Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

行ってきます、師匠

2010/08/27 12:59:16
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今尚蒸し暑い夏の今日、それは師匠の一言で始まりを告げた

「…釣り、ですか?」

既に乾いた洗濯物を取り込み畳んでいた私に師匠は釣りに行こうと提案してきたのだ

「うむ、ゆゆこさまに言ったんじゃ、きょう一日ようむとつりに行くとな」

「成る程、釣りですか、良いですね」

「じゃろ?」

賛同の意を示すと笑みを漏らす師匠

「はい、洗濯物を畳み終えたら準備をしますので」

はしゃぐ師匠を横に私は手早く洗濯物を畳む


私は納屋で釣り竿を二本引っ張り出し出発の準備を整えていた

「ようむ、まだか?」

「待って下さい師匠、急いても良い結果は出ませんよ」

因みに本日の師匠の出で立ちは帽子に半袖半ズボン、私の趣m…じゃなかった、川辺に和服はいくら何でも行動しにくそうだろうと用意した物だ、私が

「じゃあ行きましょうか、師匠」

「うむ」

釣り竿を二本担いだ私は師匠と共にまだ陽も高い空を飛んでいった


飛ぶこと数時間、私と師匠は人里の外れにある釣具店に立ち寄り餌を買い、近くの渓流へと向かった

「…川の近くは涼しいですね、師匠」

「うむ、しかしおなかがへったのう」

「そう言えばもう正午を過ぎてましたね、釣りの前に昼ご飯にしましょうか」

「うむ」

腹が減っては戦は出来ぬ、と言うことで釣りの前に昼食を取ることに
魔法瓶から冷えたお茶を注ぎ川辺でおにぎりを食べる、川のせせらぎと蝉の鳴き声が聞こえる

「…いつだったか」

食べ始めてからしばらくした頃、師匠が口を開いた

「いつだったか、おぬしとわしでつりに行ったことがあったじゃろ」

「はい」

「そのときも、こんなてんきじゃったな」

「そうでしたね」

「うむ、なつのきもちのいい日じゃった」

そう言ってまたおにぎりを食べる


昼食を食べ終え釣り針に餌を仕掛ける

「じゃあ始めましょうか」

「うむ」

川に釣り糸を垂らす、並んで川面を眺める

「…綺麗ですね」

「うむ」

何処までも続く川の流れ、青空に立ち上る入道雲、響き渡る蝉の声
体を吹き抜ける涼しい風に思わず目を閉じる

「ぬおっ」

師匠の叫びに振り向くと師匠の竿が驚くほど撓っていた

「うぬぬぬぬぅ」

「頑張って下さい師匠」

折れそうな勢いの竿と格闘すること数分、魚は疲れてきたのだろうか動きが鈍ってきた

「今ですよ、師匠」

「わかっとる!」

そう言ったが早いか師匠は釣り竿を一気に持ち上げ水面から引き上げる

「おお」

川から飛び出してきたのは十糎ほどの立派な鮎だった

「すごいじゃろ、ようむ」

「立派な鮎ですね、塩焼きにすれば美味しそうです、師匠」

「うむ!」

鮎を持ち上げ満面の笑みを浮かべる師匠
その後も次々と釣果を上げる私たち、いつの間にか陽は傾き始めていた

「もう帰りましょう、師匠」

「まってくれ、ようむあと少しでつれそうなのじゃ」

「分かりました」

師匠の横で帰り支度を始める私、そして師匠の黄色い声が上がり私を呼ぶ

「みろ!ようむすごいじゃろ」

満面の笑みで持っていたのはまたもや鮎

「たのむ、もういっか…」

「駄目ですよ」

駄々をこねる師匠を宥め賺して帰途につく、空にはもう既に夕日が輝いていた

「綺麗な夕焼けですね」

「…うむ」

少し反応が遅かったので振り向くと目を擦っている師匠が居た

「眠いんですか?」

「………」

もはや体力が残り少ないのだろう、無言で頷く師匠

「はい」

「…なんじゃ?」

「おんぶしてあげます」

「はずかしいぞ…」

「倒れられても困りますので」

「すまん」

そう言って私の背中に体を預ける師匠

「じゃあ行きますよ、師匠」

「…うむ」

師匠をおぶって夕暮れの空を飛ぶ、いつの間にか後ろから安らかな寝息が聞こえてくる


飛ぶこと数時間、白玉楼に着いた私を待っていたのは幽々子様と…

