文々。新聞文化欄　『幻想郷縁起　第１２５季増補改訂版』著者：稗田阿求氏インタビュー

※経緯は『第７回稗田文芸賞』あたりをご参照ください。







――『幻想郷縁起　第１２５季増補改訂版』発刊、おめでとうございます。

阿求　ありがとうございます。今年も無事にお届けすることが出来、ほっとしています。

――さっそくですが、今回の幻想郷縁起の見所は？

阿求　今回は新たな妖怪などの情報は少なめですが、その分全体的な情報量の強化に努めました。とくに昨季の版では情報収集の不充分だった命蓮寺の皆さんなどについては、かなり充実させたつもりです。

――なるほど。しかし、妖怪への傾向と対策を纏める書物である幻想郷縁起において、人里に対して非常に友好的な命蓮寺の情報を充実させるのは、本来の意図からは微妙にズレていませんか？

阿求　時代とともに、幻想郷縁起に求められるものも変容していくということです。とはいえ、人里の誰でも知っていることを改めて書くのもやはり趣旨には合いませんので、そのあたりは気を遣いました。

――みんな知っていることを書いても、読み物としては面白くありませんからね。

阿求　だからといって、あることないこと面白おかしく書けばいいというものでもありませんが。あまり実際に即さぬ内容では信用が問われますし。

――あやややや。嫌味ですか？

阿求　何か心当たりでも？

――いえいえ、別に。（幻想郷縁起を捲りながら）ところで、近年の文芸ブームについてはあまり触れていないのは何故でしょうか？

阿求　そちらはいずれ、また別の本にまとめる予定です。

――なるほど。文芸といえば、昨年の稗田文芸賞を受賞された風見幽香氏と、先日ご結婚なされたわけですが。

阿求　……その件が、幻想郷縁起と何か関係が？

――大ありです。何しろ風見氏も縁起に記された妖怪なのですから。今回の縁起でもちゃんとページを割いてありますね。

阿求　情報はあるに越したことはありませんから。

――けれど、内容はあまり更新されていませんね？　ご結婚なされたわけですからもっと大幅に書き換わるものかと思いましたが。

阿求　……。

――特に、友好度と危険度の項。ご結婚以来、彼女は主にこの稗田家で暮らしてらっしゃいますよね？　人里の皆さんにお話も伺いましたが、皆一様に口を揃えてこう仰います。

阿求　……何と？

――「幻想郷縁起だと人間友好度最悪と書かれていたのに、話してみたら普通に優しい女性だった」と。

阿求　…………。

――ご結婚の話が出た当初は人里でもいろいろ不安視する声があったそうですが、今ではすっかり「稗田の屋敷と花屋によくいる綺麗な日傘のお姉さん」として、人里の人気者になっているようですね。実際、貴女と恋仲になってからの彼女は丸くなったと私も思います。

阿求　…………。

――だというのに、ですよ。今回の最新版の幻想郷縁起を拝見しましたが、何故まだ風見氏の項は「危険度・極高」「人間友好度・最悪」のままなのでしょうか。いえ、丸くなったとはいえ危険度に関しては異論はありませんが、友好度に関しては現状の人里での認識とはあまりにもかけ離れていると思いますが。

阿求　……それは、その。

――更新を忘れた、とかそういうことではありませんよね？　貴女に限って。しかし、風見氏の希望とも思えない。昔なら妖怪としてハクをつけるために貴女にそう記すよう要求することもあったかもしれませんが、今の彼女は貴女の側にいることを第一とするはずですから、無意味に人里に敵を作りたがるとも思えない。

阿求　………………。

――率直に伺いましょう。どうして風見幽香氏の人間友好度を「最悪」から訂正しないのです？

阿求　………………………………。

――わざとですよね？　どうして結婚相手をわざわざ、

阿求　…………稗田なめんなコノヤロー！

――あ、あやや！？

阿求　だって困るじゃないですか！　ただでさえ作家としての彼女は人気あるのに、これ以上人気者になられたら！　今だって毎月ファンレターが届いて、その中には愛の告白めいたものまで当たり前のようにまぎれこんでるんですよ！　人の旦那になにを公然と恥ずかしげもなく「踏んでください」ですか！　稗田なめんなぁ！（涙目）

――あ、あの、阿求さん？

阿求　……はっ。

――あやややや。

阿求　わ、私は今、何も言っていませんよ？

――ええ、そうですね（ニッコリ）。

阿求　何も言っていませんからね！？

――ありがとうございました。紙面をお楽しみに（ニッコリ）。

阿求　こら待てブン屋稗田なめんなバカヤロー！

（某月某日　稗田家にて）

　後日、新聞を読んだゆうかりんに優しくされまくってあっきゅんはメロメロに溶けてしまいましたとさ。ちゃんちゃん。