Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

両想い→←両想い

2010/10/20 18:06:35
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この物語は「両想←→両想い」の続編となっております。
でも、以下の相関図だけ理解してもらえたら大丈夫です。



咲夜 ―― I Love you ―→ 霖之助 ←― 恋心―― 神綺 ―― 溺愛 ―→アリス
咲夜 ←― 好きだと自覚 ―― 霖之助 ―― 恋心 ―→ 神綺 ←― 母親 ――アリス








ファーストキスは、太陽の味がした。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



香霖堂の外はまだ夜だ。

といっても、あと半刻もすれば、白の世界が姿を見せるだろう。

雀の歌声で幻想が目を覚まし、新しい一日が始まるのだ。

でも、もう少しだけ待ってほしいな

だって、朝日が昇ってしまったら、二人だけの時間が終わってしまうから。

だからあと少し、本当にあと少しでいいから、待っててね。

せめてこのお茶会が終わるまでは。



「霖之助さん~コーラまだですかぁ?」

「おかしいな。たしかこの棚にあったはずなんだけど」

「こーら♪ こーら♪」


んふふ~コーラですよコーラ。

魔界にしか無いと思っていたコーラが、まさかここにあるだなんて、私こと神綺ちゃんはびっくりです!

コーラは命の水ですよ。

あの黒くてたくましくて、口に入れると独特の香りが鼻を刺激して、飲み込むのに少し苦労しますが、喉を通る時の感触がなんともいえないんです!

早く飲みたいなぁ……霖之助"産"のコーラ♪


「お、あったあった。こんなところに紛れ込んでいたのか」

「コーラありました!? コーラ!!」

「どうやら最後の一本のようだ。はいどうぞ」

「やったぁ! いただきま……」

「どうしたんだい神綺?」


時が止まるというのは、こういうことを言うのですね。

魔界の神ともあろう私が、ついつい口を半開きにしたまま固まってしまいましたよ。

あははは……


「霖之助さん、これ、なんですか?」

「何って、コーラだが?」

「なんだか、青白く光っているのですけど?」

「うん、光っているね。なんでも世界で数十本しかない貴重なコーラだそうだよ」


そうなんだ。貴重なんだ、コレ。

うん、えぇっと……世紀末?

なんというか……すごく……臨界っぽい。


「本当にコーラなんですか?」

「あぁ。名前は確か、ヌ○コーラ クァンタムだったかな」

「……」


私は何も言わず、その場を立ち上がった。

そして窓を開け、まだ登っていない太陽に向けて、"全力で"投げた。

何かをやり遂げた後って、なんだか清々しいですよね?


「な、なにをするんだ神綺!」

「霖之助さん。あれは他に必要としている人が居た。それだけですよ?」

「は? なんだかよく分からないのだが?」

「はいはい、細かいことは気にしてはいけません。というわけで霖之助さん仕切り直しです」


戸惑う霖之助さんを放置して、私は大きな声で言った。


「私"普通の紅茶"が飲みたいです!!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




< 両想い→←両想い > ~ここからが本編ですよ~






それは本当に僅かな時間だった。

霖之助さんの唇は、小さく震えながらも、私を受け入れてくれた。

優しく触れるだけの口づけ。

呼吸が止まる瞬間。

そっと離れた顔を見るのが恥ずかしくて、俯いてしまう。

でも貴方は私を強く抱き寄せてくれた。

離れたくない。離さない。こっちを見て、私だけを見つめて。

肩を寄せ合い、愛おしい貴方を見つめる。

眼と眼で通じあうなんて、どこかで聞いたフレーズだけれど、今なら分かる。

貴方の心は……とても温かい。

好き……大好き、霖之助さん♪















ってなるはずだったのにぃぃぃぃ!!









