こあ熊の髪型が凄いことになっていた。
「パチュリーさまー。がおー」
「……どうしたの、その頭。うれしくて感動で頭がパーンでもしたの?」
いつものように熊の着ぐるみで現れたこあ熊。
その頭頂が見事な熊の形になっていた。髪で。
「あ熊盛りです。がおー」
「可愛いわね、熊は」
「えへへー」
髪でできた熊に手を伸ばした。
口のあたりに手を伸ばしたら囓られた。痛い。
「……ちょっと、その髪の中に何を飼ってるの」
「中に誰もいませんよ?」
こあ熊は首を傾げる。熊の頭のあたりを撫でると今度は大人しかった。
「どうしたの、この頭」
「香霖堂でもらった雑誌にこういうヘアスタイルが載っていったんです」
「雑誌?」
「こあ熊agehaです」
やたらゴテゴテキラキラした雑誌を取り出してこあ熊は胸を張った。
「それで、どうして熊なの」
「あ熊ですから。パチュリー様を美味しくいただくために、二段攻撃です。がおー」
『がおー』
こあ熊の髪の中から声がした。
「……やっぱりその熊の中に何かいるでしょ」
「誰も中にいませんでしたからねー。中に誰かいればよかったんですけどねー」
「プロの実況はしなくていいから」
「やだなぁパチュリー様、私の髪の中に誰かが入るわけないじゃないですか。がおー」
『がおー』
こあ熊と熊が一緒に吠えている。
「いるでしょ」
「気のせいです。がおー」
『がおー』
本で叩いた。
熊の中に本が呑み込まれた。
取り出せない。
「……レミィでしょ、中にいるの」
「いませんってば」
「ねえ、知っているかしら?」
「なんですか?」
「いないことの証明は、すなわち『あ熊の証明』なのよ」
熊の中に手を突っ込んだ。
噛みつかれた。痛い。
そのまま無理矢理引きずり出した。レミィだった。
「いたた……ああパチェ、貴方の愛は相変わらず痛いわ」
そう言って立ち上がったレミィもまた、あ熊のヘアスタイルだった。
というか、どうやってこあ熊の髪の中に入っていたのだ。
「なにそれ流行ってるの?」
「流行の最先端よ。あ熊のファッションでパチェもイチコロね。がおー」
『がおー』
レミィの髪でできた熊の中から声がした。
「……こあ熊は?」
「さあ?」
気がつけば、こあ熊の姿が見えない。
「さあパチェ、今度こそ私に美味しく食べられなさい。がおー」
『がおー』
レミィの頭の熊から、こあ熊の声がしていた。
この独特のテンションが好きだ。
はてさて何処まで続くやらww