Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

両想い←→両想い

2010/09/30 13:12:05
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この物語は「片思い→両想い」の続編となっております。
でも、以下の相関図だけ理解してもらえたら大丈夫です。



咲夜 ―― I Love you ―→ 霖之助 ←― 恋心?―― 神綺 ―― 溺愛 ―→アリス
咲夜 ←― 好きだと自覚 ―― 霖之助 ―― 恋心 ―→ 神綺 ←― 母親 ――アリス


< 両想い←→両想い >



幻想郷の太陽が仕事を終え、夜勤の月へと交代しようという時刻。

地平線が燃えるように熱くなっている時に、それは起こった。

あたり一面を揺らすほどの爆音。

烏たちは立ち止まり、河童が水へと姿を隠す。

その爆音の中心地、香霖堂からは眩い光が放たれていた。

白く白く、虹色に目が焼かれるほどの閃光。

"マスタースパーク"というなの力の奔流が、香霖堂の屋根を突き破る。

香霖堂の一部だった物を巻き上げながら、地平線に沈み行く太陽が嫉妬するような光が、天へと昇っていた。

そんな幻想郷では、日常茶飯事な出来事が起こった日の夜。

僕は瓦礫の前で途方に暮れていた。


「全治一週間……といったところか」


それまで雨が降らなければいいが。

それよりも、修理に使う木材をどうするか。

かるーく草薙の剣で、裏の木を伐採するか。

っと、現実逃避している場合ではなかった。

とりあえず、閉店ですよっと、看板を裏返さなければ。

むしろその行為自体が、現実逃避であると心のどこかで言っていたが、

僕はその声を無視することにした。

さらに少しでも時間を先に伸ばししようと、丸い穴から空を見上げる。

あぁ……空はどうしてこんなに紅いのだろう。


「夕方だからじゃないですか?」

「なんだ。僕はてっきりマスタースパークを食らった空が、痛みで血の涙を流しているのかと思ったよ……え?」

「こんにちわ、霖之助さん。」

「き、君は……」


香霖堂のドア越しに聞こえてくる声。

柔らかな、それでいてどこか凛とした女性の声が、僕の脳を揺らした。

僕の記憶が確かならば、この声の持ち主は一人しかいない。

サイドポニーが似合う女の子。

いや、女の子というのは失礼だろう。

何せ彼女は……


「あのぅ……ドア開けてくださいませんか~。ちょっと両手塞がってまして……」

「あ、はいただいまっ!」


天使の声にいざなわれるように、がばっとドアノブに手を伸ばし、勢いよく開けた。

そこに立っていたのは、両手いっぱいに人形を抱えた女性。

にっこりと笑った魔界の神、神綺その人だった

小さな口で紡がれる言葉が、僕の耳に入ってくる。


「お久しぶりです、御元気そうでなによりです」

「神綺も……あ、中へどうぞ。ちょっと散らかっているけど」

「それではお邪魔しま……うわぁ、これはまた、すごいですね」


御店に入ってまず目に入るのは、散らばった瓦礫と、天井の大きな穴。

神綺は立ち止まることなく、瓦礫に躓きながらも穴の真下まで行き、空を見上げた。

スカーレットライトが、彼女を照らす。

夜になると月見ができそう、だなんて笑う神綺に、僕は見とれてしまっていた。

神綺の一挙一動が、僕の心をくすぶる。

あぁ……やっぱり僕は、神綺に恋をしている。

咲夜にたいする想いとは違った恋。不思議と心が躍る恋。

咲夜に対する恋心が「静」ならば、

神綺に対する恋心は「動」なのだろう。

