※ムラいち 百合
ぴちょん、と雨が屋根を伝って地面を叩く。いつものこの時間は夕食時で騒がしいのだけど、今日は少し訳が違う。
『本当に大丈夫?』
『お気になさらずに。折角のお誘いですから』
『留守はお任せください!』
『たかだか宴会に行くだけだけどね』
ネズミが呆れたように言うのはこのやりとりが昼から続いていたからだろう。
先走ったぬえを捕まえに走った星が、さすがと言うか息も切らさないで走って戻ってきた。担がれた状態でぬえが、
『ねぇーはやくいこぉよー』
と、姐さんを急かす。
『皆さんにはよろしく伝えておいてください』
『……あまり長居しないようにするわ』
『大丈夫なのに……お土産たくさん貰ってきてください』
『あぁそれはいいですね。そうしましょう』
『お土産が残っているかどうかわからないけどね』
『もういいから早く行こうよー』
いつもこんな感じでグダグダと話が進まない。なので無理やり4人を押し出して見送る。
『雲山、よろしくね』
こくり、と雲山は頷いて先行く四人の上空へと浮遊する。
白玉楼で行われるという宴会。博麗の巫女、いや幻想郷の懐が広いのか、騒ぎを起こした命蓮寺の面々にも宴会の招待状が届いたのがつい先日。
その招待状を受け取った当初はみんなで何を持っていこうか相談していたのだけど、何か思う所があるのか――村紗水蜜は、その招待を丁寧に断った。それでも彼女は笑いながら「みんなは行ってきてください」という。
そんな彼女の気持ちがなんとなくわかったので、一緒に残る事にした。きっと姐さんも感づいてるはず。星もナズーリンも、ぬえも。だから姐さん達は私たちを、水蜜を気にかけながら歩みを進めていくことになったのだけど。
『……中入ろうか、ムラサ』
だからだろう。彼女の寂しそうな顔が、無駄に胸を締め付けた。
適当に食事を済ませ、二人で庭が見える座敷で寛ぐ。
……こんな暇ができた時は、できれば地底にいた間の記録を読むことにしている。本を支える手を太ももに乗せてバランスを保つ。
随分と世の中は変わったように見えるけれど、幻想郷はのんびりとした時間が流れているようで、随分と記録の印象と違うなぁと感じる。もしかしたら外の最新の記録が入っていないだけかもしれないけれど。
「雨、止まないかなぁ」
「もう少ししたら晴れるって雲山が言ってたわ」
ぽつぽつ ぴちゃぴちゃ
雨音が途絶えない。
「なぁんか、なぁ」
ゴロリ、と目の前で水蜜がだらしなく転がる。
「ちょっと、見張りやってるんでしょう」
「ちょっと横になるだけ」
「今は雲山いないんだから、しっかりしてよ」
「はぁーい」
雲山を宴会に向かった四人の護衛につけさせているので、今の私は何もできない。だから正直に言ってしまえばもし仮に敵の襲来があって寺を護るなら、私がいない方がずっと戦いやすいだろう。足手まといになるのは嫌だけど。ただ私も水蜜も見張りなんていらないなんてことはわかっている。そういう振りをしているだけ。宴会に行かないでここに残った理由は、留守を護る事なのだから。
「あー」だとか「うー」だとか、水蜜は呻いているけれど、反応はしてやらない。正体や意味が不明な事にはぬえのこともあってなるべく関わり合わ
ない様にしている。
「ねぇ」
「なに」
「一輪は宴会行きたかった?」
「別に」
「ほんと?」
「嘘ついてどうすんのよ」
行きたかったと言えばこの子は悲しそうな顔をするに違いない。でも行きたくなかったと言ってもこの子は悲しそうな顔をする。
「ねぇ一輪」
「なに」
「キスしよっか」
脳に響いた一言がパラパラと本捲っていた手を止めさせる。
「……お断り」
「……だよねぇ」
