辺り一面に向日葵の花が咲き誇る太陽の畑。その黄色に染まった世界の中に一つだけ咲く白い大輪の花。
その下で私、風見幽香は向日葵の手入れをしていた。
「……ふう、こんな所かしらね」
一人呟き、手の中にある白い日傘をくるくると回す。と、目に一瞬だけ日光が入った。
「あら?」
見ると、布地の一部に穴が開いている。
この日傘は弾幕も防げるんだけど……ちょっと酷使しすぎたかしら?
「修理……しなきゃね……」
もう百何年と使い込んでいるしね。大した事無い時間でも無くてはならない物になってるわ。
「でも……」
この日傘は特注品。普通の傘屋じゃ直せない。なら行く所は一つしかない。ないんだけど……
「何か……ねぇ?」
虚空に問い掛けても、誰も答える筈もない。
「……いや!今回はちゃんと理由があるのよ!だから恥ずかしくなんてないわ!恥ずかしくなんて……」
……駄目。顔が赤くなる。墓穴を掘っちゃったわね。
「……よし」
こういうのは深く考えちゃ駄目。何も考えずに、ただただ無心に行けばいいのよ!
「頑張らなきゃ……」
何を、と思ったがまた墓穴を掘りそうなのでそこで止めておいた。
***
店の扉を潜ると、カウンターの向こうにアイツはいた。気だるそうに本を読んでいるわね……何時もの事ね。
「やぁ、いらっしゃい。幽香」
「え、えぇ」
幽香。
ただ名前を呼ばれただけなのに何故こんなにも心が躍るのだろう。
「今日はどうしたんだい?」
「コレ」
言って、日傘を出す。
「壊れちゃったのよ。修理してほしいの」
「あぁ、分かった。まぁどれぐらい壊れてるかにもよるから、よく見せてもらえるかい?」
「えぇ」
日傘を渡す。
「あっ」
その時、彼の手が私の手に触れた。
「……ん、どうかしたかい?」
「な、何でも無いわ!」
「そうかい?」
「そ、そうよ!早く直して頂戴!」
「あ、あぁ……」
ちょっと手が触れただけなのに、なんでこんなにもドキドキするのよ!あぁもう今絶対顔真っ赤だわ!
「……フム、これくらいなら直ぐに……って、幽香?」
「はぇっ!?ななな何?」
「……そっちに何か気になる物でもあったのかい?」
「い、いえ別に?」
いけないいけない、気が付いたら思いっきり後ろ向いてたわ。まだ顔赤いんだろうなぁ……
「そうか。まぁこれくらいなら一時間もあればすぐに直るよ」
「そう。じゃあお願いするわ」
「あぁ」
言って、彼は修理の為に奥に行ってしまった。
「……ハァ」
何故か溜息が出た。
「もう……馬鹿」
本当に馬鹿だ。
彼も……私も。
***
暫く待っていると、扉の鈴が鳴った。
「おーい香霖、邪魔する……ぜ?」
「あら、白黒じゃない」
「げーっ幽香!」
◆◆◆
「ジャーンジャーンジャーン!」
「……衣玖、いきなりどうしたの?」
「いえ、空気を読んだだけです」
「……そう」
◆◆◆
「何でお前が此処にいるんだぜ!?」
「何?私が此処にいちゃおかしいかしら?」
「お、おかしくはない……のか?」
「聞かないでよ」
「ま、まぁそんな事はどうでもいい!私の香霖に手を出すならいくらお前でも許さないからな!」
「あら、何時から彼は貴女のものになったのかしら?」
「私が生まれたときからだぜ」
「残念だったわね。私と出会った時にはもう既に彼は私の―――ッ!?」
「ど、どうした?」
「ななっ、なななななななな何でも無いわよ!?」
な、何て事言おうとしてたのよ私!『彼は私のもの』?むむむ無理無理無理!は、恥ずかしすぎるわ!
