午後2時30分、聖白蓮は思いつきでラジオのスイッチを入れた、そう、唐突に
その瞬間、スピーカーから楽しげな音楽が流れ出した
『東風谷早苗の侵攻放送in妖怪の山!』
「…一体なんなんでしょう」
『この放送は、守矢神社、紅魔綜合警備保障、ヤゴコロクリニック、稗田出版、上白沢ヒストリカルアカデミー、風見園芸、河城機械製作工業、四季映姫法律相談所、記念艦「聖輦船」、霧雨道具店、カワシロファイアーアームズの提供でお送りしまっす』
突然の出来事に頭をくらませつつ聖はラジオの前で座り込んだ
『さぁ今日はですネ、素敵なゲストを二人ほどお招きしましたよ、まずは記念艦「聖輦船」の名誉終身艦長、「キャプテン・ムラサのムラムララジオ」の村紗水蜜さんです』
『どうも皆さんこんにちは、提督です』
「…あの子今日一日見てないと思ったらこんな所に」
『さぁお次は紅魔綜合警備保障の十六夜咲夜さんです!』
『みなさんご機嫌よう』
『ではではお二人さん、これから二時間お願いします』
『お願いします』
『こちらこそ』
ここから聖の最悪の二時間が幕を開けた
『…ではちょっと前にハロウィーンだったと言うことでですね、お二人に問題を出しましょう』
『良いですねー』
『あら、楽しそうじゃない』
『うぇえぃ、良い反応来たところで出題しましょう、ハロウィーンで必ず言うかけ声の「トリック・オア・トリート」の意味をお答え下さい』
早苗が出題して数秒、咲夜が自信満々に答えた
『ズバリ「菓子がなければ激しくナイフが刺さるわ、菓子を出してくれれば優しくナイフを刺してあげるわ!」ね』
『違いますよ!咲夜さん、可愛い子供がそんな言葉を笑顔で吐き出したら早苗泣いちゃう(笑)』
『あら、違うの?』
『…惜しいと思いますけどね、私は』
『ちょっ、村紗さんも何言い出すんですか』
『私はてっきり「菓子を出さなければ大和の46cm砲が火を噴きこの区画ごと消し飛ばすぞ」って言う意味だとばっかり…』
『違いますよ、正解は「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」ですよ、お二人さん』
『え?大体合ってるじゃない』
『そうですよねぇ、咲夜さん』
『何なんですか?あなた方にとって悪戯って刺突や砲撃の事なんですか?』
『そうよ』
『そうです』
『成る程!矢張り幻想郷は常識にとらわれてはイケナイのですね!』
『その通り!』
『そうですよ』
「…あの巫女、私の話をちっとも理解して無いじゃないですか」
『とまぁトチ狂ったやりとりはここで終了とさせて頂きます、さぁお次はお待ちかねのお便りコーナーです』
『前振り長かったわね、提督』
『そうですね、咲夜さん』
『最初のお便りはペンネームうっかり寅さんからです』
『あ、これ星じゃないですか』
『ちょっと提督、実名はダメですって』
『そうですよ村紗さん』
「…星ったらどんなお便り出したんでしょう」
『えー何々、私は良く落とし物をするんです、その都度その都度私の部下に迷惑を掛けてしまいます、どうすれば落とし物を無くせるでしょうか、とのことです』
『…星、迷惑掛けてる自覚はあるんですね』
『そんなに酷いのね、うちの美鈴より酷いんじゃないかしら』
『電波に乗って幻想郷全土に流れてるけど大丈夫か?』
『大丈夫だ』
『問題ない』
『…………』
『でも星の落とし物癖は今に始まった事じゃないですからね、どうしようもないと思いますよ、早苗さん』
『そうね、うちの美鈴の居眠りもどうしようもないし』
『…この質問に対する返答は後日!』
『ちょっそれは酷いですよ、早苗さん』
『でもそんなの関係ねぇ!』
『早苗、古いネタを…』
『はい!お次行きましょう!ペンネーム津波☆ボーンさんからです』
『あ、すいませんこれ私です』
『提督ぅ?』
『村紗さん?』
『いやー、こういうの好きなんですよ、読まなくて良いですよ(笑)』
『いや読みます!』
『砂吐くー!(笑)』
『何々、実は私、水兵上がりなんです、ですから一通りの銃の操作はできるんです、因み気に入っていたのは百式機関短銃でした、早苗さんはどんな銃が好きですか?』
