Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

十六夜さんと13日の金曜日じみたもの

2010/10/27 16:20:33
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 捲くれ上がるスカートからちらちら見える太もももいいけれど、健康的な細いふくらはぎもいいと思わないかしら?

 咲夜……?

 パチュリー様、わかっていますか? あのふくらはぎ、そして膝の裏。いいじゃありませんか。

 えー……っと、咲夜?

 わかっていますとも、パチュリー様もむしゃぶりつきたいんですよね?

 咲夜……。

 こう、ね、ふくらはぎをなぞった瞬間、ぴくんと反応するのがいいんですよ。そうして、若干涙目で、緊張して震えながら、不安そうに上目遣いに見てくるのがいいんですよ。

 咲……夜。




 ぎゅいんぎゅいん。




 ――咲夜ちゃん6歳の記憶。

 咲夜、太ももの素晴らしさもいいけれど、それだけでは駄目よ。

 えっ?

 脚、と言うものを愛してこそ、よ。

 はぁ……。

 例えばほら、脚を開いて座って、そこから滑るようにして太ももに乗っかり、その奥を隠すような、けれど、ちらりと見えているような慎ましやかな場面とかどうよ?

 よくわかりません。

 やれやれ、貴方はもっと、脚についての見識を深めるべきだわ。

 はぁ……?




  ◆




「パチュリー様……?」

 その日、十六夜咲夜は図書館に音も無く現れた。何をすると言う訳でもなく、単に暇だった、と言うか紅茶のお代わりを持ってきただけなのだ。かちゃ、と片手に持った盆の上で茶器が揺れる。
 かび臭い図書館に、魔女の姿がない。
 辺りを見渡したって、やっぱり本棚が妙な威圧感と共に立ち並んでいるだけだ。

「パッチュン様……?」

 もう一度、呟いた。
 けれど返事は無い。
 しかし、ふと、咲夜の耳にその音が聞こえた。
 それは何かが回る音だった。異常な回転速度で何かが回る音だった。ぎゅいんぎゅいん回る音だった。それは、図書館の奥の部屋――そうパチュリーの部屋から聞こえてきていたのだ。

 ぎゅるんぎゅるん。

 ごくり、と咲夜は息を飲む。
 机の上に紅茶を置いて、咲夜はそろりと歩みを進める。心臓が、痛いほど脈打っているような感じ。緊張しているのだろう。そう自覚する。あの向こうには何かがある。それが何であろうと――たとえ魔女の作った何かだとしても、それは十六夜咲夜にとって脅威なりえるものだろうか。
 いや――思考を切り替える。
 常に万全に。

「パチョリー様……」

 そろそろと扉に身体を寄せる。
 耳を当ててみると、中からぎゅるるるるると回転する音。
 それに聞き覚えはない。
 けれどそれが、どこか恐ろしいものに聞こえるのは気のせいだろうか?
 ――気のせいだ。
 そう言い聞かせる。
 どくん、どくん、と心臓の脈が激しくなる。
 ごくり、と息を飲んで、咲夜はドアノブに手を掛けた。

 ――がちゃり。

 ゆっくりと、咲夜は扉を開ける。抵抗も無く、実に呆気無く扉は開いた。中を覗きこむと、そこにはねっとりとした泥濘のような闇がわだかまっていた。冷や汗が頬を伝うのがわかる。

 ぎゅいーんぎゅおんぎゅおんちゅいーん!

 音がする。
 激しい回転音。
 咲夜は扉の隙間から顔を入れて、中を覗き込む。
 ぞわり、と絡みつくように、生温い空気が咲夜を包む。思わず、不快な感触に顔をしかめた。
 
「パチュリ……えっ!?」

 彼女が辺りを見渡して、ふと上の方を見た瞬間だ。咲夜はそこに、殺人鬼を見た。
 そう、それはまるで彼のジェイソン・ボーヒーズのような出で立ちだった。ホッケーマスクの殺人鬼そのものだった。彼女は今、あのジェイソンと対峙しているのだ……!
 その手には、血みどろのチェーンソーが……! 
 けれどしかし、それが咲夜を驚愕させたのでは無い。
 その頭。ナイトキャップのような帽子。そして、寝巻きのような服装――それはパチュリー・ノーレッジを示すものだ。

