あれはいつの日の話だったか、確か満月の夜。
ふらりとやってきたスキマ妖怪が勝手に鬼と酒盛りを始めたのだ。
そんな匂いを嗅ぎつけたのか偶然か……友人の魔法使いと山の巫女までやってきたのだから仕様がない。
面倒臭さにかられながらも速やかに酒のつまみを用意する。こちとら酒が飲めればいいのだ。
腹の足しにはならないが綺麗なお月さまも出ている。
『そういえば、つまらない話かもしれませんけど』
ポツリ、と早苗が月を見上げながら遠い故郷を思い出すように呟いた。少し頬が赤いのは酒のせいだろうか。
『昔、学校の先生に教わったある物書きのお話なんですけど………』
●●●
「月が綺麗ね」
いきなりのアリスのつぶやきにむせた。
「ちょっと何してるのよ」
「げほ……や、変な所にはいっちゃって……」
時は夜。所は縁側。お互いの口数も減り少しずつ沈黙の時間が長くなってきた頃。
飲んでいたお茶もすっかり冷めてしまっていて、今はそれが幸いとなった。
巫女服がぬれたのは仕方ない。ケホケホと咳込んでから袖で口を拭うと、アリスが呆れた顔をしてハンカチを取り出して霊夢の口を拭こうとする。
「そんな所でふかないの」
「もう遅いわ」
夜も遅く、この後何事もなければ寝間着に着替えて寝るだけである。多少汚れても問題ない。
それより今は確かめなければならない事がある。
「……で、どういう……」
「ん?」
灯りを点けるのが面倒で、小さな灯りしかないこの場所では彼女の顔を見るのも難しい。魔法使いのアリスにはよく見えているようだけど。
「なによ?」
暗がりの中でも彼女の顔はきょとんとしている……ように見える。
ついで神経を使って周りに誰の気配もないか確かめた。
ピンポイントすぎるのだ。
『ドッキリ大成功!』などという看板が笑い声と一緒にスキマから出てくるんじゃないんだろうかと思うほど。
「霊夢?」
「へ、あ、いや……いきなり月がなんたらっていうから……」
「あぁ……別に深い意味はないわよ。ただ、そう思っただけ」
おかしな霊夢、と彼女は笑ったようだ。暗がりでも声のトーンでそれは安易に想像できた。
(まぁ、ないかぁ)
色々気配を探ってみたが特にそれらしき気配はない。
そもそも彼女は姿かたちから西洋の人だ。東洋の文化には疎いだろうし、早苗が話してくれなければ自分も知らなかった話である。それを彼女が知っているとは思えない。
それと考えが行きつくと同時に少しだけ、残念な気分になる。
思えばいつも好きだの愛してるだの言っているのは自分からだ。もちろん彼女も言ってくれるけど、それは自分に応える時ぐらいであって……
「霊夢?」
特に何の意味もなく発した発言だったのだろう、浮かれてしまった自分が少し恥ずかしくて、やっぱり切ない。
(バカみたい……)
アリスの問いかけに空返事をしつつ空を仰ぐ。我ながら子供っぽい感情だとは思うけれど仕方がないじゃないか、こんちきしょう。今日はいつもより星がよく見える。
「……私そろそろ帰るわよ?」
「へ」
「もう暗いしね」
「えあ、ちょっと」
落ち込んだそぶりを見せれば彼女が構ってくれるといった期待は淡い夢に消えた。
泊まってけば、と言おうと思った時にはすでに彼女は空へと浮かんでおり、いつの間に持たせたのか、人形の持つライトが暗い参道を照らしていた。
「ねぇ霊夢知ってる?」
急に少し離れた所で彼女が振り向く。
いつもより暗い境内は彼女の顔を見るのには不向きだった。
――それでも確かに彼女は頬を染めて笑っていた。
「今日って新月なのよ」
●●●
っとに魔理沙のバカ!
『この前早苗から聞いた話なんだけどさ』
頬が熱い。原因はわかりきっている。
『奥ゆかしさって奴かな、中々にロマンチストだろ』
あの霊夢の顔は、絶対に知っている。
『なのに霊夢はこの話してた時に寝言を言い始めてさ、みんなで笑ってたんだ』
素直に信じた私がバカなんだろうか。あぁもう!
『まぁからかうにはいい相手かもしれないぜ』
からかわれたのは自分自身な気がする。どこかで魔理沙が見ているのでは、と疑うほど。
大きく息を吐いて一度立ち止まり、遠くの博麗神社があるであろう場所を見る。
頬の熱は冷たい夜風に当たっても一向に冷めやしない。
……恥ずかしくて居た堪れなくて飛び出してきてしまったけど、変に思われていないだろうか。
どこぞの吸血鬼とは違うがこんならしくもない事をしてしまったのも月の魔力のせいという事にしておく。
今日は新月だけど。
「バカみたい……」
あの時の彼女のポカンとした間抜け顔を思い出してくすりと笑う。
けれどきっと一番のバカはきっと去り際に見えた赤い顔を可愛いと思った自分だろう。
「ホント、バカみたい」
なんとなく、次は月の出ている晩に言おうと思った。
あの子の言う通りからかうのには丁度いいのかもしれない。
ねぇ?