香霖堂の外はまだ夜だ。

といっても、あと半刻もすれば、白の世界が姿を見せるだろう。

雀の歌声で幻想が目を覚まし、新しい一日が始まるのだ。

でも、もう少しだけ待ってほしい

だって、朝日が昇ってしまったら、二人だけの時間が終わってしまうから。

だからあと少し、本当にあと少しでいいから、待っててくれ。

せめてこのお茶会が終わるまでは。








「紅茶でいいかい?」


僕は答えを待ちつつ、ティーポットの準備をしていた。

居間の方から、はーいと聞こえるのを確認し、茶葉をもむ作業へと移る。

茶葉の量は2人分。

僕と神綺が飲む分だけで十分だろう。

よくポットのための一杯と言われるが、咲夜によると幻想郷の水は軟水だから必要無いとの事。

適度に沸騰したお湯を、酸素が含まれるように入れる。

ポットの中で茶葉を泳ぐ様子を、僕はじっと見つめていた。

と、後ろに人の気配がする。

この場にいるのは僕と神綺だけ。

そう、二人っきりのよるなのだから当然だ。

僕は振りかえりたい衝動にかられるが、ここは我慢。

少しでも目を離すと、おいしい紅茶にはならないのだ。

おいしくな~れ、おいしくな~れと、常に念を送ることが一番大事だと、咲夜に強く言われたのを覚えている。

真剣な雰囲気を察してくれたのか、神綺は何も言わず僕肩越しに紅茶を見ている。

規則正しいと息が、柔らかな髪の毛が、肩にそっと添えられた小さな手が、僕の心を穏やかにする。

おいしくな~れ。神綺の為に、おいしくな~れ。

念じることきっちり240秒。

紅茶をカップへとうつす。

紅茶独特の香りが、香霖堂を満たしている。

神綺の為だけに入れた力作の完成。

あとは咲夜が作ってくれたクッキーをつまみに、遅いお茶会を開催を僕は宣言した。


「おまたせ。さぁ居間へ行こう」

「ほわぁ……霖之助さん、紅茶を入れるのうまいですねー」

「それは味を確かめてから言ってもらえるかな?」

「ふふ……そうですね♪」


場所を居間へと移し、こたつと呼ばれる机に入り足を突き合わせる。

そして白いカップに口をつけた。


「おいしい! 霖之助さんこれすごくおいしいですよ!!」

「そう言ってもらえると淹れた甲斐があるよ。うん、今日のはいい出来だ」


鼻腔と舌と喉で紅茶を感じる。

さすが原産が太陽の畑なだけはある。

幽香に感謝だな。

頭の中で、ほほ笑む女性にお礼を言いながら喉をうるおしていく。

それからは他愛のない会話が続いた。

神綺から湧き出る話は多種にわたり、まったく飽きることがない。

アリスの話、魔界の話、料理の話、仕事の愚痴。

まるで無限の泉のように湧き出る話に、僕は年甲斐もなく夢中になっていた。

永遠にこの時間が続いてくれたらいいのに……


紅茶が尽きるころ、空はついに白みがかってきた。

ずっと話続けていた神綺も、どことなく眠そうだ。

いや、眠そうに見えるのは、僕が眠たいからか。

楽しく夢中とはいえ、眠気というのは襲ってくるのだな。

そんな僕に気を使う様に、神綺はある提案を出した。


「霖之助さん、こちらへどうぞ♪」

「いや、それはさすがに恥ずかしいだろう?」

「そうですか? いつもアリスちゃんにしてあげてますよ?」


言うが早いか、神綺は僕の頭を掴み、優しく自分の膝へと誘った。

所謂、膝枕という奴だ。それも横向きではなく、正面スタイル。

後頭部が柔らかい太股に挟まれる。

布ごしに伝わる温もりが、どことなく恥ずかしい。

それなのに、僕の心臓はゆっくりと鼓動していた。

これ以上ない安心感に包まれ、このまま寝入りそうになる。


「霖之助さん」


神綺の声に、一瞬で意識が浮上する。

思考のしている途中で、半分寝ていたのだろう。

浮上した意識では、神綺の言葉に薄くしか反応を返せなかった。


「ごめん、寝ていたようだ」

「ふふ、このまま寝ていただいてもいいですよ?」

「それは……魅力的な……話、だ」


話ながらも僕の意識は確実に沈んでいる。

あぁ……もっと神綺を感じていたいのに、意識が許してくれない。

何か神綺が話しているのに、脳が理解してくれない。

ただ頭が掴まれる感触だけ覚えている。

顔を横に向けさせられた時、僕の意識は完全に落ちた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「霖之助さん?」

