静かな紅魔館の夜、吸血鬼一族の末裔であるレミリア・スカーレットはその威厳をたっぷりに図書館の扉を開けた。
「Hi,Remy. How are you.(おはようレミィ、気分はどう?)」
「I'm over tha moon. You?(最高よ。パチェは?)」
「Nice. I'm hopping mad. Because you are late.(それはよかったわ。私今とってもイライラしてるのよ。レミィが遅れてきたせいでね)」
「I'm sorry. It begins to be early for the time being.(悪かったって。そんなことより、さっさと始めましょ)」
レミリアはパチュリーの横の席に着くと、同じテーブルに座る美鈴や小悪魔を一瞥し、大きく声を上げる。
「こるぇから、げん、そー、きょーに、いくために、日本語のぉ、勉強をぉ、始めます」
◇We wanna live in the Utopia
「では、こるぇからわぁ、一番話せる、パチェに、進行、はぁ、お願いします」
レミリアがそう言うと、パチュリーは待ってましたと言わんばかりに机の上に世界地図を広げた。
「幻想郷という場所は、ニッポンの、どこかに、あります。だから、私、達、は、日本語をぉ、学ばなければなりま、せんね! まず、ここまで、いいか?」
レミリア、小悪魔、美鈴の三人は頷く。
「それじゃあ、どんどん行きます」
そう言うとパチュリーは束になったカードを取り出した。
その表には絵が書いてあって、その絵を元に、まずは単語を覚えようというものだ。
そのカードは優しい仕様で、絵の下にはローマ字が振ってある。
「最初は、これ」
魚の絵が書いてあるカードをパチュリーが出した。
「まぐろ」
それに従い三人が声を揃える。
「いい! 止まらないで、どんどん、いくよ!」
パチュリーはまたカードをめくった。
「東京タワー」
「おじぎ」
「さんかくす」
「ちょさくけんとゆめのくに」
「えんかい」
「きゃんBear」
パチュリーがカードを下ろす。
「ちがうでしょー? きゃんびーるでしょー?」
「きゃんびーる……」
小悪魔は頷きながら呟いた。
「続けるよ!」
パチュリーの合図で、また再開される。
「みがわりの、じゅつ」
「てぃくりん」
「げた」
「じんじゃ!」
「ぐんじん、しょーぎ」
「せいしゅん」
「あきはばら」
またパチュリーはカードを下ろした。
「ちがうでしょー? あきばはらでしょー?」
「あきばはら……」
小悪魔は相変わらずパチュリーの言うことを繰り返し呟く。
「パチェ」
「なに?」
「パチェ?」
「なに?」
「パチェ?」
「なんなんでぃ、すか!」
レミリアが指指して名前を連呼するものだから、パチュリーが少し怒って机に手を打ち付けた。レミリアはゆっくりと真実を告げる。
「あきばはら、じゃなくて、あきはばら」
「Come on!(冗談よし子ちゃんよ!)」
「パチェ」
レミリアに睨まれてパチュリーは冷静さを取り戻す。これは日本語の勉強会。英語での会話は禁則事項なのは当然のこと。
「ごめんね! みんなごめんね。ちょっと焦った。でも、でも、みんな聞いて。ニッポン人は、この街のことを、あきばって呼ぶ。あきばで同人誌を買う。ほらね、ここにも例、例、例文で書いてあるでしょ?」
パチュリーが指さしたところには、確かに『あきばで同人誌を買う。』と印されていた。
「でも、パチェちょっと聞いて。カードには、AKIHA-BARAって、書いて、ある」
レミリアが指さしたところにも、確かに『AKIHA-BARA』の文字が書いてあった。
「どっち、なんでぃす、かー!」
パチュリーがヒステリックを起こしてカードを投げ捨てる。
「Holy sh#t! F#ck your self!(ピー)」
「レミィ!?」
「ごめんなさいよぅ」
思わず気持ちが高ぶって英語の、しかも暴言を吐いてしまったレミリアに、パチュリーが一括を入れる。
