Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

流星シューティングスター

2010/07/21 23:07:01
最終更新
サイズ
5.58KB
ページ数
1
閲覧数
942
評価数
0/0
POINT
0
Rate
5.00

分類タグ

ある日も、白黒魔法遣いは紅魔の館の図書館にやって来ていた。
そこでは平和な平和な読書会が、白黒と紫な魔女によって開かれている。

広い広い図書館に、聞こえるはページをめくる音。
黙々と二人して読んでいる。
カップの中の紅茶は、口を付けられなくなって久しいが、依然熱いままである。

紫な魔女が一冊本を読み終え、集中を解いた。
次の本を取ろうと、顔を上げる。
すると、少々気にかかる事があった。
椅子に立て掛けている白黒の箒が、やたらにボサボサなのである。
自分の使う魔道具の手入れも怠るとは。

「あなた、そんなんだからそんなんなのよ」

いきなり発せられた声に、白黒は驚き顔を上げた。

「あ。え、っと……私の事か?」
「ええ。箒にお世話になっているなら、手入れぐらいきちんとしなさいな」

白黒が竹箒を見遣る。竹箒は穂が乱れ、今にも抜けていきそうだ。

「しまったな。落ち葉集めが祟ったか。いや、チャンバラかな……」
「どの道、ろくな使われ方をしていないのね」
「ああ、本当に申し訳ない。済まなかったな、『流星23号』」

その名に紫魔女が眉をひそめた。

「23号?そんなに頻繁に壊していたの?」

紫な魔女は白黒に、呆れた眼差しを向ける。

「いや、初めから23号だ」
「じゃあ、なんで23なのよ?」
「だって格好が良いじゃないか」

ニッと笑って言う白黒に、紫魔女は大きくため息をついた。

「物に名前をつけるのはいいわ。レミィもやるし、意味がつく事もある」

ただね、と眠たげな目つきで白黒を見る。

「名前をつけるなら、もう少しセンスを磨きなさい。特に脈絡もなく数字を名前に入れるなら、18が限度ってとこね」

白黒は憤慨した。
紅魔の主を擁護し、かつ自分をけなすこの紫に、果たしてセンスがあると言うのか。

「おいおい。私に名前のセンスが無くて、しかし、レミリアにはある、と言うのは少々聞き捨てならないな」

紫魔女は再びため息をつく。

「あなたには『ダサ格好良い』の境地がわからないのね」



『ダサ格好良い』。
それは格好良さの中に、わずかなダサさを入れる事によって、格好良さを何倍にも引き立たせる高等技法。
塩がお菓子の甘さを引き立たせるだけでなく、味に深みを出させるように。
しかし、このダサさと言うのがくせ者で、余りにダサ過ぎると全てを台なしにしてしまう。
そして、わかる者には堪らなく格好良いが、わからない者にはただダサく感じるという両刃の剣である。

