「れーいむ、ほらほら飲め飲めー」
「なんでお猪口じゃなくて丼に注いでるのよ。魔理沙あんたちょっと飲みすぎよ」
「いいじゃないか楽しいんだから。酒は百薬の長って言うくらいだ。こんだけてんこ盛りなら万病速効ある事神の如しだぜ」
「そりゃ心太でもなんでもてんこ盛りにしたらさぞかし見栄えがするでしょうね」
「勇儀もこれくらいのやつ持ってただろ」
「鬼と一緒にしないの。ほら、縁側だけどちょっと横になってなさい」
「おー、なんだかひゃっこくてきもちいいぜ。んふー」
とかなんとか言いながら、魔理沙は縁側に頬ずりしている。
そこあんまり綺麗じゃないんだけど、まあいいか。
宴会になると決まって最初に駄目になるのが早苗か魔理沙だ。
いじられて酔いつぶされるか盛り上げに熱が入りすぎて潰れるかの違い程度で、どちらも序盤で駄目になる。
今回は早苗がお酌に走り回っているので、盛り上げ役の魔理沙が最初に潰れてしまった。
毎回場所の提供兼介抱役の私は、いつも宴会が終わるまでだらだらと飲んでいる。
おかげで潰れたことはないけれど、魔理沙がよく言う「駄目になる快感」とやらも味わったことが無い。
とことんまで飲み明かす、なんて疲れそうだし。
「あ、霊夢さん。飲んでますか?」
「ああ早苗。まあ、そこそこに。お酌はどうしたの?」
「一段落です。神奈子さまが天狗や鬼の方々と飲んでいらっしゃったので、さっきまで息つく暇もありませんでした。その丼は?」
「飲めってさ。魔理沙の親切心アピールよ。心遣いはお猪口程度じゃ間に合わなかったみたい」
「あはは。で、本人は縁側と仲良しと」
「まあ、今日はかなりペース上げてたもの」
「アゲアゲですか」
「よくわからないけど、多分そんな感じ」
「飲んでます?」
「そこそこね」
「お酌しましょうか?」
「自分の神様の世話しなさいよ。あんたは飲んでるの?」
「まさか。この間つぶれちゃった時霊夢さんに『もう二度と飲みません』って誓ったじゃないですか」
「ああ、そうだったわね。あの時は酷かった。擦り寄ってくるわ抱きつくわしがみついて泣きだすわ、挙句に服を脱がそうとするわ。飲みすぎよって言ったら“キスしちゃいますよー”ってほっぺにされたし」
「いやもう、本当に忘れて下さい」
「別に飲んでもいいのよ。もう懲りたでしょうし」
「いえ、今日はもう飲まないと決めたんです。毎度毎度霊夢さんのお世話になるのも申し訳ないですし」
「素面なら自動的に介抱役よ?」
「それくらいは。いつも家でやってますし」
「ああ、両方とも酒癖悪そうよね」
「そろそろお酒が足りなくなると思うので、行ってきますね」
「ああ、行ってらっしゃい」
そう言うと、一升瓶を持ってぱたぱたと戻っていった。
今日は天気がいいので、庭に茣蓙を引いて席代わりにしている。
宴会も中盤、つまり普通の人間が潰れ始めるくらいになると、ぽつぽつと四~五人程度の集まりに分かれてしまう。
つまりはここからが本番だ。
一番賑やかなのは神奈子や諏訪子がいるところだろうか。いつもは別々に飲んでいる鬼達も今日は神奈子と飲んでいる。
飲み比べではないのが不幸中の幸いかもしれない。
飲み比べとなったら、萃香の瓢箪がフル稼働しても間に合わないのだから。
反対に静かなのが白玉楼組だ。といってもガバガバ飲まないだけで、量は確実に消費しているのだけれど。
「お酒だけではなく、肴もですけどね」
声の方向を見やると、大きなおもちが宙に浮いていた。
どうやらそのおもちには皿が載っているようだった。
おもちは皿を乗せるものではなく皿に乗せるものだろう。
しかしあろうことかおもちの上の皿には更におもちがのっかっているではないか。
「お皿をおもちではさんで食べたらおいしいのかしら」
「下のは半霊」
「そうね」
「ついでに食べられませんよ」
「食べないわよ。おもちは太るし」
