Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

インタビュウ(下)

2010/07/31 17:57:56
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☆本作品は創想話ジェネリック、70 「インタビュウ(上)」の続きとなります。
 (上)からずいぶん間が空いてしまいましたが、ようやく(下)を投稿する事ができました。
 出来れば(上)をお読み頂いてから(下)を読んで頂けるとお話が分かりやすいと思います。
 両方とも読んでいただければ作者はこの上なく幸せです。
 



 では、どうぞ。


























於ける是非曲直庁、第二法廷。四季映姫・ヤマザナドゥの審理。





 ……以上が生前における貴女の罪状です、この事実に相違はありません。
 なぜなら、浄玻璃の鏡に映しだされた事は全て現世で起こった「真実」なのです。
 
 あなたはこの真実を受け止めて、これから私の下す判決に従わなければなりません。 
 全ては、閻魔王であるこの私の審理で、貴女が再び輪廻転生の輪に加わるかどうかが決まるのです、よろしいですね。


 それでは、判決を下す前に貴女に一つだけ説法を致しましょう

 私がこの法廷で理を説くなど滅多にありません、これは貴女だから特別に行う説法です。心してお聴きなさい。 




 因果応報という言葉を知っていますね。
 善い行いには善い結果が、悪い行いには悪い結果が自らに返ってくる事です。
 
 人が行うことは全て「業」であり、それによって引き起こされた事が「因」。
 業で行った事の結果を「果」と言います。
 因果応報とはつまり「業」によって引き起こされた「因」に対して相応の「果」で報われる事を言っているのです。

 
 私は時折、現世に下りては善行を積むよう人妖問わず説いて回っています。
 それは偏に、生のある内に善行を積むことで徳を高め、死後の魂が天界へ至れるようにするためです。
 
 現世を豊かに過ごせるものにする為には、死後の世界を蔑ろにしてはなりません。
 善因善果。悪因悪果。善行を積むことは死後の平穏と来世の安泰を約束する事なのです。

 そしてまた「自因自果」という言葉もあります。

 自分の「業」によって引き起こされた「因」の報いは自分への「果」となる事を指します。
 直接の意味合いとしては因果応報と同じ事ですが、意味のとり方は少し違います。

 


 ……貴女は生前、ある男と関わりを持ちました。

 
 その男は人の心を弄び、また周囲にその権力を誇示することで己の業をより深くしました。
 
 男の起こした悪行は数知れず。それでもまだ飽き足らず、男は数多くの人の魂を悪の輪廻に引き摺り込みました。
 朱に交われば赤くなる。善なる心を持っていた魂も男に関わった所為で悪に染まり、天界へ行くことも叶わないのです。 
 しかしその男はこの彼岸に来る事はありません。今頃、河の底の煉獄で永遠に続く苦痛を味わっている事でしょう。


 貴女はその男に、愛を与えようとしていましたね。

 自分と男の恵まれなかった生い立ちを重ね合わせ、哀れな男の心だけでも救ってあげようと、貴女は考えました。
 あの人は本当は寂しいだけ、親の愛情を貰えなかっただけ。それならば、私が母親の代わりとなってあの人に愛を与えよう、と。


 そして貴女は男に口答えするでもなく男の欲望を全て受け止めてあげました。
 
 様々な責め苦を受けても貴女はさも愛情表現であるかのように男に微笑み返し、男の全てを許しているように見せました。
 それは一見すると自己犠牲の愛を相手に捧げているようにも思えます。


 ですが、その優しさは偽りです。

 
 貴女は自己犠牲に酔いしれ、その自尊心を満足させていたに過ぎないのです。
 まだ貴女に関わったあの妖怪の方が真理に近い行いをしていました。貴女はそれに気付く事が出来なかった。


 そう、貴女は少し利己的過ぎた。

 このように命を落とす事になった原因を作りだしたのは、紛れも無い貴女自身なのです。
 貴女が男の心の闇と正面から向き合い、精神の呪縛から解き放つことが出来ていれば、貴女もあの男もまた違う運命を辿れたのです。
 貴女はそれを拒み、今目の前にある偽りの幸せにしがみつこうとした。その幸せすら刹那のものであるにも関わらず。
 

 ……今となっては遅いかも知れませんが、貴女の病は治る余地はあった。

 私情を挟むわけでは有りませんが、月の民の力を持ってすれば全快とまではならずとも後数年は生き延びる事が出来たのです。

 残り少ない命と諦めてはいませんでしたか?救われない人生だと決め付けてはいませんでしたか?

 
 人間は短い生故に、その時その瞬間を一所懸命に生きようとするものです。

 苦しければ足掻き、辛ければ友と肩を組む。人の幸せを共に喜び、人の悲しみを自らの事の様に涙する。
 人間は時に愚かで時に間違いを犯しますが、それでも生きようとするのが人が人たらしめる要因なのです。
 

 貴女は、もう少し生きたいと望むべきだったのです。




 ……話は少し長くなってしまいましたが、私の説法は以上です。
 しかし特別だとはいえ、少し熱が入りすぎてしまいましたね……オホン!ともかくです。

 これから私は貴女を断罪します、下った判決には一切の弁解や反証も受け付けません。
 貴女の罪状は白か黒か。貴女の魂が冥界へ行くか地獄へ落とされるかの処遇を決めます。

 改めて言います、よろしいですね?