「ふごふごふごー!」

 殺人鬼は唸る。
 咲夜は瞬時に判断し、時を止め、

 ばたん。

 鍵を探して扉を閉めた。
 いい笑顔で、額の汗を拭きながら、まるで一仕事終えたあとのように爽やかな息を吐きながら、うん、と腰に手を当てた。手の中でちゃらっと鍵が音を立てる。
 背後のドアは、向こう側からどんどこ叩かれているけれど、気にしない。
 気にしたら負けよ。
 ポジティブにいきましょう。
 咲夜はいつでも前向きです。
 洒落にならんくらいどこどこ叩かれているけれど、咲夜は気にしない。
 だって完全で瀟洒なメイドだもん。
 かちゃかちゃと紅茶やら何やらを持ち去る用意をしながら、咲夜はこれからのことについて頭を巡らせた。どうしよっかなぁ……お嬢様起こして太ももに顔をこすり付けたい気分よね。って言うか太ももいいよね。ふくらはぎもいいよね。あの未成熟な青い果実みたいなふくらはぎ。細くて折れてしまいそうだけれども、その純白の足に頬ずりしたらいったいどんな感触なのだろうか。ゆったりと咥えて噛んだあとを残してもいいかもしれない。細いそれに残る、汚してしまったような歯型。
 
 どんどんがちゃがちゃどがちゃ!

 音が大きくなるけれど気にしない。

 どん……とん……がちゃがちゃ……ちゃ……うっ……ぐす。

 泣き声が混じり始めた。
 ドアノブがちゃがちゃしながら、泣いているというのは結構罪悪感を誘うものがある。やはり鍵を閉めたのはやり過ぎだっただろうか?
 けれど、開いていたら開いていたで、そのまま追ってきそうな気配だったからこれで正解だろう。
 
 ……ぐず……すん……うっ……ぐすん。

 泣き声が聞こえる。
 そろそろ開けてやってもいいだろうか?
 ちゃり、と鍵が音を立てる。
 それを鍵穴に差し込んで、がちゃりこ、と鍵を開けた。
 その瞬間。

 ばーん!!

 扉を蹴破るようにして、ジェイソンコスのパチュリーが現れた。
 何やら怒ったように「ふご、ふごごごふごふごふー!」とか何とか言ってるけれども、単語一つ聞き取れない。ぎゅるんぎゅるん回るチェーンソーを咲夜に突きつけてくる。
 咲夜はやれやれと内心でため息を吐いた。
 それでは、違うんですよ、パチュリー様。
 肩を竦める動作。
 そして――――

 一瞬だった。
 一瞬の内に、ホッケーマスクにナイフが突き立った。
 ぱきん、と軽い音と共に、ホッケーマスクが割れた。
 中から現れたのは、見知った魔女の顔。その顔は驚愕に彩られていた――何てことを、と。

「咲夜! あなた何をしてくれるのよ」

 きゅるるるるん。チェーンソーが回る。

「違うんです。違うんですよ、パチュリー様!」
「な、何がよ……?」

 咲夜は妙な言いがかりをつけるような剣幕で、パチュリーにがつんと言った。

「ジェイソン・ボーヒーズは、チェーンソーなんて使わないんですよ! どっちかと言うと鉈とかそう言うのです」

 パチュリーはやけに驚いたような表情で後ずさった。

「ば、ばかな……聞いた話だと、確かに武器はチェーンソーだったはず……!」
「それが勘違いなのですよ!」

 そこで咲夜はごそごそとポケットの中を漁り、それを取り出した。それは皮製のマスクだった。マスクをパチュリーに手渡しながら言う。

「チェーンソーは、どっちかと言うとこれを被っているレザーフェイスことババ・ソーヤーの方です! 公開された時期が似通ってるので混同されがちなんですよ……」
 
 朽ちた人の皮のようなマスクをパチュリーは感慨深げに受け取ると、その目の部分をじっと見詰めた。

「ところで咲夜」
「はい」
「あなた、こう言うのって、どうやって手に入れてるの?」
「通販です」
「通販?」
「ええ、八雲印の通販です。結構何でも手に入りますよ? 隙間ってすごいですね」
「ああ、そう。だから殺人鬼ものばっかりなのね」
「ええ」

