雨は嫌いだ。
湿気で髪が思い通りにならないし、外には出られないし、何より…
――あいつに会えない。
「ちょっと咲夜、この雨どうにかならないの?」
「はぁ…。どうにもなりませんね」
「……おかわり」
「どうぞ」
咲夜に紅茶のおかわりを貰って、外をボーっと眺めた。
私が起きた時と同じように、雨は止むことを知らずに降り続けた。
「もういいわ。することもないし、もうひと眠りする」
「かしこまりました。では、何かありましたらまたお呼びください」
咲夜は一礼して「失礼します」と言って部屋を出た。
静かな部屋には雨が窓を叩きつける音が響いていた。
もそもそとベッドに潜り込み、あいつの笑顔を思い出しながら眠りについた。
「……さま、…うさま、…お嬢様!」
「…ぅん、…、へにゃっ!?」
「えへへ。おはようございます、お嬢様」
「な、…なんで、ここに?」
眠りにつく前に思い出していた笑顔がそこにあった。
優しく微笑むその顔に私は何度顔を赤くしたことか…。
いや、そうじゃなくて。
「仕事はどうしたのよ、美鈴?」
「今は休憩中ですよ~」
「…そう」
「今日は雨ですから、私から来ちゃいました!」
「なッ!?」
いつもは私が美鈴に会いに行ってる。
だって会いたいから。
声が聞きたいから、笑顔が見たいから。
「あれ? どうかしました?」
「な、なにが!?」
「いえ、お顔が赤い気が…」
「気のせいよっ!!」
「アイタッ! ちょ、叩かなくても…」
「あ、…ごめん」
恥ずかしくて美鈴の頭を叩いてしまった。
そして気が付いたら、謝っていた。
「ずいぶんと素直に謝りましたね」
「わ、悪いことしたら謝るのが普通でしょ!」
「ふふっ。そうですね。偉いですよ、お嬢様」
「子供扱いするなッ!!」
「え~? 私から見たら子供ですよ」
「……ばか」
いつもそうだ。
事あるごとに私を子供扱いする。
私はそんな風に美鈴に見て欲しくないのに。
「また寝ますか?」
「なんで?」
「子守唄でも、と」
「…また、そうやって」
「はい?」
私は美鈴の顔をジトーっと見ながら、「まあ、いいか」とため息を吐いた。
「なんでもないわよ。ねぇ、明日は晴れるかしら?」
「どうでしょう? でも、晴れなかったら私がまたここに来ますよ」
「……ほんとにバカ。」
「え、何か言いました?」
「なーんにもっ? ほら、子守唄、歌ってくれないの?」
「歌いますよ!」
美鈴は私の手をとって、綺麗な歌声を部屋に響かせた。
雨の音をかき消してくれる、そんな歌声に私はまた眠りについた。
この設定でもっと長いのが読みたいな~、ふへへ
美鈴の包容力もいい感じです。
自信もっていいですよ!