Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

狭いようで広い幻想郷 4

2010/07/31 13:56:58
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上空より飛来してきた妖怪・・・。
いや、遠くから跳躍してきたと言ったほうが正しいだろうか。
着地と同時に巨大な地響きが鳴る。
目の前に現れたこともあって、プレッシャーはさらに上がった。
緊張が走る。
すでに子ネズミたちは遠くに避難させてある。
そして、相手の姿を確認した私たちは・・・。

「・・・蜘蛛?」
「・・・蜘蛛ですか?」
「あぁ、蜘蛛に違いねぇ。」

・・・いやいや!
姿こそ蜘蛛のようだが、この大きさは無いだろう!?
目算だけでも全長5mはあるぞ、この妖怪。
こんなデカイのが、あんだけの跳躍をしてきたのか?
なら、パワーはかなりのものだろう。

なんて、考えていた瞬間。

50mは離れていた蜘蛛が、一気に距離を詰めて来た!
まずい!速い!!
と考える暇も無く。
葉月が真っ先に飛び出した。
凄い速さで敵に突っ込み、ハルバードを振り下ろす!
が。
あれだけの速度で突っ込んできたとは思えないように、突然直角に進行方向を変え、葉月の攻撃をかわした。
そして横から再び葉月に突っ込み、その鋭利な爪がついた足を振り下ろす!
それを葉月はなんなく受け止め、横薙ぎに一閃。
再び距離を取る葉月と蜘蛛。

・・・。
その一瞬の攻防を見ていた私たちは呆然とする。
葉月のスピードや反応も凄いが、あの蜘蛛はあの巨体であんな動きができるのか?

なんて感心してる場合じゃない!

「鈴仙!」
私の掛け声とともに、弾かれた様に硬直から解き放たれ、攻撃準備に入る。
悪いが接近戦は葉月に任したほうが良いだろう。
私たちなんかじゃ、近寄った瞬間首でも吹っ飛ばされそうだ。
ならば、遠距離からの援護攻撃。
私と鈴仙は蜘蛛に向かって弾幕を展開する。
相手が相手だ。
初弾から、かなり強めに放った私たちの攻撃は・・・。

話にもならなかった。

私たちの攻撃なんか、まったく意に介さず。
葉月を無視し、弾幕に突っ込みながら私たちに向かって突進してくる。
その蜘蛛に向かって。
「おい、そっち行くんじゃねぇよ。」
そういって、蜘蛛が自分を横切ろうとした所に、葉月の攻撃が蜘蛛に炸裂する。
無造作に、片手で叩きつけるハルバード。
あの攻撃は重い!
普通なら、致命傷になるだろうその攻撃をくらった蜘蛛は。
吹っ飛びこそしたが、何事も無く地面に着地した。
「鈴仙!ナズーリン!」
葉月が叫ぶ。
「見ての通り、こいつは恐ろしいほど頑丈だ!もっと強めにいけ!それこそ全弾本気でいくくらいにな!スペルカードも宣言とかそんなルール無視してどんどんぶつけていけ!」

そうだった。
相手はルールも何もあったもんじゃない化物だった。
今頃になって、頭を切り替える。
鈴仙は・・・。
横目で彼女の確認をする。
・・・、どうやら私以上にこういった状況に耐性はあるらしい。
どこかで本格的な戦闘訓練でも受けていたのだろうか。
目つきがいつもと違う。
なら、私も頑張るか。
私たちの攻撃は、正直ダメージには期待出来ないだろう。
なら。
「鈴仙!足だ!足なら胴体より幾分か効くだろう。足止めにもなる。あとは目!まさか目まで恐ろしく頑丈な生き物なんてそうそういないだろう。その二点に絞って全力でぶつけていくぞ!メインの攻撃はすべて葉月に任せよう。邪魔になるようだったら引くまでだ!」
「はい!わかりました!」
私たちに出来ることなんてそのくらいだ。
葉月の邪魔になるくらいだったら尻尾巻いて逃げるくらいのことは考えといたほうがいい。
悔しいが、私たちじゃ力不足だ。