 それでは、被告人“あやめ”の魂に判決を言い渡す。

 判決は……









     ☆★☆









於ける人里、龍神の石像より徒歩5分の料亭「夜行」店主。六兵衛へのインタビュウ。




―――今宵は御招き頂き有難うございます。私も丁度お話を伺いたいと思っていたところなのです。今日も美味しいお酒を飲ませて下さる事を期待しています。


 いえいえこちらこそ。天狗様にわざわざお越しいただき大変光栄です。
 天狗様は私ども「夜行」のお得意様であり商売繁盛の神様でもありますからねぇ……ほっほ。
 
 勿論。お酒もこの郷で選りすぐりの物をご用意しております故、天狗様のご期待にも添えられるかと存じます。
 ささ、私の後に付いてきて下さい、部屋にご案内します。料理の支度が出来るまで「夜行」自慢の間についてお話を致しましょう。


―――……ここは?前に仲間と来た時に案内された部屋と随分印象が違いますねえ。何だか誰かに見られているような、不穏な感じがします。


 ここは血狂の間と申しまして、特別なお客様しかお通ししない唯一つの間なのです。
 
 その昔、まだこの郷が結界で覆われる前の事です。人と妖怪の諍いが絶えず種族間の偏見がまだ根強く残っていた頃、この近辺で人と妖怪の雌雄を決する戦いが有りました。
 その戦いはそれはそれは凄まじかったそうです。太陽は血飛沫で覆い隠され、草木は全て血に染まり、戦いの後の世界には緋色しか存在しなかったと言い伝えられています。
 今の幻想郷なれば人間と妖怪は大きな争いも無く共存出来ておりますが、大昔にはそのような事もあったのですなぁ。

 その戦いで血飛沫で染められ赤く染まった木をこの間の梁に使っておりまして、木目に赤黒く残る色はその当時の戦いの激しさを伝えているとの事です。


―――あやや、六兵衛さんもずいぶんと悪趣味ですねえ、そんな遺物を使った部屋に商売繁盛の神様を案内するなんて。もしかして、商売に嫌気でも差しましたか?


 ほっほ。天狗様の興を削がないためにはこういった趣向を添えるのが良いと思いましてなあ。現に天狗様も好奇心に溢れた目をしているではありませんか。
 
 私共が大事にしているのは人間相手の商売ではなく、天狗様を始めとする神様や力を持った妖怪様なのです。
 この里で権力を得て競争に勝ち残ろうとするならば、必ず強大な後ろ盾を持たなくてはやがて淘汰されてしまいます。
 人間の力だけで商売を大きくして行くのはこの里では到底不可能なことなのです。

 それ故、私共は天狗様のように幻想郷でも特に力を持った方達を優先して御招き差し上げて「夜行」の常連になって頂くべく腐心して参りました。
 ……まあ、その為にはどんな手段でも問いませんでしたがねぇ……ほっほ。
 

―――ううんなるほど、里で一番の料亭となれたのは、そういった信条があったからなのですね。今度の特集で使わせて貰いますよ。
 

 ええ、是非とも私の店を紹介して下さい。
 それこそ里で、いや「幻想郷で一番の、神様も御贔屓にする料亭」とまで書いて頂けると良いのですがなぁ……ほっほ。
 
 さあさあ料理が来たようです。天狗様の御口に合うかは分かりませんが、満足して頂ける自信はあります。どうぞ召し上がってください。
 それこそ、天にも昇るお味かと存じますよ……


―――あやや、これは素晴らしい山海珍味!……いや海は無いので山川珍味でしょうか?ともかく美味そう!あやややや、御酌までして頂いて。ドーモスイマセン。


 いやいや、そんなに畏まらなくとも結構です。もっとくつろいで頂かないと折角の酒も料理も楽しめませんからなあ。
 
 おお、流石天狗様でいらっしゃる。良い飲みっぷりです。ささ、もう一献注がせて下さい、夜はまだ長いのです。存分に楽しんで下さい。 
 私ですか?流石に天狗様の早さには敵いません。私なりに楽しく飲んでおりますよ。
 酒もまだたくさんありますので、心行くまでお飲みになって下さい……それまで心が持てば、ですがねぇ……ほっほ。


 おや、もう樽が一つ空いていますか。いやはや、天狗様の腹は底無しの沼で御座います。怖や怖や……

 それで天狗様。今宵「夜行」に御招き差し上げたのは、一つお願い申し上げたい事があったからなのです。
 酒をお飲みになられたままで結構ですので、まずは私の言葉をお聞き下さいませんか?  
  

―――それはそれは…っ。こんなに美味い酒を飲ませた褒美……んっ。私に不可能などありましぇえん…ぅ。何なりぃと申してみよぉ、六兵衛ぇー。

 
 勿体なき御言葉、有難うございます天狗様……


 頼み事とは他でもない、私の一人息子である九蔵の事です。息子は私に似ず粗野で横暴な性格でしてなあ……ほとほと私を困らせているのでございます。

 そもそも九蔵は望むべくして生まれた子ではないのです。九蔵の母はまだ「夜行」を開けたばかりの頃、当時常連として来ていた何の権力も血筋も無い家の娘でしてな。
 まあそんな娘ではあったのですが、容姿だけは美しく穢れの知らない生娘でしてなぁ、私の物で無いのは全く惜しい事だと思いました。

 しかし私もまだ若かったのですかな。欲望を抑える事が敵わず、私は娘を落とす事に成功したのです。
 どうやって、ですか。そのような事をお聞きにならずとも……男の力に、女は敵いますまい?