微笑む彼女の顔は、濡れているように見えて、妖艶な女の顔だった。別の妖怪になっちゃうけど、そうやって人を海に引き込むんでいたんじゃないかと思うほど。
どこか苛立ちを感じながらズキズキと痛みだした頭を宥めようと額に自分の手を当てる。無駄に高い自分の体温に吐き気がした。
「ムラサ」
「んー」
キスはしてやらない。
だけどその代わりに手を差し出す。水蜜の手は冷たいから気持ちいいし。
「…ありがと」
別に口づけ自体が嫌な訳ではないし、口づけ自体何度もした。はっきりと関係を口にした訳じゃないけど、多分私たちはそういう関係。
ただ今の彼女と口づけを交わしたらきっと私も彼女も戻れなくなる。深い海に沈んだ錨に巻き込まれてしまいそうな気がして。
けれど、こういう理由でもつけておけば、沈みそうな錨を船に繋いでおくことぐらいはできるだろう。
雨はまだやまない。遠くの山に靄がかかる。それはまるで自分の胸の内を体現しているようで、不安に押しつぶされそうになる。
ゴソゴソと近くの物体が動く気配がした。
寝そべったままズルズルと近づいてきて、私の太ももに程よい重さの物体が乗る。
「少しだけ」
「いいよ」
一度手の繋がりが解けて再び伸ばされた片方の手を再び握って、片方の手で本を持つ。捲るのが少し面倒臭い。けれど太もも感じる重さに少しだけ安心してしまった。
少し湿っている彼女の髪から潮の匂いがする。幻想郷に海はないのに、海の幽霊はいる。
幽霊。一度死んでしまった魂。成仏も出来ず、永劫を彷徨う。
明るい彼女が見せる暗い表情は、いつもとのギャップも相まってこちらが囚われそうになってしまうほどで。
私自身、姐さんと会うまでそれなりに酷い目にあってきたと思っていたけれど、彼女を初めて見た時は自分がどれほど幸せだったか、失礼だと知りながら思った。
年月を感じさせない私の身体は、一か所に留まれば気味悪がれたりはしたけど、それも旅の巫女や尼僧の振りをすれば、行く先で受け入れてもらえたし、多少の法力も持っていたから雑魚妖怪を懲らしめる程度で路銀もなんとかなった。死にそうな目にもあったけど、雲山とも出会えて、聖とも出会えて、なんとかなれたのは幸いだった。
だけど彼女は違う。
その場で永遠に繰り返していた。永遠の反復。いくつもの船を沈めて、海で助けを求める人を憐れんで恨んで。姐さんに、聖白蓮に救われるまで、ずっと、助けを求めて。
それがどれほどのものだったのか、私には計り知れないけれど。
(何年も、何十年もそれこそ気が遠くなるほど一緒にいたけれど)
辛かったか、なんて馬鹿みたいに聞いたこともあった。聞かされた事もあった。
だから一人で沈んでいてほしくなくて。姐さんのように救えるほど力はないから、少しでも、
(少しでも私が水蜜を繋げる事が出来ればな……いいんだけど)
姐さんに救われて、一緒に暮らすようになって、衝突もして、それでも一緒にいて、姐さんが封印されてからも、封印が解かれてからも、これからも
ずっと一緒に。
すっかり読むのを忘れていた本を脇において、彼女を見る。寝入ってしまったようで、深い海を思わせる瞳は見えない。空いた手で彼女の髪を優しく
撫でれば先ほどは湿っていたように感じたけど、さらりとした感触が手に伝わる。
(かわいい)
水蜜は可愛い。里の男がよくチラチラと彼女を見ているのを知っていた。なんとなくもやもやしたのを覚えている。さっきのキスを強請った水蜜の姿を見た時と同じ苛立ち感。私はもうすでに彼女の海に引きずり込まれているのかもしれない。
なんとなく辺りを見回す。ずるいとか言われそうだけど、ばれなければいい。
「みなみつ」