お互いに気づかないふりして囁いて、
お互いに囁き合って確かめましょう。
隠された言葉の意味を。
ふらりとやってきたスキマ妖怪が勝手に鬼と酒盛りを始めたのだ。
そんな匂いを嗅ぎつけたのか偶然か……友人の魔法使いと山の巫女までやってきたのだから仕様がない。
面倒臭さにかられながらも速やかに酒のつまみを用意する。こちとら酒が飲めればいいのだ。
腹の足しにはならないが綺麗なお月さまも出ている。
『そういえば、つまらない話かもしれませんけど』
ポツリ、と早苗が月を見上げながら遠い故郷を思い出すように呟いた。少し頬が赤いのは酒のせいだろうか。
『昔、学校の先生に教わったある物書きのお話なんですけど………』
●●●
「月が綺麗ね」
いきなりのアリスのつぶやきにむせた。
「ちょっと何してるのよ」
「げほ……や、変な所にはいっちゃって……」
時は夜。所は縁側。お互いの口数も減り少しずつ沈黙の時間が長くなってきた頃。
飲んでいたお茶もすっかり冷めてしまっていて、今はそれが幸いとなった。
巫女服がぬれたのは仕方ない。ケホケホと咳込んでから袖で口を拭うと、アリスが呆れた顔をしてハンカチを取り出して霊夢の口を拭こうとする。
「そんな所でふかないの」
「もう遅いわ」
夜も遅く、この後何事もなければ寝間着に着替えて寝るだけである。多少汚れても問題ない。
それより今は確かめなければならない事がある。
「……で、どういう……」
「ん?」
灯りを点けるのが面倒で、小さな灯りしかないこの場所では彼女の顔を見るのも難しい。魔法使いのアリスにはよく見えているようだけど。
「なによ?」
暗がりの中でも彼女の顔はきょとんとしている……ように見える。
ついで神経を使って周りに誰の気配もないか確かめた。
ピンポイントすぎるのだ。
『ドッキリ大成功!』などという看板が笑い声と一緒にスキマから出てくるんじゃないんだろうかと思うほど。
「霊夢?」
「へ、あ、いや……いきなり月がなんたらっていうから……」
「あぁ……別に深い意味はないわよ。ただ、そう思っただけ」
おかしな霊夢、と彼女は笑ったようだ。暗がりでも声のトーンでそれは安易に想像できた。
(まぁ、ないかぁ)
色々気配を探ってみたが特にそれらしき気配はない。
そもそも彼女は姿かたちから西洋の人だ。東洋の文化には疎いだろうし、早苗が話してくれなければ自分も知らなかった話である。それを彼女が知っているとは思えない。
それと考えが行きつくと同時に少しだけ、残念な気分になる。
思えばいつも好きだの愛してるだの言っているのは自分からだ。もちろん彼女も言ってくれるけど、それは自分に応える時ぐらいであって……
「霊夢?」
特に何の意味もなく発した発言だったのだろう、浮かれてしまった自分が少し恥ずかしくて、やっぱり切ない。
(バカみたい……)
アリスの問いかけに空返事をしつつ空を仰ぐ。我ながら子供っぽい感情だとは思うけれど仕方がないじゃないか、こんちきしょう。今日はいつもより星がよく見える。
「……私そろそろ帰るわよ?」
「へ」
「もう暗いしね」
「えあ、ちょっと」
落ち込んだそぶりを見せれば彼女が構ってくれるといった期待は淡い夢に消えた。
泊まってけば、と言おうと思った時にはすでに彼女は空へと浮かんでおり、いつの間に持たせたのか、人形の持つライトが暗い参道を照らしていた。
「ねぇ霊夢知ってる?」
急に少し離れた所で彼女が振り向く。
いつもより暗い境内は彼女の顔を見るのには不向きだった。
――それでも確かに彼女は頬を染めて笑っていた。
「今日って新月なのよ」
●●●
っとに魔理沙のバカ!
『この前早苗から聞いた話なんだけどさ』
頬が熱い。原因はわかりきっている。
『奥ゆかしさって奴かな、中々にロマンチストだろ』
あの霊夢の顔は、絶対に知っている。
『なのに霊夢はこの話してた時に寝言を言い始めてさ、みんなで笑ってたんだ』
素直に信じた私がバカなんだろうか。あぁもう!
『まぁからかうにはいい相手かもしれないぜ』
からかわれたのは自分自身な気がする。どこかで魔理沙が見ているのでは、と疑うほど。
大きく息を吐いて一度立ち止まり、遠くの博麗神社があるであろう場所を見る。
頬の熱は冷たい夜風に当たっても一向に冷めやしない。
……恥ずかしくて居た堪れなくて飛び出してきてしまったけど、変に思われていないだろうか。
どこぞの吸血鬼とは違うがこんならしくもない事をしてしまったのも月の魔力のせいという事にしておく。
今日は新月だけど。
「バカみたい……」
あの時の彼女のポカンとした間抜け顔を思い出してくすりと笑う。
けれどきっと一番のバカはきっと去り際に見えた赤い顔を可愛いと思った自分だろう。
「ホント、バカみたい」
なんとなく、次は月の出ている晩に言おうと思った。
あの子の言う通りからかうのには丁度いいのかもしれない。
ねぇ?
お互いに気づかないふりして囁いて、
お互いに囁き合って確かめましょう。
隠された言葉の意味を。
閲覧キーは勿論アレですよね?(え
とりあえず千円札の野口が憎い。何故変わったのか…
> 奇声を発する(ry in レイアリLOVE! 様
お久しぶりですw
閲覧キー、もとい二人だけの合図とかあると凄く滾るよね(
>2様
野口ェ……
自分自身、続きをみたいです。
>3様
そう言っていただけると嬉しいです!こちらこそありがとうございます!
>4様
閲覧キーを手に入れたら私にも連絡ください。マジで。
>5様
それやるとなんか一気にギャグにいきそうです。霊夢さんの暴走的な。
そしてそれを書く力量が、力量がふぎぎぎ
>6様
二人がlove loveしてればそれでいい(
>7様
夏目漱石も二葉亭四迷もイケメンすぎる。
それで伝わるという日本の心もイケメンすぎる。
面白かったでっす!