 その後娘は身籠り、そして生まれたのが息子の九蔵というわけなのです。
 しかしまだ若かった娘には難産だったのでしょう。九蔵を産み落として間もなく、女は息を引き取りました。
 
 それから九蔵の面倒は暇な女中に見させておったのですが、散々我儘を言っては女を泣かせましてなぁ……このころから困った子供でありました。
 ですがこの辺りは私とよく似ているやもしれません……ほっほ。
 
 しかし……その九蔵は体が大きくなるにつれて、その性格も益々凶暴なものに変えて行きました。
 里の無頼と徒党を組み、言いがかりをつけては金品を強請る事など日常茶飯事。時には見知らぬ女に見境なく手を出し、私は一時縁を切ろうかと思った程です。
 
 存在が必要だったのは容姿の美しい娘だけで、何の権力も無い家の血をひく子供なぞ、本当は必要無かったのです。
 
   
―――ううん。そりぇはまた……ヒック!衝撃的な告白であるよのぉう、六兵衛ぇ……んっく。それとわらしが、一体なんお関係れすか?


 これからが私のお願いでございます。

 天狗様。あの九蔵めを……亡き者にしては頂けませんでしょうか?
 というのも、先程述べた九蔵の野蛮な振舞いを思い返して頂ければお分かりになりますでしょう。
 
 九蔵がこれ以上の狼藉を里に働く事は「夜行」の評判にも、ひいては里の平和のためにも良いものではありませぬ。
 私は里の未来を思い、断腸の思いで泣いて我が子を切ろうというのです。

 さらに付け加えるならば、九蔵は生みの親の恩も育ての親の恩も知らぬ大罪人なのであります。

 最近新たに出店した「百鬼」を御存じでしょう。実はあの店は私が資金を捻出して九蔵の更生を願う為に建てた店なのです。
 放蕩無頼の生活を送っていた九蔵も店を構えて腰を落ちつければ、その性格も直してくれるだろうと思いましたが……全くの期待外れでした。

 もう一人、育ての親と言うのは九蔵の面倒を見ていた女中の事です。“あやめ”という女でして、幼い九蔵の世話を良くしておりました。
 母と言っても歳は左程離れていない二人でしたが、お互いに何を思ったか、店の出店に併せてこの“あやめ”と九蔵が結婚したのです。
 
 九蔵からすればまるで母親の様に我儘を聞いてくれた唯一の女でしたので、その心根に絆されて共に生きようとでも気違えたか……本当の理由は分かりません。
 現に“あやめ”はよく出来た女でした。幼い頃から口答えもせず真面目によく働き、またその時の具合も良く……おっと、これは失言でしたなぁ。 

 ともかく、結婚して共に働いてくれれば九蔵の心にも光が差し込む事を期待しました。しかしそれも叶わぬ程、あの男の闇は底が深かったのです。
 しかも九蔵は出店の折に“あやめ”だけを住まわせる屋敷を許可無く増築させ、自分は店にも帰らないと言うではありませんか。
 

 結局、九蔵は悪鬼だったのです。私の血から生まれたとは思えぬ程の悪鬼羅刹。そのような男が生きていては、幻想郷の秩序を乱すような事になりかねません。


 どうか天狗様。私の願いをお聞き届け下さい。


―――おおぉーこあいこあい……ひぃっク!我が子をころほうというのかぁ六兵衛ぇよー……そんなおぬひの願いを聞き入れることは、れきぬ!


 ……ほっほ。やはり、聞き入れてくれることは叶いませんでしたか。いやいや、天狗様はやはり賢いお方でいらっしゃいます。
 私がいかに権力を得ようとも、決して手に入れることの出来ない神格をお持ちです……ですが天狗様。私の様な凡人もその力を得る方法があるのです。
 
 さあさあ天狗様。どうされましたか?酒豪でならす天狗様が、一夜も超さない内に前後不覚となってしまうとは。
 それとも……御用意したこの酒を、意識が薄れるほどお気に召して頂けたからですかねぇ……?
 お料理に付けていた手もどうやら動いていないようですが、手を止めるほど美味しいのですか……?ほっほっほ。


―――そ、そんらことふぁ……って、あやや?手足の力が……それに頭も胡乱としれきまひた……って。六兵衛さん?何で手足に枷を……


 ほぉっほっほ。天狗様、お忘れになったのですか?『里の管理者は内部情報に精通していなければならない』のですよ?ほぉっほっほ。

 貴女がこそこそと事件について嗅ぎまわっている事は知っていました。そしてあの半獣と交わした密会の事も全て私の耳に入っております。
 行く行くは里の絶対権力者となる身です、小賢しいネズミの鳴き声を拾うことくらいは造作も無い事ですよ。

 里の愚かな人間達は、裸一貫から店を大きくした私の異業を褒め称えようともしません。それどころか私の成功を妬む人間が陰口を抱くほどです。
 成功した人間に何の恩恵も無い社会というのは、全く理不尽だと思いませんか?そんな里を世直しするには、私の様に優れた人間が上に立つより他ないでしょう。
 そんな私の邪魔をするものは、例え息子であろうとも容赦いたしません。もちろん貴女のように身の程をわきまえない天狗様もですがね……?