「…村紗って水兵だったんですか」
『サブイボでるわー(笑)』
『百式って紅魔綜合警備保障でも採用されていた気がしたわ』
『…流させて頂きます、さぁお次です』
早苗は若干疲れた声で三つ目のお便りを読み上げた
『お次のお便りはペンネーム水兵☆ムラサは私の夫さんからです』
『…私提督なんだけどな』
『えー何々、最近彼女を見る事が多くなっています、元々彼女は友人として付き合っていたはずです、ですが彼女の笑顔を見るたび私の胸は高鳴ってしまいます、仏門に身を置く私ですがこの気持ちを抑えることが出来ません、他人に言うことも出来ず悶々としていたところでこの放送のことを聞きお便りを出すことと相成りました、何か良い案をお願いします、だそうです』
『可愛らしい相談じゃない』
『私提督なんですけどねー』
『何処まで引っ張るんですか村紗さん、貴方の問題ですよ?言ってあげちゃって下さい』
『そうねそれが一番よ、提督』
『…分かりました、水兵☆ムラサ以下略さん、何度も言いますが私は提督です』
その瞬間、聖の部屋の隣で一輪突然泣き出したが、聖は右から左へ受け流した
『そこじゃねぇ!』
『さっすが提督ぅ!私に出来ないことを平然とやってのける!そこに痺れる憧れるゥ!』
『…水兵☆ムラサ以下略さん、私からそれなりの返答をさせて下さい、貴方の想いはいつか報われると信じて頑張って下さい』
『…それが一番ね、早苗、次のお便り』
『はい!次はコードネーム、ヴァシリ・モミツェフさんからです』
『厳めしいお名前ですね、咲夜さん』
『…この子の得技は狙撃ね、名前で分かるわ』
『えー何々、そろそろ雪山の季節です、おでんが美味しい時期です、お鍋も良いなぁ、早苗さんは冬に食べたい食べ物は何ですか?だそうです』
『…咲夜さんは何が食べたいですか?』
『そうねぇ、食べ物じゃないけどお嬢様が淹れてくれた紅茶かしら、面白い味がするから、提督は?』
『…そうですねぇ、やっぱりカレーですかね、まぁカレーはいつでも美味しいんですけどね、早苗さんは?』
『私はやっぱり家族で囲む食事が一番ですね、今日は何があったとか、今日のご飯はこんなものですよとかって話し合うのが一番なんですよ』
『早苗ったら必死ね、こんな所でも好感度上げようなんて』
『…可愛いなと思った三秒前の私を殴りたいです、全力で』
『ちょっ!酷くないですかお二人!私は本心で言ったまでです』
『でもさぁ考えようよ、ラジオなんだからガチを言っちゃイケナイよ、面白いこと言わなきゃ』
『ってことは先程のお嬢様が淹れてくれた~発言は…』
『勿論電波上での言葉です、ガチを言ったら美鈴の料理が食べたいです、美鈴に私を食べて欲しいです、性的な意味で』
『…お昼頃には非常に不適切な表現があったことを謹んでお詫びいたします』
『流石咲夜さん、時間帯を選ばない仕事だからこその発言ですね!』
『ありがとうございます、提督』
『…常識にとらわれませんよ、私は、さぁ残念ですがお時間と相成りました、今日は咲夜さんと村紗さんから重大発表があるそうです、まずは咲夜さんから』
『はい、今私が使用しているナイフがですねサクヤイザヨイMod.0と言う商品名で発売となりました、お求めになりたい方は香霖堂または霧雨道具店で扱っていますのでお気軽にお尋ね下さいだそうです』
『楽しみですねー、さてお次は村紗さん』
『来月くらいですかね、記念艦「星輦船」でカレーイベントが行われます、私もカレーを作るので皆さん来て下さい!』
『おぉこちらも楽しみですね、咲夜さん』
『そうね、私も行こうかしら』
『えぇ是非来て下さい』
『えー、東風谷早苗の侵攻放送in妖怪の山、ゲストは紅魔綜合警備保障の十六夜咲夜さんと…』
『村紗提督でお送りしました!』
『美鈴!愛してるわ!抱いて!』
『それでは来週も聞いて下さいね!』
『それでも私は提督です!』
『美鈴!大好き!愛してる』
『最後の最後まで邪魔しないで下さい!』
愉しげな音楽が流れ放送は終わりを告げた
「…さて、一輪を慰めに行きますか」
次の村紗のラジオのリスナーは、こーりん。
そして、早苗さんは聞く側から聞かせる側に。
まさか……