紅葉も見飽きた神無月、私は変わりもしない景色を縁側から眺めながらお茶を啜っていた
涼しいからは明らかにかけ離れた風を体に受けながら溜息をつく
「…何でそんな大荷物で来るのよ、幽香」
大根や里芋、秋の味覚がたっぷり詰まった背負い籠を置いて幽香が私の隣でお茶を啜っていたのだ
「穫れすぎてね、お裾分けよ」
「…これを私一人で食べきれと?」
「あら、貴女一人で食べろとは言ってないじゃない」
「何?呼ぶアテでもあるの?」
「そうね、例えば貴女の目の前に居る妖怪とか」
幽香は微笑みながら自分の顔を指し示していた
「…要は一緒にご飯食べようってこと?」
「そう、反論は許さないわ」
怖いくらいの笑顔を私に見せて幽香は上がり込んだ
「霊夢、この割烹着使うわよ」
「良いわよ、勝手になさい」
決して広いわけではない台所で私たちは料理を開始した
狭い台所では自由に行き来出来るわけではないから必然的に頼んだり頼まれたり
「幽香、野菜とかは?」
「切り終わったわ、鍋は何処かしら?」
「上の棚よ」
「ありがとう」
そう言って幽香は背を伸ばし大きめの鍋を手に取り私を払いのけた
「ちょっと、何するのよ」
「唯でさえ狭いのよ、貴女は向こうで待ってなさい」
「でも…」
「じゃあすっぱり言うわ、ここで二人固まってても動きにくいの、だから貴女は食卓の方の準備をお願い」
幽香はそう言うと私を台所から追い出した
閉め出された私は仕方なく食卓の準備に取りかかった
食卓の準備が終わった頃、見計らったかのように幽香が台所から声を掛けてきた
「…霊夢、そろそろ出来るわよー」
「こっちも大丈夫よ」
私がそう言うと台所から大きな鍋を抱えて幽香が出てきた
「何作ったの?」
「それは蓋を開けるまでのお楽しみ」
そう言って幽香は鍋をちゃぶ台に置き蓋を開けた
鍋には幽香が持ってきた食材が煮込まれた芋煮が入っていた
「美味しそう」
「私が作ったのよ、当たり前じゃない、食べましょ」
「そうね」
私たちはちゃぶ台に向かい合って座り込み食事を開始した
「…あ、このお芋美味しい」
「そうよ、私が丹精込めて作ったんだから」
「でも本当に美味しいわ、柔らかくて食べやすいわ」
「じゃあ料理屋でも開こうかしら」
幽香のその言葉を聞いて私はお店を開いた幽香を思い浮かべた
『…うぅ寒い寒い、来たわよ幽香…じゃなかった、女将さん』
暖簾をくぐった先には割烹着姿の幽香が私を待っていた
『あらいらっしゃい霊夢、今日は何にするの?』
『じゃあ女将さんのお薦めで』
『分かったわ』
幽香の返答を聞いて私は店内を見回した
店主の趣味がそのまま表された店内は清潔であり、居心地が良かった
『…にしても貴女が店を開くとはね』
『おかしいかしら?』
『確かに最初はおかしいかな、とは思ったけどここ来て分かったわ、貴女はやっぱり貴女ねって』
『なによそれ』
『そうだ女将さん、お酒、お燗で』
『はい』
既に暖めていたのだろうか、私の目の前には暖かくなった徳利とぐい飲みが置かれていた
『女将さん、一個足りないわ』
『え?誰と飲むの?』
『…貴女よ、幽香』
私の言葉を聞いた幽香は顔を赤らめながらぐい飲みをもう一つ用意した
『じゃあ、幽香…じゃなかった女将さんの新しい出発に、乾杯』
『…乾杯』
私一人しか客がいない空間にぐい飲みとぐい飲みがぶつかり合う音が静かに響いた
妄想の世界から帰ってきた私は呟いた
「…案外お店も良いかもね」
「そうかしら?」
「うん、何か似合いそうね」
そう言いながら芋煮を頬張り続ける
食べ始めてから一時間近く、鍋からは既に具が消えていた
「…はぁお腹いっぱい、美味しい野菜ありがとね、幽香」
私は一杯になったお腹をさすりながら幽香に礼を述べた
「良いわよ、私もあんなに美味しくできるとは思わなかったから」
「どういう事?」
「実はこの料理ある人に教えて貰ったの、それで、その…」
「私を実験台にしたと」
「そ、そうじゃないのよ、一度作って美味しかったから貴女にも食べて貰いたくって…」
「ふーん、まぁ、美味しかったから良し」