 ほう?私に手を出したら仲間が黙っていないと?良く言ってくれましたねえ!呂律の回らない口で。御褒美にこの酒の作り方を教えて差し上げましょう。
 
 無名の丘から取れた鈴蘭を妖酒に漬けこんで五年、その後呪術師の手で魅了の呪を掛け続けて十年。このように十五年の歳月をかけて作った銘酒が天狗様が召し上がったお酒です。
 全てはこの「夜行」を開いた時から始めました……天狗様はもっと誇ってよろしいのですよ?そんな銘酒を一人占め出来たのですからね。 

 今の貴女はその枷さえ自力で外せないほど酒が……いや、役目に合わせた呼び名ならば「毒」ですかな?強力な魅了の術が全身に回って、意識を保つのも困難なはずです。
 それでもそこまで意識をもってしゃべる事が出来るのは……やはり天狗様の御力は素晴らしいものがありますなあ。

 そうそう。『手を出したら仲間の天狗が黙っていない』でしたか?その質問にも答えてあげませんとなあ……これから我が伴侶となる身ですから。


 「仲間」に手を出したら黙ってはおれないと言いますが、それならば「仲間」をその身に宿せば、貴女はどうされますかな?
 
 神格を手にする方法……人の手に届かぬ力ならば、人の子で無ければ良いのです。それなら、私の一族に神の血筋を取り入れれば良いではありませんか。
 天狗様、いや、射命丸よ。貴女は私の子をその体に宿すのです。そうなれば神格が血に宿り、子々孫々末代まで私は神として幻想郷に語り継がれる人間となるのです。

 
―――なっ!?……て、ひゃん!?触らないでくらはい……イヤっ……こんなを事するあなたはやはり、売春を取り仕切っているというのは本当らったんれすね……!


 おっと。勘違いされては困りますので弁解をしておきましょう。
 愚かな女共を使って売春させようと言いだしたのは、あの九蔵めが言いだした事です。私がした事と言えば女共を九蔵に引き渡しただけです。
 今まで無駄飯を喰らっていただけの女共に、ようやく適任の仕事ができたので斡旋してやったのですよ。
 
 あの忌まわしい大凶作の年……私は身を切る想いであの餓鬼どもを引き取りました。全ては「夜行」の名を上げるために行った事です。
 そのためだけに、ですか?当然でしょう!何を好き好んで教養も品も無い農家の餓鬼を引き取ろうと言うのですか? 

 しかし餓鬼は煩くて大変でした。少し躾をしただけで泣きわめいて我儘を言い、そうかと思えば真面目に働こうともしません。親の苦労が目に浮かびましたよ……。
 その親達は浅ましくも子供を売った金で今も悠々と暮らしているのですよ?幻想郷の平和ボケも極まれりですな、嘆かわしい事です。
 
 私はそんな親達に変わって餓鬼共に適切な教育を施し、尚且つ働き口まで斡旋してあげたのです。どうですか?これでもまだ私が悪と言いますか? 

  
―――そんら事は!……んっ……詭弁れす!それに……あっはぅ……!虐待も真実らったのれすね……あなたはこの里で、一体何を望んでいるのれすか……? 


 ほっほっほ。今更それを聞いてどうするというのですか?全く、貴女にも教育が必要そうですが……私は優しいですからねぇ、特別に教えましょう。

 先程も申しましたがこの里は腐っています。平和に慣れっきた衆愚、人間を襲わない牙を抜かれた妖怪達。互い互いが競争に無関心で、日々惰眠を貪っています。
 このままではいずれ人間はその手で取り返しのつかない過ちを犯し、この幻想郷から淘汰される種族となってしまうでしょう。

 私の理想郷は「人間」という種族が存在しない世界です。私が種族の境界を越えて新しく生まれ変わる事で、永遠にこの郷を統治していこうと計画しているのですよ。 
 様々な種族の境界を超えて血を交配していくことで、この郷に人間という矮小な種族が無くとも妖怪や神が存在出来るようになる世界を作るのです。
 素晴らしい計画だと思いませんか?
 
 そうして最初に選ばれた新種族の始祖たる母が貴女、射命丸文なのです。……おやおや何ですか、そんなに怯えないでもう少し嬉しそうな顔をして下さい。
 新世界の夜明けを飾るための初夜が泣き顔では、記念になりせんよ?


―――そ……んなっ……あぁん!泣いてなんか……あっ……ないです……あっ、らめぇ……お腹触らないでぇ……もう……許して……んっ、あっ!……


 少し幼い体つきですが美しく均整の取れた肢体は、流石妖怪でありながら神格化されただけのことはありますなぁ……
 未成熟な局部も千年は生きていると思えぬ程少女然としていますが、妖酒で上気しきった桜色の柔肌からは、人を狂わす程の媚臭を漂わせ獲物を誘う……と。
 
 存外貴女も好きなのではありませんかな?このような状況で事をするのが。それならば、抗わずに快楽に身を投じれば良いではないですか……?
 
 さぁ……自分に正直になったらどうですか。貴女がして貰いたい事を言いなさい。そうすれば私は、望み通りに応えますよ……?


