ブランケットを椅子にかけた私は玄関へ向かう。
扉をあけると、白黒のお嬢ちゃんがちんまり佇んでいた。
薄い胸の中心にはきらきら輝く雫型のペンダント。
黒いベストの上でころんと主張するそれは、光をあつめて輝く朝露を思わせた。
「あら綺麗ね。あなたには正直似合わないわ」
「む、失礼な奴だな。こいつは可憐な女の子にはうってつけのアイテムなんだぜ?」
可愛らしく拗ねた顔に映えるのは、ばら色の頬といつもより艶めく唇。
紅をさすなんてめずらしいこともあるものね。誘惑でもしにきたのかしら。
「ますます似合わないわね。あなた自分のこと客観的に見たことある?」
「う、うるさいな。まぁ聞けよ。これを押すとな、音が鳴るんだ。」
エプロンは染み一つ無い真っ白のおろしたて。
くるくると纏まった金の髪を綺麗に結わえた魔理沙に目を奪われる。
いつもと違う彼女を見ていると、なんだか胸がちくちくと痛んだ。
「あら、素敵ね。聞いてみたいわ」
「くくっ」
したり顔で笑う魔理沙。ああ、油断したわ。
「まって……」
「じゃあ押すぜ。ほらっ!」
リリリリリリリリリリリリリリリリリリ!
「きゃっ!?」
辺りに響き渡る警報。不覚にも悲鳴を上げてしまう。
ドッキリの大成功に小憎らしい笑みを浮かべて仁王立ちする、魔理沙。
「くくくくっ! どうだ。驚いたか?」
私の声に慌てて飛び出してきた人形たちは
魔理沙の顔を見て手に構えていたランスを静かにおろす……
はずもなく、主人を脅かした不届き者を成敗してくれると臨戦態勢をとった。
「まてっ、落ち着け! 悪かったよ謝るからっ!」
「……さ、そろそろ中に入りなさい。桃色ほっぺがりんご色になってるわ」
少し冷めたクッキーは魔理沙に嚥下される。一枚、二枚と、魔理沙に取り込まれていく。
私の入り込めない領域に、私の焼いたクッキーはいとも簡単に。
それも喜んで受け入れられるのだ。
「でな、霊夢が爆発して……」
「へー、霊夢らしいわね」
「萃香粉塵爆発」
「あるある」
「ちゃんと聞けよコラ」
私の耳は今はストローなのよ。だって魔理沙がいつもより可愛いから。
どういうつもりで、そんな姿で家に来たの?
問う術なんてないわよ。訊けるわけないわ。イライラする。
「ちゃんと聞けよ? あのな、霊夢が」
「は」
ああ、そういうこと。そういうことなわけ。
椅子から立ち上がって腰のベルトを解く。
つかつかとテーブルの向かい側の魔理沙へ歩み寄る。
「えっ、アリスどうし」
ぽかんと開いた口からクッキーのバターが香る。
魔理沙の目にリボンを巻いて目隠しにして
「さあどうしてくれようかしら」
魔理沙の左肩を右手で掴む。
私の脳みそをあなたに直接つなげてあげられたらいいのに。
「な、どうしたっていうんだ」
「どうしたと思う? ふふ、今からあんたを壊してあげるわ」
魔理沙の小さな手にペンダントが握られる。
カタカタと振動が伝わってくる。魔理沙が、私に怯えている。
その事実に私まで震えてくる。
「鳴らすぞ……っ」
「鳴らしてみなさいよ。ここを誰の家だと思ってるの?」
魔理沙の肩を押さえつける指に力をこめる。頭の中で、あの警報が鳴り止まない。
あなたは可憐な女の子だわ。花のような笑顔を、私の手で摘み取ってあげたい。
他人の手で『女』になったあなたなんて見たくないのよ。嫌、私から、私から、可愛いあなたを奪わないで!
「い、や」
そんなこと言いたいのはこっちのほう。
「いやぁ……」
壊せるわけ、ない。
「馬鹿ね、冗談よ」
指から力を抜き、反対の手で魔理沙の頭をぽんぽんと叩く。
緊張の糸が切れた私は床にへたり込み、情けなく涙を流した。
「……馬鹿、は、お前だろっ……! 馬鹿、ばか、ありすなんてきらいだ……っ」
「からかってやっただけだわ。あなたの能天気な馬鹿面みてるとイラっとするの」
「そんな震えた声で言ったって説得力ない」
「ふん……あなたの好きなフルーツでゼリーでも作ってあげる」
「……やっぱりアリスすき。果物いっぱいいれて」
っ……。
「現金な子ね。私も好きよ」
「ほんとうか?」
「私のことがね」
「ばか……なぁ、この目隠し早く外せよ」
「嫌よ。しばらくそうしてなさい?」
「いやだ、アリスの、綺麗な顔が見れない」
「え」
魔理沙の口元がはにかむ。
あ。
「お化粧頑張ったんだぜ、これじゃ、ちゃんと見せられないし」
扉をあけると、白黒のお嬢ちゃんがちんまり佇んでいた。
薄い胸の中心にはきらきら輝く雫型のペンダント。
黒いベストの上でころんと主張するそれは、光をあつめて輝く朝露を思わせた。
「あら綺麗ね。あなたには正直似合わないわ」
「む、失礼な奴だな。こいつは可憐な女の子にはうってつけのアイテムなんだぜ?」
可愛らしく拗ねた顔に映えるのは、ばら色の頬といつもより艶めく唇。
紅をさすなんてめずらしいこともあるものね。誘惑でもしにきたのかしら。
「ますます似合わないわね。あなた自分のこと客観的に見たことある?」
「う、うるさいな。まぁ聞けよ。これを押すとな、音が鳴るんだ。」
エプロンは染み一つ無い真っ白のおろしたて。
くるくると纏まった金の髪を綺麗に結わえた魔理沙に目を奪われる。
いつもと違う彼女を見ていると、なんだか胸がちくちくと痛んだ。
「あら、素敵ね。聞いてみたいわ」
「くくっ」
したり顔で笑う魔理沙。ああ、油断したわ。
「まって……」
「じゃあ押すぜ。ほらっ!」
リリリリリリリリリリリリリリリリリリ!
