
《魔轟神獣(まごうしんじゅう)ガナシア/The Fabled Ganashia》 †
効果モンスター
星3/光属性/獣族/攻1600/守1000
このカードが手札から墓地へ捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードの攻撃力は200ポイントアップし、
フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
魔轟神ヴァルキュルス 攻撃力2900
魔轟神ソルキウス 攻撃力2200
魔轟神グリムロ 攻撃力1700
魔轟神獣チャワ 攻撃力200
魔轟神獣ガナシア 攻撃力1800
小町 「あ、言い忘れた。こいつら全員、攻撃表示だから」
衣玖 「す、凄いですね……。
1ターンでモンスターゾーンを埋めるなんて」
小町 「ふっふ~ん。だろー? あたいのデッキの売りだからさぁ」
天子 「ねえ、まーだー?
いい加減、あくびがでちゃうんですけどー」
小町 「あくびねぇ。そいつぁ悪かった。
ならその眠気、吹き飛ばしてあげようかい!」
小町 「魔轟神ヴァルキュルス、ガーディアン・エアトスを攻撃!
死符、使者選別の鎌!!」
天子 「はいはい破壊ね」LP8000→7500
小町 「攻撃できるモンスターは、まだ四体もいるんだよ。
総攻撃だ! 古雨、黄泉中有の旅の雨!!」
天子 「はいはい」LP7500→5300→3600→1800→1600
衣玖 「はいはいって……総領娘様、大丈夫なのですか?
というか、もう負けたんじゃありません?」
天子 「は? 何言ってるの。わたしが死神に負けるはずないでしょ。
今までだって、お迎えに来た死神達は一人残らず返り討ちにしてきたんだから」
小町 「やっぱりお前さんだったか。同僚をボコボコにしてくれてたのは。
そんじゃ晴れて、お前さんの魂を刈り取っていくとするか。同僚の借りも……ついでにね」
小町 「あたいのターンはまだ終わっちゃいないよ。
メインフェイズ2。レベル3のガナシア、レベル6のソルキウスに、レベル1の魔轟神獣チャワをチューニング……!」
小町 「天を裂き、魔界の空に轟け! シンクロ召喚! 現れな、魔轟神レビュアタン!!」
《魔轟神(まごうしん)レヴュアタン/Fabled Leviathan》 †
シンクロ・効果モンスター
星10/光属性/悪魔族/攻3000/守2000
「魔轟神」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地に存在する「魔轟神」と名のついた
モンスターを3体まで選択して発動する事ができる。
選択したモンスターを手札に加える。
衣玖 「(レ、レベル10のシンクロモンスターまで……)」
天子 「あーらら。節操無いのはどっちなのかしらね。
それって、魔轟神で一番強いカードなんじゃないの?
そんなラスボスみたいなカード、もう出しちゃっていいのかしら」
小町 「ふん、自分のライフを見てからものを言いな。
すでに最終局面。次で終わりさ。ターン終了」
小町 LP5600:手札1:レヴュアタン、ヴァルキュルス、グリムロ
天子 LP1600:手札3:ヴァルハラ
天子 「そっちこそ。偉そうな口は実力と相談してからきくことね」
天子 「ドロー。耳を貸しちゃだめよ、衣玖。
シンクロ召喚なんて、あんな面倒なことしなくてもいいの。
手札から、トレード・インよ」
《トレード・イン/Trade In》 †
通常魔法
手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。
天子 「堕天使スペルビアを捨てて、2枚ドロー。
ヴァルハラを破壊しないで残しておくなんて、お間抜けさんね。
これがある限り、いくらでも天使の軍勢を召喚できるわ」
天使 「ヴァルハラの効果発動。今度はこのカードね。来なさい、アテナ」
《アテナ/Athena》 †
効果モンスター
星7/光属性/天使族/攻2600/守 800
1ターンに1度、「アテナ」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する
天使族モンスター1体を墓地へ送る事で、
「アテナ」以外の自分の墓地に存在する
天使族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
フィールド上に天使族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、