ねぇ、わたしは貴女をちゃんと繋ぎとめられているかしら。
彼女は一度死んでしまったけど、魂は生きている。私の近くにいる。
それがなんとなく嬉しくなって、静かに口づけをした。
~~~~~~~~~~~~
みんなは優しい。でも一輪は優しくない。相手をしてくれないし、キスも拒む……まぁわかっていたけど。
でも手は繋いでくれた。それが嬉しくてつい泣きたくなる。
修行の成果もあってか、昔ほど落ち込む事はなくなったけどそれでもまだ少し揺らいでしまう。
みんな多分知っている。白玉楼がどんな所かというのは話に聞いているし、亡霊のお姫様が暮らしている事、そして宴会には閻魔様がくるということも。
成仏できないのはなんだかんだであの海が恋しいからだと思う。聖に救われてみんなと暮らして、そういった方面では満たされていると思うし。まだ悟りを開いてもいないし。
未練がましいなぁとは思うけれど、そのお陰でみんなと離れる事がないというならそれは歪だけどいいんじゃないかなぁと思う。
(外道だよねぇ)
仏門に従事しているというのに。それでも聖は何も言わない。優しく抱きとめてくれる。
だから私は、仏門じゃなくて聖に従事しているんだ。聖の説く道が、私の道。
ふと手がギュと握られた。一輪をみればなんだか泣きそうな顔をして窓の外を見てる。遠くに靄がかかる山が見えた。そういえば海上でいつも目印にしていたあの山は、今も漁師たちの目印となっているんだろうか。目印が山から聖に変わってから山を見上げる事が少なくなったように思う。
そんな望郷の念にも似た何かにかられながらも、意外と寂しがり屋な一輪を放っておく事が出来なくて、ズルズルと近づく。でもかける言葉が見つからなくて、どうしようか少し迷った末、自分の存在を重石として預けることにした。
「少しだけ」
「いいよ」
一輪は一言だけ答えて、受け入れてくれた。一度緩められた手が、改めて繋がる事を求める。
無言で手を繋がれて、一輪は再び本に目を落とす。片手で捲り辛そうで、本を読むんだったら構ってほしい、と言おうとしたけど、やめた。なんとなく目を瞑る。
(あったかい)
そういえば一輪は自分の体温が高いのが嫌だ、といっていたけど冷たいよりかはマシだと思う。温かいと人は寄ってくるけど、冷たいと寄ってこない。
目を閉じた世界に、雨音と紙を捲る音だけが響く。
雨は嫌いじゃない。屋根を叩く雨音は自分が地上にいると言う事を実感させてくれるし、雨に濡れた体を拭いてくれる人も、濡れないようにと傘をさしてくれる友人もいる。
それでも同時に海に落ちる雨を思い出してしまうのはやっぱり未練だ。
人を、かつて同じ“モノ”だった人間を、海に連れ込んでいた船幽霊としての自分。泣いているのに生きている実感が湧かなくて、嫌いで大好きな海と同じ味のする涙を流してくれる雨が好きだった。
小さく息を吐いて目を開く。一輪は相変わらず本を見て……
(ないで考え込んでるな)
一輪は考えことをする時にぼぅっとする事が多い。本に視線は向いてるけど、きっと読んでない。
「なんでも一人で抱え込んでしまう子だから」と聖に言われたこともあったし、地底にいた時はそれこそずっと見ていていたからよくわかる。
(あれは、多分私……だよねぇ)
この一連の出来事から推測されるに。一輪は自分より他人の事を心配し過ぎる癖がある。
一輪の胸中の中心にいるであろう私自身は、先ほどよりは随分と落ち着いていた。だから気にしないで、と言っても一輪が下手くそな笑顔を向けて安心させようとする様が手に取るようにわかる。
