夕食後、風呂上がり
「今上がりました~」
「ほーい、お疲れ。それで小傘、今日はどうだった?」
「あ、はい。今日は三人勧誘することが出来ました」
「そっか。小傘、無理しちゃいけないよ?」
「そうだな、最近寝てないだろう。いくら早苗への誓いでも倒れたら元も子もないんだからさ」
「はい、でも大丈夫です」
小傘が風祝になったあと、付喪神の一柱として神の性質を持っていた小傘は諏訪子から神の力を分け与えてもらい、人を驚かせずとも大丈夫な体になっていた。
「あと何度も言ってるけど敬語は止めてもらえるかい?」
「そうだよ小傘、私達は家族なんだから」
「はい…イヤ、うん、なんか早苗みたいになるためにまず敬語を使う事から始めたんだけど…癖になっちゃって気を抜くとつい」
「そっか、明日はどうするの?」
「明日も里に行って勧誘しようかと思ってるんだけど」
「分かった、気を付けるんだよ?」
「はーい」
「それじゃあ、お休みなさい」
「ああ、お休み」
「お休み」
それを聞いて小傘は居間を出た。
「…そう言えば諏訪子、あの子はいつ来るんだい?」
「ん?確かそろそろだと思うよ?」
「そうか、だったら伝える必要はないか。あの子が何より最初に行くところは決まっているだろうからね」
早苗の部屋
小傘は部屋のドアを閉めてもう一回幻想郷縁起を開いた。
東風谷 早苗
職業、巫女(風祝)
種族、人間、現人神
能力、奇跡を起こす程度の能力
五十年前に病で死亡した風祝。
守矢神社の二柱の神の信仰を得るために人里で勧誘したりしていた。
五十年前までも勧誘と異変解決は続けていたが病にかかりそのまま亡くなった。
その時彼女と仲が良かった多々良小傘が風祝を継いだ。
性格はさでずむ、天然突撃暴走娘
そう五十年前に早苗は死んでしまった。
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宝船が現れたあの異変
「ちょっと待ってよ~」
「はい、何でしょう」
「うらめしやー」
「……人間は妖怪になめられていると言う事かしら」
「うらめしや?」
…全てはここから始まった
あの後、早苗にコテンパンにやられてしまった私はどうしても早苗にひと泡吹かせてやりたくて驚いた顔を見たくなっていろんな事をやってみた。
一つ目、正攻法
早苗が縁側で休憩してたから大声を出しながら飛びかかって驚かせようとしたら…
『うらめしやーーー!!』
『ハイハイ、表は蕎麦屋』
ギュッ
……ジタバタ、ジタバタ
『は、離せ―!離せ―!!』
『駄目です、人を驚かせる悪い妖怪には罰が必要です』
『だからギュッてするな~!何故居るってわかった!?』
『だって小傘さん少し小さいですけど神気と妖気がダダ漏れなんですもの』
『はうっ!!?』
『あう~、小傘さんはお肌すべすべですね~』
『ちょっ!離せ!頭撫でるな!あっ…!ちょ!そこらめぇ…、んあっ!?』
二つ目、トラップ
早苗の帰り道の途中に落とし穴をしかけてみた
『よしよし…来た来た』
『~~♪』
『あと、五歩、四、三、二…』
『きゃ!?』
『よし!大成功…ってあれ?』
『なーんちゃって…。残念でしたね、小傘さん』
そこには落とし穴の上にふよふよと浮く早苗の姿が
『うそ!?なんでばれた!!?』
『スコップが置きっ放しですよ?それに土の色がそこだけ違いますし』
『ガーン!!』
『さて、では小傘さん。お仕置きです♪』
そう言って笑顔で歩いてくる早苗の周りには暴風が渦巻いている。ヤバイ、マジで切れてる?
