「今日こそ通らせてもらうぜ!マスタースパーク!!」
「出でよ!鏡蠱(チン○ウ)!!」
「ぎゃーーーーーーー!!?」
ここは紅魔館内部の魔法図書館。
様々な魔道書が管理されている。
魔道書だけではない。
『外』の世界の書物も流れ込んでくる。
最近では当主(と門番)の趣味でマンガなども置いてある。
で、この図書館の主、パチュリー・ノーレッジ。
今日も薄暗い中で本を読み漁っている。
そんな決して華やかでもない本の虫の住処にも客は来る。
特に、同じ魔法使いなどはよく来る。
そして今日もまた、あの異変以来押しかけて来るようになった白黒が一人・・・。
「パチュリー様、図書館へのお客様一名入りまーす!」
そんな元気な掛け声と共に現れたのは、門番の紅美鈴。
その片手には・・・。
「・・・あら、また煩い白黒が・・・。真っ黒ね。」
そう答えるパチュリーに、美鈴はアハハと頭を掻く。
「すみません。気絶しちゃったのでここまで運んできました。」
「別にここに運んでくる必要は無いんじゃない?」
そう、本から目を離さずパチュリーが問いかける。
「いえいえ、魔理沙さんがこの館に来る目的っていったら、大体ここでしょう。」
そう言って、今日は何処に魔理沙さん置いとけばいいかなぁって悩んでいると。
「あぁ、そこに竿竹があるでしょ。とりあえず、目が覚めるまでそこに陰干しでもしておきなさい。」
「了解しました。」
そういって、図書館の隅に設置してある竿竹に魔理沙を吊るす。
「じゃあ、私は門番の業務に戻りますね。」
「えぇ、ありがとう。・・・いえ、待ちなさい。こうなったら貴方にも手伝ってもらうわ。」
「え?」
扉を開け、職務に戻ろうとした美鈴が振り返る。
「貴方はここで待機してなさい。そこらの本でも読んで暇でも潰しておくといいわ。」
その言葉に戸惑いを見せる美鈴。
「い、いやしかし・・・。いくらパチュリー様の指示とはいえ、仕事を勝手に放棄するわけには・・・。」
「レミィには私から言っておくわ。レミィも呼んであるから、もうすぐここに来ると思うし。まぁ、仕事のことは今のうちにシフトの変更しに行っておきなさい。」
・・・ふむ。
パチュリーがそうしてまで引き止めるとは珍しい。
そう考えた美鈴は。
「・・・わかりました。門番の子たちには申し訳ないですが、代わりをお願いしておきます。でも、どんな用事ですか?私に魔法云々の手伝いが出来るとは思いませんが。」
「あぁ。今日の用件は魔法は一切関係なし。ただ貴方なら十分な戦力になりそうな気がしたのよ。そこの黒焦げ魔理沙にも手伝って貰うわ。もちろん、小悪魔にもね。・・・まぁ、5人ならなんとかなるでしょう。」
そういい終わると、再び読書に没頭するパチュリー。
「・・・?」
はて、一体パチュリーの目的とは?
戦力・・・、って言っても別に異変が起きているわけでもないし、わざわざこの動かない大図書館が自ら出向くようなことでもあるのだろうか?
よく理解できてない美鈴は、とりあえず一度門番隊のところへ用件を伝えに行くことにした。
「・・・ん、うん?」
暫くしていると、気を失っていた魔理沙が目を醒ました。
「あ、あれ?ここ何処だ・・・?確か美鈴にマスタースパーク撃って・・・。で、はね返されて?・・・ん?なんかいつもより視界が高いよーな・・・。」
そうして、次第にぼやけていた頭も覚醒していき、ようやく自分の置かれている状況を把握した。
「お、おい!なんで私は吊るされているんだ!?しかも竿竹に!あ、パチュリー!これは一体何の真似だ!?」
「陰干し。」
「何で!?」
パチュリーのそっけない返答に全力で突っ込む魔理沙。
小悪魔から出された紅茶を飲み、とりあえず落ち着いた魔理沙。
「つまり、美鈴は今回獣○術を使ったと・・・。え!?アイツ『无(ウ○』かなにかか!?」
「そうなんじゃない?不死身っぽいし。」
なんでもなさそうに答えるパチュリー。
「いやいや、流石にそれはないだろ?そしたら主人のレミリアは吸血鬼じゃなくて三只眼○迦羅(さんじやん○んから)になっちまうぞ?」
アイツ西洋の悪魔だろ?
いきなりインドの神様に鞍替えされても困る。
「前回は、どうやって撃墜されたんたんだったかしら?」
「あぁ。攻撃する前に『覇○』とかいうやつで気を失ったな・・・。」
「美鈴、『気』を操れるしね。」
いや、少しは疑問持ってくれよ・・・。
何の疑問を持たず淡々と答えるパチュリーに対して心の中でつっこむ魔理沙。
「・・・まぁ、美鈴が何の妖怪かは横に置いておくとして。悪いけど、貴方にも手伝ってもらうわよ。」
「は・・・?」
突然のパチュリーの台詞に目を白黒させる魔理沙。
パチュリーの手伝い?
なんだ、新しい魔法でも開発すんのか?