どうしたものかな、と自分の事を棚にあげて、とりあえずプレッシャーを送ってこっちに気付いてもらうことにした。声をかけても何を言えばいいのかわからないから。一輪が話しかけてくれればなんとかなるだろうし。ずるいって言われても、多分これが一番均衡を保てる。
(気づけ、こっち見ろ、こっちむけ)
「…………」
呪文のように唱え続ける。眼力が足りないのか中々気付いて貰えない。じれったくてどうしようもない。声を張りあげたくなる。
(一輪、こっち、こっち見て、こっちむけこっち)
「…………」
(……気付いてくれないと泣いちゃいますよ。ねぇ――)
「少しでも私が水蜜を繋げる事が出来ればな……」
「ぃ…………」
ぼそり、と呟かれたその後の台詞が待っても続かなくて、あぁもう、どうしよう。無自覚か。一輪の顔がまともに見れない。
顔を見つめるのが切なくなって、逃げるように目を瞑る。
(ずるい、バカ、一輪のバカ)
泣きたくなるのは一輪のせいだ。どうしてこんなに優しいんだろう。
(もう充分すぎるって)
そう叫びたくなる。
もし私が錨なら、聖が船で、一輪はきっと錨を繋ぐロープだ。ひょろっこいロープの癖にどんなに深い海に落ちても付いてくる。そしてそれを引き上げてくれる仲間がいる。
だからそれでもういいんじゃないかって。
さらり、と髪を撫でられた。優しい手で、壊れモノを扱うように。
大丈夫だよ、一輪がいるなら私は壊れないよ。
溢れそうになる涙をこれ以上せき止めるのが難しい。もうなりふり構わず彼女に抱きついてしまおうか。
「みなみつ」
珍しく下の名前で優しく呼ばれて、どうしようか少し迷ったけど、返事の代わりに目を開ける。滲んだ世界一杯に瞳を閉じた一輪が――
ほんの一瞬。唇が重なった。
ゆっくりと一輪の瞼があがる。先ほどのキスのように一瞬のうちに目が合った。
「……」
「………」
「…………み、みなみつ?」
「……………いちり」
「わああああああああああああああああああ!?!?!?!?」
むぎゅうと顔ごとそのまま抱きしめられる。やわいけど、苦しい事に変わりはない。
「むがぐぐぐあぐうううう」
「み、みな、いつから!?」
「むぐぐがむ」
「やっ、ちょしゃべんなっ!」
じゃあ離せ、と思っていたらパッと離れた。ついでに一輪が立ちあがってしまったので頭が畳みにぶつかった。やわい感覚が頬に、ちょっとした痛みが後頭部に残ってて少し残念な気持ちになる。いきなり夢から覚めてしまったような、そんな感じ。
そにれめげずに顔をあげれば一輪の顔はほおずきのように真っ赤で、少し涙目で。
「ちが、これは、その」
(かわいい)
恥ずかしいのかそのままへたり込んでうずくまってしまった。私はと言えば恥ずかしくて嬉しくて異様に喉が渇いてる気がするけど、自分でもびっくりするほど冷静だった。
「い、ちりん」
「う~」
さっきの私と逆で呻き始めた一輪の顔が見たい。
「あ、一輪からのキスって初めてじゃない?」
「うるさいそれいじょうなにもいうな」
「うれしい」
「うるさいうるさいうるさい」
何を恥ずかしがってるんだろう。我慢できずに一輪の腕を掴んで広げようとする。
「やだ、やだって」
駄々をこねるように一輪がかぶりをふる。腕の隙間から見えた一輪の顔は耳まで真っ赤で、
「ごめん」
「ふっ」
無理やり押し倒した。一輪は一瞬驚いた顔になってからまた泣きそうな顔で暴れ始める。お腹を蹴られたけど気にしないで少しずつ身体を重くして押さえつける。こういう時ぼんやりと幽霊でよかったかな、なんて思う。
「ムラサぁ……」
そして、文句が出てきそうな唇を無理やり塞いだ。
「んく! ふぅ……」
歯が少し当たったけど気にしない。唇は柔らかくて温かい。それだけ。