抱きしめたくなる衝動が、僕を支配しようとする。

でも僕はその衝動をぐっと抑え、神綺に語りかけた。


「神綺、そこにいたら危ない」


すると神綺は、悪戯を発見された子供のように、はにかみながら答えた。


「ごめんなさい。奇麗な空に見とれてしまってました」

「空、か……たしかにこの時間の空は奇麗だ」

「えぇ。なんだか、見ているだけでどきどきします」

「僕は君と一緒にいるだけでどきどきするよ……」

「え?」

「あ、いや、なんでもない」


危ないところだった。

きょとんとした神綺の顔から目をそらし、僕はカウンターまで逃げるように移動した。

いつもの調子に戻るために。

御客様を迎えるために。

深呼吸をひとつし、僕は「本日始めてのお客様」を迎え入れた。


「いらっしゃい。今日は何がご入り用かな?」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




こんにちは、神綺です。

今日はアリスちゃんの家に御泊り中。

なんだけど……アリスちゃんはお風呂に入っていて、私は暇してます。

一緒に入りたいといったら、本気のヤクザキックをされてしまいました。しゅん……

理由は分かっているのですけどね。


「でも、御背中を流してあげるときって、むしょうに悪戯したくなるよね?」

「シャンハーイ?」

「脇の下とか、脇腹とか、うなじとか」

「シャンハーイ」


私の言葉に頷いてくれるのは、アリスちゃんのお人形、上海ちゃん。

まるで自我を持っているかのようなこの子は、私の膝の上でゆらゆらと揺れている。

なんだかこうしていると、数年前のアリスちゃんを思い出すなぁ。

あのころのアリスちゃんは、まだちっちゃくて……ん?

なにか窓の外が明るいです。

森の入り口の方、というよりも、霖之助さんの居られるお店の方から?

確認しようと立ち上がったら、後ろから聞きなれた声が聞こえた。


「あれは魔理沙のマスタースパークじゃない」

「シャンハーイ」

「アリスちゃん、もうあがったの?」


バスタオル一枚で、体から湯気を立ち上がらせている少女。

この子は、私の自慢の娘。アリス・マーガトロイド。

奇麗な金色の髪の毛はまだ湿っていて、窓からの光を跳ね返している。

見る者を吸いこむような瞳は、とてとてと歩いて行った上海を抱きあげてもなお、どこか不機嫌そうだった。

それはアリスちゃんが話す言葉にも、現れていた。


「また魔理沙が暴れているのね。あの様子じゃ香霖堂は壊滅かしら。ねぇ上海?」

「シャンハーイ」


アリスちゃんの言葉に、上海ちゃんが両手を上げて応えている。

可愛いなぁ。私もほしいなぁ……じゃなくって、香霖堂には霖之助さんが!!

早く助けに行かないと!!


「アリスちゃん!」

「嫌よ。いくらお母さんの頼みでもそれだけは嫌」

「まだ何も言ってないのにぃ」

「手伝って♪」

「嫌」

「せっかくお風呂に入ったのに、また埃まみれになっちゃうじゃない」

「うぅ……アリスちゃんの意地悪」


ちょっとすね気味モードで、アリスちゃんの説得を試みる。

このモードにアリスちゃんは弱いのを、私は知っていた。

でも今日のアリスちゃんは、別方向の答えを返してきた。


「……きっと明日になったら紅魔館のメイド長が直しているから、何も私たちが行く必要はないわ」

「メイド長?」

「そう、十六夜 咲夜。完全で瀟洒だけど、どこか抜けている子」


思い出した。

確か博霊神社の宴会で、仲好くなったとアリスちゃんから聞いていたはず。

でもどうしてその咲夜さんが、香霖堂を直すの?