「美鈴にも言ったけど、今回は魔法は関係なし。アンタ活発そうだから戦力にはなるでしょ。・・・あら、どうやらもう一人の協力者がきたみたいね。」
その言葉と同時に図書館の扉が開かれる。
真紅の瞳。
漆黒の翼。
ちんまい背丈。
紅魔館の主、レミリア・スカーレットの登場だ。
「あら、魔理沙も来てたの?で、なんなの?主たる私を呼び出しt・・・きゃあ!!?」
図書館に足を踏み入れた途端、物凄い勢いで上空にすっ飛ばされるレミリア。
そのまま、図書館の天井に激突する。
ミシミシと体がめり込んでいく吸血鬼一匹。
「あぁ。そういやコソ泥ネズミ用のトラップ仕掛けておいたんだっけ?」
今頃思い出したかのように呟くパチュリー。
レミリアの真下にはトラップ用の魔法陣が浮かび上がっている。
どうやら遠心力みたいなものを発動させる魔法らしいが。
「おい。コソ泥って私のことか?」
そう半眼で尋ねる魔理沙。
「あら?他に誰がいるのかしら。」
当たり前のように答えるパチュリー。
「じゃ、じゃあなんで先に入ってる魔理沙じゃなくて私に対して発動して・・・、お、おぉぉぉぉ!?」
そんな抗議に反するように、ますますめり込んでいくレミリア。
「~~~っ!!~~~~~っっ!!?」
もはや喋ることもままならない館の主。
すでにカリスマブレイク全開のレミリアの姿を横目でチラ見しながら。
「紅魔館の住人には発動しないようにしてたっけ?魔理沙を連れて来たのは美鈴だからね。たぶん、そのせいよ。」
「~~~~~!!?(じゃあ、なんで私に発動しているわけよ!!?)」
言葉にならないレミリアの叫びが図書館に響かない。
だって喋れないもん。
そうして、門番のシフト変更を終えた美鈴も戻ってきたところで、パチュリーが本を閉じて立ち上がった。
「揃ったわね。まぁ、美鈴がいればなんとかなるでしょう。」
何のために集められたのかさっぱりわからないといった顔をしている美鈴、魔理沙、レミリア(未だにトラップ発動中)を順番に見ていき、最後に小悪魔に振り向く。
「・・・本当に、やるんですね、パチュリー様。」
何時に無く真剣な顔をしている小悪魔に対して。
「当たり前でしょ。アレを見て挑戦しないだなんて。この『動かない大図書館』の異名を持つ私の恐ろしさを世に知らしめる良いチャンスだわ。」
不敵に笑みを漏らすパチュリー。
そう。
今回の挑戦こそ、この百数年生きてきたパチュリーにとって待ちに待った運命の瞬間と言っても過言ではない。
己が今、何処までの高みに辿り着いていることができているのか。
これは、『今の自分』の力量を測る絶好のチャンスでもあるのである。
自分でも未だかつて無い挑戦に気分が高揚しているのを感じるパチュリー。
今日の私ならいける。
そう確信したパチュリー。
なら、己の直感を信じて即実行すべきだと考えた。
だから、今日このメンバーで挑む。
なに、抜かりは無i「あー・・・、ちょっといいか?」
パチュリーが自分のモノローグを呟いているところに、魔理沙が声をかける。
「・・・なによ?」
不満ダダ漏れの顔で睨みつけるパチュリー。
「いや、なんか長くなりそうだったから。ところで、私たちは一体何の挑戦に巻き込まれるんだ?魔法関係でないとなると、余計にわからん。説明してもらわないと私たちもどうしようもないぜ?あと、そろそろレミリアを・・・。」
魔理沙が言い終わらないうちに、パチュリーが図書館の入り口に向かって歩き始める。
「・・・それは、着いてきたら分かるわ。」
そう一言呟き、扉を開け、出て行くパチュリー。
そして、それに続く小悪魔。
そんな2人の後姿を困惑した顔で見つめる魔理沙と美鈴。
「おい、図書館出て行っちまったぜ。」
「もしかして館の外に目的があるのでしょうか?」
「だとすると、本当に珍しいぜ?あの半引きこもり紫もやしが館の外に出掛けるなんて。基本的に宴会とか黄昏のときぐらいじゃないか?」
「『挑戦』とか言ってましたね。もしかして、外でトレーニングとかでも始めるんでしょうか?私個人の意見としてはパチュリー様が自ら外出してくれるのは喜ばしいことなんですが。」
美鈴の言うことも、もっともだ。
ただでさえ喘息持ちの身のパチュリー。
こんな埃がいっぱい溜まりそうな所で黙々と本を読んでるより、偶には外に出て新鮮な空気でも吸ってもらいたい。
いくら人間では無いとはいえ、こう不健康な生活を送り続けていたら、色々とダメになりそうな気さえする。
「うーん、でも流石にトレーニングじゃないだろうなぁ。それだったら、私は関係ないと思うぜ?別に私がいなくたってトレーニングはできるだろ。メンバーを揃えたってことは何か複数人で挑むと好都合なんじゃn「美鈴さーん!魔理沙さーん!早く来てくださーい!」」
と、そこへ扉の外から小悪魔の声が響いてくる。
「・・・とりあえず、ついて行きましょうか?」
「そうだな・・・。まぁ、パチュリーのことだし近場なんじゃないか?」
そう言って、2人も図書館を後にする。
果たして、パチュリーの目的とは?
彼女は何に挑戦するつもりなのか?
多くの謎を残しながら、一行は珍しく動いた『動かない大図書館』について行くのであった。
「~~~~~!?(ちょっと、私にも用事があって呼んだんでしょうが!早くこのトラップ解除しなさいよ!!ねぇ!?ちょ、ちょっと!?)」
次が楽しみです
続きを阿修羅みたいな形相で待ってます。
続き天井にめり込みながら待ってます!
天井裏より愛を込めてお待ちしております
さっぱり予想できない次が、とても楽しみです。
めーりんが「うー☆」になった!?