「ん……ごめ……寝て……だ」

「ふふ、このまま寝ていただいてもいいですよ?」

「そ……魅力……話……」


膝枕を始めてからすぐ、霖之助さんは寝てしまった。

そうとう疲れていたみたい。

こんなに夜遅くまで、悪いことしちゃったかな。

でも楽しかったから、ついつい長いお茶会になっちゃった。

ずっと私が話続けて……あうぅ、ごめんなさい霖之助さん。

私の膝で眠る愛おしい人の顔を見つめる。

安心しきったその顔が、なんだかとても嬉しい。

何かお礼できないだろうか。

ふと浮かんだ思いに、自分自身で答えを求める。

返ってきた答えは、すでに私の手の中にあった。


「ちょっと、頭動かしますね」


私の言葉にも答えないくらい熟睡しているようだ。

ちょうどいい。だってこれは恥ずかしいから。

霖之助さんが起きているままでは、とてもじゃないけれど出来ないから。

起こさないように優しく頭を掴み、横へ向ける。

そして耳を覆っている髪の毛を、そっと描き分けた。

別に背徳的なことをしているわけではないのに、どきどきする。

ただ耳掃除をしてあげるだけなのに、どうしてかな。耳まで真赤になってしまう。

深呼吸を一回して。すぅ~はぁ~っと。

あとは意気込一つ。よし!

私は長い棒を、霖之助さんの小さな穴へと差し込んだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



僕はどれくらいの間寝ていたのだろう。

ふと気が付くと、目の前に胸があった。

ちょっと視線と落とすと、そこには女の子の寝顔がある。

あぁそうか。神綺に膝枕してもらっていたのだったか。

ふむ。体を起こしたいのだが、神綺がかなり前屈で寝ている為、それは叶いそうにない。

ちょっとでも体を起こしたら、僕は幸せになってしまうからだ。

いまのはオヤジっぽかったか……反省。

それにしても神綺の二つの立派な物から甘い香りがする。

……少しだけ、5cmだけ顔を浮かせてもいいかな?

待て待て、寝置きの僕ストップだ。欲望に身を任せるだなんてそんなのただの狼だ。

でも据え膳食わねばとも言うぞ?

それは男の身勝手な妄想にすぎない。僕たちはもっと段階を踏んでおぶっ!

お約束とは、約束だからこそお約束なのだろうか。

何を言っているか分からないと思うが、簡単に言うと、ふとももとおっぱいのサンドイッチは最高であるということだ!

お、落ちつけ僕の思考。

無理。

あぁ、ごめん神綺。僕もやっぱり男なんです。

それからというもの、神綺が起きるまでの間、僕は幻想郷をたっぷりと堪能してしまった。


「現実と幻想を隔てるものは布がたったの一枚。僕の幻想郷は、ここにあった。うぼぁ」



太陽が昇り、いつもなら開店の準備し始めるころ、神綺は目を覚ました。

尤も今の姿がどんな状態かを理解するまで、3分ほど時間を要したが……

真赤になりながら、じとっと汗ばんだ胸を気にする姿は可愛いとしか言いようがなかった。

うむ、ごちそうさまでした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「最後に看板を立てかければ、完了っと」


いつもより遅めの開店なのは御愛嬌。

僕だって寝坊くらいする。ということにしておいてくれ。

原因は昨日の夜更かし、もあるけれど、実は違う。

神綺の可愛いと愛でていた時に気がついたのだが、やたら耳がよく聞こえるようになっていた。

聞いてみると、僕が寝ている間に耳かきをしてくれていたらしい。

生まれてこのかた、女性に耳かきなんてしてもらったことがない僕は感動した。

だって夢が一つ叶ったからだ。

好きな女性に耳かきをしてもらうこと。

小さな夢だと笑われてもいい。

それでも僕は、嬉しかったから。

だから僕は、そのお礼をしたんだ。

その時の様子は滑稽だったかもしれないな。

どんな風だったかって?