私たちの声を聞いて、葉月がニッと笑った。
「じゃあ、いくぜ2人とも!隙見て援護を頼む!」
そういって、今度は葉月のほうから突っ込む。
一気に距離を詰めて、繰り出されるハルバード。
それを、後方への跳躍でかわす蜘蛛。
本当に、あの蜘蛛はなんであんな図体であそこまで素早い動きができるのか。
しかし、葉月の動きはさらに俊敏だった。
あれだけの勢いで振り下ろされたハルバードが、いきなり動きを変えてそのまま突きに入り横薙ぎになり・・・。
おいおい!
あれ、本当にハルバードの動きか!?
普通なら、あんな重くて巨大な武器なら、どんなに力があっても、動きが一定化してしまう。
なのに、まるで軽い剣でも振り回すかのように、決して重量のある武器じゃできないような動きで、自在に変化をつけながら攻撃をくりだす葉月。
しかも、一撃一撃の威力がハンパじゃない。
あれ、一発があの霧雨魔理沙の魔砲くらいの力があるんじゃないか!?
そんな一撃が、再び蜘蛛に直撃する!
だが、吹っ飛ぶものの、やはり空中で1回転。
地面に着地しようとする。
が。
この瞬間が、私たちの出番だ!
「鈴仙!」
「はい!わかっています!」
いまの攻防の隙に、すでに蜘蛛の左右に展開してた私たち。
奴は確かに素早い。
だが、まさか吹っ飛んだあとの着地の瞬間に足を狙われたら対処できまい!
私は、スペルカードの宣言を無視して、レアメタルディテクターを、鈴仙はディモチヴィエイションを一斉に放つ!
着地の瞬間に足に私たちの攻撃が直撃する!
ダメージこそあまり期待できながら、少しながらふらついた!
「よくやった、それでいい!」
その瞬間を見逃さず、葉月が一気に三撃。
縦、横、最後に突き。
たまらず、後ろに吹き飛ばされる蜘蛛。
だが、足を地面に食い込ませ、急停止する。
そこにすかさず私はナズーリンペンデュラムを放つ。
さすがに2回連続の足への攻撃には警戒していたのか。
すぐさま跳躍してペンデュラムをかわす。
が、その瞬間。
蜘蛛の前方には鈴仙。
相手の目を睨み、放たれるのはマインドシェイカー。
鈴仙お得意の催眠攻撃により、再びふらつく蜘蛛。
跳躍は失敗。
そして、その真上には葉月が。
渾身の上段一撃!
蜘蛛を叩きつける!
「まだまだ!」
すぐさま地面に降り立ち、連続攻撃に移行しようとした瞬間。
蜘蛛が土に潜った。
何をする気だ?
そう考えていると。
「拙い!上に飛べ!!」
すぐさま飛ぶ葉月。
次の瞬間!
「うわぁっ!!?」
まるで地震が起きたかのように大地が揺れる!
葉月はすぐさま飛び、鈴仙も空中にいた。
だが、私は反応が遅れた。
あまりの揺れに、尻餅をつく。
そこに、先ほど地面に潜っていた蜘蛛が現れる。
マズイ!
私に覆いかぶさるように立ち、爪を一気に振り下ろそうとする。


反応ができない。
しまったな、迂闊だった。
まさか、あんな行動をとってくるとは・・・。
喰らったら終わりだな。
死の直前とはこういうものなんだろう。
走馬灯のように浮かんでくるのは命蓮寺の面々。
聖、一輪、雲山、ムラサ船長、ぬえ。
そして・・・。


そんな思考に耽ってしまったのも一瞬。
「ナズーリンさん!!」
掛け声と共に、鈴仙が蜘蛛の目を再び睨む。
放たれるは、インビジブルフルムーン。
先ほどより強力な催眠と渾身の弾幕が蜘蛛に放たれる!
私ごと巻き込むような弾幕の嵐。
そして催眠により、蜘蛛の攻撃の軌道が逸れた。
ザクッという音と共に私の頭の横すれすれに爪が突き刺さる。
それによって、一気に頭が覚醒した!
すぐさま、蜘蛛の真下でナズーリンペンデュラムを放つ。
「ああああああっっ!!!」
渾身の攻撃、巨大化した3つのペンデュラムが狂ったように暴れる!
腹に、足に、猛攻を喰らった蜘蛛の動きが止まる。
そこに、葉月の攻撃が放たれる。
一回転して遠心力をつけた、今までの一番の強打!
流石の蜘蛛も、たまらず大きく吹っ飛び、地面に倒れる。

だが、まだだ。
すぐさま蜘蛛は立ち上がる。
だが、かなりのダメージを喰らったはずだ。
蜘蛛はすぐさま攻撃に移れない。
好機!
私はポシェットから予備のペンデュラムを3つ取り出す。
計6つのペンデュラムを片手に、そしてもう片方にはロッドを構える。
放つは6つのナズーリンペンデュラムとナズーリンロッドの一斉掃射!
鈴仙はありったけの力を目に込めて、今までで最強の催眠攻撃を放つ!
流石にこれは効いたらしい。
完全に蜘蛛の動きが停止する。
そこを見逃す葉月じゃない。
次の一撃でトドメを刺さんとばかりに、疾風のように突っ込む!
これで勝てるか!?