身体が少しだけ麻痺するのは多分一輪が経を唱えてるからだと思うんだけど、唇を押し付けていたらそれもだんだん弱まってきた。
「はっ」
「ふは、はぁ」
「一輪すき」
「そんなの」
「もっとキスしたい」
「いましたじゃない」
「ねぇもっとキスしていい?」
「いま、さらすぎるわよ」
嫌だって拒まれてもするかもしれなかったけど、了承は貰えたはず。
「一輪のバカ」
「あんたに言われたくない」
「一輪のせいだよ」
「なにがどこが」
「全部」
「なにそれ」
「全部一輪が」
キスをする前に目尻にある水を舐めて頬ずりする。そういえば泣きつこうと思ってたのを思い出した。でもそれももう必要ないか。
「好き」
「っ……」
「一輪は?」
赤い顔を更に赤くして一輪は泣きそうな表情で「わたしも」と答えてくれた。
「うん、うん」
「馬鹿」
「知ってる」
「馬鹿ムラサ」
「こういう時ぐらい名前で呼んでよ」
一輪が困ったような顔をしながら、もごもごと口を動かして名前を呟いてくれたのが嬉しくて強く抱きしめる。
もう一度名前を呼ばれて、背中に一輪の腕が回ってきてお互いを抱きしめ合う形になる。
柔らかい身体に包み込まれるように理性が少しずつ飛んでいくような錯覚。
「キスしたい」
「……嫌だって言ってもするんでしょ」
「うん」
だってそれは拒絶じゃないってわかるから。今の一輪は、私を抱きしめてくれている。
少し離れて笑いあう。さっきの不安もなくなったような感じ。きっと一輪もそう思ってるに違いない。
一輪が私の名前を呼ぶ。それだけで胸が高鳴って、私も一輪の名前を呼ぶ。それからゆっくりと顔を近づけて、
「ただいまー」
「「!?」」
遠くから聞きなれた声が聞こえた。
「ひ、聖!? 帰ってき」
「あっ! ちょ雲山待って!」
「へっ?」
振り向いた瞬間何かにはたかれて、ゴロゴロと転がる。
「水蜜!? 雲山違うの違うってば雲山!」
なにがなんだかわからないまま頭がクラクラして意識が遠のいていく。複数の足音が近づいてきたような気がするけど確認のしようもない。
「み、水蜜ってば!」
「二人ともただいま……ってあらあらどうしたの?」
「いや、その……水蜜ぅぅぅ」
あぁ一輪かわいそうだな。名前呼ばれて嬉しい。だけどこの状況どう説明するんだろう。一輪の背後で雲山が凄く私を睨んでるような。
真面目で頑固なあの雲山的にあの状態は、自分の娘みたいな一輪が襲われてたようにしか見えなかったのかな。それとなく言っておけばよかった、なんてぐるぐるとそんな事を考えて、一輪の弁明に泣く声を遠くに聞きながら、私は意識を手放した。
~~~~~~~~~~~~
なんとなく状況を把握したらしい聖に「一応ね」と、普段なら私とナズと一輪とぬえの四人当番制の床の拭き掃除を、一輪と一緒に任されて一週間。
「こんなもんかな」
「そうだね。今日はいい天気だし布団も干そうか」
一輪は掃除もそこそこに次の仕事に取りかかる。真面目だよね。
「ちょっとそんな欠伸するなら手伝ってよ」
「あいあいさー」
それに付き合って一緒に歩き出す。
一輪が歩きながら雲山に空の警戒を指示していた。その間微妙な視線で見られてた気がするけどとりあえずスルー。
「もう……なんだかなぁ」
そう言いたくなるのもわかる。雲山には二人の関係について問い詰められたそうだし、感のいいナズにはあの晩『私はもう少しゆっくりしていこうと言っていたんだけどね』なんて言われたらしい。監視役の癖にいいのかな。
「まぁいいじゃん」
「なにが」
「いつもと同じ。平常運転。変わらずってことで」
なんとなく嬉しくなって笑ってしまった私を見て、答えになってないと一輪は小さくため息をついた。