少し恥ずかしいが、まぁ、こんな感じだった。


「ところで神綺。なんだか耳がすっきりしている気がするのだけど」

「えへへ。実は寝ている間に、耳かきをさせてもらいました」

「耳かき……だって? なんて、なんてことをしてくれたんだ!」

「え!? あ、あの……もしかして迷惑、でした?」

「まさか!! 僕の夢は好きな人に耳かきをしてもらうことだったんだ! それが叶って……僕は嬉しい!」

「そ、そんな泣くほど喜んで貰えて、私もうれ……えぇええ!? す。すすすすす好きって、今好きって」

「ありがとう神綺。お礼に僕も耳かきをしてあげよう、さぁ横になって」

「ちょ、ちょっと待ってください、ってうおおぅ世界が横向けに!?」

「ふふ……僕の耳かきの腕はプロ顔向けだよ。なにせ咲夜のお墨付きだからね」

「あの、そんな事より好きってどういう意味で、って咲夜さんのお墨付き?」

「あぁ。お得意様特権として、咲夜には時々してあげているんだ。それが最初のころはヘタクソって怒られてばかりで……」

「……」


そこから先は何があったか、想像におまかせするよ。

たぶん、それで合ってると思うから。

とまぁいろいろあって開店が遅れたわけだ。

さて、開店準備も終わって、僕はいつもの椅子に座っている。

神綺をひざの上に乗せて。


「神綺、女性にこんな事言うのは失礼なのは分かっているのだが……」

「失礼と分かっているのなら我慢してください」

「うぐ……その、僕が悪かった。許してくれ」

「本当に反省してますか?」

「う、うん」


僕は浮かれすぎていたのだろう。

耳かきの腕を過信していたのもある。

とにかく、神綺を怒らせてしまったのは痛い。

罰として一日中、僕は神綺の椅子として働くことになった。

役得といった奴ちょっと表へ出ろ。

一日中だ。さすがにトイレは降りてもらえるが、ご飯のときも接客の時もだという。

正直な話、神綺は軽い方だと思う。

それでも出るところは出てるし、おしりだって肉つきは良い。

これは膝枕の時に十分に身をもって確認した。

だから、なんというか……危ないのだ。

重さはこの際問題とはならない。

これでも僕は半分は妖怪だしね。

何が問題なのかというと、この密着感である。

膝に感じるふくよかな重み。

神綺の脇の下に通された僕の腕。

髪の毛から漂ってくるシャンプーの香り。

本を読むために、肩越しに顔を出すとどうなるか分かるだろう?

真横に神綺の顔があるのだ。というか頬同士が当たってる。

あぁ、頭がクラクラする。

これ以上は本当にまずいから、僕は神綺に言った。


「神綺、これはまずいと思うんだ。見た目的にも、僕の意思的にも」

「我慢してください」

「僕だって男なんだぞ?」

「知ってます」

「がおー、おそっちゃうぞー」

「もちろん反撃する権利はありますよね?」

「が、がお……」


Oh my G・O・D

神の力は簡便してほしい。

僕の抵抗は無残にも真っ向からつぶされてしまった。

こうなったら本を読んで忘れるしかない。

心頭滅却すれば神綺もまた涼しいってやつだ。

さぁ読むぞ。集中して読むぞ。

頬にあたるに温もりも、どうしても目に入ってくる胸の谷間も、谷間も……


「そいや!」

「自分で自分を叩いて、何をしているのですか?」

「……煩悩退散」


無理、無理な時、無理ならば、無理だから。

そもそも好きな人と密着して反応しない男がいるだろうか。

居るはずがない! 僕はここに断言する!