―――……はい……分かり、ました……六兵衛様……どうか、淫らな天狗の小娘のお願いを、お聞き届け下さい……


 ほっほっほっほっほぉ。ようやく……素直になりましたねぇ。私は素直な女は好きですよ?さあ、言ってごらんなさい、どうされたいか。
 前からですか?後ろからですか?下からですか?横からですか?あるいは枷をしたままでしましょうか?全く、貴女も物好きな天狗様ですなぁ。

 ん?声が小さいですよ。もっとはっきりと、さぁ!己の欲望を声にして叫ぶのです!


―――はい……私のお願いは……とっても大きくて、特大の、それこそ幻想郷中を揺るがすくらいの、ネタ……つまり、大、大、大スクープでぇーーーーっっっす!


 (パシャリ!)


 なっ!?なんだこの光は!?何が光ったのだ……?それに、この血狂の間には私達の他は誰もいないはずだが……これは……!空間が歪んでいる!?
 貴様らは……!里に良く来る河童と、見た事は無いが天狗の小娘か!?その手に持っている物は……?
 

―――ふふふ……貴重なお話を有難うございました!今宵のインタビュウは実に有意義なものでしたねえお互いに。そうだと思いませんか?




                        ここからはずっと私のターン!



 
 言いませんでしたか?「里の管理者は内部情報にも精通していないといけない」って。里の管理者って、里長さんと慧音さんだけとでも思っていましたか?
 あなたの今宵の計画は全部筒抜けです。女の事しか頭にないエロ河童の行動を把握することくらい造作も無い事です。あっ、にとりの事じゃないから安心して。      
   
 まぁ私が根掘り葉掘り聞かなくても、あなたの方で自信満々に面白おかしく野望を語ってくれましたから、お陰さまで良い記事が書けそうです。
 その意味では確かに優しい人でしたね。あ、でも手つきとか触り方は失格です、もう少し撫で方をですね……おお、エロいエロい。
 
 ん?お酒ですか?いやぁーこれがまた美味い美味い!これは幻想郷の銘酒になりますよー。鈴蘭のコクと爽やかな後口が次から次に杯を誘って……あやや、涎が出ちゃいます。
 頑張って作った妖怪たらしのお酒なんでしょうが、その程度で我々天狗を落とせると思ったら大間違いのトンチキですよ。はたてならコロッっと落ちるでしょうが。

    
 おっと。そろそろ私の心強い味方を紹介しておきましょうか。
 
 河童の河城にとり。光学迷彩スーツのお陰で全く気付かれずに最初から最後まで傍に居たんですよ?……あやや、そう考えるとちょっと恥ずかしいです。
 彼女が持っているのは「てーぷれこーだー」だっけ?何やら空間の音声を全て記録する装置らしいです。ということは……何を言いたいか、分かりますよね?


 もう一人の方はいいや。

 ……ってなになに、はたて。紹介がぞんざいだって?あなたには社会勉強と修行を兼ねて今回のカメラマン役を頼んだだけだから、スクープは私のものです。 
 それになんで酒を飲んでもないのに顔が赤くなってるの。あれくらいの色仕掛けが出来ないと敏腕記者にはなれませんよ?
 

 とまあ、頼りになる仲間一名とどうでも良い一名が、血狂の間で行われた秘密の会談を明け透けなく取材していたわけです、差し詰め私がインタビュアーで。
 そうとも知らずに滔々と自慢の部屋や人生観をどや顔で語っちゃう六兵衛さんったら、とってもお茶目でしたよ?聞いてた私がハラハラした程ですから。

 もっと取材は続けたかったのですが……話の核心は得られたので今日の取材はこれで終わりです、安心して下さいね。

 
 ここだけの話ですが、聞きたかった事の本命はあの夜に起きた事件の事だけだったのです。

 あの夜殺された“あやめ”さんは「夜行」の女中さんでした。そして店主である九蔵もあなたの一人息子です。
 事件の内容から言って“あやめ”さんを殺したのは件の妖怪が疑わしい、というのは誰もが思う推理なのですが……ここにいくつかの疑問がありました。

 まず最初の疑問が、その妖怪はなぜ「鋭利な爪」を持っているのに現場に包丁なんて爪より切れ味が悪そうなものを持って来ていたのか。
 次に、料亭兼娼婦宿の二階に何故“あやめ”さんと妖怪が居合わせていたのか、という状況にも不自然な点を感じました。
 名探偵の推理なら「犯人はあなただ!(ババーン)」と言ってあなたを指さしたい所なんですが……残念ながら、あなたが犯人ではありません。チッ!
 

 この事件で大きな決め手となったのは他でもない、私の推理力と永遠亭の技術力なのです。

 まずはあの現場に残されていた血痕なのですが……なんと、血液中の成分を調べるだけで誰の血か分かってしまうそうです。面白いと思う反面、空恐ろしい技術ですねえ。
 次に包丁についてですが、包丁の柄の部分に付いた「指紋」という指の痕を詳しく調べるだけで、これもその個人が特定されてしまうそうですよ。
 
 そうして現場に残った数々の証拠品を調べた結果がですねえ……もったいぶるな、ですか?いやだなぁ、そんなに犯人が知りたいんですか?
 知ればあなたの嫌いな泥が顔にかかると思いますけど……良いでしょう、言います。