ま、まさか……


「まさか咲夜さんは霖之助さんの奥さんなの!?」

「なんでやねん」


おうふ……アリスちゃんのキックが私の顔面にクリティカルヒット。

母親の顔を蹴るのはどうかと思うよアリスちゃん。

ついでに言っておくと、早くパンツを穿きなさい。

私の視線に気がついたのか、アリスちゃんはそそくさと無地の白いパンツを穿く。

でも今はそんなことよりも、咲夜さんだ。

なぜだろう、なぜか気になる。

私の中の魔界神部分が、奴に先を越されるなと忠告している。

具体的には、サイドポニーが激しくパタパタと動いている。

どうしようどうしよう。

私だけでも駆けつけるべきかな。

でも、ふ、二人っきりな店内だなんて、そんな恥ずかしくて……


「そんなに気になるなら、一人で行ってきたら? 人形くらいなら貸してあげる」

「本当!? やっぱりアリスちゃん大好き!!」

「あ、今抱きつかれたらバスタオル落ちちゃうでしょもう!」


やっぱり持つべき物は可愛い娘です。

ではさっそく上海ちゃんを。


「はい、大江戸人形。5体くらいでいいかしら。これだけいたら、お母さんお得意のミュージカル開けるでしょう?」

「ほえ? あの上海ちゃんは」

「ダメ。これから髪の毛の手入れを手伝わせるのだから」

「じゃぁ蓬莱ちゃんを」

「却下。爪磨きを手伝わせるのだから」


シャンハーイ。ホラーイ。と、二つの人形が、アリスのずれ下がったバスタオルを引き上げる。

そんな姿を見ていると、下からスカートを引っ張られた。

5体の大江戸人形だ。

体に魔力の糸を絡みつかせて、訴えるかのような目で私を見上げている。


「オー」
(訳:私達デハ)

「エドー」
(訳:オ役ニ)

「グー」
(訳:タテナイカナ?)


「!!」


可愛い、可愛すぎるよ大江戸ちゃんたちぃぃぃ!

もうぎゅっと抱きしめちゃう。ぎゅーっと。

よし決定。

これなら大丈夫、なんとか頑張れそうだよ。


「お母さん。はいこれ」

「?」

「この子達の魔術式。魔力を少量流したら、思う通りに動いてくれるわ」


ぽふっと、魔術式を受取り服の中にしまう。

よし、これで準備はOK。

さぁ急ごう。霖之助さんが待ってる!!

脳内でイケメーンな霖之助さんが、バラを散りばませ、輝きながら私だけに微笑んでいた。


「では神綺、行ってきます!!」

「はいはい行ってらっしゃい」

「すわっち!!」


テンションが最高潮にまで高まった私は、全速力で魔法の森を"歩いて"行った。






「ふぅ」

アリス邸では神綺を見送ったアリスが、バスタオル姿のままで小さくつぶやいた。


「がんばってお母さん。昔の偉い人が言っていたわ。恋愛は爆発、って」


紅の空の片隅で、筆を構えた男が、ニヤリと笑っている気がした。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 








「いらっしゃい。今日は何がご入り用かな?」


舞台へと上がってきた天使に、僕はそう語りかけた。

彼女は瓦礫の真ん中で、やさしく答える。


「シー。霖之助さんは、そこでただ見ていてくださればいいですよ♪」


そういった彼女は、両手を翼のように広げ、持っていた人形達に魔力を通わす。

華麗に着地した人形達の目に力が宿り、カーテンコールよろしくお辞儀をする。

これから何が起こるのだろう?