ならばこの状態を大いに楽しもうじゃないか。

全身で神綺を感じようではないか。

悪魔に魂を売り渡すかのように、神綺分を吸収しようそうしよう。

さぁこのままきゅっと神綺を抱きしめて……


「? 霖之助さん、なにかお尻に硬いものが当たって……」

「すいません。ごめんなさい。お願いですから降りてください。お願いします……」

「じゃぁ、あの言葉をもう一度言ってください。」

「本当に反省している。すまない」

「そうじゃなくって、ほら。夢が~の時に、その……」


耳かきの時?


『まさか!! 僕の夢は好きな人に耳かきをしてもらうことだったんだ! それが叶って……僕は嬉しい!』


あ れ か。


「どうしても言わないとだめかい?」


僕の問いかけに、神綺は小さく頷いた。

頬を通して、神綺も熱くなっているのが分かる。

僕は決めた。

しっかりと言おうと。

幸せになれる事を祈って。

好きな人を恋人にしたいから。

僕は勇気を出して、紅に染めた耳に唇を付けて、囁いた。



「僕は神綺の事が好きだ」



「はぅ……予想以上の破壊力、です」


神綺は俯いて僕の手をぎゅっと握りしめてくる。

震える肩に力が入り、痛いくらいに爪が食い込む。

その痛みで、言ってしまったのだと、理解した。

ついに告白をしてしまった。

抱きしめたい。力いっぱい、目の前の女性を抱きしめたい。

でも、その前に確認をしないと。

これからの生き方が決まる答えを。


「神綺。答えを聞かせてくれるかい?」

「うぅ……わ、わたしも……」


口の中でもごもごと言っているが、聞きとれない。

神綺の言葉で、僕は聞きたいんだ。知りたいんだ。

神綺の気持ちを。





「わ、私も、霖之助さんの事が……好きです」




僕はきっと幻想郷一の幸せ者だと思う。

だって好きな人をこうして抱きしめているのだから。


「神綺、愛してる」

「あうぅ、もう聞きましたよ~」

「何回でも言いたいんだ。神綺、好きだ」

「私も。大好きです♪」


愛情の証を求めてしまうのは強欲なのだろうか。

たとえそうだとしても、お互いに求めているのなら問題はないだろう。

僕は唇を求めていることを意識していた。

神綺も目を瞑り、その時を待っている。

後は、誓いに想いを馳せ、つながるだけ。

ゆっくりと、お互いの顔が近付く。

一秒ずつ前へと進む。

膝の乗る彼女を支える手で、優しく引き寄せながら、僕たちの距離は今……零になった。

それは触れ合うだけのキス。

じっと繋がり続けるだけのキス。

もう、絶対に離さないという約束だ。

どこからか風が吹いたとき、僕たちは唇を離した。

ゆっくりとお互いに吐息を吐きだす姿が、なんだかおかしくて。

どちらともなく、笑っていた。


「キスってすごいです。なんだか色々な悩み事が全部ふきとんじゃいました」

「あぁ。愛おしいって気持ちだけが、僕の中を駆け巡っていた」

「はい……あの、霖之助さん。もしよかったらもう一度、しませんか?」

「あぁ。今度はもっと深くしよう」

「深く……はぃ」








愛とはなんと素晴らしいものなのか。

無限にわいてくるこの感情は、無敵であるように感じる。

今ならだれに襲われても、僕は負ける気がしない。

神綺を守るためなら、この熱い想いを力に変えて僕は戦おう。

たとえ相手が誰であろうと。














「ふぅん。そういうこと。ずいぶんとお熱いのね。ところでこのナイフがほしいのですけれど、おいくら?」


……このナイフとは、今現在Nowで僕の後頭部に刺さっているナイフのことなのだろうか。

間違いなくそうなのだろうな。


「痛い」

「きゃぁぁ霖之助さん! 後頭部から血が出てます!」


知ってるよ神綺。だって痛いから。

ついでに言っておくと、首から下の感覚がない。

これは脊椎やられたな。

そしてこんな事をする知人は、僕は一人しか知らない。


「咲夜、後頭部はだめだって。死んでしまうから」

「あら、思ったより丈夫なのね。殺すつもりで投げたのに」


