「こんちゃー!」
「あら、毒人形?」
「メディスンです」
「そう」
ぽちん、と一人、向日葵に埋もれるようにして佇んでいた風見幽香の元へ人形が突撃していった。
毒人形ちゃんことメディスン・メランコリーは腕を振りながら突進。
ずどごん、と大きな音とともにお腹に頭をぶつけた。
幽香はそれを振り払いながら聞く。
「お久しぶり。今日はいったいなんの用?」
「あのね、ちょっとこれ飲んでもらいたいのよ」
そう言いながら、メディスンは懐から瓶詰めにされたなにかを取り出した。
その中には薄い黄色の液体。幽香は一瞬変な想像をしたのだが、それは放っておこう。
「なに、これ?」
匂いを嗅ぎながら、聞く。
「まぁまぁ、どうぞ」
「はいはい。ん……」
瓶を傾ける。
するすると、その液体が幽香ののどを通っていく。
そして幽香はむせた。
「ごっ……ふ。にっがぁ。なによこれぇ……?」
「センブリ茶」
「え?」
「センブリ茶」
その瓶から、妙な瘴気を感じたが、それは気のせいだろうか。
「それにしたって、なんでセンブリ茶?」
いやぁな顔をしながら、瓶の中の液体に目を落す幽香。
メディスンは得意げに、
「貰ったのよ。お医者さんっぽい人から」
「……あ、そ」
「ほい、じゃあ次」
「まだあんの?」
「当たり前よ」
ほれ、っとさらに瓶を取り出す。
いくつ入ってるんだろうか。
そして、そのことごとくを幽香は飲み干した。
辛く、悲しく、苦しく、また快楽の旅だったが、幽香はそれに勝ったのだ。
時に顔をしかめ、時に涙を流し、時に声を荒げた、そしてのた打ち回った。
そうしていくうちに幽香は思った。
――どうして、こんなことをしているんだろう。
だれも、わからないのであった。
両手を着いて、ぜぇはぁ息を吐く幽香に対して、メディスンは言った。
「じゃあ、これが最後よ?」
からんころん、転がる大量の瓶の海の中で、幽香は脂汗を流した。
そして、ちょっと泣きかけた。
自分がわからなくなってきたからだ。
――なにしてんだろうなぁ、自分。
そう思いながら、メディスンの差し出す瓶を手に取った。
「ところで聞きたいんだけど、今度はなんなの?」
「ベラドンナドリンク」
「もっかい言ってくんない?」
「ベラドンナドリンク」
もう限界だった。いろいろ限界だった幽香は両手を突き上げ、叫んだ。
「飲めるかぁああああああああああ!」
きゃー、とはしゃぎながら逃げていくメディスン。
幽香はため息を吐きながら、その瓶を見つめて、紙切れがくっついていることに気がついた。
『今日はありがとう。また遊んでね、おねーさん(はぁと)』
「……まったく」
そう思いながら、なんとなく。
いや気がつかないくらい自然に。
たぶん、本当にすべてを忘れていたのだろう。
幽香は瓶を傾けたのだった。
寸前で踏みとどまったけども。
[おわったような]
なんという俺得