「大丈夫だよ。なにがって言われてもわからないけど」
「……そうだね」
ん、と手を出せば呆れたように一輪が笑って、手が繋がった。
「あらあら仲良しね」
「ひゃっ」
「あ、聖。どうかしましたか」
一輪の驚いた声に吃驚したけど、とりあえず話を進めてもらう。
「床掃除は今日でおしまい。明日からまたいつも通り」
「おぉ!」
「ありがとうございます」
「それともう一つ……来週もまた…場所は違うんだけど、宴会があるらしいの……ムラサはどうしますか?」
一瞬だけ震えた手を、強く握り返す。
「私も付いていっていいのなら」
「……そう、大丈夫?」
「はいっ!」
「じゃあ、来週は寺の皆と一緒に、ね」
ふわり、と繋がれた手の上に聖の手が重なる。くすぐったくてなんだか嬉しい。
「よかった」
「みんながいますから」
聖は嬉しそうに笑って「それじゃあ皆にも話しておくわね」と言って歩き出した。その背中を一輪と見送る。
「ムラサ」
「繋いでてくれるんでしょう? だから大丈夫だよ」
握った手を上に持ち上げる。一輪は呆れた顔をしながら「うん」と答えてくれた。
「……楽しみだね、宴会」
「やっぱ宴会行きたかった?」
「言ったでしょ。それに別にどっちでも変わらないわよ」
「でも」
「だってムラサが居ないとつまらないもの」
「……あは、私も、一輪いないとやだなぁ」
「そういうこと」
一輪が急に歩き出してそれにつられるように歩き出す。
また少し顔が赤くなってるけど、気付かないふりをして隣を歩く。握られた手が温かくて、それだけで泣きそうになるけど。
「まぁ一輪と二人でお留守番するのもいいかなって思うけど」
「へっ!?」
一輪が変な声を出す。それがおかしくてクスクス笑うと睨まれたので知らん顔する。
「馬鹿ムラサ……」
聞こえないふりをして、ちょっと気になった事。
「そういえば名前。この前は下で呼んでくれたのに」
「ぅえ……」
「え、なにその反応」
「あれは……その……たまたまというか」
「えぇー」
「もう、馬鹿言ってないでほら仕事仕事」
少し残念な気もするけど、まぁ一輪が恥ずかしがり屋なのは知ってるし、いっか。
いつも通り平常運転。天気は快晴お昼寝日和。
「接続も良好ってね」
繋いだ手を、強く握り合って、隣同士。これからも、ずっと。
村紗
ムラいちひゃっほぉぉい!!
ムラいちじゃあああああ!!
雲山さんあんたぁ・・・wwww
あとちちりんさん万歳
ありがとうございます
なんというムラいち
最高です
>奇声を発する程度の能力様
ご指摘感謝です。やっちまった……orz
でもムラいちひゃっほぉぉぉぉ!ひゃほーい!
>2様
可愛いと言っていただき嬉しいです。二人ともマジ可愛い。
>3様
今回はこんな役回りになってしまったですけど雲山さんはシャイでナイスなミドルです。
この前見た夢では、ガチガチになっていた二人を微笑ましく見守ってました。
非常にイケメンであれだ。何が言いたいかって、雲山抱いて!(
>4様
おいしくいただけたでしょうかっ!ありがとうございます!!!
>5様
周りに隠れ気味だけどちちりんさんは非常においしいと思います。やわいのです。もふもふしたい。
>6様
こちらこそそんな、ありがとうございますぅぅぅぅぅ!!!!
>7様
ムラいち最高ひゃほぉぉぉい!
もっとムラいち欲しいです!
>8様
そういう空気を意識して書いていたのでそういって貰えて嬉しいです。ありがとうございます。
二人とも聖を中心に世界が成り立っているけど、お互いがお互いを支えている、そんな関係がいいです(好み
来年はもっとSS書きたいなぁ。
今年もムラいち期待してます。