「ああ、太りますねぇ。半分だけ」
「くっ。羨ましいわ」
「私は全部太れる人の方が羨ましいですよ」
「腹立つわね」
台所から出てきたのは妖夢だった。
両手に絶妙なバランスで大皿を乗せている。
ひざかっくんしたら大惨事だろうなぁ。
「あんたも給仕役? 宴会まで来てよくやるわね」
「それが仕事ですから。それに見た目ほど大変じゃないのですよ。半霊あるし」
「あんた一人二役とか得意そうよね」
「まさか。満足に一人前も無いのに二人分なんて無理ですよ」
「半人前だからって?」
「世の中には一人二役どころか一人で何役もこなせる人もいますけどね」
「ああ、一人遊びが上手過ぎて名実ともにひとり上手になっちゃった奴ね」
「あら、ひどい風評被害」
やけに聞きなれた声に振り向くと、アリスが大きな琺瑯びきの鍋をもって立っていた。
畳に足を崩して座っているので鍋の中身をうかがい知ることはできない。
「べつにあんたとは言ってない。自意識過剰じゃない?」
「自意識過剰ね。それは嫌な言葉だわ。ええ、とてもとても嫌な言葉。いっそ過剰な分の意識を人形に移し換えたらもう一人の私が出来るんじゃないかってくらいに嫌な言葉」
「で、手に持ってるそれ何?」
「あ、煮物ですね」
「ええ、ポトフよ。パチュリーからのリクエストでね」
「何、あんた達最近仲いいの?」
「まあ、まあ。何故か昨日いきなり『アリス、私はポトフが食べたいわ』なんて言い出したもんだから、仕方なくね」
「ああ、そう」
「あ、竈借りたわ」
「薪代払うならいくらでも」
「こんなこともあろうかと。はい、霊夢の分。現物支給よ」
そう言うと、人形が卓袱台に深皿を置く。
まったく、用意のいいことだ。
「妖夢もいる?」
「いえ、結構です」
「そ。じゃあね。ひとーりじょおーずとよーばーないーでーっと」
そう言ってアリスは庭におりていく。
おさんどんか。
「え? まあ私は似たようなものですけど」
「ああ、声に出てた? 妖夢のことじゃない」
「アリスですか。まあ、楽しそうですしいいんじゃないですか」
「うん。まあ本人がいいなら構わないんだけどさ」
「あれ、なんでまだここにいるの?」
新しく聞こえてきた声に振り返ると、妖夢に兎の耳が生えていた。
実際は単に角度の問題でそう見えただけで、妖夢の後ろに鈴仙が立っていただけなのだけれど。
「ああ、鈴仙。いえ、ちょっと霊夢と話を」
「そう。じゃあ先に行ってるよ」
「いえ、私も行きます。じゃあ霊夢、また」
「あれ、あんた達って?」
「今日は永遠亭の方々と一緒に月見をしているんです。ああ、鈴仙。待って下さいよ」
そう言って二人とも自分の主人の所に戻っていく。
心なしか足取りが軽やかだ。
はて、鈴仙は十五夜の月を見て跳ねるような兎だっただろうか。
「それは、あの二人の心が上空三千メートルだからですよ。“うわ、さとり”ですか。はい、あなたの古明地さとりですよ。ご機嫌いかがですか、博霊麗夢。失礼噛みまみた。え、何を噛んだかって? なんでもないですよ博麗霊夢。はあ、夏バテですか。食欲不振、睡眠不足、動悸に眩暈に神経衰弱。ドキドキ止まらない。頭痛生理痛情緒不安定悲しくないのに涙が出ちゃう。ズキズキ恋煩い。多分。そんな感じでしょうか。いえ、巫女だから思い出したわけじゃありませんよ。はあ、“何を言っているのかわからない”ですか。いえいえそれで正常ですよ。“あんたはなんでここに?”ときましたか。ええ、近くに私の様なものがいるのを快く思わない者が多いのは知っていましたし覚悟もしているのですが、いざ直面すると……。え、“そういう意味で言ったんじゃない”って? 知ってますよ。私を誰だと思っているのですか。はい、古明地さとりですよ。あら、なんだか疲れていますか? “分かっててやってるわね”なんて、そんなあたかも私の性格がひねくれているような言い方をしなくても。