※創想話ジェネリック70にある『鴉天狗と山の巫女の考察』を読んでいると分かりやすいかと思います。
宜しければ、是非そちらも合わせて読んでくださると嬉しいです。
ただ、読まなくても携帯電話機能の知識があったら読まなくても問題ないと思います。
「ふんふんふふ~ん♪」
今日も御機嫌に妖怪の山を飛びまわっているはたて。
愛用のケータイを片手に今日は何を写しちゃおうかなぁ、と陽気に飛び回っていた。
いつものようにケータイに文字を入力する。
そういや、もうすぐ騒霊三姉妹のライブがあるんだっけ?
そんなことを考えながら、三姉妹の名前を打ち込む。
・・・と。
「あれ?」
◇ ◇ ◇
ここは山の神社。
今日も神社の巫女(神?)である早苗が境内を箒で掃いていた。
「・・・さて、これが終わったら霊夢さんの神社の分社でも見に行ってみますか」
博麗神社には守矢の分社がある。
最初は渋った霊夢も、早苗の執拗な頼み込みと「なんかお礼に食材でも提供しますよ?」の一言ににより承諾した。
勿論、分社も気になるが、最近では霊夢に会いに行くのが楽しみになっている自分にも気付く。
人妖問わず霊夢さんのところに集まる気持ちが最近になって分かってきた。
そんなことを考えながらせっせと箒で掃いていると・・・。
「おーい、早苗」
上空から聞きなれた声が。
早苗が上を見上げると、際どいミニスカートのn・・・げふんげふん。
じゃなくて、最近知り合いになった鴉天狗が一人。
確か名前は・・・。
「えーっと・・・、はたてさn「違うよ!はたてだ・・・。あれ?あ、はたてで合ってる合ってる」」
そこへ間髪入れずに、にこやかに。
「富嶽三十六景はたてさんですよね?」
「違うよ!てか全然違うの持ってきたなぁ!せめて東海道五十三次にしてくれない!?」
それでいいのか、はたてよ?
ま、とりあえずそんな事は横に置いといて。
「どうしました、はたてさん?お手洗いならあっちですよ?」
「そんな用じゃないよ!」
別に腹を壊したりとかそんな用事じゃない。
今日聞きに来たのは、この前と同じケータイに関してだ。
◇ ◇ ◇
「実はさぁ。今度妖怪の山で騒霊三姉妹のライブがあるんだよねぇ」
縁側に通されたはたては、早苗から出されたお茶を啜りながら話を切り出した。
うん、美味い。
同時に出された茶菓子を頬張りながら話を続ける。
「で、取材のためにね、三姉妹の名前をケータイで打ってたんだけど」
そういって、はたては自分のケータイのディスプレイを早苗に見せる。
「長女でリーダーでもあるルナサを打ってみたわけよ。で、以前問題に取り上げた『文字候補』のやつね。こんなのが出てきたんだけど・・・」
早苗がはたてのケータイを覗き込む。
そこに映しだされている文字は・・・。
「LUNA SEA・・・。あぁ、『外』の世界で活動していたロックバンドのグループ名ですね。私が生まれる前に活躍していたので詳しくは知りませんが、簡単に言ってしまうとミュージシャンですよ」
「ミュージシャン・・・。てことは、音楽家ってこと?」
「はい、そうです。CDは・・・、あったかなぁ?でも、『外』では有名なミュージシャンだったはずですよ?」
「へぇ・・・」
はたては、なにか感慨深そうにケータイのディスプレイを見ている。
まぁ、ルナサで打っていたら文字候補にミュージシャンの名前が出たら思うこともあるだろう。
・・・せっかく『外』との音楽家と『幻想郷』の音楽家の共通点が出てきたのだ。
これを何とか記事に出来ないかな?