相手ライフに600ポイントダメージを与える。
衣玖 「(また高レベルのモンスターがいきなり……! やっぱりこれはこれで強そうね)」
小町 「アテナか。めんどくさいカードがきちゃったね」
天子 「あら、知ってるの。驚くと思ったのに、つまんないの」
小町 「いちいち驚いてたら死神はつとまらんからねぇ」
天子 「でも代わりに話は早いわね。わたしはさらにジェルエンデュオを召喚」
《ジェルエンデュオ/Gellenduo》 †
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1700/守 0
このカードは戦闘では破壊されない。
このカードのコントローラーがダメージを受けた時、
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを破壊する。
天使族・光属性モンスターをアドバンス召喚する場合、
このカードは2体分のリリースとする事ができる。
天子 「アテナの誘発効果発動。
アテナが場にある状態で天使族が召喚された時、相手に600ダメージを与えるわ」
小町 「でも、それだけじゃないってんだろ?」LP5600→5000
天子 「正解と言っておこうかしら。覚悟もできてるみたいだしね。
アテナの、今度は起動効果よ。
場の天使を墓地に送ることで、墓地の天使を特殊召喚する。
要するに、入れ替えるわけね」
天子 「ジェルエンデュオを墓地に送り……堕胎の海より蘇れ! 堕天使スペルビア!!」
《堕天使(だてんし)スペルビア/Darklord Superbia》 †
効果モンスター
星8/闇属性/天使族/攻2900/守2400
このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する「堕天使スペルビア」以外の
天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
天子 「アテナの効果で600ダメージよ」
小町 LP5000→4400
天子 「さらに! スペルビアが墓地から特殊召喚に成功した時、墓地の天使を特殊召喚する。
ガーディアン・エアトスを特殊召喚よ!」
アテナ 攻撃力2600
堕天使スペルビア 攻撃力2900
ガーディアン・エアトス 攻撃力2500
小町 「(何気に……痛いね。このダメージ)LP4400→3800
衣玖 「ええっと……でも、最上級のモンスターって、出すのに生け贄がいるんじゃありませんでしたっけ? こんなにポンポン出せるものなのですね」
天子 「そりゃあ、デュエリストの腕がいいからに決まってるじゃない。
これでわかったでしょ。デュエルに勝つのに、シンクロ召喚なんてそんなまどるっこしい方法いらないのよ。
こうやって最上級並べてれば楽勝なんだから。
現に、わたしのデッキのモンスターの半分は最上級だしー」
小町 「(今時小学生でもそんな構築しないっての……)」
天子 「そんなわけでバトルよ! 堕天使スペルビアで、魔轟神ヴァルキュルスを攻撃!」
小町 「相打ち狙いか。お互い破壊だね。
でも、他のモンスターじゃレビュアタンは倒せ……」
天子 「続いてアテナで、魔轟神レビュアタンを攻撃!」
衣玖 「(えっ!? 攻撃力は負けてるのに……?)」
小町 「(……ちぇっ、攻撃てことは、やっぱりあったか。アレが)」
天子 「ダメステでオネスト。当然ね。
アテナの攻撃力は、相手の攻撃力分アップするわ! カナメファンネルよ!!」
《オネスト/Honest》 †
効果モンスター(準制限カード)
星4/光属性/天使族/攻1100/守1900
自分のメインフェイズ時に、フィールド上に表側表示で存在する
このカードを手札に戻す事ができる。
また、自分フィールド上に表側表示で存在する光属性モンスターが
戦闘を行うダメージステップ時にこのカードを手札から墓地へ送る事で、
エンドフェイズ時までそのモンスターの攻撃力は、
戦闘を行う相手モンスターの攻撃力の数値分アップする。
アテナ 攻撃力5600
小町 「ううっ……きっついことするねぇ」LP3800→1200
天子 「あなたのデッキにも入れてるくせに、よく言うわね。
エアトス、その邪悪な悪魔を浄化しなさい! グリムロを粉砕!」
小町 「(あちゃあ……やっぱり月の書出しとけばよかったかね。
あからさますぎて嫌だったから伏せなかったけど……)」LP1200→400
小町 「まあいい。ライフはまだ残るね。レヴュアタンの誘発効果発動。
