第七番SSC(Shortcut Sequential Control)解凍
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実行。
電波天候、…許容範囲内
波長妨害自然素子、オールクリア
微細波動、微調整完了
方向、…良し
角度、…良し
チューニング、0X0Y10X1X010Y011XY001X1X0YY101X1X10Y1XY100…OK
「えっと…あとは…ここをこう、してっと」
回路選断
第一から第三回線をシャットダウン。
第四回線を旧路に一時接続。
ルート設定、r-246
ダイレクトコネクト
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接続
旧路切断、成功
安置加速、オールクリア
完了
「あーあーテステス」
『…毎度毎度それいらないと思うんだけど』
「気分です!!」
『まあいいわ…こんばんは』
「はい、こんばんはー」
『ちゃんと使えた様ね』
「ウドンゲさんの成果とかデバイスとか手つかずで置いてあったので大丈夫だとは思いましたが凄いですねコレ」
『一応私が居た頃の軍の回路だから巡回もほとんどないでしょ、それにただ単に直接飛ばすよりかは安全だし安定もしているし。傍から見ても形が滅茶苦茶な波長がただ単に飛び交ってるようにしか読み取れないから』
「凄いですねー、ウドンゲさん」
『レイセンも出来るようになるよ』
初めて繋がったあの日から幾日か経ち二人の関係は警戒をお互いに解き、気軽に話し合えるような仲にまでなった。
とは言え鈴仙は月にとっては罪人、レイセンはその罪人にこっそり連絡を取っているわけなのでばれたらお互いに大変な事になる事は間違いない。
鈴仙はレイセンに言った事がある。
――もし通信している事がばれたら私の行方を追っていた、そして居場所も知っておこうと思った、とか何とか言って逃げちゃっていいよ。
それに対しレイセンは
――そんな事は出来ません!!
とハッキリ言い切った。
その声だけでも彼女が本気で言っている事が分かった。
何故そこまで本気で言ってくれたのか、鈴仙は分からなかった。
『まあ今日もお疲れ様』
「はい、ありがとうございます。と言っても今日は訓練じゃなかったんですけどね」
『へえ?まさか依頼?』
「ええ、十楼院の護見方、代夜様の護衛を任されまして一日中ずっと皆で護衛してました。結局何も起きませんでしたが」
『それは…お疲れ様』
「ありがとうございます」
『こっちはそうねえ…師匠に薬の配達を頼まれたんだけど帰りにまたてゐが落とし穴を仕掛けててさ…』
「あはは…ご苦労様です。師匠ってあの、お薬を作るのがとても上手い人なんでしたっけ」
『ええ、そうね』
「と言う事は弟子入りしているウドンゲさんもお薬を調合出来るんですか?」
『ええ、偶に自分でも調合してるわ』
「そう言えば前から聞こうと思ってたんですけどてゐさんってどんな人なんですか?」
『てゐ?そうねえ…悪戯好きでいつも落とし穴とかたらいとか仕掛けてたりするんだけど…冬なのにいつもピンク色のワンピース着てて首からニンジンの首飾りを下げてるんだよね、耳はたれ耳で黒髪』
「へー。―――え?」
『ん?どうしたの?』
「え、いや…こっちにも似たような子がいるから…その」
『ああ、そっちも大変ね』
「あはは…」
レイセンは誤魔化すと同時に既視感を無理矢理飲み込んだ。
その後、また数十分程談笑した後二人(二羽?)は通信を切った。
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「ふぅ…今日も疲れた…」
今日も鈴仙は籠を背負い出来るだけ人里の人たちから関わらない様にしながら師匠に頼まれた仕事をこなす為に定期的に一軒一軒回って行く。
竹林に戻ってくるとてゐの仕掛けた罠が無いか少しずつ確かめながら進んで行く。
数歩先に土が掘り返された跡がある。
「きゃ!?」
それを大股で越えようとした先にも土を大きく掘った跡がありそれを踏んだ鈴仙は落とし穴に落ちてしまった。
「いたた…てゐーー!!!いるんでしょーー!!!!」
「何?鈴仙」
幸福を呼ぶ兎、因幡てゐである。
「何?じゃないわよ!いつもいつも言ってるけど危ないじゃない!!!」
「私は罠を作るのが好きなだけ、誰がかかろうと知ったこっちゃないよ」
「だったらさっさとあげてよ、あ、この前みたいにロープに油染み込ませるのは無しね」
「はいはい…ほら」
上からロープが垂れてくる。軽く引っ張ってみたがちゃんとしたロープのようだ、何か逆に疑ってしまう。