「…紫様、どうしてここに?」

「ちょっと野暮用よ~」

「そうですか、そうだ幽々子様、今日の夕食は鮎の塩焼きです」

「あら嬉しいわね、紫も食べてく?」

「嬉しいわね、それよりも背負っているのはひょっとして妖忌?」

私が背負っている師匠を紫様がめざとく見つける

「はい」

「ちっちゃくなってるわね」

「…はい」

暫しの沈黙、それを打ち破ったのは紫様

「抱っこさせて?」

「良いですよ」

師匠を抱っこして満面の笑みを浮かべる紫様

「可愛いわねぇ、藍がちっちゃかった頃よくこうしてたわ、今じゃ橙も大きくなっちゃって抱っこなんて出来ないからね」

師匠を抱っこできて満足したのだろう、私に返して一言言った

「…でも残念ね、可哀想だわ、貴方」

「…え、どういう事、ですか?」

「そのまんまの意味よ」

呆然としている私をよそに紫様はスキマを開いて帰ろうとしていた

「じゃあね、幽々子」

「あら、食べていけばいいのに」

「家には愛する式がいますもの」

「あらそう」

そう言って紫様はスキマへと消えていった

「妖夢、晩ご飯にしましょう」

「あの…師匠は?」

「眠らせておきなさい」

聞きたいのはそんなことではなかったのだが、しかし夕食が終わってからでも良いだろう


夕食の片づけをしている時も、紫様の一言が頭を駆けめぐっていた

『…でも残念ね、可哀想だわ、貴方』

何が残念なのか、何が可哀想なのか、どうして私なのか
考えれば考えるほど頭が混乱する

「………」

ひょっとして師匠は病気なのかもしれない、命に関わる重大な
考えれば考えるほど頭が痛くなりそうなので一旦思考を停止させる


洗い物が終わり風呂に入ったあと珍しく自室で本を読むふけっている幽々子様に就寝の意を伝えに行った

「…幽々子様、今日はこれで休ませて頂きます」

「どうぞ」

「幽々子様も夜更かしをしすぎないように…」

「大丈夫よ、亡霊は寝なくても大丈夫だから」

「…それでは失礼させて頂きます」

そう言って私は幽々子様の部屋をあとにし、寝室へ向かった

「…明日になったら、もう一度紫様に尋ねてみよう」

明日はあのスキマ妖怪を追いつめて何が残念なのか問い質そう、そう心に誓い眠りについた


朝、何者かが私を起こしてくる、とても懐かしい声だった

「…む、起きろ、妖夢!」

「はい!はいはいはい」

「『はい』は一回ですますように言ったはずじゃぞ、妖夢」

横を見ると大きくなった師匠が居た

「し…しょう?」

「儂の顔を見忘れたか?」

忘れるはずがない

「いいえ」

何が残念なんだ、何が可哀想だ、あのスキマ妖怪め、今度会ったら叩き斬ってやる

「もとのすがたにもどれたんですね、ししょう」

「あー、うん、まぁな」

どうしたんだろう、師匠の歯切れが悪い

「…ししょう、どうしたんです?」

「取り敢えず、これを見ろ」

師匠は鏡を取り出し私に差し出した


そこに映っていたのは、小さくなった私だった

「………は?」

分からない、わからない、ワカラナイ、ワカラナーイ

「なんでわたしがちいさくなるんですか?ししょう!」

「儂に聞くな!?」

「やっと、やっとししょうがもとにもどったとおもったら…」

「儂も旅を続けられると思ったら、当分はここに居座らなければならないのう」

そっか、紫様が言っていた「可哀想」ってこのことか…

その日から、元に戻った師匠とちっちゃくなった私の生活が始まった
始まりは今日
俺「おす」
友「山はどうだった?」
俺「天気は良かったし熊の足跡見たぜ」
友「…良く帰って来れたな」
俺「見ただけだからな、でも熊は魚を食べようと思ってたな、絶対」
友「川で?」
俺「うん、と言うわけで妖忌と妖夢が釣りをするだけの話を書く」
友「そりゃまた唐突な」

と言うわけでやってしまいました、どうも、この時期の南アルプスが一番好きな投げ槍です
最後に、続きそうですが続きません、多分

※タイトル変更しました
投げ槍
コメント



1.削除
あぁ、今度は幼夢か
超期待だ!
2.奇声を発する程度の能力削除
幼夢…楽しみだ!