「あのぅ」
今まで普通に参加しているだけだった美鈴が、ここへ来て発言をする。
「日本人は、最初の意味の、二文字と、後の意味の二文字で、略した言葉を、作る、人達です。だから、秋、葉、原も、それです」
「ちがうでしょー? アキバは三文字でしょー?」
パチュリーの的確なツッコミを受けて美鈴はすぐに引っ込む。
「ちがうでしょー……」
パチュリーのことを尊敬して止まない小悪魔は、パチュリーが言った言葉を小さく呟いた。
途端にレミリアがバンと机を叩く。
「皆、もっと真面目にぃ! やってください。この世界で、私みたいなVampireとか、パチュリーみたいなWitchが生きて行けないから幻想郷で頑張るんです! よ!」
空気が重くなる。そう、彼女達に時間は残されていないのだ。
メディアが発達し、どんどん科学が進歩していくこの世界では、異端狩りをするのに力を貸していたパチュリーのような魔女すら既に異端なのだった。さらには魔女達を排除していく魔女狩りという言葉すら聞かなくなった程だ。
しかし人々の見えないところでそれは確実に行われている。パチュリーとて銃弾を受けてしまえばどうしようもないだろう。
今この紅魔館はパチュリーの結界によって他から認識されなくなっているが、それがいつ暴かれてもおかしくないと言う。
そこで持ち上がったのが、幻想郷という地の噂を里帰り中魔界から聞いてきた小悪魔の提案した、館ごと幻想郷に移動するという計画だ。
準備は順調に整いつつある。
レミリアは、異端達の集まるそこでなら、フランドールが外を歩き、レミリアと共に夜空を飛ぶ日は近いと思ったのだ。
全ては、フランドールのために……。
あれ、と首を傾げるレミリア。
「フランドール!? フランドールはどこですか!?」
レミリアが焦って声を荒げた。
それもそうだ。
肝心のフランドールが日本語を話せなくてどうする。
レミリアは焦って立ち上がり、がつんと机に足をぶつけた。
「ずっとここにいるけど、あとお姉様達面白すぎ。ちょーウケる」
全員が声のした方を振り返ると、本棚の上に寝転がって頬杖をついたフランドールがいた。
「本当ウケるんだけど。笑っちゃいけない紅魔館かと思ったわ。あはは、あは、あはははは」
フランドールは腹を抱えて笑い出す。
「お姉様達どんだけ日本語できないのよ。その状態で幻想郷行こうとしてたの?」
今だに笑い転げているフランドールを見て、イライラの積もったレミリアが等々机をばんと叩いた。
「つーかテメー日本語ペラペラなんかい!」
その的確かつあまりにも自然なレミリアらしいツッコミがキッカケとなって、レミリアは自然な日本語が喋れるようになったのだった。
めでたさめでたさ。
「Hi,Remy. How are you.(おはようレミィ、気分はどう?)」
「I'm over tha moon. You?(最高よ。パチェは?)」
「Nice. I'm hopping mad. Because you are late.(それはよかったわ。私今とってもイライラしてるのよ。レミィが遅れてきたせいでね)」
「I'm sorry. It begins to be early for the time being.(悪かったって。そんなことより、さっさと始めましょ)」
レミリアはパチュリーの横の席に着くと、同じテーブルに座る美鈴や小悪魔を一瞥し、大きく声を上げる。
「こるぇから、げん、そー、きょーに、いくために、日本語のぉ、勉強をぉ、始めます」
◇We wanna live in the Utopia
「では、こるぇからわぁ、一番話せる、パチェに、進行、はぁ、お願いします」
レミリアがそう言うと、パチュリーは待ってましたと言わんばかりに机の上に世界地図を広げた。
「幻想郷という場所は、ニッポンの、どこかに、あります。だから、私、達、は、日本語をぉ、学ばなければなりま、せんね! まず、ここまで、いいか?」