「ふう、まったく…てゐ、私先に戻ってるからね」
「あ、ちょっと待って鈴仙」
「ん?何?」
「鈴仙、今から疑問形、否定形の単語を言わせないために単刀直入に言うよ。昨日、月の、誰と、何を、話してたの?」
「…!!!」
さすがに気付かれないように色々工作しているだけにてゐがその言葉を発するのが驚きだった。
「…やれやれ、これでも何十万年と此処に住む天為(てゐ)の兎神だ。眼隠して耳ふさいで鼻が利かなくなってこの竹林に放り出されてもが全て風が教えてくれる、隠れたつもりでも私にはお見通し。で、なにしてたの?」
「そ、それは…」
分かっていた事だが月の住人と仲良くしている事がばれたらどうなってしまうのか、その恐怖が鈴仙の言葉を絞る。
「…あー、別に私は地上の兎だから喋っちゃっても大丈夫だよ?私には関係ないから。というかお師匠様ももう月の使者とか気にしてなさそうだし」
「…昨日、レイセンと、日常について話してた…」
「レイセン?鈴仙じゃなくて?」
「…レイセンの方は私が月に居た頃の名前、それで今はあの子の名前」
「へー…日常ってのは?」
「薬とか売ったりだとかの日常」
「ふーん…、最後に聞くけどその子はどんな声なの?」
てゐはこの問いに求めているのは音の高低では無いはずだ、それなら答えるべきなのは―――
「…すごく無邪気で明るくて」
「ほうほう?」
「……すごく、暖かかった…」
鈴仙は俯きながら答えた。
「そっか、分かった。それじゃあもう行っていいよ」
「てゐは帰らないの?」
「いや、まだやる事があるからね、先に帰ってていいよ」
「…分かった。あと落とし穴仕掛けないでよね」
「わーったわーった、早く行きなよ」
それを聞くと鈴仙は納得しない様子で竹林の中に入って行った。
「さて」
鈴仙が居なくなったのを確認するとてゐは頭の中で鈴をイメージし、その音を響かせた。
数分ほど待つと竹林から一匹の妖怪兎がやって来た。
兎は少し離れた所で立ち止まり軽くてゐに会釈した。
「伝言役を頼みたい、こっちに来てくれる?」
「―――」(コクリ)
てこてこと妖怪兎が近づいてきて耳を寄せる。
「お師匠様に―――――――――」
「―――」(コクリコクリ)
「それじゃあよろしく」
妖怪兎は役目を果たす為に永遠亭に戻って行った。
「それじゃあ私も準備しますかね」
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「疲れた―!!」
「あはは…お疲れ、レイセン」
「うん、皆もお疲れ」
今日も訓練ではなく護衛任務だった綿月家の防衛隊は任務を終え同僚たちとほんの少し愚痴を混ぜつつ本日を振り返りながら大浴場で風呂に浸かっていた。勿論、依姫様も一緒に。
「にしても依姫様、少し任務が多い気がするんですけど。特に最近」
「確かにそれは私も前から不思議に思っているけど下手に捜しまわると面倒な事になりかねないから、今は流るるままにが一番」
「だとしても何でうちなんでしょう…」
そう綿月家の本来の仕事は対地上の監視、および問題因子の排除だ。護衛などを受ける部隊は他にもある。
「それこそ私にも分からないわ」
「また紫の仕業では?」
「それはたぶん違います、と言うよりアレなら真正面からまずは来るでしょう。今一番の問題はコレ『不審なモノが一つも見つからない、噂好きの兎たちから情報が一切回って来ない』」
「…何か大変な事が起きてしまうのでしょうか」
「大丈夫よ、争いが起きても少しくらいの穢れなら浄化出来るわ。あとやる事は守るだけ」
「依姫様…」
「ふぅ、そろそろ私は上がるわ。貴方達はしっかり疲れを落としなさい」
「…もしかして明日も任務ですか?」
「その通りよ、レイセン」
「………」
「大丈夫よ何も起こさせないわ」
そう言って依姫はレイセンの頭を撫でると浴場を出た。
「…はぁ、ホントにどうなっちゃうんだろ」
「レイセンはいいよねー、依姫様に撫でてもらってさ」
「へ?」
「撫で心地がいいのかな?」
「へ?え?」
「わっ!やっぱり耳がモフモフ」
「あう…?」
「髪もサラサラ~」
「あ、あう~~!!?」
ワアキャアワアキャアドタドタバシャバシャ
「うー、酷い目にあった…」
浴場から出てまだ少し濡れた頭の上にタオルを乗せ自分にあてがわれた部屋に戻る。
明日に備え部屋の隅にある金庫から銃や弾丸を取り出し異常が無いかチェックし銃はまた分解してから脂を拭き取って掃除してから金庫に戻す。
私達が使う銃剣のナイフなども良く研いでこれも金庫にしまう。
私達の部隊に配られるまた特注のブレザーは他のとは違い熱や寒さ、水などに強く大体の弾丸は弾き刃物も受ける事が出来る。
