Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

かな→←すわ

2010/07/07 17:58:52
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「あめ、あめ、ふれ、ふれ、もっとふれ♪」
「能天気で羨ましいな」

 天候は梅雨。主に自由を奪う程度の天気。しかし、そんな常識を意に介さない例外が一人いた。しとしとと続く長雨の中、神社の境内をはしゃぎ飛び回る幼い影。その者に水を注す一声が届く。機嫌悪そうに溜息を吐いたその声の主は、あくまでも屋根の下であぐらを組み、雨に濡れることを拒んでいた。

「何か言った?」
「穏やかな梅雨で何より。今年の恵みも豊かになりそうだ」
「そうは聞こえなかったけど」
「そりゃ雨音のせいだ」
「よく言う」

 雨は、強くなったり、弱くなったりを繰り返し、その度に正反対の態度をあらわにする二人。水溜まりの広さと深さが、過ぎていく時間に比例して大きくなっては、諏訪子によって何度も撒き散らされた。

「今日は、早苗は?」
「麓の神社へ出張中」
「出張て」
「里の田植えの豊作祈願に出向く前に――」
「ああ、巫女の方に話を通しておく必要があるってことね」
「さて、どうなったことか」
「一筋縄じゃいかないね……ん、確認していないのか?」
「結果は、本人の口から直接聞きたくてな」
「それは同意」

 そんな時、単調な雨の音に隠れ、微かに響いたのは雷の鳴る音だった。共に空を見上げると、今までより暗く厚い雲が里の方から伸びてきていた。

「あぁ、この長雨であの雲はおかしいと思ったら、緋想の天候か」
「巫女と早苗だろうね。交渉決裂寸前なのかな」
「荒れるな」

 直後、光が一瞬だけ横切り、大きな雷鳴が続いた。先程とは打って変わって、滝の近くにいるかのような、不安を掻き立てられる豪雨の音。しばらく立ち尽くしていた諏訪子は、物足りなそうにゆらゆらと社の中へ戻った。

「早苗大丈夫かなー」
「私のせいだと思うか?」

 神奈子の問いかけを無視したまま、体に纏った雫をふるい落とした諏訪子は、黙って神奈子の横に腰を落とした。近くにちょこんと座り込んだびしょ濡れの諏訪子に、神奈子は見せ付けるかのように一人分だけ腰を引いた。

「雨、嫌いなんだったっけ」
「身だしなみが崩れるから、濡れるのがあまり好きじゃないだけだ」
「営業だからね」
「気にはしていないが、お前のように進んで濡れたがろうとは思わん」
「水も滴るなんとやらって言うじゃない」
「女性に対しての言葉だった気がするが」
「何よ」
「お子様は女性と言わ――」
「聞き捨てならないな」

 神奈子が認識した時、己の体はとうに倒され、諏訪子の下に転がっていた。遠くで雷が光った瞬間、遅れた音が低く太く鳴り響く中で、諏訪子の表情から幼さと無邪気さが消えていた。そのままどちらも、動かず、喋らず、しばらく無言での睨み合いが続いた。外の激しい雨の音など、今の二人には聞こえていない。先に何かリアクションを起こしたら負け、そんな張り詰めた空気の中で、二人は堪えていた。

「ぷっ」
「あははっ」
「はっはっはっ、何だ諏訪子のその顔。相変わらずその見た目じゃしまらないねぇ」
「何なのもう、さっきから言ってくれるじゃない。挑発が安すぎて、返って面白かったけど」
「ああそう、冷たいぞ、私まで濡らすな。あと重いからどいてくれ」
「お子様の何が重いって? 徳? 信仰?」
「早苗の心配」
「ああ、そういうこと」

 諏訪子の察しは早かった。

 ――最近色々と出番の多い早苗に付きっきりで、神奈子の相手をしてなかったな

 ――今日くらい神奈子に付き合ってやればよかった

 ――けど、いつもの豪快な直球さはどこへやら。まったく
 
「どっちが子供なんだか」
「そりゃお前だ」
「あんたよりは成熟してます、内面的に」
「未発達な外見に関しては認めてることになるな」
「あ、うっ」

 お互いに、目の前のもう一人の神をからかうことをやめられなかった。その度に愛おしい反応を、予想と寸分違わず返してくれるのだから。





「魚心あれば水心、って言うだろう?」
「焚き付けてくれたわけ」
「たまには誘われてみたかった。反省はしていない」
「なら、今日のところは水に流してあげる」
「そうしてもらわないと困る。もうすぐ早苗のお帰りだ」
「この濡れた廊下はどうする気?」
「神頼み」
「あーあ、今日は早苗の晩御飯抜きか」
“ながあめ”と打って“霖”の字が出てきてびっくりした。

諏訪子可愛いよ諏訪子、そんな神奈子様可愛いよ神奈子様。
りゅう~
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
いいね、いいかなすわでした
2.奇声を発する程度の能力削除
素晴らしいかなすわでした!
3.名前が無い程度の能力削除
なんだか一筋縄じゃいかないやりとりをしているのにラブラブな神様たちですね!
4.名前が無い程度の能力削除
増えろ、もっと増えるのだかなすわ