Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

彼女の愛した弁当屋

2010/06/12 22:20:37
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霊夢が博麗神社のイメージアップの為に弁当屋を始めたという噂を聞いた魔理沙は、
心の底で(そんなことをした所で参拝客は来ないんだろうな・・・)と思いつつも様子を見に行ってみることにした。

「よう、霊夢。弁当屋を始めたんだってな」
「あら魔理沙、よく知っているじゃない」
「本当だったのか・・・」
「何か言った?」 
「いや・・・」

軽い世間話のように切り出してみたところ、霊夢に即答され、膝が震えだす魔理沙。
霊夢が弁当屋だなんて、これだから人生何が起こるかわからない。

「何で膝震えているの?」
「霊夢、これだけは言わせてくれ。お前が弁当屋をやってもナンセンスだ」
「箒へし折るわよ」
「勘弁してくれ!」

威圧的なオーラを放つ霊夢。
真っ当なことを指摘したはずなのにこの仕打ちなんだから、魔理沙が涙目になるのも仕方があるまい。

「とりあえず食べてみてよ。それからでしょ」
「わ、わかった・・・」










――テイスティングタイム――

「これは・・・」
「白米弁当よ。割と自信作」

魔理沙は呆れかえってしまった。
なぜなら、重箱の中には冷え切ったご飯だけがぎっしりと詰まっていたからだ。
ノーおかず。苦学生みたいだ。

「その自信とやらを叩き潰してやる!」
「言ってくれるじゃない・・・」

そう言って箸を手に取り、口にご飯を運ぶ魔理沙。
そしてゆっくり咀嚼する。

「どう?」
「これは・・・どこまでいっても白米だな」
「もういいわよ!アンタなんか性欲の権化よ!」
「そんな二つ名を付けられる謂れはないぜ!?」

魔理沙は泣く泣く帰った。













翌日、第17回魔女っ娘エコノミカル会議が紅魔館の図書館で開催された。
ちなみにこの場合、エコノミカルとは『安上がり』という意味である。

「今日の議題は『霊夢の弁当屋の問題点について』だ」

重々しい空気から会議の開始を宣言したのは、昨日散々な目に遭った魔理沙である。
実に悲痛な面持ちで、見ていて哀しみを背負っているようにしか思われない。

「どうでもいいけど、この会議名が凄く気に入らないんだけど・・・」

彼女の名は、アリス・マーガトロイド。
冷静沈着な彼女は空気の如何に関わらず、まともなことを言う。(偶にズレたことを言うが)

「うるさいぞアリス!お前いつも同じことばかり言ってるだろ!」
「だっておかしいでしょ・・・何よ、『魔女っ娘』ってだけでも恥ずかしいのに、『エコノミカル』とか意味分かんないし・・・」
「仕方ないだろ!呑んだ勢いで決めちゃったんだから!」

それはこの会議の前身である『超☆緊急会議IN魔女さんズ』に於いて起こった哀しい出来事である。
思い出す度に、アリスと魔理沙は目頭が熱くなるのだ。

「テキーラってお酒の名前だったのね・・・リンボーダンスの別ver.の名前だと思ってた・・・」

彼女の名はパチュリー・ノーレッジ。
ネイティヴな発音だと『パチュリィ・ナリッジ』となる。どうでもいい。

「パチュリーが喋った・・・!!」
「ちょっと魔理沙それ失礼でしょ。あとパチュリーもテキーラとか言いだしちゃって・・・話聞いてなかったでしょ?」
「・・・・・・・」
「パチュリーが黙った・・・!!」
「そのリアクション気に入ったの?」

一向に会議が始まる気配がないので魔理沙は強引に進めていくことにした。

「と言う訳で、霊夢の『白米弁当』が余りにもアレなので改良の余地があると思うんだ」
「なにそれ、聞いた感じ凄く味気なさそう」
「その通りだアリスよ。あの弁当を食らった時、私は涙が止まらなった」

誇張である。

「多分、アイツなりに頑張ったんだろうが、惣菜とか入れようにも、食材がアイツの食べる分しか神社に置かれてないんだろうな」
「でしょうね・・・」
「そこでだ、ここで私達がなんとかすることで霊夢に恩を売り、なんか色々な所で手心を加えてもらうようにする」
「恩を売るって・・・」

会議中はずっとツッコミ役のアリスだが、疲れてくると顔が凄い怖くなると評判だそうだ。

「アリス顔怖っ・・・ま、あいつもあれで義理堅い所があるし、そうやって私達に有利に事を運ぶように・・・」
「なるほど、魔理沙の言いたいことはわかったわ。博麗の巫女を懐柔しようってんでしょ?」
「そうだ。それでその方法だが・・・」
「私に考えが有るわ」

その時だ。
さっきまで本を読んでいて一つも会議を聞いていないと思われていたパチュリーが発言したのだ。

「ほう・・・『動かない図書館』が動いたか・・・」
「何その・・・もうツッコミ疲れた・・・」

アリス、疲れる。(人生に)

「アリス顔怖っ・・・まあアンタ達の話を聞くまでもなく、私はその弁当屋の情報を結構前から手に入れていたわ」
「なんだと・・・耳年増な奴だな」
「魔理沙黙っていなさいよ。折角パチュリーが喋っているんだから」
「アリスごめん顔怖いよ特に目が怖いよ許して」

魔理沙は割と大人しくなった。

「レミィが1か月ほど前に霊夢の神社に遊びに行ってその白米弁当とやらを食べさせられたらしいの」
「その時に知ったのね」
「そう。で、レミィ曰く『どこまでいっても白米だった・・・』だそうで」
「でしょうね・・・」
「それでね、今日の朝に会議をやると魔理沙から連絡が入ったので、事前に霊夢に手紙を送っといたわ」
「手紙を?」
「アンタご自慢の弁当を持って下記の住所の所まで来いよォって書いてやった」
「なんでそんな挑発的な文章なの・・・」