周りの風を消した早苗が私の両肩に手をポンッと置き――
『小傘さんロケット、発射!!です♪』
『え―――』
急激に私の周りから先程とは比べ物にならないほどの暴風が発生、私は空に向かって吹き飛ばされ星になった。
『うにゃあああああああぁぁぁぁ…!!!』
数十分後、私は守矢神社の境内に落下、奇跡的に怪我は無く(早苗のお陰?)顔を上げるとそこには――
『いらっしゃいませ、小傘さん』
輝かしい程の笑顔を浮かべたさでずむがいました、体に力が入らない。…もう好きにして…
『では好きにさせていただきます』
『ちょ!心読むな!!だからそこはだm…、あっ!ちょ…、いやぁ…』
三つ目、押してダメならぶっ壊せ
普通じゃ驚いてくれないので別の行動を取る事にしました。
夜、守矢神社
―作戦内容―
1、神社に潜入
↓
2、妖気と神気を抑え早苗の部屋を捜索
↓
3、発見と同時に潜入
↓
4、さて、どうしよう?←今ここ
『うーん…』
『…すぅ…すぅ…』
そこには幸せそうに眠る早苗の姿がある
『今日は何も持ってこないで来ちゃったし何かいい方法ないかな…』
『…すぅ…むにぃ…』
『朝起きたら目の前に誰か居たら驚くよね…?というわけでお邪魔しまーす…』
――ゴソゴソ…ガシッ、ギュッ
ん?ガシッ?ギュッ?
『こんばんは、小傘さん』
『え、えっと…こんばんは、早苗…』
そのまま小傘を逃さないとばかりにと抱きしめる早苗、小傘はあまりの気持ちのよさに意識を落としかけたが何とか維持する
『じゃない!いつから起きてたの!?早苗!!』
『えっと… 夜、守矢神社 の辺りですかね』
『最初の最初から!?』
『小傘さん、落ち着いて考えましょうよ。私はちょっと違いますけど妖怪退治をするものが自分の住処に易々と敵を入れる訳がないじゃないですか。結界ですよ結界、誰かが入ったら分かる様になってるんです』
『NO!!?』
『それでは恒例のお仕置きタイムです♪』
『ちょ!ちょっと待って!さな…んむ!?』
『ん…ちゅ…ちゅむ』
『んー!んー!!ん、ん…、んぅ…』
――結果、他にもいくつか挑戦しましたが惨敗でした。
結局私は早苗を驚かせる事が出来ずむしろからかわれるばかりだった。
そんなある時、早苗に神社に泊まりに来ないかと言われた。
私の中の『早苗』が変わったと自覚した瞬間だった。
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深夜、早苗の部屋
「よし、出来た」
小傘が早苗の机の上で作っていたのは里で配るための宣伝チラシ。
「後はこれをコピーして…っと」
そう言って小傘はオリジナルをコピー機(霖之助とにとりの共同制作の3号機。1号機はヴワル図書館に、2号機は命蓮寺にそれぞれ置いてあります)にセットしてスイッチを押した。
静かな音を立ててどんどんコピーされていく。
「まったく…、早苗のすごさが分かるよ…」
霊夢に里人の60%から信仰を受けていると言ったがそのうちの40%は早苗が集めたのである。
小傘は徹夜したりして頑張っているが早苗はまるでそれが普通のように信仰を集めていた、それこそ奇跡である。というか奇跡は万能である。
「ふわぁ…、神奈子様も言ってたしそろそろ寝よう…」
久しぶりに夢を見た
早苗が布団の中で力なく笑っている
私は泣きそうな顔で早苗を見ている
弱弱しく私の手を握る早苗の手をしっかりと握る
これは50年前の光景
『小傘さん…また…いつか――』
そう言って早苗は死んでしまった
私は静かに泣いた
でも結局声をあげて泣いてしまった
でも決意した
勝手かもしれないけどそれが早苗のためになると信じて
『神奈子様、諏訪子様、私を風祝にして下さい』
それが早苗への誓い
さあ早く続きを!
奇声を発する程度の能力 様
いつもコメントありがとうございます。
現在進行でやっておりますのでしばしお待ちください。