「あちい…」
雲ひとつ無い晴天の下、私は縁側に突っ伏していた。
茹だるような暑さは衰えること無く、空気は泥のように重い。
風でも吹けば涼しくなるのだろうか。
「呼ばれた気がしました」
「呼んでないから帰れ」
言っても無駄だろうが一応言ってみる。が、案の定私の言葉を無視される。
どこからとも無く現れた文はそのまま私に隣に座り込む。
「つれないですねえ。つんでれいむですか」
ワケの分からないことを言い出す文。
なんだそれは。私はそんなものになった覚えはない。
「何の用?」
「特に。強いて言えば霊夢さんに会いたかっただけです。あ、これお土産です」
「ひゃあっ!?」
首筋に冷たいものが押し当てられ思わず声を出してしまう。
飛び起き、文を睨みつけるがニヤニヤした笑いしか帰ってこなかった。
文が持っていたものはラムネだった。それを首筋に押し当てたのか。
「…なによ」
「いえ、結構かわいい声出すんですね」
「うるさい」
赤くなった顔を見られないようにしながら文からラムネを奪い、栓を開ける。
冷たい液体を一気に流しこむと、喉の渇きが潤され、活力が湧いてくる。
それだけでこの暑さも悪く無いと思えた。われながら現金だと思うが。
「まあ、ありがとう。感謝するわ」
「それはどうも。私も嬉しいです」
言いながら笑顔で私の腕と自分の腕を絡める。
いつもなら無理矢理にでも引き離すところだが、今日はラムネに免じて勘弁してやろう。
文の体温を感じながら話しかける。
「あんたは飲まないの?」
「一本しか手に入らなかったもので。霊夢さんの分だけです」
「…なんだか悪いじゃない」
「霊夢さんが喜んでるところを見れたからいいですよ」
そんな恥ずかしいことを素面で言わないで欲しい。余計に体温が上がる。
いつもより近い距離にある文と視線があった。
いつもは浮かべないような無邪気な笑顔が眩しくて、視線を逸らした。
この天狗は私をからかっているのでないか。恥ずかしいことを言って反応する私を見て楽しんでいるのではないか。
そう考えると悔しい。悔しくなったので負けずに恥ずかしいことを言ってみる。
「…私も文の喜ぶところがみたいわ」
「は?」
ぽかんと馬鹿みたいに口を開ける文。
うわ、何を言っているのか自分。顔からオプティックブラスト…じゃなくて火が出そうだった。
恥ずかしさを誤魔化すために早口で文に詰め寄る。
「あー、ほら、いいから。大人しく飲みなさい」
「いや、その、それだと…」
「何よ。私のは飲めないって言うの」
「そういうわけじゃないんですけど…それだとその…」
文は下を向いてごにょごにょと口籠もる。
ええい、早くしろ。こっちだって恥ずかしいんだ。
「間接キスに…」
「あ…」
言われた気がついた。瞬間、さらに体温があがる。
ああもう、なんてことに気がつくのか。黙って飲んでいればよかったのに。
このばか天狗め。
「あ…う…その、い、頂きます」
おずおずとラムネを受け取る文。
そんなしおらしい表情をしないで欲しい。こっちまで恥ずかしい。
躊躇うように口を近づけた文はゆっくりと瓶を傾ける。
喉を鳴らしてラムネを飲み終えると、少し赤くなったはにかむような笑顔を向ける。
「あはは…甘い、ですね」
「…ふん」
そっと文の手に自分の手を重ねる。
意味なんて無い。ただ丁度そこに文の手があっただけ。ただそれだけ。
「…晩ご飯、たべてく?」
「いいんですか?」
「ラムネのお礼よ。私は義理堅いの」
「なら遠慮無く頂きます。それまでは」
重ねられた手が握られる。
指を絡めるように握られた手は僅かに冷たく、温かい。
じっと私を見つめる文は子供みたいな笑顔で言う。
「こうしてもいいですか?」
「…特別よ」
強く手を握り返しながら私は応えた。
雲ひとつ無い晴天の下、私は縁側に突っ伏していた。
