※この話では、神奈子と諏訪子の間に『皐月(さつき)』という女の子が生まれております。
詳しくは プチ作品集55、『コウノトリでもキャベツ畑でもなく、神様に頼る。』をご覧下さい。
魅力に溢れる彼女の良いところを一つだけ挙げるとするならば、今の私は迷い無く『母性』を挙げるだろう。
それくらい我が子を抱く諏訪子の姿は母親として様になっている。
永いこと付き添って来たが、この魅力に気付いたのはここ最近の事だ。
「…………なに、神奈子? 私の顔に何か付いてる?」
どうやら考え事に集中し過ぎて諏訪子の事を凝視していたらしい。
そんな私の視線に不信を抱いたであろう諏訪子はあからさまな顔で私に振り返って見せた。
「綺麗だなって……そう思っただけさ。」
「ば、ばかっ……///」
ちょっと格好付けすぎただろうか?
諏訪子は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「なあ……諏訪子。キス、しないか?」
その横顔をどうしても振り向かせたくて。
思い付きでそんな事を提案してみたり。
「えぇ……でも……皐月も見てるしぃ……。」
だけど恥ずかしがるばかりで余り諏訪子は乗り気では無いようだ。
「別に構わないだろ? 夫婦の仲を見せ付けてやればいい。」
それにまだ物心も付いていない赤ん坊だ。
意識する程の事でもない筈。
「それに……天狗も見てるしぃ……。」
「あっ、どうぞお構いなく。見せ付けちゃって下さい。」
そう言ってカメラを構えるのは幻想郷一のパパラッチ、射命丸文だった──貴様、一体どこから湧いてきた?
しかし問い質す時間すら勿体無い。
奴の襟元を後ろから掴んでズルズルと引き摺り家の外に放り出すと、徐に私は相棒を取り出した。
「ON☆BASI☆RAー!」
「ギャアァー!」
ドーン……
きらーん。
「はぁはぁ……悪は滅した!」
星となって消えたブンヤを見送り、ほっと一息──全く、幻想郷(ここ)ではプライバシーという物はないのか!?
「……こほん。ああー諏訪子? 邪魔者も居なくなった訳だし……な?」
気を取り直して再挑戦。
今日の私は何時にも増して諏訪子を求めているようだ。
「だから……皐月が──」
「寝てるじゃないか。」
「──みたいだね。」
指摘を受けて初めて諏訪子は自らの腕に抱いた皐月が眠っている事に気が付いたようだ。
さて、これで誰の目を意識する事も無くなった訳だ。
「何……? その手は?」
「言わなくても分かるだろ?」
諏訪子を受け入れる為に広げた両手は、いよいよ彼女の心を折らせるに至ったようで、どこか諦めた視線を寄越してきた。
ぽすっ。
あぐらを掻いた私の両脚にその小さなお尻を預けてくれた諏訪子。
腕に皐月を抱いている時は大抵こうやって身を寄せ合う事にしている。
別に意識してやっているのでは無く、割と自然にいつの間にやら確立されていた。
「愛してる……諏訪子。」
口実──と言えば良いいのか。
後ろから抱き締める時、必ず私は了解を得る代わりにこう囁く事にしている。
ちゅっ
そして返ってくる答えは何時も言葉では無くキス……。
顔を離し、途端にはにかんだ笑みを浮かべる諏訪子に、私は胸が熱くなるのを感じた。
「……諏訪子。もっと……。」
「もぅ……今日の神奈子は何時にも増して甘えん坊だね///」
そう言いつつも嫌な顔せず諏訪子は瞳を閉じて唇を差し出してきた──今度は、私からしろと言うことか。
瞬時に判断し、今度は体制を変えることに。
このままでも出来なくも無いが、長期戦となると諏訪子も首が辛いだろう。
そう思い、諏訪子の肩をそっと回しこちらを向かせる。
すると必然的に皐月は私達の間に挟まれる事になった。
愛する我が子を押しつぶしたりしないよう、細心の注意を払いながらそっと愛しい妻を抱き寄せる。
「んっ……。」
華奢な肩を揺らし待ちきれないと催促をしてくる諏訪子。
その愛くるしい仕草に私の心は一層激しく高鳴った──もう誰の邪魔も無い。今度はもっと深く、強く彼女を求めたい──心の底からそう思った。
その時だった──
「ぁ~ぅ?」
二人の唇が触れる直前に思わぬ妨害があった。
「「さ、皐月?」」
「ぁ~ぁ!」
腕の中から身を乗り出し、ペタペタと私達のほっぺを叩く皐月……何やらご機嫌の様子だ。
「ふふふっ……!」
「諏訪子?」
突然、諏訪子まで笑い出すので私は目を丸くした。
一体全体、何がそんなに可笑しいのだろう。
「きっと伝わったんだよ。私達が仲良しだってこと。皐月にはさ。」
だから嬉しいんだよね。そんな事を問い掛けながら皐月に微笑む諏訪子。
「そうだな……。」
諏訪子がそう言うのだからきっとそう何だろう。
パシャ。
「うん。良い画が撮れました♪」
何時の間に戻って来ていたのか、カメラを片手に微笑むブンヤ。
「実に良い。家族愛って言うんですかね? いやはや実に羨ましい。」
「ブンヤ?」
「はい? ああそんなお礼なんて良いですよ? それとブンヤなんて固い呼び方じゃなくて、プリティー文ちゃんとでもお呼び下さい!」
己の立場も分かっていない愚か者には正義の鉄槌が下るものだ。人、それをオンバシラと言う……!