 あの夜の事件の犯人は「百鬼」店主にして六兵衛の息子、九蔵さんです。



 出鱈目を言うなですって?これは滑稽ですねえ、先程まで殺したいとまで願っていた息子を今になって庇い立てするなんて、あなたの頭には白味噌でも詰まっているんですか?
 この事件の真相は、九蔵が“あやめ”を殺した犯人、これは紛れもない事実です。私が見て聞いた事は、全て揺るがない幻想郷の真実なのです。
 

 では九蔵さんが人殺しだと信じて貰うために、もう少し事件についてお話を致しましょう。

 
 事件の起きた夜。“あやめ”さんはとある妖怪との約束を果たすべく、料亭二階の黄泉の間へと足を運びました。
 しかし先に居たのは妖怪ではなく九蔵さん、つまり自分の夫が先に黄泉の間で待ち構えていたのです。“あやめ”さんはさぞ驚いたことでしょう。

 九蔵さんは何を言うでもなく“あやめ”さんを部屋の中に招きました。
 “あやめ”さんは九蔵さんに逆らう事無く、いつもの様にその欲望を受け止めました。どうしてここにいるのか?そんな疑問を口にして問う事もできませんでした。 
 
 そうして事が済んだ後、九蔵さんは持って来ていた包丁を取り出して“あやめ”さんの喉元に突き付けて脅しました。
 “あやめ”さんはさらに混乱します。自分は何の罪も犯していないはずだし九蔵さんに恨まれるような事もしていない。様々な思考が頭を駆け巡り声も出せませんでした。

 
 これは推測ですが……九蔵さんは“あやめ”さんが何をしても笑顔でしか返さない事に不満を募らせていたのだと思います。

 幼いころから我儘放題で誰にも叱られることなく自由奔放に生きてきた九蔵さんですが、その心を許していたのは最も近くにいた“あやめ”さん唯一人だったのです。
 その“あやめ”さんですら九蔵さんに逆らうことなく怒ることさえしません。毎日毎日、暴力を振るっても笑ってばかり……俺を恨め、俺に怒れ、偽りの笑顔ばかりするなと。
 何という皮肉でしょうか。肉体が近寄るほど、精神が離れて行くとは。実に人間らしいとも言いますがね。  


 そんな中、名もなき妖怪が新月の闇の中を大きな風呂敷包みを携えて「百鬼」へと向けて飛んでいました。全ては“あやめ”さんとの約束を果たすため。
 
 そうして辿り着いた料亭「百鬼」の二階黄泉の間。窓を開けて部屋の中を見ると“あやめ”さんが男に包丁を突き付けられて脅されているではありませんか。
 もっと驚いたのはその男、九蔵さんです。爪を生やした妖怪が、真っ赤に染まった風呂敷包みを持って見下ろしているのですから。
 

 咄嗟にとった行動が“あやめ”さんを人質にとること。愚かな事です、その行動で全ての運命が決まってしまいました。

 混乱していた“あやめ”さんは九蔵さんに包丁を突き付けられて尚理性をどうにか保っていましたが、現れた妖怪が明らかに異様な包みを持っていた事。
 加えて妖怪に怯えた九蔵さんが“あやめ”さんを人質にとろうとした事で、その抑えていた感情も限界になりました。
 “あやめ”さんは真夜中である事も憚らず、大声で叫びました。ようやく笑顔以外の表情が出たにも関わらず、それが最初で最後でした。

 それに驚いた九蔵さんは持っていた包丁で衝動的に“あやめ”さんを殺害し、妖怪もその衝撃に耐えられなかったのか、九蔵さんを喰い殺しました。


 
 ……以上が事件の真相です。どうですか?とっても愉快で楽しいお話だったでしょう?
 私にお願いするまでも無く、九蔵さんは既に妖怪に食べられて亡くなっていたんですから。あなたのお願いは既に名もなき妖怪さんが叶えちゃってたんです。

 部屋中一面に付いていた血痕はその殆どが九蔵さんのものでした。そして包丁に付いていた指紋と“あやめ”さんの首元に縊り付いていた指紋が一致したのです。
 九蔵さんはさぞ美味しかったのでしょうね。バリバリグシャグシャバキバキゴクン!……という感じで、跡方もなく食べられてしまってました。
 忌み嫌っていた息子が跡方もなくこの世から消え去ったんですから、ほら、もう少し嬉しそうな顔をして下さい、そんなんじゃ画になりませんよ?(パシャリ)

 里の瓦版には事件の犯人は妖怪だと報じられていますから、この事件の真相は今日のインタビュウに勝るとも劣らないスクープです。ああ、早く記事が書きたい!
 
 と、いうわけなので私達はそろそろ御暇します。六兵衛さん、今日は美味しいお酒と料理とそして特大のスクープ、本当に有難うございました!
 
 え?新聞に書かないでくれ?何を言ってるんですか。あなたの店の名前が幻想郷中に広まるまたとないチャンスなんですよ?さっきも言ったじゃないですか。是非書いてくれって。
 お金?人間を食料にやる?……これはまた良いネタです。にとり、聞いてた?いいですねえ、またネタのストックが増えちゃいました。
 
 里の話題はしばらくの間文々。新聞がさらいそうですね。 


 あやや、こうしてはいられません、早く記事を書かないと。それじゃあ六兵衛さん、近々出る号外を楽しみにしていて下さいねー!