制服に異常が無いかを調べた後仕込み武器の調整をして服を壁に掛ける。
そして金庫から一丁の拳銃を取り出す、名前はColt Python357、35.7口径(約9mm)の弾を打ち出す6弾装填式のリボルバーだ。
「…ウドンゲさん」
レイセンが先の大戦で逃げ出してしまった後に残された私物の中に混ざっていたモノで所々に丁寧に使いこまれた跡がある。
後で聞くとこの銃は彼女の愛器で訓練の時も任務の時もどんな時でも持ち歩いていた、そう教えてもらって依姫様から譲り受けた一品だ。
部隊に入ってばかりで銃の経験も無く、訓練でも的に上手く当たらない自分もコレを使うと見事に真ん中に命中する不思議な一品でもある。
グリップがすぐに手に馴染んで気持ちがスッと落ち、銃口がぶれずにまるで弾が的に吸い込まれていくような感覚なこの銃はきっとウドンゲさんに凄く大事にされていたのだろう。
何日も、何年も掛けて使われてきたこの愛器を置いて最後、戦場に立ったウドンゲさんの気持ちは分からないけど
「…悲しかったのかな」
拳銃をクリーニングした後ブレザーにしまいレイセンは掃除道具などを金庫に戻し鍵をかける。
鈴仙と会話するようなって早一週間、レイセンは鈴仙に憧れとは違う感情を抱えていた。
鈴仙は凄く綺麗で、優しくて、だけど少し悲しそうで。
鈴仙と話しているだけで凄く暖かくなる。
そんな彼女に会ってみたいと思う様になった、だけどそんな事はあってはいけない。
お二人様への裏切りになるし何より彼女はもっと悲しそうにするだろう。
でも会いたい、触れたい、抱きしめられたい。
でも叶わない。
ただ、今はほんの少しでも彼女の力に成れるように祈るだけだ。
「いってきます」
誰もいない部屋に向かって一声かけレイセンは外に出て行った。
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「さて、そろそろ…ってこれは割り込み?一体誰が…」
…ソース解析、ハック開始
所属、不明
発信源、不明
方向性、不明・前歴無し
電波形、不明・前歴無し
UNKNOWN
「…!どうやって…?どうやってウドンゲさんの回路に侵入してしかも一切不明なんて…」
『あー、あー、もしもし』
「…!!…どなたですか」
『お、通じた。そんなに警戒しなくていいよ』
―――私はただの健康マニアさ、ちょっと話がしたくてね。
そんな事を言った後、声の主はクスクスと笑った。
面白くなってきたなー
続きが気になりますね
とても面白かったので野暮な物言いかもしれませんが銃剣は普段は余り丁寧に研ぎません
戦闘前にちょこっと削る感じです、レイセンの任務は護衛ですから別に研がなくても…
ですがお話自体はとても魅力的でした
矢張りこれは貴方が広めなければ!
>身長高) 咲夜、美鈴、紫
こ ま っ ち ゃ ん は ど う し た
後編?を楽しみに待たせてもらいます
続きが楽しみです。
漫画とかかなりフリーダムなのか
投げ槍 様
あー…表現が足りませんでしたね…。
護衛は守る事が仕事ですが護衛対象が襲われそうになったりする場合に対応しなければなりません。それに依姫様も言った通り何が起こるか分からない。なので念のため…と言った感じで補正していただきたいです。
御指摘ありがとうございます。
唯 様
マジですか…、責任重大?www
身長ですがZUNの回答自体古いものなので…。
3 様
そう、鈴レイの時代がやって来るのだ!!
次は幕間の予定です。お楽しみに。
4 様
他の所でもZUNを呼び捨てにしている人は多々いますし、むしろZUNと呼ぶのが普通な感覚です。呼びやすいですし。ZUNの呼び名は通称なので敬称は此処で書く場合も略させてもらっています。
通称や愛称などはお互いに畏まらずに簡単に呼べる名前だと私は解釈していますので私は呼び捨てでZUNと呼ばせてもらっています。特別に敬意を払って呼ぶ場合は神主です。
ただし、何かしら許可を得たりする時は勿論呼び捨てにするなどはしません。
そこのところを分かっていただければ幸いです。
奇声を発する程度の能力 様
頑張ります。
6 様
設定で他だと…
博麗神社は博麗結界の中に合って幻想郷の中心とは反対側に向いている。つまり外側に鳥居がある。なので本来は上空からか山賊の様に林から侵入するかの二択で神社に入る事になる。大体は飛んできてるけど。
東方求聞史記で紅魔館の覧で紅魔館は窓があまり無いと書かれているが隣の挿絵にはこれでもかと言うほど多く書かれている。
(そこらへんの設定は曖昧?)
そんぐらいですかね。