「!……ははーん」
「な、何よ?」
「そっかそっかー、香霖はお前のものだったかー」
「なぁっ!?」
ななな、何言ってるのよコイツ!?
「悪かったなー幽香ー、お前の香霖に勝手に手ー出してー」
「あ、あぅぅ……」
『お前の香霖』の部分を強調して言葉を投げかけてくる。挑発って分かっていても、顔が赤くなる。
「そっかそっかー、私が生まれる前からなー。なら<自主規制>を<自主規制>とか、<自主規制>を<自主規制>したり、<自主規制>が<自主規制>で<自主規制>とかもやってるんだもんなー?」
「うぁぁぁぁあ……!」
なんて事言うのよコイツ!?雄しべと雌しべが<自主規制>?そ、そんな事って……
「あと<自主規制>が<自主規制>で<自主規制>も<自主規制>だし、<自主規制>だって<自主規制>が<自主規制>だもんなー?」
「う、うぅう……」
は、恥ずかしい……そんな事なかったのに、言葉を聞く度に頭の中で映像が映し出されちゃう……
「<自主規制>が<自主規制>で<自主規制>も<自主規せ……」
ガンッ!!!
「……少女が使う言葉じゃないよ、魔理沙」
「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
……あ、霖之助。魔理沙は……転げ回ってるわね。殴られたのかしら?いい気味だわ。
「……さて、すまなかったね幽香。魔理沙が迷惑をかけたみたいで」
「ふぇ?え、えぇ……」
彼の顔を見ると、何故か顔が赤くなる。当然だ。今の今まで魔理沙の言葉でよからぬ考え事をしていたんだから。本人が目の前にいるとどうしても反応してしまう。
「……?」
ガシッ
「ふぇっ!?」
かかかかかかか彼の手が顔に、顔にぃ!
む、無防備すぎよ幽香!このままじゃ、キ、キスされちゃ……ふぁああああ!?かっ、顔が近づいてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!??
ピトッ
「……ふぇ?」
……え?おでこ?
「少し熱があるみたいだが?」
……あぁ、そういう事か。
「え?な、何言ってるのよ?私は妖怪よ!?」
……でも、この距離は……
「……それもそうか。あ、はいこれ」
「あ、あぁ。有難う……」
あぁ、もうちょっとあのままでも……いや、あれ以上は理性が持たないから良かった……のかしら?
まぁとにかく渡された傘を受け取る。
「あっ」
その時、また手が触れた。
「………………」
「ゆ、幽香?顔が真っ赤だが、大丈夫か?」
「な、ななななななな何でも無いわ!」
「いや、しかし……」
「何でも無いって言ってるでしょう!?」
「あ、あぁ……?」
「じゃ、じゃあね!」
「あ、おい!」
何か言ってたけどもう聞こえない。
太陽の畑に向かって全速力で飛ぶだけだ。
***
「うぅ~」
此処は太陽の畑。黄色に染まった中、たった今直されたばかりの一輪の白い花は閉ざされて、私の横に置いてある。
体の下には緑。横に目を向ければ黄色。目を閉じれば―――
『幽香』
「ふわあぁぁぁぁあああっ!?」
飛び起きた。な、何で頭の中にまで出てくるのよ!
「それもこれも……全部あの日傘の所為よ!」
言って、横に置いてある日傘を見る。
純白の布地は、彼が張り直してくれた事を物語っている。
「あ……」
日傘を見ていたら、一つ思い出した。
「代金……」
恥ずかしさの余り飛び出してきてしまったが、代金を払うのをすっかり忘れていた。
「……また行かなきゃ……」
また恥ずかしい思いをしなきゃならないのか……ハァ。
でも。
「でも……」
また一つ、彼に会いに行く理由が増えた。
それが何だか、とても嬉しかった。
その下で私、風見幽香は向日葵の手入れをしていた。
「……ふう、こんな所かしらね」
一人呟き、手の中にある白い日傘をくるくると回す。と、目に一瞬だけ日光が入った。
「あら?」
見ると、布地の一部に穴が開いている。
この日傘は弾幕も防げるんだけど……ちょっと酷使しすぎたかしら?