レミリア、小悪魔、美鈴の三人は頷く。
「それじゃあ、どんどん行きます」
そう言うとパチュリーは束になったカードを取り出した。
その表には絵が書いてあって、その絵を元に、まずは単語を覚えようというものだ。
そのカードは優しい仕様で、絵の下にはローマ字が振ってある。
「最初は、これ」
魚の絵が書いてあるカードをパチュリーが出した。
「まぐろ」
それに従い三人が声を揃える。
「いい! 止まらないで、どんどん、いくよ!」
パチュリーはまたカードをめくった。
「東京タワー」
「おじぎ」
「さんかくす」
「ちょさくけんとゆめのくに」
「えんかい」
「きゃんBear」
パチュリーがカードを下ろす。
「ちがうでしょー? きゃんびーるでしょー?」
「きゃんびーる……」
小悪魔は頷きながら呟いた。
「続けるよ!」
パチュリーの合図で、また再開される。
「みがわりの、じゅつ」
「てぃくりん」
「げた」
「じんじゃ!」
「ぐんじん、しょーぎ」
「せいしゅん」
「あきはばら」
またパチュリーはカードを下ろした。
「ちがうでしょー? あきばはらでしょー?」
「あきばはら……」
小悪魔は相変わらずパチュリーの言うことを繰り返し呟く。
「パチェ」
「なに?」
「パチェ?」
「なに?」
「パチェ?」
「なんなんでぃ、すか!」
レミリアが指指して名前を連呼するものだから、パチュリーが少し怒って机に手を打ち付けた。レミリアはゆっくりと真実を告げる。
「あきばはら、じゃなくて、あきはばら」
「Come on!(冗談よし子ちゃんよ!)」
「パチェ」
レミリアに睨まれてパチュリーは冷静さを取り戻す。これは日本語の勉強会。英語での会話は禁則事項なのは当然のこと。
「ごめんね! みんなごめんね。ちょっと焦った。でも、でも、みんな聞いて。ニッポン人は、この街のことを、あきばって呼ぶ。あきばで同人誌を買う。ほらね、ここにも例、例、例文で書いてあるでしょ?」
パチュリーが指さしたところには、確かに『あきばで同人誌を買う。』と印されていた。
「でも、パチェちょっと聞いて。カードには、AKIHA-BARAって、書いて、ある」
レミリアが指さしたところにも、確かに『AKIHA-BARA』の文字が書いてあった。
「どっち、なんでぃす、かー!」
パチュリーがヒステリックを起こしてカードを投げ捨てる。
「Holy sh#t! F#ck your self!(ピー)」
「レミィ!?」
「ごめんなさいよぅ」
思わず気持ちが高ぶって英語の、しかも暴言を吐いてしまったレミリアに、パチュリーが一括を入れる。
「あのぅ」
今まで普通に参加しているだけだった美鈴が、ここへ来て発言をする。
「日本人は、最初の意味の、二文字と、後の意味の二文字で、略した言葉を、作る、人達です。だから、秋、葉、原も、それです」
「ちがうでしょー? アキバは三文字でしょー?」
パチュリーの的確なツッコミを受けて美鈴はすぐに引っ込む。
「ちがうでしょー……」
パチュリーのことを尊敬して止まない小悪魔は、パチュリーが言った言葉を小さく呟いた。
途端にレミリアがバンと机を叩く。
「皆、もっと真面目にぃ! やってください。この世界で、私みたいなVampireとか、パチュリーみたいなWitchが生きて行けないから幻想郷で頑張るんです! よ!」
空気が重くなる。そう、彼女達に時間は残されていないのだ。
メディアが発達し、どんどん科学が進歩していくこの世界では、異端狩りをするのに力を貸していたパチュリーのような魔女すら既に異端なのだった。さらには魔女達を排除していく魔女狩りという言葉すら聞かなくなった程だ。
しかし人々の見えないところでそれは確実に行われている。パチュリーとて銃弾を受けてしまえばどうしようもないだろう。
今この紅魔館はパチュリーの結界によって他から認識されなくなっているが、それがいつ暴かれてもおかしくないと言う。