こいつが破壊され墓地に送られた時、墓地の魔轟神を3枚まで手札に加える。
そうだね……クルス、レイヴン、グリムロ。この三枚にしようかね」
衣玖 「すごーい。前のターンは五体もいたのに、全部倒しちゃうなんて。
総領娘様、本当に強かったんですね」
天子 「本当に……てのは、今まで疑ってたわけじゃないわよね?」
衣玖 「ああいえ、空気を読んだだけで……」
天子 「申し開きになってないような気がするけど、まあ機嫌がいいから許してあげる。ターンエンドよ」
小町 LP 400:手札4:無し
天子 LP1600:手札1:アテナ、エアトス、ヴァルハラ
小町 「ふふふ、こういう殴り合いも嫌いじゃないけどね。
何度も言うように今は勤務中なんだよ。だから遊びはもう終わりにしてやるよ。ドロー!」
小町 「まずは……うん、これにしようかね。
墓地の魔轟神クシャノの効果を使おうか」
《魔轟神(まごうしん)クシャノ/Fabled Kushano》 †
チューナー(効果モンスター)
星3/光属性/悪魔族/攻1100/守 800
手札から「魔轟神クシャノ」以外の「魔轟神」
と名のついたモンスター1体を墓地へ捨てて発動する。
自分の墓地に存在するこのカードを手札に加える。
衣玖 「(うわぁ、また始まった……。
さっき全滅させられたばかりなのに、またモンスターを展開してくるのかしら)」
小町 「こいつは墓地にある時、手札の魔轟神を捨てることでこのカードを手札に加えることができるのさ。
手札のクルスを捨てるよ。クルスの効果で、墓地の魔轟神ディフを特殊召喚」
《魔轟神(まごうしん)ディフ/Fabled Dyf》 †
効果モンスター
星3/光属性/悪魔族/攻1400/守1700
「魔轟神」と名のついたモンスターが手札から自分の墓地へ送られた時、
自分フィールド上に存在するこのカードをリリースし、
そのモンスター1体を選択して発動する事ができる。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
小町 「次だ。手札のグリムロの効果発動。
このカードを捨てて、デッキの2枚目のクルスを手札に持ってくる」
小町 「魔轟神獣ノズチは、手札の他の魔轟神を捨てることで特殊召喚できる。
クルスを墓地に送って、攻撃表示で特殊召喚」
《魔轟神獣(まごうしんじゅう)ノズチ/The Fabled Nozoochee》 †
効果モンスター
星2/光属性/獣族/攻1200/守 800
自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。
手札から「魔轟神」と名のついたモンスター1体を捨て、
このカードを手札から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚に成功した時、
手札からレベル2以下の「魔轟神」と名の付いた
モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
小町 「ふふふ、いい感じだねぇ。特殊召喚されたノズチの効果で、手札のレイヴンを特殊召喚。
チェーンしてクルスの誘発効果、墓地のグリムロを特殊召喚」
天子 「まったく、相変わらず長ったらしいったらないわね。衣玖もそう思わない?」
衣玖 「いやあ……初心者のわたしは、正直もうあのデッキは何がなんだか」
小町 「まあ、確かに初心者にはお勧めできないな。
魔轟神を扱うには、あたいみたいなプロデュエリストじゃないとね。
デカブツをばかばか出すしか能の無い天人にゃ、間違いなく使いこなせないだろうね」
天子 「言うわね~。いいわいいわ、死神はそのくらい血の気が多くなくちゃ」
小町 「ったく、相変わらずその余裕はどこから来るのか不思議だね。
そいじゃ、こうしたらどうだい? 月の書を使うよ」
《月(つき)の書(しょ)/Book of Moon》 †
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。
小町 「モンスター一体を裏守備にする。
対象は……やっぱり、アテナかね。オネストは準制限で2枚しか入れられない。
さっき使って残り一枚しか残ってないとはいえ、お前さんのその一枚の手札がオネストじゃないって保証はないからね。
光属性の方を裏にさせてもらうよ」
天子 「あら、見た目によらず細心なことね。
その鎌同様、大雑把なのかと思ってたわ」
小町 「細心? プロフェッショナルって言ってほしいね!