そう思った瞬間。

場の空気が変わったのを感じた。

「耳を塞げ!距離をとれ!!」
葉月が緊急停止して、一気に後方へ下がる。

と、同時に。

強烈な咆哮が、辺りに響いた!
「~~~~~っっ!!?」
放たれる凶悪な咆哮と、周りすべてを吹き飛ばす想像を絶する力。
葉月のおかげでかなり距離をとっていたから良かったものの、もし近くでいたら、あれだけでどうにかなってしまいそうだ。
先ほどまでふらついていた蜘蛛は、大地に力強く立っていた。
鈴仙の催眠も、一緒に吹き飛ばしてしまったようだ。
恐怖を叩き込むような赤い目が、こちらをしっかりと見つめていた。
「っていうか、あれ蜘蛛じゃないだろ!?なんなんだ、今の咆哮は!?」
断言しよう。
あれは、蜘蛛じゃない。
蜘蛛はあんなに巨大じゃないし、凄まじい動きもしないし、馬鹿みたいに頑丈でもないし、地震なんて起こさないし、挙句の果てには咆哮なんてあげたりしない。
「ど、ど、どうします!?」
流石にここまでしぶといとなると、鈴仙も再び慌てふためく。
「・・・。」
何か考えるように沈黙を続けていた葉月だったが。
「件の調味料、というか薬草か。それはここからどれくらいの距離にある?」
突然、当初の目的について聞かれ、戸惑いながらも答える。
「あ、あぁ。さっきの反応を見るからに、そんなには離れていないとは思うが・・・。たぶん、ここから500mくらい奥か?」
それを聞いた葉月は、なら範囲内だな、と呟く。
私がなんの範囲なのか聞こうとする前に、葉月が口を開いた。
「サンキューな。あんたらの援護で、思ったよりダメージを与えられた。2人はいまのうちに取りに行け。ここから先は俺一人でやる。」
「え!?でも、ここまできたなら三人で総攻撃を仕掛けたほうがいいんじゃ。」
突然の提案に、鈴仙が驚いたように言う。
だが、葉月は。
「確かにダメージはかなりある。だが気付かねぇか?今ので相手は本気になった。今まで以上の攻撃が展開される。だから、ここから先は俺も本気を出す。」
驚いた。
蜘蛛が本気でなかった以上に、この男も今までのが本気ではなかったことに。
しかし・・・。
「え、じゃあ今までなんで本気を出さなかったんですか?」
私と同じ疑問を感じたのだろう。
鈴仙が尋ねる。
「・・・最初は、ある程度ダメージを与えたら引いてくれると思ったんだがな。どうやらアテが外れたようだ。相手を本気にさしちまった。で、俺が本気だすとな、2人を巻き込んじまいかねんのよ。俺と同等、もしくはそれ以上の実力があれば気にせず本気で暴れれるんだがな。言っちゃあ悪いが、二人じゃ力不足だ。もうここから先の戦いには巻き込めねぇ。」
それを聞いた私は・・・。
「鈴仙、行こう。」
「え?でも。」
「最初から、足手まといになるようなことがあれば引く予定だったんだ。正直な話、ここまで私たちがやれたことはラッキーと言うべきだろう。実力差なんて最初から歴然としていたんだ。葉月が言うように、私らはここらが引き時だろう。」
そう鈴仙に言い聞かせる。
少しの沈黙のあと。
「・・・わかりました。確かにその通りですね。葉月さん、すみませんが後はよろしくお願いします。任せてください。ちゃんと葉月さんの分も取ってきますから。」
「おぉ。頼むぜ。」
そういって。葉月は臨戦態勢をとる。
「見つけて収集したら、すぐに戻ってくる。その時に決着が着いていなかった場合には・・・。」
「わかってる。目的を果たしたなら、それ以上の戦闘は無意味だ。相手を牽制しながらここから離脱する。テリトリーの外まで行けば、流石に追っかけてこねぇだろうしな。」
さぁ、行け。
その言葉を聞いて、私たちは森の奥へと駆けていく。
「すぐに戻ってきますから!どうかお気をつけて!」
「任せたぞ!くれぐれもやられたりするなよ!」
そう叫んで、私たちは葉月に背を向けた。