     ☆★☆









於ける、忘れ去られた洞窟。名も無き妖怪の告白。




 おめえ、どうしてこの場所が分かったんだ?いや、それよりも、その手に持っている物はなんだ、号外?そうか、おめえさんは、天狗のブン屋さんかい。
 わりぃが俺に構わないでくれ……俺ぁ人殺しのケチな妖怪だ。巫女さんに退治されるのも怖くて仕方がねぇ、意気地も無い、ただ朽ちて逝くだけの妖怪よ。
 
 何も言わずに読めだぁ?……ケッ。最近の若ぇもんは、天狗様でも似たようなもんか、大昔ならそんなことも無かったんだがよぉ……。





 ……そうかい。おめぇさんは、あの夜の事を分かってたのかい。しかしあの男もその親も、碌でもねぇ奴だったんだな。人間ってのは本当に分からねえ種族だな。
 同じ種族同士で愛し合うかと思えば昔みたいにお互い憎しみ有ったりしてよぉ……しかしそうなると、益々あの女の事が不憫でならねえ。
 何であんな糞不味い野郎と一緒になった挙句、その命まで粗末にしなきゃならねえんだ。


 ……俺ぁ人間の女に、生まれて初めて恋心って奴を抱いたんだ。

 初めて女に会った夜、俺ぁ最初喰い殺す振りをして脅かしてやろうと思ってたんだ。だが女は顔色一つ変えずにこうぬかしやがった。
「私の臓腑は助からぬ病に冒されております、それを御承知で私をお食べになられるなら、私は思い残す事は有りませぬ。お食べになった後の事は存じませんが……」ってな。
 その女はそう言って尚喉元を俺に向けて差し出した。それでどうしたかって?……そりゃあおめぇ、そんな啖呵切る女なんて初めてだったからな。一目惚れってやつよ。


 俺は女に妻になってくれって必死に口説いた。だが……女は首を縦に振る事は無かった、他に好きな野郎がいるっつってなぁ。

 それに命が短くなろうと後悔しておりません、なんて女はぬかしやがる。馬鹿馬鹿しい、元々寿命の短い人間が更に短くなるのを何で黙って受け入れようとしてんだ。
 俺はそういって、病を治す方法は無いのか聞いた。それでも女は「構わないで下さい。今の幸せが有ればよいのです」つって話を聞きやしなかった。  

 あの女が言う「幸せ」ってのは、ただあの野郎に暴力を振るわれる事だったのか?それとも、あの野郎をそれでも好いてたから我慢していただけだったのか?
 ……その時の俺にはそんな事分からなかった、いや、今でも分からねえ。
 女が俺を受け入れてくれなかったのは、俺が妖怪だったから?それとも女が人間だったから?……俺は本当に、何も分からなくなっちまったんだ。


 何を言っても聞かねえ女に、俺は一つだけ約束をさせた。

 その病を治す方法を俺が自力で探してくる。その男の事も結婚しようだなんてことも関係ねぇから、お前の病だけは絶対に治してやるってな。
 次の新月の晩にまた女と会う約束をして俺達は別れた。俺は自力で治すって言ったが、医術の心得もねえから実際どうしたら良いか分からなかったけどな。 
 それでも女に生きて貰いたいって想いは本当だったんだぜ、この気持ちだけは閻魔様に舌引っこ抜かれても変わらねえ想いさ。

 それから俺がした事は……内臓を集めることだった。今思えば本当に馬鹿らしい発想だがよぉ、その時の俺ぁ必死だった。
 臓腑を悪くしてるっつうんだから悪い所を他の内臓ととっかえりゃ良いと思ったんだ、幻想郷中を飛び回って人間に近い猿共を捕まえてな……恨まれようと構わなかったさ。

 
 ここで誓っておくぜ、決して人間の内臓をとった事は無い。

 勿論、大昔は人間の内臓やら脳漿やらをブチ撒けて殺すなんてのは快感の一つだったがな、今じゃあそんなに血の気も多くねえし、この幻想郷じゃ人間と妖怪が上手くやっていけてる。
 それに、あの女と会ってから俺は自分で一つの決め事を立てたんだ。もう、人間を襲わねえし何も喰わねえってな。

 
 妖怪の存在意義は人間を襲って初めて成り立つ……ってえ事だが、俺みてえに人間に恋しちまった妖怪の存在意義ってやつは、どうなるんだ?

 少しばかり昔の話になるが、まだ人間も左程数が多くなかった時の事だ。俺の昔の親友が人間の女に恋をしたんだ。
 そいつが恋をした女ってのは貴族の娘で、町の中でも結構な名家の娘でな。俺はその頃恋なんて感情知らなかったがその恋は上手くいくように願っていた。


 だけど親友は、恋をしたその女を喰い殺した。


 親友は思いの丈を女に伝えただけなんだが、女は妖怪の言う事など信じずに何か企んでいるだろうと疑って、陰陽師を差し向けて調伏しようとしたんだ。
 今でも、好きだった女を喰い殺したあいつの表情を忘れられねえ……その後、あいつはポツリと言ったんだ。

 「人間と俺達妖怪の境界って、どこに引いてあって、なんで引いてあるんだろうな?」ってな、そうしてあいつは姿を消した。
 そんな親友の記憶があって尚、俺はそいつと同じように人間に恋をしちまった。馬鹿だよなあ俺は、本当に。