“実際ひねくれているでしょう”と。まあ、否定出来ませんけれど。それでなぜ私がここにいるかでしたっけ? いえ、お空やお燐とこちらにお邪魔したはいいのですが、あの子たちはあの子たちで友達付き合いがありますでしょう。その結果私一人で当てもなくこちらの境内をぶらぶらしていましたところなんとなく良い雰囲気を感じ取りまして、先程まであちらにいる紅魔館の集まりに混ざっていたのです。最初は当主のレミリア・スカーレット嬢と『報われない姉同盟』というものを結成したりして盛り上がっていたのですが、彼女がお花を摘みに中座したときに見捨てられた猫状態だった私を見かねてあそこの魔女が話し相手になってくれたのですよ。“パチュリーってそんなにおしゃべりだったっけ”ですって? 彼女はとても雄弁じゃないですか。彼女は非常に饒舌ですよ。頭の中は。ですからこうして意識をこちらに向けてくれさえすれば、私にとってはとても素敵なお話し相手になるんです。ですが、人形遣いの方が料理を持って来た途端に彼女の意識は私からアリス・マーがトロイド嬢の方へ向きっぱなしになってしまったので手持無沙汰にこちらへと歩いてきたわけです。“それはいいけど、少しは私にもしゃべらせなさいよ”ですか。これは失礼しました。さっきの魔女の方があまりにも饒舌だったので影響されてしまったようです。頭の中が。ふふ。人の思考は、人の心は、神聖にして不可侵。そんな幻想があるからこそ私は嫌われてしまうのですね。行為の意図と行為の意味の関係ほど、似ているようでかけ離れたものはないのですけれど。でも人は行為の意味しか見ることが出来ないので、行為の意図が見える私なんかは疎ましく思われてしまうのですね。“あんた相当酔ってるわね”って、当たり前じゃないですか。今日は珍しく清酒を結構な量頂きましたから。あら、そう言えば温泉で『報われない姉同盟』の二次会をしようと話をしていたんでした。温泉に入りながらお猪口でキュッと。では、そろそろ失礼します。あ、一緒に入りますか? “ここで潰れた奴の介抱があるから、子守りまではしていられない”ですか。残念ですね。向こうはメイド付きのようでしたからこちらも誰か、と思ったのですが。いえいえ。ではまた」
一方的にまくしたてると、さとりは温泉の方にふらふらと歩いて行った。
後で様子だけでも見てこよう。浮かんでても困るし。
温泉の方を向いていた視線を庭に戻すと、慧音がいた。
表情を見るに、今のやり取りをどこかで見ていたんだろう。
「珍しいな。さとりか」
「ええ。しかし、酒が入るとえらく喋るもんね」
「そうだな。聡い子ほどため込むものだから」
「聡い子って、相手はあんたよりよっぽど年上でしょうに」
「そうは言っても、教師なんてやっているとね。ついつい」
「職業病ね」
「まあ、そうだな。“人は成長するにつれて賢くなるのではなく、用心深くなっていくのだ”という言葉もある。不用意なことを口走らないようにため込むのは、ごくごく自然な周囲への適応だ。酒が入ったときくらいは仕方ないだろう」
「じゃあ上白沢先生、教師としてそこで潰れてる奴に飲みすぎないよう教育してやってくれないかしら」
「教育と言ってもなぁ」
そう言って魔理沙を一瞥すると、溜息を吐いて続ける。
「果たして教育は可能なのかという問題は古代ギリシャからの難問だしな。少なくとも躾や調教は可能だ。『じゃじゃ馬馴らし』の例にあるようにな。もっともあれは戯曲だが。感化も可能だろう。もっともこれは教育の受け手側から教育を与える側への何らかの好意が前提されるけれども。だがしかし、『人は人に影響を与えることもできず、また人から影響を受けることもできない』という言葉もあることだしな。いっそ徒弟制度くらい単純化出来れば教育について論じやすくもあるのだけれど。まあなんにせよ、均質な教育なんていうのは夢のまた夢さ。いくら送り手が気を遣ったところで、受け手が均質ではないのだから。教育なんて言うのは、小林秀雄が批評について言うように手づかみでやるしかないのさ」