手札の魔轟神クシャノを通常召喚。こいつはチューナーだよ。
レベル3のクシャノを、レベル2のノズチにチューニング!」
小町 「そらぁ、シンクロ召喚! 来な! 魔轟神レイジオン!!」
《魔轟神(まごうしん)レイジオン/Fabled Ragin》 †
シンクロ・効果モンスター
星5/光属性/悪魔族/攻2300/守1800
「魔轟神」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の手札が1枚以下の場合、このカードがシンクロ召喚に成功した時、
自分の手札が2枚になるまでデッキからカードをドローする事ができる。
衣玖 「(ま、またシンクロモンスター……)」
小町 「今のあたいの手札はゼロ。よってレイジオンの効果で2枚ドローができる。
ドローするよ」
小町 「ふふふ、引いたね。貪欲な壷だ。
墓地のヴァルキュルス、レヴュアタン、ノズチ、グリムロ、クルスをデッキに戻し、さらに2枚ドロー!」
《貪欲(どんよく)な壺(つぼ)/Pot of Avarice》 †
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
小町 「さてさて引いたのは……おやおや。ほうほう。
こいつは望外だ。サイクロンを引いたよ」
《サイクロン/Mystical Space Typhoon》 †
速攻魔法(準制限カード)
フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。
天子 「……!」
小町 「お前さんのその強気は、そのヴァルハラがあってのことだろう。
そいつがある限り、強力な天使をいくらでも特殊召喚できるからね。
だがこいつで破壊すれば、もうそれもできんわけだ。ふふふ」
衣玖 「(確かに、これでは……。
小町さんのデッキはともかく、総領娘様のデッキはあの永続魔法が無いとどうしようもないはず……)」
小町 「ヴァルハラを破壊。さあ、どうやら本格的にお迎えがきたみたいだよ。
魔轟神レイヴンの起動効果発動! 手札の魔轟神を墓地に送る。
そして……この瞬間、場の魔轟神ディフの効果が発動するのさ」
天子 「この瞬間、ですって?」
小町 「ふふふ、魔轟神ディフは効果によって魔轟神が手札から送られた時、
自らを生け贄に捧げることでその魔轟神を特殊召喚する……」
小町 「ディフをリリース……! こいつで最後だ! 魔轟神ディアネイラ!!」
《魔轟神(まごうしん)ディアネイラ/Fabled Dianaira》 †
効果モンスター
星8/光属性/悪魔族/攻2800/守 100
このカードは「魔轟神」と名のついたモンスター1体を
リリースして表側攻撃表示でアドバンス召喚する事ができる。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
相手が発動した通常魔法カードの効果は
「相手は手札を1枚選択して捨てる」になる。
この効果は1ターンに1度しか適用できない。
魔轟神ディアネイラ 攻撃力2800
魔轟神レイジオン 攻撃力2300
魔轟神グリムロ 攻撃力1700
魔轟神レイヴン 攻撃力1700
衣玖 「(あっという間に、これだけのモンスターを……。
空気を読んで口には出さないけど、伏せカードも無いし、これってもう、総領娘様の負けは確定なんじゃ……)」
小町 「大人しく台風を止める気になったかねぇ。
まあ、このターンで終わるから、嫌でもそうさせてやるさ」
小町 「バトルフェイズだ! まずは魔轟神レイヴンで、裏守備のアテナを破壊!」
小町 「そして魔轟神ディアネイラ! ガーディアン・エアトスを叩き潰せ!
死神、ヒガンルトゥール!!」
天子 「…………」LP1600→1300
小町 「ようやく観念したかい?
天使なんて他愛ない。天は上を見れば見渡せるけど、地獄の深さは果てが無いからね。
いっぺん地獄で勉強してくるといい、うちの上司は口やかましいがねぇ」
天子 「うふふ、わたしに地獄に落ちろと?