「修理……しなきゃね……」
もう百何年と使い込んでいるしね。大した事無い時間でも無くてはならない物になってるわ。
「でも……」
この日傘は特注品。普通の傘屋じゃ直せない。なら行く所は一つしかない。ないんだけど……
「何か……ねぇ?」
虚空に問い掛けても、誰も答える筈もない。
「……いや!今回はちゃんと理由があるのよ!だから恥ずかしくなんてないわ!恥ずかしくなんて……」
……駄目。顔が赤くなる。墓穴を掘っちゃったわね。
「……よし」
こういうのは深く考えちゃ駄目。何も考えずに、ただただ無心に行けばいいのよ!
「頑張らなきゃ……」
何を、と思ったがまた墓穴を掘りそうなのでそこで止めておいた。
***
店の扉を潜ると、カウンターの向こうにアイツはいた。気だるそうに本を読んでいるわね……何時もの事ね。
「やぁ、いらっしゃい。幽香」
「え、えぇ」
幽香。
ただ名前を呼ばれただけなのに何故こんなにも心が躍るのだろう。
「今日はどうしたんだい?」
「コレ」
言って、日傘を出す。
「壊れちゃったのよ。修理してほしいの」
「あぁ、分かった。まぁどれぐらい壊れてるかにもよるから、よく見せてもらえるかい?」
「えぇ」
日傘を渡す。
「あっ」
その時、彼の手が私の手に触れた。
「……ん、どうかしたかい?」
「な、何でも無いわ!」
「そうかい?」
「そ、そうよ!早く直して頂戴!」
「あ、あぁ……」
ちょっと手が触れただけなのに、なんでこんなにもドキドキするのよ!あぁもう今絶対顔真っ赤だわ!
「……フム、これくらいなら直ぐに……って、幽香?」
「はぇっ!?ななな何?」
「……そっちに何か気になる物でもあったのかい?」
「い、いえ別に?」
いけないいけない、気が付いたら思いっきり後ろ向いてたわ。まだ顔赤いんだろうなぁ……
「そうか。まぁこれくらいなら一時間もあればすぐに直るよ」
「そう。じゃあお願いするわ」
「あぁ」
言って、彼は修理の為に奥に行ってしまった。
「……ハァ」
何故か溜息が出た。
「もう……馬鹿」
本当に馬鹿だ。
彼も……私も。
***
暫く待っていると、扉の鈴が鳴った。
「おーい香霖、邪魔する……ぜ?」
「あら、白黒じゃない」
「げーっ幽香!」
◆◆◆
「ジャーンジャーンジャーン!」
「……衣玖、いきなりどうしたの?」
「いえ、空気を読んだだけです」
「……そう」
◆◆◆
「何でお前が此処にいるんだぜ!?」
「何?私が此処にいちゃおかしいかしら?」
「お、おかしくはない……のか?」
「聞かないでよ」
「ま、まぁそんな事はどうでもいい!私の香霖に手を出すならいくらお前でも許さないからな!」
「あら、何時から彼は貴女のものになったのかしら?」
「私が生まれたときからだぜ」
「残念だったわね。私と出会った時にはもう既に彼は私の―――ッ!?」
「ど、どうした?」
「ななっ、なななななななな何でも無いわよ!?」
な、何て事言おうとしてたのよ私!『彼は私のもの』?むむむ無理無理無理!は、恥ずかしすぎるわ!
「!……ははーん」
「な、何よ?」
「そっかそっかー、香霖はお前のものだったかー」
「なぁっ!?」
ななな、何言ってるのよコイツ!?