パチュリーは段々興奮してきたのか、喋り方も異様なテンションを帯びてきた。
対するアリスは言うまでもないよね。

「で、その住所なんだけど」
「え?ここじゃないの?」
「いや、神綺っていう魔界神の住所」
「神綺様の!?」

アリスが上ずった声を上げた。
無理もない。アリスも良く知るその人物。

「神綺・・・だと・・・?」
「ああ、魔理沙も面識あるんだったわね」
「昔ボコった」
「え、凄いわね・・・」

素直に感心するパチュリー。

「ててていうか、なんで神綺様の所に霊夢をやったのよ!?」

アリスが凄い剣幕でパチュリーに詰め寄る。
神綺の体に気を使っての発言であろう。
巫女とかに会わせたらまた神綺が老け込むからだ。

「お、面白そうだったから・・・」
「そうだな、面白ければそれで良し。それが魔法使いってもんだ」
「ええ・・・」

アリスは果たして、もう何も言わなかった。










魔界。それは異世界のアレとかソレとかが跋扈している妙なエリアである。

「で、何しに来たの・・・」
「アンタが手紙寄越したんでしょうが!」

霊夢は既に神綺の玉座まで辿りついていた。
でも神綺は季節外れの炬燵に入っているので玉座とは呼びがたい、その気持ちをぐっとこらえる霊夢。(魔界は寒いのです)

「知らないわよ~夢子ちゃん助けて~」
「来ないわよ」
「なぜ!?」
「今は休憩時間だから・・・さっきメイドが廊下でそう言っていたわ」
「なるほど・・・」

納得する神綺も神綺だが、主の危機に、休憩を理由に駆け付けない夢子も夢子である。

「さあ、この弁当を食べてもらおうじゃないの」
「だからなんでこんなことに・・・」

重箱に入った、冷え切ったご飯を箸で食べる神綺。
炬燵で食べるその姿は、さながら『お母さん』と言ったところか。

「どうよ?」
「ぬくもりが足りないわ・・・」
「そりゃあ、冷え切っているわよ。弁当だもの」
「そうじゃなくて、心のぬくもりが足りないのよ」
「ぬく・・・もり・・・」

『心のぬくもり』と言われて急に大人しくなる霊夢。
神綺の言葉を心の中で何度も反芻する。

「貴方も覚えているでしょう。ぬくもりを」
「フフ・・・流石魔界神、神綺・・・博麗の巫女が敵う相手ではなかった・・・」

少なくとも料理の分野では、と余計な一言を呟きながら寂しく去っていく霊夢。
神綺はその後ろ姿を見送りながら、(せめて梅干しぐらい入れればいいのにね)などと考えていた。









数日後・・・

「あら魔理沙いらっしゃい」
「おう、弁当屋の方はどうだ?」

あれからしばらくして、霊夢の様子を見に来た魔理沙。
というよりは、パチュリーの悪戯に激怒していないか、ご機嫌を窺いに来たのだ。

「ええ、弁当屋は絶好調よ。客来ないけど」
「そうか・・・(どうやら怒っていないみたいだな・・・)」
「ちょっともう一回食べてみてよ」
「ええ~もういいよ・・・」
「いや、今回のは自信作よ」

そう言って霊夢が懐から出したのは、重箱いっぱいの白米だった。

「・・・変わらないじゃないか!それよりもどこから出してんだよ!」
「いいから食べてみてよ」

霊夢から箸を渡されて、渋々食べる魔理沙。
しかし、一口だけ口に入れたところ、目を見開いて驚いた。

「な、生温かい・・・」
「それが『ぬくもり』よ・・・」
「ぬく・・・もり・・・」

弁当の妙な『ぬくもり』によって嘗ての師匠、魅魔を思い出した魔理沙。
その様子を陰から覗いていたアリスとパチュリーの胸中も、きっとぬくもりに満ちていたのだろう。(多分欺瞞に満ちていただろうが)
初めまして。
良い言葉ですよね、「ぬくもり」って。
それよりも「腐れ縁」っていう言葉の方が好きですが。
樫桐鉄道
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
このテンポたまんねぇ。
2.名前が無い程度の能力削除
いい言葉だ、ぬくもり。アリス大変だなw
3.奇声を発する程度の能力削除
とっても面白かったですwww
ぬくもり…か。
4.名前が無い程度の能力削除
よ、よくわからんが……なんか(・∀・)イイな!
5.ぺ・四潤削除
みょうにぬくもっているー!(ガビーン!)
しかし大量販売はできなさそうだな。 
6.名前が無い程度の能力削除
白米の巫女か…
7.名前が無い程度の能力削除
・・・・・いい。
8.名前が無い程度の能力削除
Niceでした
9.名前が無い程度の能力削除
わかった!この作品は元々凄いほんわかしたお話だったんだけど、ぬえが正体不明の種を植え付けたからよくわからない作品になったんだ!
でも元の作品のほんわかした空気は隠し通せない!だからこんなお話になったんだ!

まぁ要約すると、よく分からんけど良かったって事だよ。
10.ぺ・四潤削除
>8
それを言うなら「Riceでした」だろうww
11.名前が無い程度の能力削除
まあ、お野菜がいっぱいでとってもヘルシーね!
12.名前が無い程度の能力削除
この生温かさ・・・これがぬくもりというものか
13.名前が無い程度の能力削除
ええなぁ・・・
14.名前が無い程度の能力削除
から揚げとか焼き魚とか入れろとは言わない。
せめて白旗弁当から日の丸弁当に進化してくださいorz
15.名前が無い程度の能力削除
なんか全体的にワロタ