そんなことを考えていると・・・。
「おーい。やっほー♪」
なにやら元気な掛け声が聞こえてきたと、そちらに振り向いてみたら。
噂のプリズムリバー三姉妹がこちらに向かってくるのが見えた。
◇ ◇ ◇
「へぇ・・・。それが『外』での通信手段なんだね」
メルランが興味深そうに見ている。
「めーる・・・。手紙をその機械で送ることが出来るんだ!いいなぁ。ねぇ、ルナ姉!私もケータイ欲しい!」
「いやいや。そういうのは確か幻想郷内では使えないんじゃなかったか?」
そんなやり取りをしているルナサとリリカ。
「確かに、幾ら河童の技術があるといっても、データを送受信する施設が無いと電話もメールも使うことは出来ないですからね」
新たに三姉妹ぶんのお茶を運んできた早苗がそう答える。
「私は念写を行っているから、どちらかというと固有スキルみたいなものだからね。もちろん、写真を直接撮るときは電気・・・、だっけかな?河童の技術を使って補充してるけど。今では文字打つのはおまけみたいなものかな?」
苦笑しながら話すはたて。
「にしても・・・」
そういって、ケータイを覗き込むルナサ。
「今度のライブの下見に来たわけだったんだが。まさか私の名前から『外』の音楽家の名前が出てくるとは。いやはや・・・」
そう、嬉しいような、少し照れくさそうな感じで話すルナサ。
「いや、まぁ・・・。正直なところ、ルナサさんたちとは随分かけ離れたイメージのミュージシャンだったとは思うんですけど」
「このLUNA SEAがどんな演奏をするのかは知らないが、それでも音楽家繋がりというのがあるのは正直嬉しい」
そう言いながら、あまり見せない微笑を浮かべるルナサ。
自分の名前から『外』の音楽家の名前が出てきたのだ。
ルナサにだって思うところはあるだろう。
「ねえねえ。それって、入力した文字から近い言葉が候補としてでるのよね?」
「だったらさ、私やメル姉はどんな候補がでてくるのかな?せっかくだから見せてよ!」
期待に胸を膨らませたメルランとリリカがそう答える。
かくして、ケータイの文字候補を使ったプリズムリバー三姉妹の診断(?)が行われる。
◇ ◇ ◇
「えーっと、ではまずメルランさんからいきますね」
そういって、引き出しから持ち出してきたケータイを操る早苗。
「ふふふ。私はどんな音楽家の名前が出てくるのかしら?」
そう期待に胸を膨らます次女。
「いやいや、あくまでもその文字に近い候補が出てくるわけだから。必ずしも音楽家の名前が出てくるとは限りませんよ?」
「ははは。案外予想外な言葉が出てきたりして」
「こら、期待に水を差すようなこと言わないでちょうだい?」
そんなやりとりをしていると。
「あ!出てきまし・・・、・・」
黙り込む早苗。
なにか、これはどんなリアクションをすればいいのかな、といった感じで押し黙ってしまった早苗。
「あ!出てきた?ふふ、私はどんな言葉・・・、・・!!?」
嬉しそうにケータイを覗き込んだメルランの動きが停まった。
というか、凍りついた。
まるで見てはいけないものを見てしまった時の気まずすぎる表情。
疑問に思った他のメンバーは。
「ん?どんな文字が出てきたんだ?」
「どーしたのよ、メル姉?見せて見せて」
残りの姉妹が覗き込もうとするのを。
「ちょ、ちょっと待って!こ、これは何と言うか・・・」
そんなメルランの制止も聞かずに。
「いやいや、姉妹なんだから別にいいじゃないか。私だってメルランの候補には興味あ・・・!?」
「そーよそーよ!見せてよメル姉!別に減るもんじゃない・・・!?」
無理矢理覗き込んだルナサとリリカの眼に飛び込んできた一文字。
ケータイの一番の候補に挙がっていた一文字。
それは・・・。
『メル藍』
・・・。
・・。
なにやら、気まずい雰囲気が漂う守矢神社。
「・・・え?」
「め、メルラン・・・。お、お前まさか・・・!?」
リリカちルナサが驚愕の表情でメルランに振り返る。
そんな姉妹を見て。
「ち、違うわよ!?私は別に藍さんとそんな関係じゃ・・・!てか、これケータイから勝手に選択された文字でしょ!?だからこれは深い意味は無くて・・・!」
慌てたように弁解するメルランを横目に。
「ま、まさかのメルランさんと藍さんのカップリングですか。これは予想外ですね」
「き、記事に出来るかな?これ記事にしたら面白いかな?」
「いいんじゃないか?別に藍に浮いた話とか聞いたことないし。姉としてはしっかりした人(?)と結ばれることには越したことはないんだが」
「でもさ、主人が『あの』八雲紫だよ?そりゃ幽々子さんの友人だからといって、そうすんなりいく問題じゃないんじゃない?」
残りの4人は勝手に盛り上がっていた。