「・・・当たり前だ。この俺が、こんなヤロウに負けるかってんだよ。」
2人の姿が見えなくなると同時に、葉月の周りに光が溢れる。
ハルバードの先端に付いているブースターにも光が灯る。
何かを小声で呟きながら。左手を前に突き出し、右手のハルバードを横薙ぎに構える。
「さぁ、本気で来な。死にたくなけれりゃな。」
再度、蜘蛛から放たれる咆哮と力。
それと同時に。
両者は相手に向かって疾走した。



森の奥に向かって駆けていく私と鈴仙。
「ナズーリンさん、反応は?」
「あぁ、強いぞ。もう近くだ。」
ロッドの反応を見ながら、木々の間を通り抜けていく。
そして、私たちはひときわ大きい大木の前で足を止めた。
「この辺りのはずなんだが・・・。」
「あ!あそこじゃないですか?」
鈴仙が指差した方は、大木の横にある水辺。
そして、その周りには・・・。
「・・・確かに。資料と同じ形の薬草だ!」
ようやく見つけた。
早く摘んで、葉月の所に戻ろう。
「にしても、沢山生えてるじゃないか。どれを取っていく?」
そう。
同じ薬草が、密集するように生えている。
数にして2~30はあるんじゃないか?
私が辺りを見渡していると・・・。
「・・・いえ、この草の殆どがダミーです。」
そういって、鈴仙が屈んで草を念入りに見つめる。
「なに?これは違うのか?」
「おそらく、種を残すための知恵というやつですね。周りにある草と同じような形に進化することによって、採られる確率を少なくしようとしているんですね。」
草の葉や根元を見ながら、慎重に選別している鈴仙。
それを私は、後ろから見ていた。
少し焦りが出てくる。
今も、葉月はあの蜘蛛と戦っている。
相手は本気でくると言っていた。
葉月の本当の実力がどれほどのものか分からないが、そう容易い戦いにはならないだろう。
そう考えると、焦りが徐々に募ってくる。
鈴仙の方を再び見る。
額には、一筋の汗。
そして、何かを耐えるかのように、慎重に選別を続ける。
それを見て、私は心を落ち着かせようとする。
深呼吸をひとつ。
そうだ、今ここで焦って間違ったものを採取したら何のために来たのかが分からなくなる。
鈴仙が私を頼りに来たのも、夜遅くまで場所を特定したのも、あんな化物蜘蛛と死闘を繰り広げたのも、そして今も続いているであろう葉月の奮闘も。
私は場所を特定した。
だから、後は祈るのみ。
目的のものがちゃんとあることを。
鈴仙の知識と目利きを信じて、私は待つことにした・・・。

10分は経っただろうか。
「分かりました!この3つです!」
どうやら、ようやく本物を探し当てたようだ。
「本当かい?」
「えぇ。間違いないと思います。」
さて、3つか。
1つは、依頼主の鈴仙のもの。
もう1つは、葉月に。
そして、最後の1つは・・・。
「どうします?せっかくだからナズーリンさんも採っていきます?」
私は、その薬草を見つめながら少し考える。
そして、薬草に手を伸ばすと、葉を2,3枚ほどちぎっって、手に取った。
「え、それだけでいいんですか?」
「あぁ。私にはこれだけで十分さ。料理の調味料に使えるんだろ?なら、多くはいらないさ。」
それに。
「全部採ってしまうって言うのもアレだろ?希少種なんだ。欲張ったら、なんかバチが当たりそうでね。」
「バチ、ですか?」
「ここまで来れたのは、実は結構幸運だったと思うんだ。場所を探し当てれたのも。葉月に出会ったのも。あの蜘蛛から生き延びれていることも。だから、ね?」
そう苦笑しながら答える私に対して。
「わかりました。ナズーリンさんがそう言うなら。」
鈴仙も微笑んで、答え返した。

その時。

ズガンッッッ!!!!

巨大な音が鳴り響く。
私たちは慌てて来た道のほうへ振り向く。
とてつもない轟音と、なにか巨大な力が弾け飛ぶような感覚。
葉月がいるところだ!
「鈴仙!」
「行きましょう!」
薬草をバッグにしまい、来た道を駆けて行く。
なんとなく、直感が告げる。
今ので、おそらく決着がついた・・・!!
4話目、完了です。

戦闘描写は難しいですね。
その場の臨場感を出すため、細かい動きの描写や、例えをつかったりしてイメージを掴みやすくできればいいんですが。
上手くいかないものですね。

ある程度他のネタも浮かんできましたので、次回でこのシリーズを終わりにします。
ここまで読んでくださった方には、後1話お付き合い願えると大変嬉しいです。
エクシア
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
読んでる最中ずっとドキドキしっ放しでした!
次で最後か…楽しみです