地獄だなんて、きらびやかな天人にはふさわしくないわ。
だいたいカビくさいもの、あそこ」
小町 「かーっ。この期に及んでまだそんなこと言ってられるのか。
嘆かわしいかな、お前さんは、死は誰にでも平等に与えられるってことを忘れてるようだ」
小町 「せいぜい気取りながらあの世へ行くんだね!
魔轟神レイジオンで、ダイレクトアタック!! 薄命、余命幾許も……」
小町 「……!?」
衣玖 「(えっ……小町さんのモンスターが、消えた!?)」
小町 「な、なんで……! あたいのモンスターは、どこに……」
天子 「どこ? さあねぇ。あなたの大好きな地獄に帰ったんじゃなくて?」
小町 「くっ……お前さんの仕業だってのかい?」
天子 「教えてあげる。消滅させたからよ。わたしの天使の光でね」
小町 「(……天使!?)」
小町 「……な、なんだい!? そのモンスターは!?」
《テュアラティン/Tualatin》 †
効果モンスター
星8/光属性/天使族/攻2800/守2500
相手のバトルフェイズ時に発動する事ができる。
バトルフェイズ開始時に自分フィールド上にモンスターが2体以上存在し、
それらのモンスターが1度のバトルフェイズ中で戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚に成功した時、属性を1つ宣言し、
フィールド上に表側表示で存在する宣言した属性のモンスターを全て破壊する。
その後、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は宣言された属性のモンスターをフィールド上に召喚・特殊召喚する事ができない。
天子 「テュアラティン。
エアトスが破壊された時、わたしはこのカードの効果で手札から特殊召喚したのよ」
天子 「この方法で特殊召喚した場合、わたしは属性を一つ宣言することで、
その属性を持つフィールドのモンスターを全て破壊する。
魔轟神は全て同じ属性。光属性を宣言したことで、あなたの悪魔は全て浄化した。
悪魔が天に召されるなんて、面白い皮肉よね。うふふ」
小町 「(くっ……手札からの奇襲。オネストの他に、まさかこんな手があったとは……)」
小町 「一枚伏せて……エンドだ」
小町 LP 400:手札0:伏せ1
天子 LP1300:手札0:無し
小町 「……だが、ミスを犯したね。
そのテュアラティン自身も光属性。お前さんはそのことを忘れてたようだ。
そいつの効果が適用されるのは全てのフィールド。よって、テュアラティン自身も破壊されるのさ」
小町 「場にモンスターは無し。手札がゼロなのも同じ。
まだ五分だ。こうなりゃ、まだわからない。
いや、伏せがあるぶん、こちらが有利かな。
いずれにせよ、先にモンスターを引いたほうが……」
天子 「やれやれねぇ。ちょっとがっかり。
最後の最後で、見当違いなこと言われるとはねぇ」
天子 「五分? ミスを犯したですって? そんなわけないでしょう。
〝わざと破壊した〟に決まってるじゃないの」
衣玖 「えっ……? それは、どういう……」
天子 「すぐわかるわよ。わたしのターン……ふふふ、ほぅら、来た」
天子 「死神さん。あなた、自分のターンが長かったせいで、すっかり忘れちゃってるでしょう?