僕の目の前で腕を組んでる女性がいた。

ナイフをなげた張本人、十六夜 咲夜だ。

いつも開店と同時にきてくれるお得意様で、僕に紅茶の入れ方等を教えてくれる、僕の知り合いの中では珍しいくらい礼儀正しい人間ですわ。


「こら、人の思考に介入するな」

「毎度のことながら声で出していたわよ」

「む……それは失礼。というかだ、僕の知り合いに"まともな人間"なんて居ない」

「これは失礼。私は完全で瀟洒な人間でしたわ」


たしかに胸を張って堂々と構えながら言うにあたいするほどの力が、彼女にはある。

紅魔館のメイド長にして、紅魔館のメイド長なのだ。

なんといっても紅魔館のメイド長として君臨しているという事が、彼女の自信を裏付けている。


「霖之助さん、この人だれですか?」


神綺が僕の後頭部を治療しながら聞いてきた。

誰と問われても、僕が言えることは一つしかない。


「十六夜 咲夜。紅魔館のメイド長だよ」

「ちがうわ。私は完全で瀟洒なメイド長よ。さらに付け加えると、霖之助さんの恋人よ」

「恋人は違うだろう」

「(恋人?)この人が……咲夜さん」


傷口を触る指の感覚も戻ってきた。

うん、だいぶ下半身の感覚が戻ってきたよ。ありがとう神綺。

さて、お客さんをおもてなししなくては道具屋の名折れ。

先ほどのことは水に流して、商売を始めようではないか。


「いらっしゃい。今日は何がご入り用うううおおおお!!?」

「霖之助さん危ない!!」


接客モードに入った瞬間ナイフを投げるとか簡便してほしい。

神綺がいなかったら、頭からナイフを生やす変な男になっていたではないか。

無敵? なんのことやら。



「チッ。今投げたナイフを10本ほど下さいな」

「今、舌うちしなかったか?」

「そんな細かいこと気にしてたら、おいしい紅茶は入れられなくってよ」


そうなのか。なら気にしないでおこう。

いつもの事だしね。

そうか。いつもの事なのか。

告白したときに人生が変わると思っていたけれど、やっぱりそうそう変わってはくれないらしい。

結局慌ただしい日々が続くのだ。

決して暇にならない毎日が。

さぁ始めようか。今日という騒がしい一日を。


「ナイフ十本だね。少々お待ちを」



















「って何してるんだ二人とも」


――まだもうちっとだけ続くんじゃよ。

どこからか聞こえた言葉は無視して……僕が営業スマイルで咲夜に微笑みかけたところ、なんか修羅場っていた。

これは僕は近付かない方がいいな。

きっと死ぬ。死んじゃう。らめぇ。

気付かれないよう、後ろで見守っていよう。



「あなただぁれ?」

「神綺。霖之助さんのこ、ここここ」

「こうのとり?」

「そ、そんな。コウノトリなんてまだ早いよ~、じゃなくって、恋人です!」

「あら奇遇ね。私も霖之助さんの恋人なのよ?」

「え!?」

「ね、霖之助さん?」


そこで僕に振ってくるか。

むしろ分かってやってるだろう咲夜。

仕方がない。

この際はっきり言ってしまおう。

その方が二人の為でもあるし、僕の為でもある。

神綺に告白した時のように、勇気をもう一度振りしぼればいい。

たとえ僕が死のうと、これだけははっきりさせないといけないのだから。


「はいはい、独り言はもういいから、はやく言いなさいな」

「そうですよ! はっきりとして下さい!!」


あぁもう分かったよ。

僕には思考の時間も許されないのさ。

だから僕は……言い放つんだ。


「咲夜は恋人じゃない」

「……知ってるわ。ちょっとからかっただけじゃない。そんな力を込めて言わなくてもいいじゃない……」

「霖之助さん……」


沈む咲夜に、安心したような顔を見せる神綺。

でも僕の話はまだ終わっていない。

そう、はっきりと言うのだ。


「でも、僕は咲夜の事も好きだ。もちろん一人の女性として」

「え?」

「ほえ?」


どうだびっくりしたか、べろべろばー。

これが僕の本心だ。

やっと自分でも分かった心の煌きだ。