「や、私は別に教育論議がやりたいわけじゃないし」
「そうか? しかし居酒屋談義もそれはそれで楽しいものだぞ。学術的に真っ当な議論ではないけれど、適当に意見を出し合うことで得られることもある。尤も、学問まで居酒屋談義ではいけないけれど」
「で、結局魔理沙をどうにかできるの?」
「無理だろうな。魔法使いというのは元来自分勝手なものだ。一人立ちした魔法使いは己の技術と知識のみを頼りに世界に対峙するものだし、今更他人が教育するような余地なんか無い。まあ、こいつが一人立ち出来ているとは思えないけれどね。それにしたって他人に教育されることを良しとはしないだろう。となると残るは躾や調教といった人道的に問題のありそうな手段しかない。もちろん私はそんな手段を取りたくないから、現状これをどうにかするには本人が自発的に飲酒量を減らすことを期待するしかないわけだ。尤も、教育の本質なんてものは躾、調教、洗脳と大差ないのだけれど」
そう言って苦々しげに口元をゆがめる。
慧音も慧音で色々と大変なんだろう。
分かっているんだろうにここまで愚痴が出てるんだから。
そんなことを考えていると、早苗がふらふらとこちらへ歩いてきた。
「霊夢さん御免なさい。飲んじゃいました」
しかし早苗の顔を見ても頬が軽く染まった程度で素面にしか見えない。
表情はなんだか泣きそうに歪んでいて、それでも笑顔だった。
「酔った振りしてからかっても駄目よ。早苗はお芝居が上手ね」
そう言ったら、なんだか早苗の表情がこの世の終わりみたいなものになる。
「私、人間失格ですか!?」
そう言って走り出してしまった。
「なにあれ」
「なあ。太宰治読んだことあるか」
「役者志望の話なら」
「『正義と微笑』か。それだけか?」
「うん。霖之助さんの所から借りたのはそれだけね。あと肺病やみの話」
「『パンドラの函』な。そのせいで酷くすれ違ったぞ」
「そう。まあ、放っておいてもそのうち服を脱がしに戻ってくるでしょう」
「……それは乙女としてどうなんだろうな」
「人間失格よりも乙女失格の方が色々とマシなんじゃない?」
「いや、お前の反応だよ」
「あー。いいのよ。乙女ってなんかくすぐったいし」
「そんなもんかね」
「慧音は乙女なのね」
「いや、少女だ」
「どう違うのよ」
「気分が違う」
「ああ、そう」
半眼で返してやるけれど効いた風も無い。
そもそも聞いてない。
「彼女くらい素直なら教育もしやすいんだよ。物事を教わる上で、素直さはかなり重要な要素だ」
「魔理沙みたいなのはクセがつきすぎってことね」
「そうだな。矯正しようにも時既に時間切れな手合いだ」
「まちがえてるわよ、先生」
「知ってるよ。正しいことばかり言い続けるのは疲れるものだぞ」
「難儀ねぇ。魔理沙みたいなのがうじゃうじゃいる場所で始終気を張ってるなんて、正気の沙汰じゃないわ」
「うじゃうじゃな。確かにうじゃうじゃいるよ。うん。ふふ。うじゃうじゃか」
「何が気に入ったのよ」
「さあ。なんとなくだ。うじゃうじゃ」
「はあ。変なの」
「そろそろ行く。またな」
「ええ。出来れば片付けも手伝って欲しいわね」
「善処するよ。うじゃうじゃ」
そう言うと、永遠亭の面子が集まっている辺りに戻っていった。
あの辺は仲がいいなぁ。
そしてみんな変だなぁ。
「類は友を呼ぶ。仲良きことは美しき哉、と」
「そうね」
「あれ、レミリアは?」
「温泉よ」
「なんであんたはここにいるの?」
「まさか温泉の中まで付き添えとは言われないわ」
「ああ、そうなんだ」
「ええ、そうなのよ」
振り返ると咲夜がいた。
