Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

最高速で駆け抜けて

2010/08/02 15:56:32
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「ひぃぃぃやっほぉぉぉぉぉおおおお!」


 それは、さながら真昼を貫く流星だった。
 真一文字に空を切り裂いて飛んでいく。
 昼間に星を落しながら、速く、ひたすらに速く飛んでいく。
 目的地など忘れた。けれど、身体の衝動に任せて飛んでいくのだ。
 縛るものはなにもない。ただ飛べばいい。自らが出せる最高速を解放して飛べばいい。
 本能のまま、身体を動かす。
 ホウキに跨り、いつもは自由自在に操るのだが、今だけはしがみつくことしかできない。
 ぐっと押さえつけていないと、吹っ飛びそうになる。

 ゴーグルで防備した目は開きっぱなしだ。。
 耳元で、空気が破裂するような音が鳴る。そのたびに鼓膜が破れそうに思う。
 けれど意識しない。考えない。ただただ速く、飛べばいい。
 黒白魔法使いは空を行く。
 なにより速く。
 速く!


「ひゃああああっはぁぁぁぁぁぁあああああああ!」


 ごう、と音。
 風を切り裂いて、並行する影。
 鴉天狗だ。
 天狗はにやりと笑って、魔法使いに接近する。

 ぶつかる!

 魔法使いはその速度を一瞬も緩めることなく重心をずらした。
 落ちる身体。
 ホウキとともに、地面に真っ逆さまに落ちていく。
 風がごうごうとうなり、耳を刺激する。目を瞑って、魔法使いは精神を落ち着ける。
 死ぬわけには、いかないからだ。
 寸前、魔法使いは目を見開いた。
 ぎゅり、とホウキを握る手が音をたてる。柄の先をぐぐっとあげる。
 地面に墜落する、その瞬間に体勢を立て直し、魔法使いは空へと昇る。
 遠くに、天狗の後姿が見えた。
 

「いいいいいいいいいいっやはぁぁぁあああああ!!」


 魔法使いは加速する。
 青い空の向こうに見える天狗の背へと。
 深く、深く、体勢を低く構える。
 空気抵抗を限界まで少なくして、魔法使いは星になる。
 帽子が飛んで、落ちた。
 気にしない。
 駆け抜ける。
 速度は最速。
 一瞬たりとも落さない。
 ぎじり、と音がする。
 皮膚が爆ぜる。気にしない。額が痛い。気にしない。垂れた血が頬を流れる。
 気にしない!


「ひょぉぉぉぉうっはぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」


 敵を撃ち抜くかのように、眼前の背中に視線を定める。
 一瞬振り返って、天狗はこちらを見た。
 にやっ、と笑った。
 笑ったのだ。
 魔法使いは笑う。
 とびっきりの笑顔で、にやりと笑う。
 天狗はもうこちらを見ていない。
 まるで、ついてこい、とでも言いたげに、翼を一振りした。
 魔法使いは翔る。
 空を翔る流星。


「ひゃっはああああぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!」
「ひょぉうぁぁぁあぁあぁぁぁあああああああああああああああ!」

 
 翔る。
 翔る。

 頭上に広がるのはどこまでも青い空。
 吸い込まれそうな、空。
 かけたゴーグルの向こうに見える、青い景色。

 翔る。
 翔る。
 
 ばぢり。

 音。

 脳内が疾走する。
 思考が加速する。一瞬一瞬が遅い。どくん、どくん。心臓が身体中に血液を流し込む。
 汗が流れた瞬間から乾いていく。電流が走るみたいな感触。ぎぢぎぢと頭が痛い。
 痛い。
 けれど、それには不快感は一つもなくて、ただ、自分がここにいることだけを感じさせてくれた。


 ぞわ、と総毛立つ。
 自分は興奮している。
 そのことに、ようやく気がついて、魔法使いは笑みを深める。
 それなら、負けられない。


 そのとき、見えた。
 青い景色。
 あれがゴールだ。
 そうだ! 思い出した。
 にやり、と魔法使いは隣を行く天狗に視線を送る。
 同様に、にやり、と笑って返された。
 
 加速する。
 最高速から、限界を突き破って加速する。身体が悲鳴をあげているのがわかる。
 けれど、やめるわけにはいかない。
 止めるわけにはいかない。
 身体が熱い。
 

「ぃぃぃいいいいいっやはぁぁぁあぁあああああ!!」
「ひゃぁぁぁあああああああっほううううううう!!」


 震える手。
 そうして、魔法使いと天狗は紅魔館前の湖に突っ込んだ。
 
 大きな水柱が立った。









 

 
「ひゃっはー! 水だ水だー!!」
「ひゃあっほー!!」



[暑いですから]
 
 
 そんな気分。
 叫びながら全力疾走とかしたい。
 変人認定されるだろうが気にするものか。
 そんな気分。
 
月空
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
読んでてスカっとした。

あとがきに凄く同意w
2.名前が無い程度の能力削除
タグ見た瞬間なんて音速が遅いネタだろう、と邪推しちゃったけど、暑いのならしょうがないな。
3.名前が無い程度の能力削除
湖の水吹っ飛ばないのかな(笑)
4.奇声を発する程度の能力削除
読んでてとても気持ち良かったです!!
5.削除
>ひゃっはー! 水だ水だー!!
何処の世紀末だよwww
6.名前を忘れた程度の能力削除
その速度で突っ込んだら水面はコンクリとかわらねぇ!
とか突っ込みたいが、暑いのならしょうがないな。