目が覚めると、やたらと静かな朝を迎えていた。
普段なら「おはよぅ~!」とか言って朝からテンションの高い萃香と朝餉を、となるところだけれど、今日はその萃香が現れない。
そういえば彼女は、昨日もう一人の鬼の所へ呑みに行ったのだっけ。鬼同士の宴会なら、三日三晩は帰ってこないか。
そんなことを考えつつ、布団をたたみ、雨戸を開けにいく。
今日も相変わらず暑そうに太陽が照っていた。
朝餉を準備して、頂く。
いったい何月ぶりであろう、非常に静かな朝餉だった。
聴こえてくるのは蝉の声だけ。その蝉も、昼を待たずして鳴き止んでしまった。
猛暑日だった。
この暑さなら、魔理沙や早苗は家でつぶれているだろうか。
いや、魔理紗ならあの図書館に押しかけているかもしれない。
紫もこんな日に態々神社には来るまい。ということは本日、喧しい要因は何一つないということだ。
表情こそ変わらないものの、すこしほっとして食事を片付ける。喧しい奴がいないと確かに暇ではあるのだが、来たら来たで暑苦しい。
霊夢は静寂を選択した。
普段は作っていないようなお守りやお札を量産する。
本人すら時々忘れるけれど、博麗も一応神社だ。拝殿の方へ回れば、それなりに揃うべきものは揃えてある。
「さて、こんなものかしらね。」
作業を一段落させて、立ち上がる。
背伸びをしながら外を見ると、朝見たときとあまり変わらず、非常に静かだった。
「さて、昼餉の準備でもしましょうか…」
そう言って振り返り、台所へ向かおうとしたその時、
ぱしゅ、がし。
背後から突然抱きしめられた。
「霊夢さ~ん♪」
私に頬を摺り寄せているそいつは、射命丸文だった。
そして私は思った。しまった、こいつの可能性をすっかり忘れていた、と。
「…とりあえず離してくれない?」
そんな提案は見事に却下された。
「ダメです~。2週間ぶりに霊夢さんに会いにいけたからには、この遅れを取り戻さないといけません!」
「…いったい何の遅れなのよ。」
「言葉のあややです。」
うまい事言ったつもりなのかどうか。
「というか2週間も会ってなかったっけ?私たち」
「そうですよ!霊夢さんに会えないこの2週間がどれだけ長かったことか…」
さらっとそんなことを言わないで欲しい。
「え、逆にアンタその間何してたの?」
「えー詳しくはいえませんがー密着取材してたんですー」
「…なんで拗ねてるのよ。」
「だって!普通に店に入ったらあの2人人目も憚らずいちゃいちゃしてるんですよ?!あの時ばかりは『やめた方がいいと思いますよ?』っていう空気を読んだ忠告を聞いておけばよかったとどれほど後悔したことか!」
「……大体察せちゃったじゃない。」
詳しく言えないのじゃなかったのかしら
「だからその2週間分霊夢さんといちゃいちゃするんですよ~♪」
「ちょ、待、アンタいまなんてこと、ぇえ?!」
「霊夢さん顔真っ赤にしてる~可愛い~」
「って、ほっぺたをつつくなぁっ!」
あまりの恥ずかしさに文の腕を振り解く。
なんか私の息遣いが荒くなってるんですけど。
「…そうよ、昼ごはんをしなきゃいけないのよ。」
そんなことを言って逃げるように台所へ…
「ならば手伝いますっ!」
…行くと文が待っていた。
「……アンタさあ」
「はい?」
「どれだけ引っ付いてくるのよ?」
昼ごはんを作って食べて片付けて、境内の掃除をして、
縁側で氷菓子を食べて、あまっさえ厠にまでついて来ようとするのだから今日の文はかなりどうかしている。
「さすがに厠くらい一人でいさせてよね?」
「ご安心を。流石にそこまで変態ではありません。」
「でも厠の前までついてきてるけど?」
「中には入りません。ここで待ってます。」
「……いくらなんでも場をわきまえなさいよっ!」
お札を投げつけて廊下の端に固定する。
いくら文でも恥ずかしいったらありゃしない。
「…あ、出てきた。早く解放してください~」
「はいはい。言われなくてもするわよ。…はい取れた、」って
むぎう。
「…ちょっと文?」
またしても文に抱きしめられて動けなくなった。これで今日何度目だろう。馴れてしまった自分がいるのが怖い。
「霊夢さんに会えなかったこの間、私がどれだけさびしい想いを…」
「ものの1~2分じゃないの!」
「ものの1~2分でも、待ち侘びていればその時間は永遠にも長くなるんですよ?」
「っ……」
ああ、頼むから。
そんな瞳でわたしを見ないで欲しい。
「言ったじゃないですか。今日は"四六時中"霊夢さんと"ずっと"一緒にいちゃいちゃしてるんです。」
その澄んだ瞳に何もかも吸い込まれ……
「…って!何か(恥ずかしい言葉が)増えてるじゃない!」
思わずツッコまずにはいられないのは何かの性だろうか、悲しい。
「気のせいです。あと霊夢さん、また顔真っ赤ですよ?」
「うるさい!」
……私のドキドキを返せぇっ!
魔理沙
むぎう最高!あやれいむも最高!
風は吹いていなくても、あやれいむの風はここに
暑いなぁ、熱いなぁ
ふふ…最後にいい夢を見させてもらったぜ…
じゃあな。生きてたらまた会おう
紅染月……いい名前ですね。
でれでれな文さんに照れ照れな霊夢さんでとても良いあやれいむでした。