「悪かったなー幽香ー、お前の香霖に勝手に手ー出してー」
「あ、あぅぅ……」
『お前の香霖』の部分を強調して言葉を投げかけてくる。挑発って分かっていても、顔が赤くなる。
「そっかそっかー、私が生まれる前からなー。なら<自主規制>を<自主規制>とか、<自主規制>を<自主規制>したり、<自主規制>が<自主規制>で<自主規制>とかもやってるんだもんなー?」
「うぁぁぁぁあ……!」
なんて事言うのよコイツ!?雄しべと雌しべが<自主規制>?そ、そんな事って……
「あと<自主規制>が<自主規制>で<自主規制>も<自主規制>だし、<自主規制>だって<自主規制>が<自主規制>だもんなー?」
「う、うぅう……」
は、恥ずかしい……そんな事なかったのに、言葉を聞く度に頭の中で映像が映し出されちゃう……
「<自主規制>が<自主規制>で<自主規制>も<自主規せ……」
ガンッ!!!
「……少女が使う言葉じゃないよ、魔理沙」
「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
……あ、霖之助。魔理沙は……転げ回ってるわね。殴られたのかしら?いい気味だわ。
「……さて、すまなかったね幽香。魔理沙が迷惑をかけたみたいで」
「ふぇ?え、えぇ……」
彼の顔を見ると、何故か顔が赤くなる。当然だ。今の今まで魔理沙の言葉でよからぬ考え事をしていたんだから。本人が目の前にいるとどうしても反応してしまう。
「……?」
ガシッ
「ふぇっ!?」
かかかかかかか彼の手が顔に、顔にぃ!
む、無防備すぎよ幽香!このままじゃ、キ、キスされちゃ……ふぁああああ!?かっ、顔が近づいてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!??
ピトッ
「……ふぇ?」
……え?おでこ?
「少し熱があるみたいだが?」
……あぁ、そういう事か。
「え?な、何言ってるのよ?私は妖怪よ!?」
……でも、この距離は……
「……それもそうか。あ、はいこれ」
「あ、あぁ。有難う……」
あぁ、もうちょっとあのままでも……いや、あれ以上は理性が持たないから良かった……のかしら?
まぁとにかく渡された傘を受け取る。
「あっ」
その時、また手が触れた。
「………………」
「ゆ、幽香?顔が真っ赤だが、大丈夫か?」
「な、ななななななな何でも無いわ!」
「いや、しかし……」
「何でも無いって言ってるでしょう!?」
「あ、あぁ……?」
「じゃ、じゃあね!」
「あ、おい!」
何か言ってたけどもう聞こえない。
太陽の畑に向かって全速力で飛ぶだけだ。
***
「うぅ~」
此処は太陽の畑。黄色に染まった中、たった今直されたばかりの一輪の白い花は閉ざされて、私の横に置いてある。
体の下には緑。横に目を向ければ黄色。目を閉じれば―――
『幽香』
「ふわあぁぁぁぁあああっ!?」
飛び起きた。な、何で頭の中にまで出てくるのよ!
「それもこれも……全部あの日傘の所為よ!」
言って、横に置いてある日傘を見る。
純白の布地は、彼が張り直してくれた事を物語っている。
「あ……」
日傘を見ていたら、一つ思い出した。
「代金……」
恥ずかしさの余り飛び出してきてしまったが、代金を払うのをすっかり忘れていた。
「……また行かなきゃ……」
また恥ずかしい思いをしなきゃならないのか……ハァ。
でも。
「でも……」
また一つ、彼に会いに行く理由が増えた。
それが何だか、とても嬉しかった。
幽香可愛いよ!幽香!!!後、電波飛ばした人ナイス!!
きっと俺からの電波ですww
こう暑い日が続くと幽香霖でも読まないと凌げない…
ありがとうございました♪
それにしても衣玖さん、空気が読める女である。
笑わせてもらいましたw
幽香可愛いですよね!
>>2 様
吹きましたかそうですかw
>>3 様
貴方でしたか。こちらこそありがとう!
>>brownkan 様
(二重の意味で)何を今更w
>>けやっきー 様
笑ってくれましたかw
>>6 様
えぇ、孔明です。
明日も明後日も、てゆうかもうずっとゆうかりんは可愛いよ!