「で、具体的にはどうするんだ」

自分の知らない新たなセンスに白黒は興味を示す。

「まずは読みやすく、語感が良いことが重要ね。あなたの天儀『オーレリーズソーラーシステム』は、些か長すぎる」

魔操『リターンイナニネトメス』も、意味は凝っていて良いが、語感が悪い。
だから格好良さを直感で感じにくい。
まずは意味より語呂なのだ。

「次に、本題のダサ格好良さを出す方法だけど、簡単なのは3つあるわ」

まず、自分の名前を入れてしまう事。
次に、簡単な語を3つ以上、語感良く繋げる事。
最後に違う言語を混ぜてみることである。


「自分の名前を入れる事だけど、これは名前によっては際どくなるわ」
「悪魔『レミリアストレッチ』みたいにか。魔理沙なんとか、ってのは流石になぁ」

しかし、入れられた自分の名前は、物よりも技に付けられた名前では、妙な主張をするのだ。

「そこで、あなたの場合は『霧雨』の方を使うのよ。『博麗撲殺拳』とか、強そうでしょ」
「確かに……でも、『霧雨撲殺拳』は微妙だぜ……」


「次に簡単な語を繋げる事。夜符『バッドレディスクランブル』が代表格ね」

これも、大切なのは語感である。

「この前レミィは古道具屋で、スクーターなるものを買ってきたわ」

しかし、ガソリンがないため、紅魔館ではオブジェの一つになっている。

「本来は動く物らしいから、レミィは名前を付けてあげたの。『ウルトラツインバケット号ターボ』と」
「長いな」

ウルトラは接頭語、ツインバケットはカゴが前後に計二つ付いている様を表し、号は乗り物である意、ターボはエンジンを持つという意味だ。

「バケットが明らかに誤用な気がするんだが」
「kick the bucketから吸血鬼っぽく死の重さを持たせたのよ。後は語呂」
「うーん、そんな物か」


「最後の一つは、二つの言語を混ぜてみる事。これは文字通りね」
「パチュリー・ノーレッジみたいにか?」

紫魔女は白黒を不機嫌そうに睨めつける。

「これの代表はなんと言っても魔符『全世界ナイトメア』。これ以上が無いほど素晴らしい名前よ」

この手法は紅符『不夜城レッド』にも使われているが、魔符『全世界ナイトメア』のポイントは単語の選び方である。
全世界、ナイトメアともに大仰な言葉を選び、更に語感もずば抜けている。
紅符『不夜城レッド』は改良の余地があるかもしれないが、魔符『全世界ナイトメア』は完結していた。

白黒、紫な魔女はともに魔符『全世界ナイトメア』の響きに身震いするのだった。



「『流星23号』……なんてひどい名前をつけてしまったんだろうな」

ダサ格好良いの境地に至った白黒は気落ちして箒を眺めていた。
紫魔女は穏やかな口調で話す。

「幸い箒の改良が出来る時期じゃない。物が変われば、名前も変わるのもまた道理だわ」
「ああ、そうか。ならば、これから格好いい名前をつければいいんだな!」

白黒はとびきりの笑顔で言った。


「『流星23号』。これを、一体どうすればいいんだ」
「まずは23号を取っ払って、基本に戻るのよ」
「名前と、単語の羅列と、ほかの言語を混ぜる……のか」
「この場合、流星という言葉を使うなら、羅列はオススメしない。漢字の羅列は加減が難しいのよ」
「じゃあ、名前と他言語か」

白黒は紙に色々候補を書いていく。

「これなんかどうだろう」

『霧雨シューティングスター』

紫魔女は見るなり、まあまあね、と呟いた。

「あえて同じ言葉を繋げてみるのもありよ」

紫な魔女は『霧雨』を消し『流星』に変えた。
『流星シューティングスター』
片方でいいのに合わせてしまう辺りを、白黒はいたく気に入った。

箒の名前は『流星シューティングスター』に決定した。


「それにしても、レミリアには恐れ入ったぜ」
「でしょう?」
「魔符『全世界ナイトメア』の格好良さには、一生かかっても追いつける気がしない」
「あれは本当に、究極だもの」
「レミリアのセンスをただ悪いだけと思っていた、過去の自分を殴りたいぜ……」

噂をすれば影がさす。
そんな話をしていると、紅魔の主がやってきた。

「ねぇ、パチェ。最近暑いじゃない。だから、爽やかさを込めて、『ペパーミント紅魔館』に改名しようと思うのだけど」

ブルーハワイの方がいいかしら、そう呟く友人に、紫な魔女は閉口した。
ウルトラツインバケット号ターボは私の原付の名前です。
お世話になってます。
ちなみに、今使ってるパソコンは、アメリカさん。
レミリアさんには本当に頭が上がりません。
らない
http://nandogate.web.fc2.com/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.簡易評価なし
1.無評価brownkan削除
レミリア様のセンスに改めて脱帽いたしました。

それにしてもペパーミント紅魔館とは・・・・。
2.無評価奇声を発する程度の能力削除
ペパーミントってwww
3.無評価名前が無い程度の能力削除
ウチのPCは「SISA」です。(沖縄のアレ)
ただ、声に出すと単なる「シーサー」で面白みが無いのが辛いところ。
なるほど、今後の参考になるお話を有難うございました。
4.無評価名前が無い程度の能力削除
かなり、強烈に、ツボにハマった……