そこで持ち上がったのが、幻想郷という地の噂を里帰り中魔界から聞いてきた小悪魔の提案した、館ごと幻想郷に移動するという計画だ。
準備は順調に整いつつある。
レミリアは、異端達の集まるそこでなら、フランドールが外を歩き、レミリアと共に夜空を飛ぶ日は近いと思ったのだ。
全ては、フランドールのために……。
あれ、と首を傾げるレミリア。
「フランドール!? フランドールはどこですか!?」
レミリアが焦って声を荒げた。
それもそうだ。
肝心のフランドールが日本語を話せなくてどうする。
レミリアは焦って立ち上がり、がつんと机に足をぶつけた。
「ずっとここにいるけど、あとお姉様達面白すぎ。ちょーウケる」
全員が声のした方を振り返ると、本棚の上に寝転がって頬杖をついたフランドールがいた。
「本当ウケるんだけど。笑っちゃいけない紅魔館かと思ったわ。あはは、あは、あはははは」
フランドールは腹を抱えて笑い出す。
「お姉様達どんだけ日本語できないのよ。その状態で幻想郷行こうとしてたの?」
今だに笑い転げているフランドールを見て、イライラの積もったレミリアが等々机をばんと叩いた。
「つーかテメー日本語ペラペラなんかい!」
その的確かつあまりにも自然なレミリアらしいツッコミがキッカケとなって、レミリアは自然な日本語が喋れるようになったのだった。
めでたさめでたさ。
>ちょさくけんとゆめのくに
……でぃz(ゆめのくにきょうせいそうかん
なんとも可笑しいというかなんというかw
日本語学校の授業風景にも、似たようなものがあったりしますよね
てかみんなかわいいやべぇ
パッチェさん落ち着いてw
そして流石の役に立たない知識人であった……。
>奇声を発する程度の能力様
本人達は至って真面目です。本気です。そんな、名前を言ってはいけないあの場所の名前を言ってしまうなんて。ディ……おっと。だけは絶対ダメよ。
>2様
秋葉原がアキバってよばれる理由が日本人の私にもわからない。日本人にも分からないから、本人達がいくら真剣にやったってわかるわけがないのですよおそらくきっと。アキバで変換して秋葉って出ますし。。。
>SAS様
レミリアは喋れる方ですよ! 多分。ご当地Tシャツとか地味に集めるタイプだと信じている。富士山の発音は折り紙付き。
>4様
最後はそれに頼りました。
>5様
ルーマニア説とか色々ありますが、私の脳内では美鈴以外全員イギリス設定。
>6様
うぼらぁおうぃえい。ありがとうございます。とりあえずにんにくをぶち込むことだけを意識しました。
>7様
紅魔館は屈指の可愛さですよ? レミリアとかもやばいですよね。フランちゃんなんてもうなんであんなに可愛いのか説明して欲しいんですけど。
>8様
一応元ネタというか参考にしたのはライブDVDで伝説級のロッカー達が日本公演をしたときに発したおもしろ発言です。沢山あるんですよー。
>9様
パチェは最高にハイです。こういうことはとことん真剣に取り組むいい子ですから。本の虫なだけでなく、ちゃんと知識人らしいこともやってくれます。
>yunta様
先に書いておくべきでしたね。このSSはヘッドフォンを装着してお楽しみくださいって。
>H.N.様
フランちゃんはアニメ、漫画を見て学んだんですよ。一時期「ハチクロがヤバい」が口癖だったみたいです。純粋ですから。
>12様
パチェさんは知識人ですからね。喋りも面白いんですよ。今度話してくるといいですよ。門前払いにならなければ、割といい人なので。上手くすれば仲良くなれるかもしれませんし。
>13様
音読推奨SSですね。新ジャンル!
>14様
マジですか。。。嬉しい、でもちょっと驚き。もっと褒めてもいいのよ? ジュディさん褒めて伸びるタイプだから。でも油断しないで。ジュディさん餌を与えすぎると増長して調子こくタイプだから。
>15様
こういうキャラ一人は欲しいなぁってことでの後づけキャラだったり。します。小悪魔はいい味だしてくれてると信じたいです。