「で・て・い・けぇ!!」
「ぎょええええっ!」
振り抜いたオンバシラは確かに標的を捉え、今度こそ奴は幻想郷の星と散った──そう、今度こそ悪は去ったのだ……!
「写真……貰えば良かったね。」
ちょっとだけ勿体無そうな顔で、ブンヤが飛んで行った空をそっと見上げる諏訪子。
見ようによっては憂いを帯びた儚げな表情にも見えてしまい、今更ながら自分の取った行動を後悔した。
「そう……だな。」
だけど私にはその横顔をただ見詰める事しか出来なかった……
「どうしたってのよ? アンタから写真を撮ろうなんて?」
「別に……そんな時もあるさ。」
「良いじゃないですか、霊夢さん。せっかく神奈子様が誘ってくれたんだし……ね?」
「まあ……良いけど。」
「皆さ~ん! 準備が出来たんでー! こっち向いて下さーい!」
「ちょっと早苗……どうして文は包帯してんの?」
「さぁ……?」
「じゃあいきますよ~! はい、チーズ!」
カシャ。
次の日。
わざわざ文を呼び寄せて、そのうえ早苗達も集めて私達は記念写真を撮った。
渋る霊夢を連れてくるのも、ボロボロな文にやる気を出させるのも。
相当に労力を要したが──
「神奈子…………ありがとね。」
──それも全てこの笑顔の為なら安い物だった。
詳しくは プチ作品集55、『コウノトリでもキャベツ畑でもなく、神様に頼る。』をご覧下さい。
魅力に溢れる彼女の良いところを一つだけ挙げるとするならば、今の私は迷い無く『母性』を挙げるだろう。
それくらい我が子を抱く諏訪子の姿は母親として様になっている。
永いこと付き添って来たが、この魅力に気付いたのはここ最近の事だ。
「…………なに、神奈子? 私の顔に何か付いてる?」
どうやら考え事に集中し過ぎて諏訪子の事を凝視していたらしい。
そんな私の視線に不信を抱いたであろう諏訪子はあからさまな顔で私に振り返って見せた。
「綺麗だなって……そう思っただけさ。」
「ば、ばかっ……///」
ちょっと格好付けすぎただろうか?
諏訪子は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「なあ……諏訪子。キス、しないか?」
その横顔をどうしても振り向かせたくて。
思い付きでそんな事を提案してみたり。
「えぇ……でも……皐月も見てるしぃ……。」
だけど恥ずかしがるばかりで余り諏訪子は乗り気では無いようだ。
「別に構わないだろ? 夫婦の仲を見せ付けてやればいい。」
それにまだ物心も付いていない赤ん坊だ。
意識する程の事でもない筈。
「それに……天狗も見てるしぃ……。」
「あっ、どうぞお構いなく。見せ付けちゃって下さい。」
そう言ってカメラを構えるのは幻想郷一のパパラッチ、射命丸文だった──貴様、一体どこから湧いてきた?
しかし問い質す時間すら勿体無い。
奴の襟元を後ろから掴んでズルズルと引き摺り家の外に放り出すと、徐に私は相棒を取り出した。
「ON☆BASI☆RAー!」
「ギャアァー!」
ドーン……
きらーん。
「はぁはぁ……悪は滅した!」
星となって消えたブンヤを見送り、ほっと一息──全く、幻想郷(ここ)ではプライバシーという物はないのか!?