私はそう言って空になった鍋と食器を持って台所へ向かった
片づけを終え居間へ戻った私はちゃぶ台に突っ伏して眠りこけている幽香を見た
普段の彼女からは到底考えられない程無垢で安らかな顔に私は少しだけ触れてみた
「…んぅ、霊夢」
「なっ、何?」
思わず手を引っ込め私は幽香の顔を眺めた、相変わらず寝息をたて幸せそうな寝顔だった
「…寝言か、びっくりした」
まるで赤ん坊のように静かに寝ている幽香をどれくらい見つめただろう、そろそろ空気が寒くなってきたので私は眠りこけている幽香を起こした
「幽香、起きなさい」
「…あら、私ったら眠っちゃったみたいね」
幽香が欠伸をしながらそう言った
「別に良いのよ、美味しい物食べさせて貰ったんだから」
「…ん?」
何かに気付いたかのように幽香は外へ目を向けた
「…どうしたの?」
「見て霊夢、満月よ」
「あら本当」
「綺麗ね」
夜空に浮かぶ球体を暫く眺めた後私は唐突に質問をした
「…こんな綺麗な月には美味しいお酒が欲しいと思わない?」
「奇遇ね、今私もそう思ったところよ」
そう言って私は台所へ向かい酒が入った一升瓶とぐい飲みを二つ持ってきた
「お酒が残ってたからね、二人で飲みましょう」
そう言って酒を注いだぐい飲みを渡すと幽香は微笑んで言った
「…器は一つで良いわ、霊夢」
「どういう事?それじゃ一人しか飲めないじゃない」
「こうすればいいのよ」
そう言って幽香はぐい飲みを私から引ったくると一息で飲み干し私を抱き寄せた
「ちょっと、何するのよ…」
抗議の言葉を言い切る間もなく私の唇は幽香の唇によって塞がれ酒が流し込まれた
「美味しかったかしら?」
若干紅くなった顔の幽香は私にそう問うた
「…バカじゃないの」
やられっぱなしは性に合わない、そう思って私は幽香からぐい飲みを引ったくると一升瓶から酒を注ぎ一息で口に酒を放り込んで幽香の唇を自分の唇で塞いだ
口づけをして数秒、私はいつの間にか幽香に押し倒されていた
「…ご馳走様、霊夢、そして頂きます」
涼しいからは明らかにかけ離れた風を体に受けながら溜息をつく
「…何でそんな大荷物で来るのよ、幽香」
大根や里芋、秋の味覚がたっぷり詰まった背負い籠を置いて幽香が私の隣でお茶を啜っていたのだ
「穫れすぎてね、お裾分けよ」
「…これを私一人で食べきれと?」
「あら、貴女一人で食べろとは言ってないじゃない」
「何?呼ぶアテでもあるの?」
「そうね、例えば貴女の目の前に居る妖怪とか」
幽香は微笑みながら自分の顔を指し示していた
「…要は一緒にご飯食べようってこと?」
「そう、反論は許さないわ」
怖いくらいの笑顔を私に見せて幽香は上がり込んだ
「霊夢、この割烹着使うわよ」
「良いわよ、勝手になさい」
決して広いわけではない台所で私たちは料理を開始した
狭い台所では自由に行き来出来るわけではないから必然的に頼んだり頼まれたり
「幽香、野菜とかは?」
「切り終わったわ、鍋は何処かしら?」
「上の棚よ」
「ありがとう」
そう言って幽香は背を伸ばし大きめの鍋を手に取り私を払いのけた
「ちょっと、何するのよ」
「唯でさえ狭いのよ、貴女は向こうで待ってなさい」
「でも…」
「じゃあすっぱり言うわ、ここで二人固まってても動きにくいの、だから貴女は食卓の方の準備をお願い」
幽香はそう言うと私を台所から追い出した
閉め出された私は仕方なく食卓の準備に取りかかった
食卓の準備が終わった頃、見計らったかのように幽香が台所から声を掛けてきた
「…霊夢、そろそろ出来るわよー」
「こっちも大丈夫よ」
私がそう言うと台所から大きな鍋を抱えて幽香が出てきた
「何作ったの?」
「それは蓋を開けるまでのお楽しみ」
そう言って幽香は鍋をちゃぶ台に置き蓋を開けた
鍋には幽香が持ってきた食材が煮込まれた芋煮が入っていた
「美味しそう」
「私が作ったのよ、当たり前じゃない、食べましょ」
「そうね」
私たちはちゃぶ台に向かい合って座り込み食事を開始した
「…あ、このお芋美味しい」