この煌きは、誰の手によってでも汚すことはできない。


「最低」

「霖之助さん、ひどいです」

「ぐほぉ!」


汚すことはできなくても、傷つけることはできるんだな。

一つ勉強になったよ……うぼぁ。

僕はその場に沈みこみ、壁を背に倒れた。

分かっていたのにのぅ。

二人の女性を愛しているということ、それはどういうことなのか。

幸せってなんだろう。振り向かないことかな。それは若さか。




「……ん。霖之助さん? だめね。かなり落ち込んでいるわ」


咲夜が霖之助の頭をたたくも、反応はなかった。

好きな人達に完全に否定されたのだ。

真白に燃え尽きてしまうのは当然なのかもしれない。


「でも、不倫宣言なんてひどいです」

「不倫、ねぇ……ならはっきりさせましょうか。どちらが霖之助さんにふさわしいか」

「人間が、神である私に勝てると思っているのですか?」

「愚問ね。私が負けるはずないもの」


そう言いながら、咲夜はナイフを取り出した。

それに合わせるように、神綺も魔力を引き上げる。


「ずいぶんと自信家なんですね」

「だってそうでしょう? 私の方が霖之助さんを愛しているのだから」

「わ、私は霖之助さんとキスまでしたんだから!」

「見てたから知ってるわ。でも、そう……キスしてたのよね……ところで貴女は知っているのかしら。霖之助さんの体にあるホクロの数を」

「ホクロ!? えぇっと……」

「16個よ」

「ななななんで知ってるんですか!?」

「さぁて、何でだと思う?」


挑発的に歪む口元が、ナイフに映っている。

貴女は私には勝てないの。

まるでそう言っているかのように。


「どうするの? 言葉と経験と愛で勝てないなら、戦うしかないんじゃない?」

「確かに戦うしかないみたいですね。でも一つだけ言っておきます」

「?」

「……貴女が居なかったら、今頃は霖之助さんとラブラブしてたはずだったのに……
愛してるよ神綺。私も……


ってなるはずだったのにぃぃぃぃ!!


「く……この気迫は、本物のようね。でもね……


そんな羨ましいこと、私もしたいに決まってるでしょ!!



二人の力がぶつかり合い、空間が歪んで見える。

お互いに譲れない心がぶつかり合っているのだ。

そして限界まで膨れ上がった想いが、爆発した。

















霖之助が本日数回目の目を覚ました時、すべては終わっていた。

そこには霖之助にもたれかかるように寝ている、二人の少女の姿があった。

霖之助はそっと二人を抱きよせ、一言だけ何かを呟いてから、もう一度寝ることにした。


「愛することが罪だとしても。それでも僕は、二人を愛し続けるよ」



想いを乗せた風は、開店中の看板をひっくり返し、幻想へと消えていく。


残ったものは、玄関にかかる看板。


たった5文字の伝言。














――Close(閉幕)
レミリア「さくやーいつ帰ってくるの~? おなかすいたよ~(涙」
魔理沙「おいレミリア。きのこシチュー作ってやったぞ。食え」
レミリア「わぁい魔理沙大好き♪」
魔理沙「(きゅん☆)お、おまえってこんなキャラクターだったっけ?」


や・く・も・の・塩!と叫んだら家族に変な目で見られたこじろー参上でござる。

さて、これにて想い→の話は終わりです。
でもこの三人の物語は終わりません。
耳を澄ますと聞こえてきませんか?
少女のケンカの声と男の悲鳴。そして三人の笑い声が……
こじろー
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
>ふとももとおっぱいのサンドイッチは最高であるということだ!
最高だぁ!(謎

とっても良かったです!そして後書きで新たなフラグがww
2.脇役削除
ふむ、最高だ……おじさん、これで安心して逝けるよ
これからも楽しい作品をお願いします
3.こじろー削除
>奇声しゃま
ふふふ……商品化しても い い の よ?
三叉までは無理でしたー!

>脇役しゃま
いっちゃらめぇ!
神綺の絵描くから、脇役さんも神綺さまを書いてくだち♪