なんだろう。最近は気配を消して人の背後に立つのが流行なんだろうか。
「そんな愉快な流行は聞いたことが無いわね」
「あ、口に出てた?」
「まあダダ漏れね。珍しく飲んでるみたいじゃない」
「なんとなくねぇ。そこで魔理沙が潰れてるのも私に気を遣ってなんだろうし」
「考え過ぎよ。女の子にはセンチメンタルなんて感情はない、って言うでしょう」
「初耳ね」
「そう。不勉強ね」
「どんな勉強よ」
「それもそうか」
「ああ、さっきさとりとあんたんとこの吸血鬼が温泉に行ったんだけど、浮かんでたりしないでしょうね」
「大丈夫よ。相手は妖怪ですもの」
「そう。ならいいんだけれど」
「ねえ、霊夢」
「ん、何?」
「あなた、今――」
咲夜が何か言いかけたようだったけれど、その瞬間私は何かに押し倒される。
まあ、こういうタイミングで私を押し倒してくる奴なんて大体想像がつくけれど。
「霊夢さーん。むふー」
「早苗、そこ胸。私の顔はもっと上よ」
「いーんですよぅ。この薄い胸板が」
「薄いっつったか!?」
「ごめんなさい。この控えめな胸が」
「そう言いながら脱がさない」
「えー。大丈夫ですよ女同士ですから。んー」
「さりげなくほっぺにキスすんな。色々と前回の再現になってきてるわよ」
「いいじゃないですか。女の子同士ならノーカンですよ、ノーカン」
「あんたは酒飲むと常にノーカン扱いじゃない」
「んー、うるさいですね。キスしちゃいますよー」
「なんかもう色々と失格ね」
「はいー。ぐふふ」
「せめて可愛く笑いなさいよ」
「んー。うふふ?」
「魔理沙が聞いたら頭を抱えるかしら」
「女の子と話してるときに、ほかの女の子の話は禁句ですよ」
「はいはいごめんなさいね」
「私は心が広いので許しちゃいますよ。瀬戸内海のように広い心ですからねー。タコとか住んでますよー。むふー」
そう言うと、勝手に私の足を枕にして眠ってしまった。
はあ。また介護する人間が増えたわ。
押し倒されたまんまもあれなので、上半身だけでも起こそうかな。
「あ、ごめんね咲夜。話の途中だったのに」
「いえ、私はいいのだけれど……」
「最近早苗もこんな感じでさ。まあ妖怪連中相手に飲んだら無理もないけど」
「ここは平和ね」
「そうでもないわよ。時々魔理沙とか寝ゲロするし」
「それは……、まあ」
「まあ概ね平和よ。ここに腰を据えて飲むような奴もいないし」
「そうみたいね」
「咲夜は飲んでるの?」
「ええ。蕎麦焼酎を」
「なんで焼酎」
「なんとなく。余っていたからかしら」
「あんたは湯呑に焼酎とかより真っ赤なバラとジントニックって感じだけど」
「スキャットばかりになりそうね」
「ん?」
「なんでもないわ。ところで霊夢」
「何?」
「あなた、今幸せ?」
「なんで?」
「一人誰にも混ざらずこんなところでぼーっと飲んでいるから、かしら」
「別に。幸福も不幸も無いわ。ただ一切がすぎてゆくだけ」
「それでいいの?」
「それでいいの。過ぎていったものもじきに戻ってくるから」
「そう」
「そう」
足にかかる重みが心地いい。
丼に入ったお酒をお銚子に戻し、お猪口に注ぎ直す。
ちびりと舐めると、やや酒精が抜けているものの十分おいしかった。
「咲夜はどこかに行かないの?」
「ええ。お嬢様が温泉から上がるまではここいるわ」
「出来れば片付けも手伝って欲しいわね」
「勿論手伝いましょう。毎度のことだもの」
「ん。ありがと」
「どういたしまして」
宴会はまだまだこれから。
今日は何人色々と駄目になるのかしら。
咲夜
このだらだらした感じは凄く大好き!平和だなぁ。
さて酔っぱらった早苗の介抱は任せてもらおうか
みんながそれぞれ楽しんでいる感がすごく良かったです。盛り上がっているっぽい神奈子諏訪子と鬼の様子も見てみたかったですね。
理屈っぽく絡んでくるけーね先生がお気に入りです。