このターンは、わたしが封印の黄金櫃を発動して、二回目のスタンバイフェイズがあるのよ」
小町 「……!?」
天子 「除外していたこのカードを手札に加えるわ。
墓地のアテナ、オネストを除外し……特殊召喚!」
天子 「舞い降りなさい、ホーリー・シャイン・ソウル!!」
《神聖なる魂(ホーリーシャイン・ソウル)/Soul of Purity And Light》 †
効果モンスター
星6/光属性/天使族/攻2000/守1800
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に存在する光属性モンスター2体を
ゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手のバトルフェイズ中のみ全ての相手モンスターの攻撃力は300ポイントダウンする。
衣玖 「(……ヴァルハラ無しで上級モンスターを!?)」
小町 「させるか! トラップ発動、奈落の落とし穴!!」
《奈落(ならく)の落(お)とし穴(あな)/Bottomless Trap Hole》 †
通常罠(準制限カード)
相手が攻撃力1500以上のモンスターを
召喚・反転召喚・特殊召喚した時に発動する事ができる。
その攻撃力1500以上のモンスターを破壊しゲームから除外する。
小町 「そいつを除外だよ。ふう、危ない危ない。
上級モンスターが大半のデッキのくせに、ここで特殊召喚できるカードを引いてくるなんて……。
なかなかの運だが、ここで奈落をくらったってことは、その天運も衰えがきてるってことかな」
天子 「運ですって? うふふっ、天運で天人に勝てるわけがないでしょ。
天人は、あなた達下界の者どものように苦しんだり悲しんだりしないのよ。
わたしの墓地の天使の数を見て御覧なさい」
小町 「(天使の、数……?)」
小町 「(…………ま、まさかっ!?)」
天子 「やれやれ。こいつをもっと早く出せてれば、あっさり勝ててたろうにねぇ。
まあ、いいわ。その分楽しかったし」
衣玖 「どんなカードなんです? それは……?」
天子 「これよ。このモンスターはわたしの墓地の天使が四体のみの場合、手札から特殊召喚ができる……」
天子 「神意体現し高潔なる大天使よ。
今、天界を蹂躙せしめんとす簒奪の徒を、浄の光にて還さん!」
天子 「特殊召喚!! 降臨せよ、大天使クリスティア!!!」
《大天使(だいてんし)クリスティア/Archlord Kristya》 †
効果モンスター
星8/光属性/天使族/攻2800/守2300
自分の墓地に存在する天使族モンスターが4体のみの場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を手札に加える。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いにモンスターを特殊召喚する事はできない。
このカードがフィールド上から墓地へ送られる場合、
墓地へ行かず持ち主のデッキの一番上に戻る。
小町 「あちゃあ……やっぱり」
天子 「クリスティアの効果で墓地の天使を手札に加えることができるんだけど……もう必要ないわね。
やはり、悪魔なんてこの有頂天にはふさわしくない。地獄へとお引取り願うわ!」
天子 「大天使クリスティアで、死神にダイレクトアタック!!
天気、緋想天促!!!」
小町 LP400→0
小町 「……くうう~、くやしい。
こんなごり押しデッキに、あたいのテクニカル暗黒魔轟神デッキが負けるなんて~」
天子 「神話も証明している通り、悪魔が天使に勝てるわけがない。
死神が天人の魂を狩れないのと同様にね」
天子 「と……まあ、御託はいいでしょう。
どうさ、衣玖。勉強になったかしら?」
衣玖 「いやぁ、そうですね。
総領娘様のデッキは、きっと総領娘様にしか使えないんだろうなぁと思いました」
天子 「……それは褒めてるのよね?」
衣玖 「いやまあ、はい。空気を読んで」
天子 「一言多い気がするけど、まあいいや。わたしの強さはわかったはずだしねー」
衣玖 「そうですね……。
本当なら実力的に、わたしなんかより総領娘様の方が相応しいのはわかっているのですが……」
天子 「……? そういや、なんであなたが大会に参加するのか聞いてなかったわね。
頼りにしてる人の為にどうたら、てなことを言ってたけど?」
衣玖 「仰るとおり、参加はもともとわたしから申し出たわけではないのです。ある方に頼まれて……」
天子 「頼まれて? でも、そんなに必死になることかしら」
