Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

幻想郷デイズ

2010/08/02 22:47:16
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幻想郷キノコ・タケノコ論争の続編になりますので、そちらをあわせてお読みになったほうが楽しめるかもしれません


「……キノコかタケノコか? そんなことを言うために、貴方たち、わざわざ彼岸くんだりまで来たのですか?」

 自身のデスクに広げられたスナック菓子を眺めながら、閻魔・四季映姫は嘆息した。

「さすがの閻魔様も、この件には白黒つけかねますかしら?」

 幻想郷の管理者、境界の妖・紫は不敵に笑う。

「くだらない。仕事でもないのに、そんなことしませんよ」
「あら、ずいぶんとビジネスライクでいらっしゃる」
「白黒つけるのは、趣味だとでも?」

 菓子を横へどけて、映姫は手元の書類を整え始めた。

「ええ、それと、お説教も」
「違います。説教は……そうハズレてはいませんが」
「やっぱり」
「それはさておき、白黒つけるには一定の基準が必要です。が、嗜好品にはそもそも万人が認める基準などない。評価基準は様々です」

 チョコスナック一つとってもそうだ。
 ある人はチョコとスナックのバランスを重視する。
 また別の人は食感を、またある人はチョコで手が汚れないだとか、食べやすさを重視する。
 誰がどういった視点から見ても、一様に白か黒かの二色に塗り分けるなんてことは、とうてい不可能なのである。

「なるほど、万人が食するものはそうはいきませんわね――」

 表向き従順に頷きながら紫は微笑んだ。

「死者に対しては、絶対的な権力者である貴方が一方的に裁けばいいだけですけど」
「貴方は、少し含みが多すぎる。まあ、いい。わかったら帰りなさい」

 シッシッ、と払い退けるように、手にした書類で映姫は紫をパタパタと仰ぐ。

「それで今日はもう一つ、白黒つけられないことがあるのですわ」
「まだ、なにかあるのですか! もう――」
「私ではありません。一人悩める乙女がおりまして」
「悩める乙女だぜ!」

 紫の広げたスキマからニョッキリ出てきたのは、誰あろう幻想郷一のイケメンガール。霧雨魔理沙その人。

「なんだ、貴方でしたか。貴方なら白黒は十分ついていると思うのですが」
「いや服装のことじゃなくて! 私にだって白黒つかないことぐらい、ある――」

 神妙な顔で腕組みをして魔理沙は首を振る。

「しかし、さっきの閻魔様の発言から自ずと見えてきた。一定基準が定まらなければ、白黒つけることはできない」
「そうですね。一を聞いて十を知る、いいことです。学ぶことは善行ですよ」
「基準を決める必要もないさ。アリスもパチュリーもにとりも霊夢も、みんな違って、みんな可愛い、みんな大好きだ」
「えっ」
「嫁を一人に決める必要はなかったんだ! みんなと、私はここにいていいんだ!」
「ええっ」

 このとき、開放感のあまり、魔理沙は気がついていなかった。
 幾千万もの死せる人・妖を裁いてきた、地獄の裁判長・四季映姫をして、戸惑いの色を隠せない強烈な気迫が辺りに渦巻いていた。
 それもそのはずだ。
 その四人は、すでに――。

「――おめでとう」
「――おめでとう」
「――おめでたいな、盟友」
「――おめでたいわね」

 ザッザッザッザッ……!

「え?」
「あなたに、祝福と、永遠の愛を」

 尋常でないプレッシャーに、冷や汗をかきながらも、魔理沙はよく事態を呑み込めていない。
 四つの影がじわり、と魔理沙を取り囲む。

「魔理沙、魔法使い同士の絆、共に戦った日々。よもや忘れたわけではないわよね。私たち、相性バツグンよね」
「むきゅー! 魔理沙と釣り合うのは私だけよ。それに、あれだけたくさん魔道書を貢いであげたじゃない!」

 アリスの糸繰り人形が所狭しと動き回り、パチュリーの魔道書が宙に五行の魔法陣を浮かび上がらせる。

「盟友、大好きだ……。本当に、君と会ってから人間が好きになった。君を、信じたい」

 にとりの機械が、妖力エネルギーを注入されて鈍く鳴動する。

「魔理沙、忘れないで。あんたの永遠のライバルであり、憧れ、共に生きるパートナーは私だけなの」

 霊夢の祓い棒と霊符が、霊気を帯びて、ぼんやり発光する。

「え? なに? みんなどうしたんだ? な? どうしてここにいるんでぃしゅか」

 緊張のあまり呂律が回らない魔理沙。

「あらかじめ私が呼んでおいたのですわ――」

 紫がニタリと嗜虐的に笑っていた。

「そう、貴方は少し嫁が多すぎる。無理にでも白黒つけて帰りなさい」
「帰れ、なかったら?」
「――そのときは、小町のナイスなボートに乗って、また来なさい。じきじきに地獄を案内します」
「え、ちょ……」

 悲しみの向こうへと辿り着きそうな、魔理沙の焦点のあわない瞳。

「魔理沙、基準は必ずしも一つには決められないかもしれない。しかし、人の時は有限。人の身も心も一つ。優先順位を定め、最良のものを選び出す必要があることもあるのです」

 それっぽいことを言って、映姫は自席を後にした。

「どこへ、どこへ行くんだ閻魔様――」
「部屋がこんな状態では仕事にならないでしょう? 私は今日は早めに帰るとします」
「救いはないんですか! 蜘蛛の糸的なものは!」
「死神たちも、今日は早く上がりなさい。……中に誰もいなくてもいいですよ」

 バタン。
 閻魔の執務室の扉が、無情な音を立てて閉まった。



<了>
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
nice boat.
2.名前が無い程度の能力削除
ハーレムEDもいいよね、で議論終了。
3.奇声を発する程度の能力削除
何かに似てるなと思ったらタイトルで納得www
4.万年削除
なぜそこでザナタンを選ばない?
5.名前が無い程度の能力削除
魔理沙爆発しろ!!!
6.名前が無い程度の能力削除
だからあれほどタケノコの里を選べと小1時間