疑問に思ってみていると、神綺が美しい声で語り出した。


「本日は魔界神のミュージカルへお越し下さり、ありがとうございます」


ミュージカル? どういうことだ。

僕の心の問いに答えてくれるはずもなく、神綺は続けた。


「それでは短い間ですが、じっくりとご覧くださいませ♪」


どこからともなく、音楽流れる。

それはとても神綺に合っていて、僕は震えるほどに感動を覚えた。

神綺と目があう。

その時に僕は理解した。

そう、彼女たちは女優だ。舞台女優なのだ。

これから香霖堂という舞台で、舞い、歌い踊りだすのだろう。

彼女たちの華麗なるミュージカルを、僕は純粋に見たいと思った。

片付けのことなど、すでに頭にはなかった。

いつの間にか、僕の方がお客さんになっているということにも、気がつかずに。


「それでは、神綺の華麗なる人形パレードをご覧ください」


そういうと、人形達が歩き始めた。

とてとて。

神綺が右手を上げると、人形達は瓦礫を力強く持ち上げる。

神綺がくるりとその場を回ると、瓦礫を外へと持ちだし、

戻ってきたときには、木の板を持ち運んでいる。

曲がサビへとうつり、人形達はとび跳ねながら作業を進める。

神綺の舞いはどんどん勢いをましていった。

曲が変わり、今度は激しいタンゴになっていた。

汗が舞い、人形が空を飛び、板を天井へと打ちつけていく。

神綺が動くたびに、スカートが揺れ、髪の毛が躍る。

魔力の碧い光が、まるでホタルのように舞台を縦横無尽に駆け回る。


「すごい……」


つい口から出てしまった言葉に、神綺はウインクで返した。

心臓が熱い。

僕の命の>鼓動[リズム]に合わせて、彼女たちは舞う。

咲き、散り、暖かく、時に冷たく。

人生の0から100までを感じさせてくれる。

始まりがあり、終わりがあり、さらにその先までも。

しかしその舞いも、ついに終焉を迎えた。

曲がフェードアウトしていき、笛の音色が消えていく。

しばらくして、静寂があたりを支配した。

感動で動くことも出来ない僕は、その場の「異常」に気が付くのに時間がかかってしまった。

いつの間にか。天井の穴はふさがり、埃も隅々までぬぐい取られているのだ。

丁寧にお辞儀をする神綺と人形達に、僕の口は、素直な気持ちを伝えた。


「ありがとう神綺。そして、とても奇麗だった。今まで見てきたどんなものよりも、ずっとずっと素敵だったよ」

「り、霖之助さん……」


顔を赤く染め、恥ずかしそうにする神綺。

一歩、霖之助へと歩を進める。

俯きながら、また一歩、もう一歩。

そして手を伸ばせば届く距離まで近づき、顔を上げた。

正面にはお互いの顔。

恋する男女が、お互いを見つめあっている。

そう、舞台はまだ終わっていない。

フィナーレを飾るのは、二人の愛だから。


「神綺……」

「霖之助さん……」


二人の距離が限りなく零に近づく。




だから見えていなかったのだ。

一体の大江戸人形が、こけたのを。

気がつかなかったのだ。

アリスの魔術式に仕組まれた罠に。

ぽふん、と床に体が接着した瞬間、人形は言った。


「エドー」
(約:オ約束ダヨネ)













どっこおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!

















――トントントントン

深夜の香霖堂で、金づちの音がする。

せっかく治った香霖堂はその見る影もなく、みごとに全壊した。

といっても、今はほとんど治っていて、残りは看板を取り付けるだけだ。

ここまですぐに直せたのも神綺のおかげである。

僕は最後の仕上げだからと、曲がらないように丁寧に看板を打ちつけていた。


「よし、もうすぐ完了だな」


ふぅっと汗を肘で拭こうとすると、すっとピンクのハンカチが差し出された。

小さな手が、ハンカチで僕の汗を拭きとってくれる。


「ありがとう。でも、神綺は休んでいて」

「でも……」


涙ながらに訴える神綺の顔は、かなり疲れがありありと出ていた。

それはそうだろう。

全壊した家を、その膨大な魔力である程度元に戻したのだから。

もちろん店の商品もだ。

いくら魔界神とはいえ、魔法道具まで一瞬で直してしまうとは思わなかったが……

僕はまだ謝り続ける神綺の頭に手を置き、できるかぎり優しく言った。


「これが終わったら、一緒にお茶でもしようか」


僕の言葉に、神綺は笑顔で答えた。

どう答えるか迷うこともなく。

ただ一言、大きな声ではっきりと。
















「私コーラが飲みたいです!!」
神綺はどこかずれている子だと思うこじろーです。

霖之助と神綺は、結婚して何年たっても新婚夫婦な雰囲気を醸し出していると思うのですよ。
目と目で通じあう♪ って感じですよねー。

さて、次はもう少し糖分or闘分を上げていくよー。
どっちの物語になるか分からないけれど・・・

ではまた将来にお会いいたしましょう。またにてぃ~♪

追記:さぁて会社の帰りにでもずーーっと楽しみにしていた東方香霖堂を、大阪のメロンブックスで買おうっと♪
こじろー
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
ちょwwww最後wwコーラてwww
後、私も急いで香霖堂買わなきゃ!
2.けやっきー削除
最後www
でも、そういう天然な神綺様がとても可愛かったです!
3.名前が無い程度の能力削除
とりあえずご報告。
Firefoxで読んでいますが、
鼓動[リズム]~~以降の文章が小さくなっていてとても読み難いです。
4.こじろー削除
>奇声しゃま
コーラは偉大なり!
でもダイエットコ○ラてめぇはだめだ

>けやっきーしゃま
天然っていいよねぇ
ついつい抱きしめたくなっちゃう

>3しゃま
こちらでも確認しました。
フリガナのスタイルシートは使えないのですね・・・情報感謝!