衣玖 「そう……ですね。どうしてかと言われたら、至極個人的な事情という他ありません。
わたしは今まで、誰かに頼られるという経験が一度も無かったものですから」
天子 「一度も?」
衣玖 「はい。竜宮の使いは、元来他人と関わることがない妖怪。
必要が無い限り、誰とも空気を交わることはありません。
わたしは空気を読むのは得意ですが、それは単に周囲と距離を保ち、
摩擦をつくらないためであって、つまりは他人と深く関わらないためなのです」
衣玖 「わたしも今まで空から、数多の下界の人々を見つめ続けてきました。
しかし、決して関わろうとはしなかった。
もともとわたしは竜の世界の住人。人間界の者との繋がりなど意味が無いのです」
衣玖 「先日、彼の方に声をかけたのは気まぐれでした。初めは、深く関わるつもりなどなかった。
事態が進んだのは成り行きでしたが、彼女達の感情の動きは、ただ遠巻きに眺めるだけでは決して見ることのできないものでした。
新鮮、というと陳腐でしょうか。
そこに気づいたとき、不思議と自分から関わりを深めたいという気持ちが湧いていたのです」
天子 「理屈で考えすぎなのよ。
要は、頼りにされて嬉しかったってことでしょう?」
衣玖 「そう……なのでしょうか。よくわかりません。
ただ、必要とされているのならば、それに答えるのは自然なのだと……。
でも、それは空気を読んだ結果ではなく、自分の意思なのかもしれない……そう思ったから」
天子 「いいわ。珍しいものね。あなたがそんなふうに悩むなんて。
大会って、まだ先でしょ? それまでみっちり教えてあげるわよ。
ルールだけじゃなくて、デッキ構築の基礎、プレイングの基礎、戦術の基礎、もろもろね」
衣玖 「本当ですかっ? ありがとうございます。助かりますわ」
天子 「うんうん♪
で……あなたはどこへ行こうとしてるの?」
小町 「ギク。いやぁ、そろそろ仕事に戻らないと……今月ノルマきつくてさぁ」
天子 「あなたは約束通り、今日一日わたしの暇つぶし相手よ。
さあ、衣玖。まずはサイドデッキの対策の仕方から教えてあげる。
入れ替えて、二本目いくわよ~」
小町 「サイドなんて持ってきてないっての……。
あーあ、まったく……暇を潰す暇も無いな、こりゃ」
天子 「ああ楽しい。この楽しさがある限り、永遠に五衰なんて関わりが無いわね。
天人長寿の秘訣だわ。うふふふふ」
*
________同日、地霊殿
さとり「…………」
さとり「(……悩むわね。地底のメンバー、残りはどうしようかしら)」
さとり「(候補はだいたい出揃ってるけど……これだと妖夢さんには気の毒な気もするわね。
この布陣での負けは万に一つも無い。
でもまあ、ああ宣言してしまった以上、手加減するわけにもいかないし……)」
さとり「…………」
さとり「お燐ね、そこにいるのは」
燐 「はいですにゃ」
さとり「なになに用件は…………そう、こいしが帰ってきたのね。
大会までに戻ってきてくれればと思ってたんだけど、ちょうどよかったわ。
呼んできてくれる?」
燐 「(相変わらず会話要らずだにゃ……)
はいですにゃ」
さとり「それは褒めてるのよね?」
燐 「と、当然ですにゃ。行ってくるですにゃ~」
さとり「(……そういえば、なんで未だに語尾がへんてこりんなままなのかききわすれたわ)」
こいし「おねーちゃんっ。たっだいま~」
さとり「おかえり。二週間ぶりかしら。
また無意識に任せてふらふらしてたんでしょう。今度はどこに行ってたの?」
こいし「今回はねぇ。人間の里に降りてみたの。
なんでも、カードキングダムの幻想郷支店ができたらしいから行ってみたのよ~」
さとり「……よくわからないけど、また遊戯王のカードを買いに行ったのかしら。
勝手にいろいろうろつかれて困るわ」
こいし「まあそんなとこよ。おかげで欲しいカードが手に入ったわ。これでお姉ちゃんにも負けないかもね~」
さとり「こいし。確かにあなたの心だけは、わたしには視えないわ。
ただそれでも、それだけでわたしに勝つことはできない。
あくまで、そこで初めて平等の地に立てたというだけ。
わたしに勝つなら、もっとデュエルの基本的な部分から改善しないとね」
こいし「わかってるわよ。お姉ちゃん、能力なんて無くても普通に強いもん。
せいぜいペット達とやって腕を磨いとくわ~」
さとり「そうすることね。来週には大会もあるのだから」
こいし「らしいね。楽しみ~」
さとり「……? もう知ってたの? 大会の事」
こいし「知ってるよ~。地上対地底の、団体戦だっけ?
