Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

天子と彼が出会った話

2010/08/02 01:34:25
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※注意※
このお話は作品集71「天子のちょっとした一日」「霖之助の幸せな一日」からの続き物です、先にそれらを読んで頂ければ若干分かりやすくなると思います







「総領娘様はどのようにしてあの殿方と知り合ったのですか?」
私の一日は人里の美味しい茶屋と衣玖の改まった質問で始まりを迎えた
「そうねぇ、あれはわてが15の夏やったぁ…」
「真面目に答えて下さい」
「…すいません」
ヤバイ、衣玖の目がマジだ

そう、あれは少し前の話
『…暗い』
私は一人で暗闇の中を歩いていた、別に目的はなくただ単に暗闇の中を一人で歩きたかったからだ
『それにしても深いわね、この森』
話しかける相手も居なく本当に独りぼっちだった、完全なる孤独
天界でも独りぼっちだった私はたいして寂しさも感じずとぼとぼと歩を進めていた、今思えば不用心にも程があったと感じる
『キャッ』
大木の突き出た根っこに足を取られて変な風に怪我しちゃったのよ
『…どうしよう』
仕方なく這って進んだんだけど真っ暗で手元も見えなくてそのうち段々と怖くなってきてね、座り込んで動けなくなっちゃったのよ
足が痛み出してね、満足に動かすことも出来なくなって何時間かして眠くなってきてね
『もう…いいや』

「…で寝ちゃったんですか?」
衣玖が信じられないと言いたげな表情で問いかけてきた、全く持ってその通りだと思う
「まぁね、たいして寒くもなかったし、滅多に人が入ってこないところだったからね」
実際その直後に出会った彼は人間ではなかった、しかし妖怪でもなかった、半々だったのだ

『おーい、そこで寝てたら風邪引くよ』
眠り込んでから数時間、疲れ切った耳朶を掠めたのはそんな呑気な言葉だった
『…誰』
疲れ切った私の体ではその言葉を吐き出すのにやっとだった
それからさらに数時間後、私は見知らぬ天井で覚醒した
『ここは、どこ…』
『目が覚めたか良かった良かった、ここは魔法の森だ、君はここから百メートル先にある大木の下で眠ってたんだ、あのままだったら妖怪の夕食か疲労凍死だからね、僕の別荘に寝て貰ったよ』
『…別荘?』
『うん、別荘』
後で分かったことだけれどもそこは天幕の中だった
『…あなたは、だれ?』
『僕は森近霖之助、この森で古道具屋をやってるんだ』
自分から名乗らなかった私の非礼を彼は咎めもせず笑顔で答えてくれた
『それよりも足はどうだい?掠り傷ですんで良かったけれど、少しひどかったからね、すまないけれど君が寝ている間に処置をさせて貰ったよ』
彼の言葉を聞いて足を見たら確かに包帯が巻いてあった
『あ、ありがとう』
『礼には及ばないよ、それより歩けるかい?』
彼は天幕の外から声を聞き、包帯を巻いてある足を少しだけ力を込めて触れてみた
『痛くは、無いです』
『良かった、ここら辺の薬草の効能は知っていたけれども使用する機会が少なくってね、悪いけど試させて貰ったんだよ』
その時の私は少しばかり頭が混乱していたので彼の非常識とも思える行動を許せたのだろう、そう思える、いや、そう思いたい
『眠っておくと良いよ、明日になったら人里まで担いでいくから』
彼は顔を覗かせて笑っていた
私は彼の言葉に素直に従うことにした

「…別荘って、天幕ですか?」
衣玖は完全にあきれかえっていた
「ほら、彼は動き回る人だからさ」
私は無理に納得したかったのかもしれない、あの時も、今も

眠りについてから数分、私は目が覚めてしまった
『どうしたんだい?眠れないのか』
彼は天幕の外から声を掛けてきた
『ちょっとね』
『じゃあ外に出てみないか?無理しなくても良いけれど』
私は彼の言葉に誘われ外に出た、そこで待っていたのは想像を超えた世界だった
『…綺麗』
それは、漆黒の空を埋め尽くす無数の星々だった
『うん、この時期はここが一番良く綺麗に見える、なにせ高地だからね』
私は彼の言葉を聞きつつ空を見上げていた、手を伸ばせば掴めそうと思えるような星々
天界では気にしたこともなかった星空が地上に降りてからはとても貴重で、尊く思える
『はい、お茶』
そう言われて視線を地面に戻すと彼は緑色の液体で満たされたカップを私に差し出してくれていた
『…ありがとう』
『どういたしまして』
正直嬉しかった、結構寒かったし喉も渇いていたから水分は大歓迎だった

「そう言うことがあったんですか」
衣玖がしみじみと呟いていた
「うん、それでその翌日私は彼に担がれて森を脱出したわけ」
私は彼に感謝しても仕切れないほどの事をして貰ったのだ

朝、目が覚めた私は彼の背中にいた
『あと少しで人里だからね、もう少し頑張ってくれ』
私は彼の背中で彼の言葉を聞いていた
その後程なくして人里に到着、そしてその後に傷を見て貰うため永遠亭まで案内して貰い、天界に帰った
『良く、頑張ったね』
それが、彼の元を去るときに聞いた言葉だった
私は昔話を洗いざらい話し終え衣玖にこう伝えた
「…というわけよ、分かった?衣玖」
「えぇしっかりと、あなたもですよね、文屋さん」
…なんと言った、目の前の竜宮の使いは
「どうも、清く正しい射命丸です、ただいまの会話は書類以外にもテレコにも録音してあります、いやはや良いネタが拾えました」
「衣玖!計ったな!衣玖ぅ!」
悲痛な叫びは青空に響き渡り、衣玖と烏は笑ってた、私は真っ白になった

なんか、すいません
星空見てたら書きたくなりました、皆様のご指摘をお待ちしております
投げ槍
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
やっぱ天霖は良いね!
流石衣玖さん策士w
2.削除
わぁい!天霖再臨!
流石衣玖さん空気が読める策士だwww
3.K-999削除
歩けないなら飛べばいいじゃない。

……つーのは禁句ですよね。やっぱり。
4.名前が無い程度の能力削除
うん、「岳」を思い出しつつ、いい霖之助さんだ。