「きゃっ!?」
辺りに響き渡る警報。不覚にも悲鳴を上げてしまう。
ドッキリの大成功に小憎らしい笑みを浮かべて仁王立ちする、魔理沙。
「くくくくっ! どうだ。驚いたか?」
私の声に慌てて飛び出してきた人形たちは
魔理沙の顔を見て手に構えていたランスを静かにおろす……
はずもなく、主人を脅かした不届き者を成敗してくれると臨戦態勢をとった。
「まてっ、落ち着け! 悪かったよ謝るからっ!」
「……さ、そろそろ中に入りなさい。桃色ほっぺがりんご色になってるわ」
少し冷めたクッキーは魔理沙に嚥下される。一枚、二枚と、魔理沙に取り込まれていく。
私の入り込めない領域に、私の焼いたクッキーはいとも簡単に。
それも喜んで受け入れられるのだ。
「でな、霊夢が爆発して……」
「へー、霊夢らしいわね」
「萃香粉塵爆発」
「あるある」
「ちゃんと聞けよコラ」
私の耳は今はストローなのよ。だって魔理沙がいつもより可愛いから。
どういうつもりで、そんな姿で家に来たの?
問う術なんてないわよ。訊けるわけないわ。イライラする。
「ちゃんと聞けよ? あのな、霊夢が」
「は」
ああ、そういうこと。そういうことなわけ。
椅子から立ち上がって腰のベルトを解く。
つかつかとテーブルの向かい側の魔理沙へ歩み寄る。
「えっ、アリスどうし」
ぽかんと開いた口からクッキーのバターが香る。
魔理沙の目にリボンを巻いて目隠しにして
「さあどうしてくれようかしら」
魔理沙の左肩を右手で掴む。
私の脳みそをあなたに直接つなげてあげられたらいいのに。
「な、どうしたっていうんだ」
「どうしたと思う? ふふ、今からあんたを壊してあげるわ」
魔理沙の小さな手にペンダントが握られる。
カタカタと振動が伝わってくる。魔理沙が、私に怯えている。
その事実に私まで震えてくる。
「鳴らすぞ……っ」
「鳴らしてみなさいよ。ここを誰の家だと思ってるの?」
魔理沙の肩を押さえつける指に力をこめる。頭の中で、あの警報が鳴り止まない。
あなたは可憐な女の子だわ。花のような笑顔を、私の手で摘み取ってあげたい。
他人の手で『女』になったあなたなんて見たくないのよ。嫌、私から、私から、可愛いあなたを奪わないで!
「い、や」
そんなこと言いたいのはこっちのほう。
「いやぁ……」
壊せるわけ、ない。
「馬鹿ね、冗談よ」
指から力を抜き、反対の手で魔理沙の頭をぽんぽんと叩く。
緊張の糸が切れた私は床にへたり込み、情けなく涙を流した。
「……馬鹿、は、お前だろっ……! 馬鹿、ばか、ありすなんてきらいだ……っ」
「からかってやっただけだわ。あなたの能天気な馬鹿面みてるとイラっとするの」
「そんな震えた声で言ったって説得力ない」
「ふん……あなたの好きなフルーツでゼリーでも作ってあげる」
「……やっぱりアリスすき。果物いっぱいいれて」
っ……。
「現金な子ね。私も好きよ」
「ほんとうか?」
「私のことがね」
「ばか……なぁ、この目隠し早く外せよ」
「嫌よ。しばらくそうしてなさい?」
「いやだ、アリスの、綺麗な顔が見れない」
「え」
魔理沙の口元がはにかむ。
あ。
「お化粧頑張ったんだぜ、これじゃ、ちゃんと見せられないし」
二人ともすごく「少女」って感じするなぁ……いや実際少女なんだけどその、ニュアンスでわかって!
アリスの焦りと甘さの二つの意味で、読んでいるこちらが叫びたくなってきました。
もう、すごく、素敵です!
とってもストレートに甘々でした。
良かったです。
なんというアリマリ…!
これであと5年は戦えますね~^^
タイトルからギャグかと思ったら素敵なお話、お見事。
ご馳走様でした。