Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

枯葉少女

2010/10/31 23:55:13
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紅葉も過ぎ、冬の足音さえ近づこうかという頃。

木枯らしが吹き、山は土の色を見せ始め、人は家に閉じこもる。

茶色い枯れ葉の積もる中、真っ白な少女がひとり遊んでいた。


どれほどの量をかき集めたのか、山と積まれた枯葉に蹴りを入れ、思い切り散らしてみたり、手で掬い上げては、ぐしゃぐしゃにしてやはりこれも投げ散らしたり、果ては、枯葉の山に自ら飛び込んでみたり。

一人しかいないはずなのに、彼女は心の底まで騒ぎ遊んでいた。

騒霊トランペッターの肩書きは伊達ではない。



一人で青天井に盛り上がるメルランを、物凄く呆れた目で見ている人が二人。

秋の神 秋静葉と秋穣子だった。

いくら秋の神とて、枯葉でここまで盛り上がる事はできない。

というか、過ぎ行く秋を惜しみ、感傷にどっぷり浸るのが彼女たちの晩秋であった。

枯葉を求めてメルランが毎年押しかけるようになって以来、その願いは悉く打ち砕かれているが。




「本当に、」

穣子はため息混じりに言った。

「毎年毎年飽きないわねぇ。」

「何を言ってるの!」
体中に枯れ葉を貼り付けてメルランは反論する。

「秋と言えば枯葉!投げても叩いても握り潰しても何をしても、こんなに魅力的な音を出してくれるものなんてそうそう他にないわ!人工物である楽器とは違う、音楽を奏でようとはしない自然の物だからこそ!枯葉はここまで素敵な音を奏でるようになったのかと思うともう胸のドキドキを抑えられない!この素敵な枯葉のために私の秋は存在していると言っても過言ではない!それなのにこんなに素敵なアイテムをどうして皆はスルーするの?あんなに外を駆け回っていた子供たちも家から出てこなくなるし、子供たちはおろか人も妖怪も誰ひとりいやしない!枯葉の魅力に気がつかないなんて一生の半分を損してるようなものよ……ねえ?!」

「ねえ、って言われても……」
戸惑うばかりの穣子に、微笑んでいるばかりの静葉。メルランは、自分の論が理解されないことにたいそうご立腹だった。頬を膨らませて無言の抗議をしている。

「というか、貴女こそはしゃぎすぎじゃないの?そんな葉っぱまみれになって…」

地べたに座り込んでこちらを見ているメルランを起こそうとして、穣子は手を伸ばした。

その時

「隙あり!」
「ひゃあぁっ!」

  ぼざーん

穣子の腕をとったメルランはそのまま巴投げをかけ、穣子はそのまま枯れ葉の山に背中からダイブしてしまった。

それを見て笑っていた静葉は、さりげなく両手で枯れ葉を掬いあげた。
「あははは。きれいに決まってたわよ、穣子。」

「あははは、じゃないよー。…ってお姉ちゃん、何抱えてるの…?」

「それ、ばさー♪」

静葉の腕の中の枯葉は穣子の頭上へと投下された。
全身枯葉塗れになる神様。枯葉神の誕生である。

「わぷ ――ちょっと!ばさー、じゃないよもう!…ああもう、全身植物くさい…」

隣ではメルランが大爆笑していた。怒った穣子は、静葉も枯葉塗れにしてやろうと思い、立ち上がって、できる限りの枯葉を抱えた。
「お姉ちゃんも枯葉塗れにしてやる……!」

メルランもそれに応じて、ばさっと立ち上がる。

「おお♪今度はどんな音を出してくれるかしらね?」

ちょっと違う意味でノリノリだけど、気にしない。
静葉はそれを楽しむかのように

「あら、二人して穏やかでないこと。」
と言うと、また枯葉をひと掬いして

  ザッ

と撒いたかと思うと、周囲につむじ風のような風を起こし、静葉は目の前から忽然と消えてしまった。残っているのは幾ばくかの枯葉のみ。

木の葉隠れ、だった。どこで覚えてきたんだ。

穣子とメルランは驚いて辺りを見るが、気配すらしない。
ふたりはゆっくりと周りを見渡してみるが、木枯らしの音が聞こえるだけだった。

不意に、背後から気配を感じたメルランだったが、


  がしっ


「うわっ!……………え?」

次の瞬間、メルランは静葉に捕らえられていた。
その様子を見ていた穣子は、静葉の目が妖しく光るのを見逃さなかった。

「………何してるのお姉ちゃん?」
果てしなくいやな予感しかしない穣子。
最後の期待をかけて静葉に話しかけてみるが、その予想が裏切られることはなかった。

「いや、抱きつきやすそうだったから、つい。………あ、思ったより大きいのね。」
話してる傍からメルランにセクハラを仕掛ける静葉。そのままバランスを崩し、二人とも枯葉の山に飛び込んでしまった。

それでもメルランを離さなかったのは、何の執念だろうか。
「静葉ぁ……そ、そろそろ離してくんない?」
照れと恥ずかしさで頬が赤く染まっているメルラン。そんな必死の嘆願も、背後で至福の表情を浮かべた静葉には見えていなかった。

「やだ~。このまま抱き枕になって~。」
などとのたまっている。
穣子も痺れを切らし、
「いい加減にしなさいこのセクハラ姉貴!」
と叫んで、メルランを開放すべく枯葉の山に飛び込んでいった。



結局この調子で三人は日が暮れるまで遊び続け、その頃には全員枯葉姉妹となっていたとか。
実際、秋と言えば枯葉のイメージが強い喇叭吹きは休日です。
みんなが秋はどこ行ったとか秋姉妹は犠牲になったのだとか好き放題言っていたので、
脳内の静葉姉が私の方を向き、満面の笑みでこちらを見てきました。

「 書 き な さ い 」
無言の圧力は私に反論の余地を与えませんでした。
「Yes, Ma'am.」

こうして出来たのがこの作品です。

とりあえず読んでいただきありがとうございました。
本当はリリカ、ルナサと秋姉妹の絡みもあわせて三つセットで投稿しようと思ったのですが、一切筆が(カーソルが)進まないため、あきらめてメルランパートだけを投稿した次第です。ごめんなさい。リリカファンの方、特に本当にごめんなさい。

余談1
どうでもいいですが私の住んでいる場所では紅葉すら始まっていません。もうすぐ立冬なのに…!

余談2
秋と言えば?とプリズムリバー三姉妹の残りの方々に聞いたところ、
リリカ「…やっぱり味覚かなぁ?自生してるので美味しいのが採れる場所があるんだ。秘密だけどね。」
ルナサ「私は紅葉、ですかね。散り際の儚さなどは、言葉では言い切れない感慨深さがあります。」
だそうです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
喇叭吹きは休日
http://twitter.com/merliborn
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
のんびりした感じが良いな~
私もこんな風に遊びたいよ…
2.ケトゥアン削除
お前は嫁しか書けんのかこんにゃろー!
なーんてことは言いませんよ。ええ。
さっさとリリカも書けーなんて圧力かけやしませんよ。
さっさとリリカも書けーなんてね。
さっさとリリカも書けー。
さっさと書けー。
さっさとー。
早くー。
3.桜田ぴよこ削除
秋を楽しんでるなぁ。実に良い