 人間を襲わなければ妖怪で無くなるのなら俺は妖怪でなくとも良い、俺は人間に、あの女に近い存在になりたかった。そうして俺は何も喰わねえ事を決めたのさ。
 ああ、食い物は何も口にしちゃあいねえ、今となっちゃあ無駄な事かも知れねえがずっと続けて行くつもりさ……妖怪の境界を越えて、人間の存在に近づくためにな。   

 でもよう……俺がやろうとした事は、間違ってたのか?何であの時、あの女は俺を見て叫んだんだろうな?俺ぁただ、あの女にもっと生きて貰いたかっただけなんだ……
 今となっちゃあその理由も聞く事が出来ねえ、それともやっぱり、俺が妖怪だったから受け入れてくれなかったってだけの事かもな。
 
 それがこの幻想郷での有るべき姿だっつうんなら、俺ぁ何も言わずにここで朽ちて行く方が良いのさ。
 俺があの女に持っちまった心は、妖怪には禁忌の感情だったんだよ。
 
 俺達妖怪がいくら望もうとも人間と妖怪の境界が交わる事は無い……だがお互いに並び歩いて行く事はできる。
 全てはお譲ちゃんの書いてある新聞の通り「人間と妖怪は互いに相容れない、だが歩み寄れる種族である」つまりそういう事なんだろうぜ。
 
  
 俺の独り言はもう済んだぜ……もう何も言う事はねえ。天狗のお嬢ちゃん、そろそろ俺を独りにしてくんな。それとも、この場所を巫女さんに知らせる気かい?
 俺としちゃあこんなどうしようもねえ妖怪崩れの半端者が幻想郷にいたら迷惑だからな、さっさと退治してくれたほうが有難いし踏ん切りもつく。

 ……そうか、呼ばねえか。お嬢ちゃん、あんたも残酷な性格してるぜ。このままずっと洞の中で悩み苦しみ続けてろってか。確かにその方が罪も償えるかも知れねえ。 
 
 
 考え続けても答えは出ないかもしれないが、答えが出ない事もまた答えかもしれないしな。俺ぁここでずっと、あの女への想いを抱いたまま死んでいくさ。
 

 もう行くか……じゃあ最後に言わせてくれや、天狗のお嬢ちゃん




 新聞くれて、ありがとな。


 
 

















「インタビュウ」  完
お久しぶりです。てつをです。
ようやく(下)が完成しました。自分としては初めて最後まで書き切れた作品となります。

しかしテーマが一貫していないというか、ちょっと軸がぶれてしまっている点が目立つので、少し読みにくいかと思います。
書いてる内に一番困ることが、自分の中で書いてる主題に対していろいろツッコンでしまうことでした。

「いや、お前(自分)の考えは違うだろ、もっと別の角度から見れば……」とか。
「何書いてんだお前(自分)、世間の常識から外れてるだろ、常識的に考えて……」とか。
「エロさが足りない」これは特に突っ込みませんでしたが。

(上)を投稿した時は本当に見切り発車だったので(下)では辻褄を合せるべく苦労した個所もいくつもありました。
とは言え、全体的にはなんとかまとめられている筈ですが……いかがだったでしょうか?

東方の世界観は知れば知るほど広がりその想像は無限大です。
その中でも特に書きたいと思っているのは、里を中心とした人々の心情です。

今回の作品では実験的にオリキャラを数人出して書いてみましたが……
やはり世界観と合わせて書くのは、もう少し上達してからでないといけませんね。

また懲りずに拙い作品を投稿するかと思いますが、今後ともよろしくお願い致します。
てつを
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
ふむ成る程…面白かったです!
2.ケトゥアン削除
きれいに終わっててよかったです。
賛否両論あるでしょうが僕は賛ですよ
3.てつを削除
早速評価していただき有難うございます。
確かに創想話の中で取り扱うには読み辛いテーマだったように思います、気分を悪くされた方もいるかもしれません。
ただ批判でも評価でも作品を見て頂けたというのは本当に嬉しいですし有り難いことです。

分った人はいるかもしれませんが、オマージュした作品が二つあります。

一つは幽々白書の幽助の生い立ちであるエピソード、雷禅と薬師の女とのやりとり。
もう一つは、うしおととらの妖怪さとりのエピソード、目の病気を患った子供とそれを治そうとする妖怪の話。
両方とも名作で尚且つ良エピソードなので実際に言いたい事は私のようにブレていません。流石プロ。

そうして私の作品で言いたかったことは「妖怪から人間へ向けての愛は受け入れられるのか?」ということです。

東方の世界では妖怪の占める割合が人間よりも多数です。
そういった世界観であるから、妖怪から人間に対して愛の感情を持ちえる可能性もあるのでは?と考えたのが書こうと思ったきっかけでした。
あえてオリジナルの妖怪としたのは、キャラを特定しない事で細かい所は読み手の想像に任せられるかなぁ……と、ゴメンナサイ。

そうした事を書きたかったので、人物の語り形式で書くのが感情や思いを書き出しやすく後とても楽だったからです(←これ重要)
ただ六兵衛の下りはその主題からみると完全に蛇足っぽくなってしまい、ここらへんは作者の腕が至らない部分でしょう。

とはいえあとがきにも書いた通り、私が初めて書き切れた作品ですので自分にとって大きな一歩だった事は変わりないです。
ここで改めてお礼を申し上げます、読んで頂きありがとうございました。