「パチュリー様恋人の勉強しましょうよ!」
私は薄暗い図書室で一人黙々と本を読んでいた。
レミィは何が楽しいのかわからないと言っていたが、500年も生きていて本の楽しみ方を知らないということが私にはわからない。
漫画は好きなようだから物語が嫌いというわけじゃないだろうけど。
「あの一人じゃないですよね私がいますよ」
紅茶を口に運ぶ。
本を読んでいる間にすっかりぬるくなってしまっていた。
淹れなおすのも面倒だ。
私は紅茶を諦め本に戻る。
「言ってくれれば淹れなおしますよ聞いてますか」
レミィが面白いからと押し付けてきた漫画を手に取る。
以前から読んでいるものだったが内容はとても難解なものだった。
頭蓋骨を貫通する威力の棍をただの石で防いだかと思えば、次の瞬間にはそれで目潰し。『拳一つで勝負しろ』と言ってすぐにバイクで人をはねる。
ある種の哲学だろうか。
「うっおーっ!くっあーっ!ざけんなーっ!」
突如小悪魔が暴れだした。一体何があったのだろうか。
「パチュリー様わかっててやってますよね!」
「あーはいはい。わかったから暴れるのをやめなさい。埃が飛ぶわ」
「誰のせいだと思ってるんですか…」
肩で息をする小悪魔はへたれ込むように私の隣りに座る。
「で、何だって?」
「聞こえてたんじゃないですか…。恋人の勉強ですよ」
「きょうは とても てんきが いいです」
「お願いですから会話してくださいぃ!」
涙目ですがり付いてくる小悪魔の背中をあやすように撫でてやる。
「それで。恋人の勉強?なによそれ」
「パチュリー様って恋人いませんよね?」
「ええ」
「けど知識はありますね?」
「まあ」
「知識はあるだけでは意味がありません。実践してこそ意味があるのです」
「だから?」
「私とイチャイチャしましょう!」
図書館の空気は埃っぽくお世辞に過ごしやすいとは言えない。
それでも安心したような気分になるのは本に囲まれているからだろうか。
私にとって本は空気と同じようなものなのだろう。
ただ本を読むということだけで私は生きていられる。
我乍ら安上がりな命だと苦笑する。
しかし、それも悪いものでもない。
そう考え、私は一人本を読み続ける。
「パチュリー様あぁ!」
「はいはい、泣かない泣かない」
泣き出した小悪魔を抱きしめる。
胸の中で嗚咽を上げている彼女の頭をそっと撫でてやる。
しばらくすると落ち着いたようで、非難するように涙目で睨んでくる。
「意地悪ですよ、パチュリー様…」
「ごめんなさい。あなたが可愛いものだから」
「そんな言葉で機嫌なおすほど安くありません」
ぷいっと、拗ねたようにそっぽを向く小悪魔。
その割には背中の羽根はぱたぱたと嬉しそうだったが。
「嘘じゃないわよ。魔女は嘘をつかない」
「だったら証明してください」
「どうやって?」
「そうですね…」
考えこむように目を閉じる小悪魔。
そして、目を開くと先ほどとは打って変わって楽しそうに、
「キスしてください。ほっぺでいいですよ」
そう言った。
「キス?」
「はい。私が可愛いなら出来ますよね?」
「もちろんよ」
私は小悪魔の体温が感じられるまでぎゅっと抱きしめ、からかうような笑顔の小悪魔の顔にそっと唇を近づける。
柔らかい髪の匂いを味わってから、そっと唇を
「えっ?」
小悪魔の唇に重ねた。
どれくらい重ねていただろうか。とても長い時間のようにも感じられたが、おそらく数秒にも満たないだろう。
私はそっと唇を離す。
「どう、満足したかしら?」
呆然としていた小悪魔はやっと理解したようで、一瞬で顔を朱に染まる。
そして、その顔を隠すように私の胸に押し付けてくる。
「…嘘つかないって言ったじゃないですか。ほっぺたって言ったのに…」
「あれは嘘よ」
「うー…。パチュリー様のばか…」
「お互い様よ」
私は小悪魔を強く抱きしめる。
おそらく真っ赤になったであろう自分の顔を見られたくなかったから。