 えっへんと胸を張る。

「私は大の殺人鬼(映画の)マニアですから」

 ああ、あんなスペルカード使うしね。パチュリーは大きくため息を吐いた。
 マスクを愛しげに眺めると、それを自身の顔に被せた。
 そして――



  ◆



「咲夜ぁああああああああああああああああああああ!」

 レミリアの絶叫が紅魔館の廊下に響く。
 それと共に「ふごふごおふー!」ちゅいーんばりばりばりー、とチェーンソー。そう、レザーフェイスに扮したパチュリーがレミリアを追っかけまわしているのだ。
 咲夜は、天狗から奪ったカメラを手にし、その瞬間を待っている。そう待ち望んだ瞬間だ。
 パチュリーのこれも、何もかもがすべてこのときの為にあったと言っても過言ではない。咲夜はここに来た当初から、それをする為に生きてきたとも言える。
 それほどまでに待ち望んだ瞬間であり、それは刻一刻と近づいていた。
 ダッシュで逃げるレミリアの足元――そうそこには小石。躓けるくらいの大きさの石だ。咲夜の明晰な頭脳によってもたらされた計算通りに、レミリアはそれにつまずく。その通りに設置したのだから。
 そして石の角度も完璧だ。
 あれならば、石がお尻を突き刺すこともないし、必ずこちらを向いて倒れる。
 長年の研究の成果だ。
 そう――いま――!

 きゅいーんぎゅるるるるん!

 チェーンソーが唸りを上げる。

「いやぁー! ――えっ!? きゃっ!」

 そしてレミリアは、咲夜の計算そのままに、完璧に、石につまずいて倒れたのだ。
 その瞬間。
 咲夜のカメラのフラッシュが迸る。
 レミリアは、つまずき、そのままうつ伏せには倒れなかった。そこが咲夜が、完璧で瀟洒と言われる所以だ。なんと咲夜はその圧倒的な才能の発揮によって、その状況を計測していたのだ。
 レミリアはおかしな転び方をしたのだ。
 くるんと一回転するような奇妙な転び方。
 そう――咲夜はこの転び方をするように石を置いたのだ。それ故にレミリアは仰向けに倒れる。そうつまり――!
 手を床について、上半身を起こしたような格好。そしてその足は――

「ふ、ふごごー!」

 パチュリーが叫びを上げる。
 そうだ。
 咲夜だってそうしたい。
 けれど、シャッターを押す手が止まらない。
 レミリアの足は――見事にMの字に開かれていたのだ!
 そこには、長いスカートに守られていた細い足が見えた。その上に、柔らかそうな、しなやかな太ももが見えた。今はプライベート。弾幕ごっこなどと言うことはしないので、ドロワーズは穿いていないはず――故に咲夜は困惑した。
 あれは――なんだ、と。
 あそこには、確かに守られたデルタ地帯、白い聖三角があるはずなのだ。
 なのに――それがない。
 いや――

「お、嬢様?」
「へっ? やぁっ!」

 がば、と手でスカートを押さえる。
 瞬時に赤く沸騰する顔。
 あうあうと震える口からは言葉は出てこない。
 けれど、それが恥ずかしがっていることだけはわかる。
 だから、咲夜はぐっと手を握りこんで、そこから親指だけ出して、ガッツポーズをとった。
 パチュリーのレザーフェイスのマスクからは、鼻血が噴出した。


 すなわち、彼女は珍しくノーパンだったのだ。


 そしてレミリアは爆発した。









[おしまい]
 
「ねー、美鈴、上の方が騒がしいよ」
「そうですね」
「ねー、美鈴、どうしてそんな嬉しそうな顔してるの?」
「いえ、咲夜さんは私の教えを守っているようでしたから、安心しました」
「ふーん。ところでどうしてそんなににやけてるの?」
「フランドール様を肩車してるからです」
「ふーん」


 そんな一日。



 ◆



 そんなよくある一日。
 レザーフェイスが気になったら、悪魔のいけにえって言うホラー映画を見よう。
月空
コメント



1.削除
足っていいよね、うん。
2.名前が無い程度の能力削除
悪魔のいけにえと思ったら悪魔がいけにえにされていた
3.奇声を発する程度の能力削除
足は素晴らしいよね、うん。
4.名前が無い程度の能力削除
足。それは世界を救うもの。
5.名前が無い程度の能力削除
パチュリー様元気過ぎwww
そしてまさかのノーパン
6.名前が無い程度の能力削除
てっきりぱっちぇさんの策略かと思ったら、めーりんwww