茹だるような暑さは衰えること無く、空気は泥のように重い。
風でも吹けば涼しくなるのだろうか。
「呼ばれた気がしました」
「呼んでないから帰れ」
言っても無駄だろうが一応言ってみる。が、案の定私の言葉を無視される。
どこからとも無く現れた文はそのまま私に隣に座り込む。
「つれないですねえ。つんでれいむですか」
ワケの分からないことを言い出す文。
なんだそれは。私はそんなものになった覚えはない。
「何の用?」
「特に。強いて言えば霊夢さんに会いたかっただけです。あ、これお土産です」
「ひゃあっ!?」
首筋に冷たいものが押し当てられ思わず声を出してしまう。
飛び起き、文を睨みつけるがニヤニヤした笑いしか帰ってこなかった。
文が持っていたものはラムネだった。それを首筋に押し当てたのか。
「…なによ」
「いえ、結構かわいい声出すんですね」
「うるさい」
赤くなった顔を見られないようにしながら文からラムネを奪い、栓を開ける。
冷たい液体を一気に流しこむと、喉の渇きが潤され、活力が湧いてくる。
それだけでこの暑さも悪く無いと思えた。われながら現金だと思うが。
「まあ、ありがとう。感謝するわ」
「それはどうも。私も嬉しいです」
言いながら笑顔で私の腕と自分の腕を絡める。
いつもなら無理矢理にでも引き離すところだが、今日はラムネに免じて勘弁してやろう。
文の体温を感じながら話しかける。
「あんたは飲まないの?」
「一本しか手に入らなかったもので。霊夢さんの分だけです」
「…なんだか悪いじゃない」
「霊夢さんが喜んでるところを見れたからいいですよ」
そんな恥ずかしいことを素面で言わないで欲しい。余計に体温が上がる。
いつもより近い距離にある文と視線があった。
いつもは浮かべないような無邪気な笑顔が眩しくて、視線を逸らした。
この天狗は私をからかっているのでないか。恥ずかしいことを言って反応する私を見て楽しんでいるのではないか。
そう考えると悔しい。悔しくなったので負けずに恥ずかしいことを言ってみる。
「…私も文の喜ぶところがみたいわ」
「は?」
ぽかんと馬鹿みたいに口を開ける文。
うわ、何を言っているのか自分。顔からオプティックブラスト…じゃなくて火が出そうだった。
恥ずかしさを誤魔化すために早口で文に詰め寄る。
「あー、ほら、いいから。大人しく飲みなさい」
「いや、その、それだと…」
「何よ。私のは飲めないって言うの」
「そういうわけじゃないんですけど…それだとその…」
文は下を向いてごにょごにょと口籠もる。
ええい、早くしろ。こっちだって恥ずかしいんだ。
「間接キスに…」
「あ…」
言われた気がついた。瞬間、さらに体温があがる。
ああもう、なんてことに気がつくのか。黙って飲んでいればよかったのに。
このばか天狗め。
「あ…う…その、い、頂きます」
おずおずとラムネを受け取る文。
そんなしおらしい表情をしないで欲しい。こっちまで恥ずかしい。
躊躇うように口を近づけた文はゆっくりと瓶を傾ける。
喉を鳴らしてラムネを飲み終えると、少し赤くなったはにかむような笑顔を向ける。
「あはは…甘い、ですね」
「…ふん」
そっと文の手に自分の手を重ねる。
意味なんて無い。ただ丁度そこに文の手があっただけ。ただそれだけ。
「…晩ご飯、たべてく?」
「いいんですか?」
「ラムネのお礼よ。私は義理堅いの」
「なら遠慮無く頂きます。それまでは」
重ねられた手が握られる。
指を絡めるように握られた手は僅かに冷たく、温かい。
じっと私を見つめる文は子供みたいな笑顔で言う。
「こうしてもいいですか?」
「…特別よ」
強く手を握り返しながら私は応えた。
なんでこのアイテムが今まで出て来なかったのか!
あれ、晩ご飯の後は?
ご馳走様です。