お姉ちゃんも、なかなか面白そうなこと考えるじゃん」
さとり「(もっと驚くかと思ったのに……。
すでに妖夢さん達が宣伝してくれたのかしら)」
さとり「こいしもエントリーしてあるから、ちゃんとデッキの編集しておきなさいね」
こいし「あれ? もううちのチームメンバーは決めちゃったの?」
さとり「いいえ。まあ、だいたい候補は出てるから、もう少し推敲して……」
こいし「だいたいってことは、まだなんだね。よかった~。
あのさ、ちょっとコレ見てくれないかな?」
さとり「(……紙片? なになに……)」
さとり「(地上チーム……魂魄妖夢、霧雨魔理沙、風見幽香、永江衣玖……洩矢諏訪子。
まさか、これは……)」
さとり「こいし……これって」
こいし「そ。上(地上)の奴らのチームメンバー。
知らない顔多いよね~。ま、当然だけど」
さとり「これ、どうしたの?
何であなたが、まだ公でないはずの相手の編成まで知ってるの」
こいし「やだ、お姉ちゃん、ちょっと顔が怖いよ? 別に大したことじゃないのに。
そのメモは、ただ渡してって頼まれたのよ。
あと、こっちのもう一枚も……」
さとり「(…………〝地底チームメンバー編成案〟?
わたしの知らない名前も……)」
さとり「……どういうことかしら。この通りのメンバーにしろということ?」
こいし「そういう意味じゃない?
ほら、右下のとこに署名があるでしょ。その人から頼まれたんだよ」
さとり「(…………。
ああ、なるほど。そういうことね。
以前世話にもなったし、断るわけにもいかないけど……)」
さとり「わかったわ。このとおりでいきます。
まあこの編成案のメンバーと、もともとわたしの考えていた案とも
そんなに違いがあるわけじゃ無いから、そんなに問題は無いけど……
これだと、万に一つ無かった向こうの勝ちが億に一つになっちゃうわよ?」
こいし「向こうの話でしょ? 勝つのはどうせこっちなんだから、まあいいんじゃない?」
さとり「それはそうかもしれないけど……」
こいし「まあ、わたしは何も聞かされてないからどうでもいいんだけど~。
あと、これ三枚目。最後ね。これも見ておいてって」
さとり「(…………ん~? これはまた……あの方も何を考えているのかしら。
手紙でのやり取りというのは、普通の会話と違ってどうも要領が悪いわね。
こいしとの会話もそうだけど、相手の意図が明確に見えないわ)」
さとり「(……あるいは、この場合それが狙いなのかもしれないけれど……)」
こいし「んふふ、あと四日かぁ。大会だなんて、楽しみだわ~。
ね、お姉ちゃん?」
さとり「……ふふふ。そうね」
さとり「(ただの大会で終わるってことも、無さそうだしね……)」
・・・・・・To be continued
しかし、リアルでは間違いなく事故る。
魔轟神に限らず、DT出身カードは揃えるのに予算が足りません。なんであんなに高いのよ……
さとりに手紙を送った人物は映姫さまかな? いや、もしかしたら紫さまかも……
うむ、先が気になりますね。
確かにDTは集めづらい…、こいしのデッキとか、まったく検討つかないな、無意識っぽいデッキ気になる
こまっちゃん、百均で肴買ってるのかw カーキンも幻想入りか・・・
地底メンバーはパルスィ期待。パルスィ大好き。愛してる!
>>1
世間知らずな感じが伝わってよかったです。
DT系はそろそろ一度再録パックとして販売してもいいほしいですね。
>>2
やっぱり本家でラスボス務めたキャラはカリスマ分入れたくなりますw
こいしのデッキはまさかのアレを予定しています。
>>3
仰るとおりですorz
うーんなんでこんな初歩的な間違いを……。
ちょっと今回は直しようがないのでこのままにさせてください。
しばらくこういう致命的な間違いはしてなかったんだけどなぁorz
にしてもパルスィですか~。
もしやるとしたらどんなデッキでしょうかね?