「……こほん。ああー諏訪子? 邪魔者も居なくなった訳だし……な?」
気を取り直して再挑戦。
今日の私は何時にも増して諏訪子を求めているようだ。
「だから……皐月が──」
「寝てるじゃないか。」
「──みたいだね。」
指摘を受けて初めて諏訪子は自らの腕に抱いた皐月が眠っている事に気が付いたようだ。
さて、これで誰の目を意識する事も無くなった訳だ。
「何……? その手は?」
「言わなくても分かるだろ?」
諏訪子を受け入れる為に広げた両手は、いよいよ彼女の心を折らせるに至ったようで、どこか諦めた視線を寄越してきた。
ぽすっ。
あぐらを掻いた私の両脚にその小さなお尻を預けてくれた諏訪子。
腕に皐月を抱いている時は大抵こうやって身を寄せ合う事にしている。
別に意識してやっているのでは無く、割と自然にいつの間にやら確立されていた。
「愛してる……諏訪子。」
口実──と言えば良いいのか。
後ろから抱き締める時、必ず私は了解を得る代わりにこう囁く事にしている。
ちゅっ
そして返ってくる答えは何時も言葉では無くキス……。
顔を離し、途端にはにかんだ笑みを浮かべる諏訪子に、私は胸が熱くなるのを感じた。
「……諏訪子。もっと……。」
「もぅ……今日の神奈子は何時にも増して甘えん坊だね///」
そう言いつつも嫌な顔せず諏訪子は瞳を閉じて唇を差し出してきた──今度は、私からしろと言うことか。
瞬時に判断し、今度は体制を変えることに。
このままでも出来なくも無いが、長期戦となると諏訪子も首が辛いだろう。
そう思い、諏訪子の肩をそっと回しこちらを向かせる。
すると必然的に皐月は私達の間に挟まれる事になった。
愛する我が子を押しつぶしたりしないよう、細心の注意を払いながらそっと愛しい妻を抱き寄せる。
「んっ……。」
華奢な肩を揺らし待ちきれないと催促をしてくる諏訪子。
その愛くるしい仕草に私の心は一層激しく高鳴った──もう誰の邪魔も無い。今度はもっと深く、強く彼女を求めたい──心の底からそう思った。
その時だった──
「ぁ~ぅ?」
二人の唇が触れる直前に思わぬ妨害があった。
「「さ、皐月?」」
「ぁ~ぁ!」
腕の中から身を乗り出し、ペタペタと私達のほっぺを叩く皐月……何やらご機嫌の様子だ。
「ふふふっ……!」
「諏訪子?」
突然、諏訪子まで笑い出すので私は目を丸くした。
一体全体、何がそんなに可笑しいのだろう。
「きっと伝わったんだよ。私達が仲良しだってこと。皐月にはさ。」
だから嬉しいんだよね。そんな事を問い掛けながら皐月に微笑む諏訪子。
「そうだな……。」
諏訪子がそう言うのだからきっとそう何だろう。
パシャ。
「うん。良い画が撮れました♪」
何時の間に戻って来ていたのか、カメラを片手に微笑むブンヤ。
「実に良い。家族愛って言うんですかね? いやはや実に羨ましい。」
「ブンヤ?」
「はい? ああそんなお礼なんて良いですよ? それとブンヤなんて固い呼び方じゃなくて、プリティー文ちゃんとでもお呼び下さい!」
己の立場も分かっていない愚か者には正義の鉄槌が下るものだ。人、それをオンバシラと言う……!
「で・て・い・けぇ!!」
「ぎょええええっ!」
振り抜いたオンバシラは確かに標的を捉え、今度こそ奴は幻想郷の星と散った──そう、今度こそ悪は去ったのだ……!
「写真……貰えば良かったね。」
ちょっとだけ勿体無そうな顔で、ブンヤが飛んで行った空をそっと見上げる諏訪子。
見ようによっては憂いを帯びた儚げな表情にも見えてしまい、今更ながら自分の取った行動を後悔した。
「そう……だな。」
だけど私にはその横顔をただ見詰める事しか出来なかった……
「どうしたってのよ? アンタから写真を撮ろうなんて?」
「別に……そんな時もあるさ。」
「良いじゃないですか、霊夢さん。せっかく神奈子様が誘ってくれたんだし……ね?」
「まあ……良いけど。」
「皆さ~ん! 準備が出来たんでー! こっち向いて下さーい!」
「ちょっと早苗……どうして文は包帯してんの?」
「さぁ……?」
「じゃあいきますよ~! はい、チーズ!」
カシャ。
次の日。
わざわざ文を呼び寄せて、そのうえ早苗達も集めて私達は記念写真を撮った。
渋る霊夢を連れてくるのも、ボロボロな文にやる気を出させるのも。
相当に労力を要したが──
「神奈子…………ありがとね。」
──それも全てこの笑顔の為なら安い物だった。
回数は少ないながらも深い愛のこもった濃厚なちゅっちゅ。
以前諏訪子様のぱんちらに悶絶していたウブな神奈子様は落ち着いて積極的になり、逆に押し倒そうとまでしていた諏訪子様はしっとり母性溢れる様になり、なんて言うかタイトルのとおり理想的な熟年夫婦になりましたね。
この様子じゃ今夜あたり二人目が……
よかったです