「だ、だーかーら!勝手に話を進めるんじゃないわよ!?私は藍さんとあんまり面会も無いわけだし、そんなことあるわけないじゃない!!」
そんな必死なメルラン。
だが。
「いやいや、私は別に反対はしないぞ?ただ、リリカの言うとおり難しい恋ではあると思うが・・・」
「とりあえず手始めに橙ちゃんと仲良くなっていくってのはどう?そうしたら藍さんにも近づきやすくなるわけだし」
冗談なのか本気なのか分からない姉妹の発言。
流石に、これにはメルランも我を忘れて叫んだ。
「だからっ!私が好きなのは藍さんじゃなくてね・・・っ!!!」
思わず声に出そうになった本心をギリギリの所で止めた。
が、もう遅い。
「・・・?ね?ね、何だ?」
「え?まさかメル姉ホントに好きな人がいるの!?」
この迂闊な一言に全員が食い付いてきた。
「いるんですか!?メルランさん今絶賛恋愛道まっしぐらなんですか!?ウチにありますよ、恋愛成就のお守り!ってか、誰なんですか!?」
「こ、これはスクープと言うやつですか!?記事に出来ますか!?出来るなら是非!」
一斉に詰め掛ける4人。
あまり浮いた話を聞かないメルラン(というかプリズムリバー三姉妹全員)に好きな人がいる?
年頃(?)の少女たちにとったら格好な話題だ。
「い、いや、べ、べべべ別に『ね』は関係ないというか・・・。そ、そう!『~じゃなくてね?』という所謂語尾みたいなものであって・・・!」
焦りまくってるメルランを他所に、4人の推理は続く。
「『ね』・・・で始まる人物。幻想郷に誰かいましたっけ?」
「・・・いや、多分苗字でも名前でも『ね』から始まる人なんていないわよ。最近記事の資料とか読み漁ってるから間違いないかな」
「メタな話になってすまないが、もしかして旧作にいるんじゃないか?私たち三姉妹は随分前から幻想郷にいるわけだから」
「今さっき作者がウィキで調べたけど、やっぱし旧作にもいないみたいだよ?」
もしかして何かの愛称か?
『ネクロファンタジア』とか?
いやいや、『ネズミ』ということでナズーリンの可能性も・・・。
もはや止まらない会話。
そんな4人をに対して。
「ほ、ほら!もういいじゃない!!『ね』なんて関係ないの!それよりリリカをケータイで打ってみましょ!?このまま話し込んでも時間が経つだけだわ!ね、ね!?」
さて、少々話が横にそれそうになったが。
次はリリカである。
「えー、ではリリカさんを打ち込んでみますね。り、り、か、と・・・」
ケータイに文字を打ち込んでいる早苗を見つめながら。
「・・・」
「・・・?どうしたリリカ?急に黙り込んでしまって?」
さっきまであんなにはしゃいでいたリリカの様子に心配そうに声をかけるルナサ。
そんな姉のほうを振り向き、ちょっと心配そうな表情をしているリリカ。
「うん・・・。いやね・・・」
ボソボソと話し始める。
「さっきのメル姉のような、自分の隠し事が明るみに出るんじゃないかなって」
もちろん、隠し事なんて無いよと慌てて表情で喋り続けるリリカ。
それはそうだ。
偶然とはいえ、こんな意外な形で秘め事が発覚した姉を見たら、決してやましいことがなくても不安になるだろう。
横で、必死に弁解しているトランペットはとりあえずスルー。
そんな妹を見つめ、ルナサは柔らかい笑みを浮かべてリリカの頬を優しく撫でる。
「大丈夫だ」
少し瞳に浮かんでいる涙を親指でそっと拭ってやり、優しく語り掛ける。
「これは外の技術から導き出された結果だ。私たちの住んでいる幻想郷にまで干渉することは無いだろう。私は運がよかった。メルランは・・・、ちょっと可哀想だったが。まぁ、気にすることは無いさ。遊び程度の結果として受け止めておけばいいんじゃないか?」
姉の言葉を聞いて少し安心したか。
こくり、と頷き、自分の頬にある姉の手を触れる。
まだ少しある不安を取り除くように、姉の手を強く自分の頬に押し付ける。
とりあえず、横で不満ダラダラな白い騒霊はスルー。
「あ、出ましたよ」
早苗の言葉にはたてとメルランが真っ先に覗き込む。
「ふふふ。さて、リリカさんはどんな面白いネタを出してくれるるのかなぁ?」
「もう、リリカったら甘え上手なんだから・・・」
楽しそうに期待に胸を膨らませている鴉天狗。
ブツブツ言いながら、それでも興味を隠せない次女。
そして。
一番の候補に挙げられた文字を見て、3人が少し困ったような感じになった。
「うん?どうした、リリカの結果はどんなもんだったんだ?」
「え、ちょ、ちょっと?何沈黙してるのよ?ふ、不安なんだけど」
そう言いながら遅れてケータイを覗き込む2人。
ケータイに浮かび上がった文字。
それは・・・。
『リリカル』
・・・。
・・?