私は薄暗い図書室で一人黙々と本を読んでいた。
レミィは何が楽しいのかわからないと言っていたが、500年も生きていて本の楽しみ方を知らないということが私にはわからない。
漫画は好きなようだから物語が嫌いというわけじゃないだろうけど。
「あの一人じゃないですよね私がいますよ」
紅茶を口に運ぶ。
本を読んでいる間にすっかりぬるくなってしまっていた。
淹れなおすのも面倒だ。
私は紅茶を諦め本に戻る。
「言ってくれれば淹れなおしますよ聞いてますか」
レミィが面白いからと押し付けてきた漫画を手に取る。
以前から読んでいるものだったが内容はとても難解なものだった。
頭蓋骨を貫通する威力の棍をただの石で防いだかと思えば、次の瞬間にはそれで目潰し。『拳一つで勝負しろ』と言ってすぐにバイクで人をはねる。
ある種の哲学だろうか。
「うっおーっ!くっあーっ!ざけんなーっ!」
突如小悪魔が暴れだした。一体何があったのだろうか。
「パチュリー様わかっててやってますよね!」
「あーはいはい。わかったから暴れるのをやめなさい。埃が飛ぶわ」
「誰のせいだと思ってるんですか…」
肩で息をする小悪魔はへたれ込むように私の隣りに座る。
「で、何だって?」
「聞こえてたんじゃないですか…。恋人の勉強ですよ」
「きょうは とても てんきが いいです」
「お願いですから会話してくださいぃ!」
涙目ですがり付いてくる小悪魔の背中をあやすように撫でてやる。
「それで。恋人の勉強?なによそれ」
「パチュリー様って恋人いませんよね?」
「ええ」
「けど知識はありますね?」
「まあ」
「知識はあるだけでは意味がありません。実践してこそ意味があるのです」
「だから?」
「私とイチャイチャしましょう!」
図書館の空気は埃っぽくお世辞に過ごしやすいとは言えない。
それでも安心したような気分になるのは本に囲まれているからだろうか。
私にとって本は空気と同じようなものなのだろう。
ただ本を読むということだけで私は生きていられる。
我乍ら安上がりな命だと苦笑する。
しかし、それも悪いものでもない。
そう考え、私は一人本を読み続ける。
「パチュリー様あぁ!」
「はいはい、泣かない泣かない」
泣き出した小悪魔を抱きしめる。
胸の中で嗚咽を上げている彼女の頭をそっと撫でてやる。
しばらくすると落ち着いたようで、非難するように涙目で睨んでくる。
「意地悪ですよ、パチュリー様…」
「ごめんなさい。あなたが可愛いものだから」
「そんな言葉で機嫌なおすほど安くありません」
ぷいっと、拗ねたようにそっぽを向く小悪魔。
その割には背中の羽根はぱたぱたと嬉しそうだったが。
「嘘じゃないわよ。魔女は嘘をつかない」
「だったら証明してください」
「どうやって?」
「そうですね…」
考えこむように目を閉じる小悪魔。
そして、目を開くと先ほどとは打って変わって楽しそうに、
「キスしてください。ほっぺでいいですよ」
そう言った。
「キス?」
「はい。私が可愛いなら出来ますよね?」
「もちろんよ」
私は小悪魔の体温が感じられるまでぎゅっと抱きしめ、からかうような笑顔の小悪魔の顔にそっと唇を近づける。
柔らかい髪の匂いを味わってから、そっと唇を
「えっ?」
小悪魔の唇に重ねた。
どれくらい重ねていただろうか。とても長い時間のようにも感じられたが、おそらく数秒にも満たないだろう。
私はそっと唇を離す。
「どう、満足したかしら?」
呆然としていた小悪魔はやっと理解したようで、一瞬で顔を朱に染まる。
そして、その顔を隠すように私の胸に押し付けてくる。
「…嘘つかないって言ったじゃないですか。ほっぺたって言ったのに…」
「あれは嘘よ」
「うー…。パチュリー様のばか…」
「お互い様よ」
私は小悪魔を強く抱きしめる。
おそらく真っ赤になったであろう自分の顔を見られたくなかったから。