「そうよ、私が丹精込めて作ったんだから」
「でも本当に美味しいわ、柔らかくて食べやすいわ」
「じゃあ料理屋でも開こうかしら」
幽香のその言葉を聞いて私はお店を開いた幽香を思い浮かべた
『…うぅ寒い寒い、来たわよ幽香…じゃなかった、女将さん』
暖簾をくぐった先には割烹着姿の幽香が私を待っていた
『あらいらっしゃい霊夢、今日は何にするの?』
『じゃあ女将さんのお薦めで』
『分かったわ』
幽香の返答を聞いて私は店内を見回した
店主の趣味がそのまま表された店内は清潔であり、居心地が良かった
『…にしても貴女が店を開くとはね』
『おかしいかしら?』
『確かに最初はおかしいかな、とは思ったけどここ来て分かったわ、貴女はやっぱり貴女ねって』
『なによそれ』
『そうだ女将さん、お酒、お燗で』
『はい』
既に暖めていたのだろうか、私の目の前には暖かくなった徳利とぐい飲みが置かれていた
『女将さん、一個足りないわ』
『え?誰と飲むの?』
『…貴女よ、幽香』
私の言葉を聞いた幽香は顔を赤らめながらぐい飲みをもう一つ用意した
『じゃあ、幽香…じゃなかった女将さんの新しい出発に、乾杯』
『…乾杯』
私一人しか客がいない空間にぐい飲みとぐい飲みがぶつかり合う音が静かに響いた
妄想の世界から帰ってきた私は呟いた
「…案外お店も良いかもね」
「そうかしら?」
「うん、何か似合いそうね」
そう言いながら芋煮を頬張り続ける
食べ始めてから一時間近く、鍋からは既に具が消えていた
「…はぁお腹いっぱい、美味しい野菜ありがとね、幽香」
私は一杯になったお腹をさすりながら幽香に礼を述べた
「良いわよ、私もあんなに美味しくできるとは思わなかったから」
「どういう事?」
「実はこの料理ある人に教えて貰ったの、それで、その…」
「私を実験台にしたと」
「そ、そうじゃないのよ、一度作って美味しかったから貴女にも食べて貰いたくって…」
「ふーん、まぁ、美味しかったから良し」
私はそう言って空になった鍋と食器を持って台所へ向かった
片づけを終え居間へ戻った私はちゃぶ台に突っ伏して眠りこけている幽香を見た
普段の彼女からは到底考えられない程無垢で安らかな顔に私は少しだけ触れてみた
「…んぅ、霊夢」
「なっ、何?」
思わず手を引っ込め私は幽香の顔を眺めた、相変わらず寝息をたて幸せそうな寝顔だった
「…寝言か、びっくりした」
まるで赤ん坊のように静かに寝ている幽香をどれくらい見つめただろう、そろそろ空気が寒くなってきたので私は眠りこけている幽香を起こした
「幽香、起きなさい」
「…あら、私ったら眠っちゃったみたいね」
幽香が欠伸をしながらそう言った
「別に良いのよ、美味しい物食べさせて貰ったんだから」
「…ん?」
何かに気付いたかのように幽香は外へ目を向けた
「…どうしたの?」
「見て霊夢、満月よ」
「あら本当」
「綺麗ね」
夜空に浮かぶ球体を暫く眺めた後私は唐突に質問をした
「…こんな綺麗な月には美味しいお酒が欲しいと思わない?」
「奇遇ね、今私もそう思ったところよ」
そう言って私は台所へ向かい酒が入った一升瓶とぐい飲みを二つ持ってきた
「お酒が残ってたからね、二人で飲みましょう」
そう言って酒を注いだぐい飲みを渡すと幽香は微笑んで言った
「…器は一つで良いわ、霊夢」
「どういう事?それじゃ一人しか飲めないじゃない」
「こうすればいいのよ」
そう言って幽香はぐい飲みを私から引ったくると一息で飲み干し私を抱き寄せた
「ちょっと、何するのよ…」
抗議の言葉を言い切る間もなく私の唇は幽香の唇によって塞がれ酒が流し込まれた
「美味しかったかしら?」
若干紅くなった顔の幽香は私にそう問うた
「…バカじゃないの」
やられっぱなしは性に合わない、そう思って私は幽香からぐい飲みを引ったくると一升瓶から酒を注ぎ一息で口に酒を放り込んで幽香の唇を自分の唇で塞いだ
口づけをして数秒、私はいつの間にか幽香に押し倒されていた
「…ご馳走様、霊夢、そして頂きます」
幽香かわいいなぁ、にやにや。
ごっつぁんです。