「りりかる・・・、って何?」
「英語ですよね。高校では習いませんでしたねぇ・・・。うーんと」
「姉さん。意味分かる?」
「確か・・・」
[リリカルの意味]
『叙情的なさま』
『叙情』とは『自分の感情を述べ表すこと』
「・・・だったはずだが?」
思い出すかのように答えるルナサ。
そんな姉の言葉を聞いて。
「自分の感情を述べ表すこと・・・。それって、音楽で言う作詞に当てはまるんじゃない!?」
さっきまでの不安とは一変、急に元気な声で叫ぶリリカ。
なるほど。
リリカの言うことも一理ある。
歌詞にはミュージシャンの感情を含むものだってある。
なら、それを言葉として表に出すということは作詞ということにもなるだろう。
「考えようによったら私も音楽に関係することだよね!?一緒だね、ルナ姉!」
喜びに満ち溢れた瞳をしているリリカ。
そんなリリカを見て。
あぁ、そうだなと笑みを浮かべて同意するルナサ。
さっきまでの不安そうな表情とは全く逆の、嬉しそうな妹の顔を見れて、嬉しいようなホッとしたような感情をめぐらせる。
リリカは三姉妹のなかでは一番年下なので、まだ精神的に弱いところもある。
いつもは一番明るく活発だが、一度落ち込んでしまったら2人の姉と違ってそう簡単に気持ちの切り替えができない。
もし今回のことでリリカが落ち込むようなことがあれば、どうフォローしようかと少し不安に感じていたが、それも杞憂に終わった。
「ね、ね!今度私が作詞してみようかな!?結構イイのが出来るかもよ!?」
「コラコラ、気持ちは分かるがはしゃぎ過ぎないようにな」
やれやれといった感じで苦笑を漏らすルナサ。
そして。
そっと、気付かれないように横目で見た先には・・・。
「・・・ふん。いいもんいいもん。どうせ私だけ仲間はずれですよーだ。ていうか、何で私の時には姉さんはフォローしてくれなかったのよ・・・」
◇ ◇ ◇
「ふふっ。意外と面白いことになりましたね」
わいわい騒いでいる三姉妹を見ながら、のんびりとお茶を啜る早苗。
最初、幻想郷に来たときは、もうケータイは使うことはないだろうと思っていたが。
案外、コッチに来ても『外』の世界の技術も役に立つ。
使えるようにしておいてよかった。
その一方で。
「うーん、なんとかこのネタを記事に出来ないかなぁ?三姉妹揃って音楽に関連することだったら統一性があったかもしれないけど・・・。メルランさんだけにスポットを当てて疑惑のスキャンダルにしてみるとか・・・?あ、でもその前にケータイのこの機能についての説明を入れないとなぁ。でもこれ、ケータイ持ってる人じゃないと文章で伝えるの難しいなぁ・・・」
早苗の隣に腰掛け、茶菓子を頬張りながら頭を悩ませているはたて。
そんなはたてを見ながら。
新聞記者も大変ですねぇ。
そう考えながら、せっかくだから全員の分の昼御飯も用意しよっかな?
そんなことを思案しながら、飲み干したお茶のおかわりを取りに台所の方へと向かっていった。
言いだしっぺの法則というものが(ry
非常にどうでもいいことなんですが、LUNA SEAって98年くらいまで活躍してませんでしたっけ?
となると今早苗さんは小学生くらい……ゴクリ。
何これすごい語感がいい。
もしかして: 姉さん
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